【先行レビュー】『ペルソナ5: The Phantom X』は本当に『ペルソナ』らしさを踏襲できているのか…結論:このハイクオリティで“基本無料”は異常!!


セガは、6月26日に『ペルソナ5: The Phantom X』(以下、『P5X』)の配信を予定している。

『P5X』は、全世界売上本数2,350万本を突破した『ペルソナ』シリーズの最新作で、初のモバイル/PCゲームとなる。タイトルの通り、世界観は『ペルソナ5』を引き継いでおり、既プレイの方が楽しめることはもちろん、基本無料で遊べるので『ペルソナ』シリーズを遊ぶのが初めてという方も入りやすい作品となっている。

今回は、そんな『P5X』を一足先に体験させていただく機会が得られたので、本稿ではその模様をレポートしていく。

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■『P5X』は3社協業開発! 組織体制ってどうなっているの?

さて、そもそも『ペルソナ』シリーズはこれまでセガのグループ会社であるアトラスが手掛けてきた作品だが、本作はセガが中国のPerfect WorldとIPライセンス契約を締結したことで同社が開発・運営を担当、アトラスが監修を務め、セガはパブリッシャーを担うという3社協業の形で進めている(関連記事)。

“協業”という言葉だけ聞くと「開発元がアトラスじゃなくて大丈夫だろうか? 本当にちゃんと『ペルソナ5』になっているのか?」と疑いたくなる人もいるだろう。かくいう、今回の先行体験を経るまで筆者もその一人だった。
※TGS2024会場でも本作をプレイしていたが、ほぼバトルのみの体験だったためストーリー部分に触れるのは今回が初となる。

では、そんな筆者の感情がどうなったかというと……開始5分で心を鷲掴みにされ「これだよこれ! 自分がやりたかったのはこの『ペルソナ』だよ!」とレポート用のメモを取るのも忘れて夢中になってしまうほど望んでいたクオリティに仕上がっていた。ということで、リリースを前に先ほどのような心配を抱かれている方、基本無料のゲームだからと敬遠されている方、それは全くの杞憂です。心配要りません!リリースされたらすぐに遊んでください!むしろ、細部にまで『ペルソナ』イズムが沁み込んでいて、ファンにこそ見てほしい部分がたくさんありました!!

ここまで『ペルソナ』らしさを再現できているのは、もちろんPerfect Worldの『ペルソナ』愛あってのものだろうが、セガの担当者にお話を伺ってみるとどうやらそれだけではないらしい。そもそも、メインストーリーに関してはアトラスが担っているほか、ローカライズ(※1)の際には単なる翻訳ではなく街中にいる人々(いわゆるモブ)に至るまで見直しが入って会話が追加されていたり、2Dグラフィックもより日本向けのものに描き直されているのだとか。“監修”と謳ってはいるものの、その実態は開発と変わらないのではないようだ。
※1:『P5X』は中国などのアジア一部地域にて先んじて2024年4月にリリースされている。

■心の怪盗団も登場!? 人の“欲望”が次々に盗まれる!

ここからはより具体的にゲーム内容について触れていく。

ゲームを始めて最初に見るものといえば、オープニングムービーだ。『P5X』ではどのような仕上がりになっているのか……と期待に胸を膨らませながら画面を眺めていると、どこかで見たことがある光景に「あれ? このカジノ……!?」と驚いたのも束の間、画面に映し出されたのはジョーカー(『ペルソナ5』の主人公)の姿!



流れている曲はもちろんLynさんが歌う「Life Will Change」。シリーズファンならこれでテンションが上がらないはずがない……!まだ『P5X』と『ペルソナ5』の世界がどのように繋がっているのかは分からないものの、のっけから原作のオマージュでファンの心を揺さぶってくる!


