『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』石川五エ門役・浪川大輔さんにインタビュー 「信じているが、分かり合っていない」ルパンたちの関係性に注目

約30年ぶりの2D劇場版アニメーションとして大きな注目を集める『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』が、いよいよ6月27日(金)に公開される。
本作では、ルパン一味が“地図に載っていない謎の島”を舞台に、正体不明の存在「不死身の血族」と対峙するスリリングな展開が描かれる。劇場版ならではの迫力あふれるアクション、重厚なドラマ、「ルパン三世」シリーズの原点とも言える作品に仕上がっている。

そんな中、孤高の剣士・石川五ェ門を演じるのは、数々の作品で五ェ門の声を吹き込んできた浪川大輔さん。長年にわたり五ェ門を演じ続けてきた浪川さんが、今回の劇場版でどのようにキャラクターに向き合ったのか。収録時のエピソードや、五ェ門という存在への想いをたっぷりと語ってもらった。

シリーズの原点で描かれる、石川五ェ門の“未完成な姿”

――本日はよろしくお願いします。今回の『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』は、約30年ぶりの完全新作2D劇場版ということですが、台本を読んだ際の率直な印象はいかがでしたか。

浪川:
非常に考えさせられる内容でしたし、「LUPIN THE IIIRD』の原点に繋がるような物語だと感じました。これまでのシリーズと比べて、キャラクター同士の関係性がちょっと違っていて…どこか初期の空気感とでも言いますか、昔のルパンらしい距離感がすごく印象的でした。

ストーリーはずっと緊張感に満ちていて、常に「この状況をどうやって切り抜けるんだろう?」とハラハラさせられる展開が続きます。ある意味、最終回が連続するような感覚で、ひとつひとつのシーンがとても濃密でした。展開がまったく予想できないのも面白くて、ずっとドキドキしながら読ませてもらいました。

――本当に息つく暇もない展開ですよね。

浪川:
そうなんです。次から次へと強敵が現れて、どれがラスボスなのか分からないくらい。クライマックスみたいな場面が連続していて、まさに全編見どころといえる作品です。

――今回は、シリーズの中での五ェ門の立ち位置について、どのように感じながら演じられましたか?

浪川:一般的に五ェ門は、「美味しいところで突然現れて、スッと斬って去っていく」みたいな、スタイリッシュな存在というイメージを持たれている方が多いと思うんです。でも今回は、それとはちょっと違うんですよね。

物語の中で最初から最後まで一緒に行動していて、いわばチーム戦というか、それぞれが役割を持って行動するような構成になっています。五ェ門も常に誰かと一緒に動いていて、これは今までにない珍しさですよね。

特に印象的だったのは、五ェ門が仲間たちと苦しみながら戦っている姿です。前作の『血煙の石川五ェ門』では、彼がひとりで苦悩する姿が描かれましたが、今回は“孤独な剣士”ではなく、“未完成な仲間”としての側面が強く出ているんです。

どこかまだ完全体になりきれていない五ェ門――なんでも斬れる剣士ではなく、「どうすればこの状況を打破できるのか」ともがく姿が描かれている。それって、実は他のキャラクターたちにも共通していて、全員がまだ完成されていない。その未熟さや苦しみが見どころになっていると思います。

――そんな五ェ門を演じるうえで、今回特に意識されたことはありますか?

浪川:
全体的なトーンとして、小池監督のいわゆる「小池ルパン」の雰囲気に合わせる意識は強く持っていました。感情表現も、五ェ門だからこその“ズレ”とか“面白さ”みたいなものは、今回はほとんど出していないんですよね。

むしろ、不器用さをコミカルに描く、「まだまだ成長途中なんだ」ということが伝わるように意識しました。前作『血煙の石川五ェ門』は、本当に始まりの物語という印象でしたが、今回はその経験を経て、少しだけ前に進んだ五ェ門が描かれています。

でも、成長って簡単ではないですよね。一歩踏み出すにもすごく慎重で、なかなかスムーズには進めない。高みに登るって、やっぱりそんなにすぐにはできないんだなと。そういう「ゆっくりと進んでいく五ェ門」の姿が、自分の中でも印象に残りました。

――たしかに、今回は五ェ門の、いわゆる”ギャグシーン”はほとんどないですね。

浪川:
本当に、そういう余裕がない状況なんですよ。何度もやられるし、「こんなに傷つく五ェ門は初めてなんじゃないか」というくらい痛みを感じるシーンも多くて。肉体的にも精神的にもダメージを負って、それでも立ち向かう姿が、これまでにないリアルさとして描かれていたと思います。

――先ほど「こんなにルパン一味と一緒にいるのは珍しい」とおっしゃっていましたが、小池監督の「LUPIN THE IIIRD』シリーズとしては、全員が勢ぞろいするのは今回が初ですよね。そんな中で、ルパン一味の一員としての五ェ門に変化はありましたか?