▲しかし、『ペルソナ5』そのままではなく画面には時々、妙なノイズが走る。これは不穏だ……。

そうして物語を進めると本作の主人公(CV:内山昂輝さん)が登場し、改めて『P5X』のオープニングが流れる。そうして舞台は昼間の学校へ。


▲キャラクターの雰囲気はもちろん、吹き出しの形や文字のフォントなど細かなUIまで、まさに『ペルソナ5』である。これがグラフィックから感じられる全力の『ペルソナ』シリーズ感だ。

また、学校では主人公の名前を決めるシーンがあるのだが、ここでもちょっとしたサプライズが。『ペルソナ』シリーズの舞台は日本となっているため、主人公の苗字と名前を決めるのがお馴染みなのだが、本作ではアトラスが考案した名前案が記入されている。

『ペルソナ5』では、アニメ版や漫画版で主人公の名前が付けられることはあったが、ゲーム内でこういった対応がされるのは初めてのことである(※もちろん変更は可能)。今回、なぜこのような仕様にしたのか制作者に伺ってみたところ、CBTの際に「名前入力のタイミングで困った」というユーザーからの意見があったため、自分で考えることが難しいユーザー向けに、一案としての名前を用意したとのことだった。ただし、アトラスとしては、「自分の分身である主人公が世界を旅していく」ということがシリーズのコアメッセージとして存在し、名前はユーザー自身で自由につけてほしいというスタンスは変わっていないとのこと。よって、ユーザー自身が考えた名前を付けることも、アトラスが用意した一案としての名前でプレイすることも、どちらも可能であり、その選択もユーザーに委ねられている。本作がスマホでも遊べる基本無料のゲームということで、ユーザー層が広がることを見越した対応になっているのだという。


▲かくいう筆者も『ペルソナ』シリーズを遊ぶ時はアニメ版の主人公の名前を調べてから付けるのが定番になっていたので納得感があった。

そのほか、夢と現実の狭間に広がる世界「ベルベットルーム」ではイゴールや新たな住人・メロペの姿が見られる。ペルソナの合体や高難易度バトルへの挑戦など、今後も頻繁にお世話になることだろう。

▲ゲーム序盤はアニメシーンが多く、コンシューマーゲームと見紛うほど。非常にリッチな作りとなっている。

学校内を始めとした街中の探索も自由に行える。ストーリーが進むと訪れられる場所も広がっていくようで、『ペルソナ5』に登場した四軒茶屋や渋谷にも行ける。


▲今回、主人公が通う「私立己刮学園高等学校」は下北沢にあるようだ。


▲街中にいる人々から何気ない日常的な会話や、周りで起きている不審な出来事が伺えるのも一興。今回は時間がなかったので少ししか見られなかったが、リリースされたらぜひ余すことなく人々の話を聞いて周りたい。

プロローグの終盤では、謎多きフクロウ「ルフェル(CV:野中藍さん)」が登場。彼によると、主人公は何かを“盗られている”ようだが……。意味ありげなアドバイス(?)をされていたところに自転車が突っ込んで来て大ピンチ! 間一髪のところで怪しげなアプリが起動して異世界「メメントス」へ侵入!? ここからはルフェルと行動を共にすることに。


▲ルフェルによると、現実世界ではさまざまな欲望が失われつつあるという。心が盗まれるというのは『ペルソナ5』の“心の怪盗団”とも関係があるのだろうか?


▲メメントスは人間を襲う敵「シャドウ」が蔓延る危険な場所。対抗する手段として、主人公はペルソナの覚醒を余儀なくされる。

そうしてメメントスから脱出したところでプロローグは終了。本作の話がこれからどう展開していくのか、『ペルソナ5』とどう繋がっているのか、まだまだ分からないことだらけだが、ここからの物語はぜひ実際に本作をプレイして確かめてみてほしい。

■遊び応え抜群の高難度コンテンツも! 恐れ知らずが屈強なシャドウに立ち向かう!

バトルについてはTGS2024試遊レポートの際もお伝えした通り(関連記事)コマンド選択式となっている。



スキルにはそれぞれ属性が備わっており、敵の弱点を突くことで大ダメージを与えてダウンを奪うことができる。相手の弱点を探りながら戦うこのシステムは『ペルソナ』シリーズでもお馴染みのものとなっている。加えて、敵の強力な攻撃に防御やアイテムで対処したり、ダメージを与えるのにギミックが用意されている点も『ペルソナ』シリーズの特徴を捉えているところだ。 

▲敵をダウンさせると「1MORE」が発動し、追撃を行うことができる。演出はキャラごとに異なっているので一見の価値あり。

また、本作で初登場となる「ハイライト」は、ハイライトゲージが最大まで溜まると任意のタイミングで使用できる強力なスキルだ。敵の弱点を突くことでこのハイライトゲージも多く溜まる仕様となっているため、やはり的確に敵の弱点を突くことが戦闘のコツとなる。また、ハイライトにはクールタイムがあり、一度使用すると同じキャラでは4ターン経過しないと再使用できない点にも注意。

▲ハイライトは元々強力なスキルとなっているため、クリティカルは発生しない。こちらの演出もキャラ固有のものとなっているため一見の価値あり。


▲そのほか、強力な回復やバフ効果などが得られるナビキャラクターからの支援は、『ペルソナ5』ではランダムなタイミングに発生していたが、本作では任意のタイミングで効果を選択できる。

本作に登場するダンジョンには、メメントスだけでなくパレス(歪んだ欲望が具現化した場所)もあるとのことで、特別に少しだけ体験。敵から身を隠しながらの移動や、扉を開けるための謎解きなど、コンシューマーと遜色ないレベルのクオリティに仕上がっており、これがスマホでも遊べるゲームだということをつい忘れてしまう。


▲今回、潜入したのは和テイストのパレスだったが、他にもさまざまなパレスが登場するのだろうか。

▲もちろん、パレス内は宝箱やギミックもたくさん。隅から隅まで探索したくなる。


▲戦力差がある敵ならフィールドアクションだけで倒せることも覚えておこう。

そうしてパレス内を探索していると、宝箱の前に屈強なシャドウを発見!物は試しと挑んでみたが、敵からの状態異常攻撃が厄介なうえ、弱点属性がない敵もおり、かなりの苦戦を強いられた。


▲序盤から「激怒」で回復役の行動が制限され、そのまま倒されてしまうというキツイ展開に。なんとか周りの雑魚を処理することはできたが、残り一体の耐久力が高くやられてしまった……。

ゲーマーとして負けてしまったのは悔しいが、爽快感あるバトルだけでなく、このように攻略し応えのあるコンテンツが最初から用意されているというのは嬉しいポイント。敵の弱点を突いて優勢を取れているうちは良いが、一歩間違うと味方がダウンを奪われて逆にボコボコにされてしまうという緊張感があるのもまた『ペルソナ』シリーズらしい。

今回は残念ながら敗北を喫してしまったが、本作がリリースされたら改めてリベンジしたい。なお、ゲームオーバーの際は近くのセーフルームからやり直しとなるが、パレス内にはセーフルームが多数用意されているためあまり気にせず繰り返しトライできる。


▲本作はスキマ時間にも遊びやすいよう、セーフルームは多めに用意されている。

■昼夜を問わずに街中探索♪ キャラの魅力は“シナジー”でチェック!

そのほか、ペルソナといえばやはり出会いの物語!主人公や仲間だけでなく、街の人々との交流を経てさまざまな力が身に付いていくのも魅力のひとつである。そこで、本作でも各キャラクターとより親密になれるイベントとして「シナジー」というものを用意。こちらは『ペルソナ5』にあったコープのようなもので、ランクを上げることでさまざまな機能が解放されていく。


▲ヒロインとは最終的に恋人関係にもなれるかも!? 原作では複数の女性を彼女にすると修羅場イベントが発生するが、それが『P5X』でも用意されるかは気になるところ……。


▲シナジーランクを上げるには、各キャラとさまざまな場所へ遊びに出掛けたりプレゼントを渡して親密度を上げる必要がある。

今回は、バーチャル世界で出会える「YUI」とのシナジーストーリーを体験。初対面からかなり元気ハツラツなキャラで気圧されてしまった感があるが、ここからどのような話に展開していくのかが気になるところ。この後の物語を読むには、相手との親密度を上げたり、主人公のステータスを伸ばしたり、定められた条件を達成する必要がある。ちなみに、シナジーストーリーに関してはキャラを持っていなくても読めるとの話だったので、ここから各キャラのことを知っていくのも良いかもしれない。


▲出会って早々に土地を譲ってほしいと迫られる主人公。バーチャル世界での出会いというと『ペルソナ3』のY子を思い出す。

なお、街中では他にアルバイトやミニゲーム、突発的なイベントが発生することも。運営型のタイトルということもあり、カレンダー機能は廃止されたものの、昼夜の概念は残っており、そこから各キャラクターの生活も見て取れるのだとか。


▲渋谷が大好きなシチくんからは渋谷にまつわるクイズが出題。現実に紐づいたものからゲーム内の情報まで、街の中をしっかりと覚えておく必要がある。


▲学校では軽音部やサッカー部などの部活動にも参加できる。軽音部では『P5X』の音楽に合わせてタイミング良くボタンを押す音ゲーが楽しめた。

また、街中での行動にはいわゆるスタミナ的なものが必要で、無限に遊べるわけではない。現実世界の時間経過に沿って進められるので、よりリアリティが増したように感じる。ちなみに、メインストーリーの進行やパレス探索にはスタミナは不要との話だったので「物語の続きが気になるのに遊べない!」というストレスに悩まされることはない。


▲アルバイトやイベントなど街中で行動すると人間力パラメータを鍛えられる。数値が上がることでシナジーストーリーが解放されたり、さまざまな能力がえられたりする。

■自分だけの空間“マイパレス”が『P5X』にも登場!

『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』に登場した“マイパレス”が『P5X』にも登場。アイテム(彫像)を配置して空間を自分好みに彩れるほか、これまで聴いた音楽や映像を再生して楽しむことができる。



また、マイパレスにはさまざまなキャラが訪問してくる。これは自身の所持状況に関係なくランダムとなっているため、各キャラの意外な一面が見られるかも。


▲今回は、『ペルソナ5』に登場するパンサー(高巻杏)と、『P5X』のオリジナルキャラである新井素羽の貴重な掛け合いを見ることができた。


▲マイパレスで使えるアイテムはパレスメーカーから「Pコイン」を使用することで購入できる。

なお、『ペルソナ5』に関してはリリース開始時より主人公のジョーカーが実装されることやオリジナルイベントが開催されることが公開されている(関連記事)。ここでは、「心の怪盗団」のメンバーが登場する、大ボリュームのオリジナルコンテンツが楽しめるという。


今回の先行体験では、序盤の部分や各要素からピックアップしていくつか遊ばせていただいたのだが、正直これだけの時間では全く遊び尽くせない。「そもそもこの世界に何が起こっているの!」といった疑問を抱いたまま、パレスの強敵にリベンジしたいことはもちろん、渋谷や下北沢以外の街はどんな風になっているのか、ベルベットルームでペルソナ合体をもっと試したいだとか、他にどんな魅力的なキャラクターが登場するのか、気になることを挙げだすとキリがない。

しかし、そんな一部の体験の中でも確実に言えるのは、『P5X』からはシステム・テキスト・UI・グラフィック・デザイン・BGM・効果音など、ゲーム内の全ての要素から『ペルソナ5』らしさが感じられた。細部までこだわり抜いて作られた作品だからこそ、世界の端から端までファンが納得するものに仕上がっているはずだ。『ペルソナ5』を遊んだ方にはぜひ本作を手に取って遊んでいただきたい。そして、これを機に『ペルソナ』シリーズに興味を持ったという方も、『P5X』にハマったらいずれ遡って原作の『ペルソナ5』の方も遊んでみるという触れ方もオススメだ。


(取材・文 編集部:山岡広樹)


■『ペルソナ5: The Phantom X』




©Perfect World Adapted from Persona5 ©ATLUS. ©SEGA.
※記事の内容はすべて開発中のもの。

株式会社セガ
https://www.sega.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社セガ
設立
1960年6月
代表者
代表取締役会長CEO 里見 治紀/代表取締役社長執行役員COO 内海 州史/代表取締役副社長執行役員Co-COO 杉野 行雄
決算期
3月
直近業績
売上高1916億7800万円、営業利益175億3900万円、経常利益171億9000万円、最終利益114億8800万円(2023年3月期)
企業データを見る
株式会社アトラス
https://www.atlus.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社アトラス
設立
2013年9月
代表者
代表取締役社長 大橋 修
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