浪川:
ふと収録中に思ったんですが、五ェ門って今まで単独行動が多くて、誰かと一緒にいる時間があまりないキャラクターだったんです。だけど、彼の中では一緒にいる状態自体が、実はある種の安心につながっていたんじゃないかなとも思えてきて。

普段の五ェ門なら、みんなが話し合っている場にいても特に言葉を挟まずに「わかってる」といった雰囲気で構えている印象が強かったのですが、今回はちょっと違いました。不安があるからこそ、積極的に話に加わっていくというか。「それはどういう意味なんだ」とか、少し突っ込むような姿勢も見られます。

たぶん、今回の物語が初期の関係性という設定だからというのもあると思うんです。まだ仲間としての信頼関係が完全にはできていないんですよね。だからこそ、いつもの安心感のようなものがそこにはなくて、むしろ緊張感が伴う生々しい関係性が描かれていた気がします。チームというより、ちょっとしたでこぼこ感があるというか。

――会話シーンを見ていると、普段よりもコミュニケーションを取ろうとしている印象がありました。もしかすると、まだルパンたちを信じきれていないからこそのシーンなのかもしれません。

浪川:
そうですね。一見すると好んで単独行動のように見えるシーンもありますけど、実は「これはまずいな」という不安もあるのだと思います。

ルパンのことを信じていないわけじゃないけど、彼らのルールをまだ共有できていない。だからこそ、行動にも不確かさが出てくるんです。そういう、信頼と不安の微妙な揺らぎみたいな部分を、演技の中で表現できたらいいなと思いながら演じていました。

キャスト陣で作り上げる「小池ルパン」の空気感

――アフレコは、ルパン役の栗田貫一さんをはじめとするキャストの皆さんとご一緒に?

浪川:
はい。今回の場合は、初日は栗田さんと一緒に参加させていただきました。やっぱりルパンの声がそこにあると、自然と「五ェ門としてこう動こう」と感覚が掴めるというか、安心感があるんです。
僕は2回目の収録もあったのですが、そのときは栗田さんがほとんど録り終えていて、そのお芝居を聞きながらアフレコに臨みました。ルパンが先に道筋を作ってくれているような感覚で、それに合わせながら五ェ門を演じられました。これまで積み重ねてきたルパン一味の関係性や空気感が、さらに成熟した気がします。

――栗田さんとの収録中、たとえば「こう演じてみよう」といった話し合いはされたりしたのでしょうか?

浪川:
特にこのシーンをどう演じようかって話すことはなくて、基本的にはいつも通りですね。雑談したり、穏やかな会話はありますけど。

ただ、今回の収録全体を通して感じたのは、他の明るめのシリーズ、いわゆる「キャッチーなルパン」とは空気が違ったということです。例えばマイク前に立ったときの栗田さんも、すごくどっしりしていて、重心が低い印象でした。銭形役の山寺宏一さんと一緒のシーンでも、全体的にハードボイルドな空気を感じました。
ふざけるような明るいシーンはほとんどなくて、「今回はハードにいくぞ」という空気が、栗田さんの背中からも、そして現場全体からも伝わりました。


――“ハードボイルド”という言葉が出ましたが、これは「小池ルパン」シリーズ全体を象徴するキーワードにも感じます。

浪川:
そうですね。ここまで続いてきたシリーズを通して描かれているのは、人間の“業”とか、“心の奥に隠しているもの”つまり、誰もが目をそらしたくなるような部分なんですよね。

でも、それって実は「分かる」と思える部分でもあるんです。今回のテーマである不死身についてもそうです。一見、憧れるような要素がある一方で、「本当にそれは幸せなのか?」と疑問を抱かせるような側面もある。希望と絶望、プラスとマイナスを同時に描いていて、しかもどちらかといえばマイナスの方を強調してくる。でも、その中にも確かに希望はあって…そういう、非常に普遍的で深いテーマを描いているのが「小池ルパン」らしさだと思います。

――収録中、小池健監督と演技について話し合う場面などはありましたか?

浪川:
もちろんご挨拶はしましたし、収録中も現場にいらっしゃいました。ただ、小池さんって本当に打ち込んでるというか、ほとんど寝てないんじゃないか説があります。逆に大丈夫かなって心配になるほどなんですけど(笑)、実際にお会いするとすごく元気で良かったです。

監督としては、決して口数が多い方ではなくて、何かを細かく指示するというよりは、思いや空気感で伝えるタイプの方だと感じています。だからこそ、こちらとしても「その思いにどう応えるか」が問われるわけで、演者としては大きなプレッシャーでもあります。

――お話を聞いていると、かなり職人気質の印象を受けます。

浪川:
そうですね。音響監督の清水さん(清水洋史氏)が間に入って、小池監督の意図や演出を言葉にしてくださることが多いです。その中で監督の思惑や狙いを伝えられることもありました。

実際、一つのセリフに10分以上かけることもあるくらいで、言葉へのこだわりは相当なものです。小池さんは本当に職人気質という言葉がぴったりの方で、プライベートなことを語るようなタイプではないんですが、それだけに「この作品に全てを懸けている」という思いが、現場の空気から伝わってくるんです。

異質な敵たちと、痛みのあるアクション

――本作では、敵キャラクターとしてムオムが登場します。演じられていて、彼にどんな印象を受けましたか?

浪川:
ムオムというキャラクターは、人間としての感情のコントロールが効いていない印象です。僕たちって普段、感情をうまく抑えたり調整したりしながら会話をしているから、コミュニケーションが成立していると思うんですけど、彼にはそれがない。だからこそ、何を考えているのかわからないし、ものすごく恐ろしい存在だと感じました。

とはいえ、完全に暴走しているわけではなくて、彼のそばにはサリファという少女が常にいて、ある意味で彼を制御しているんですよね。でもそのコントロールの仕方も、ルパン一味から見たら「どう扱っていいか分からない」という得体の知れなさがあるんです。
友達にはなれないタイプだなと思いつつ、時折見せる無邪気さというか、可愛げを感じるぶん、逆にそれが怖い。人間らしさがあるようで、根本的には違う、そんな不気味さを感じました。

――演じるのが歌舞伎役者の片岡愛之助さんという点も驚きでした。

浪川:
いや本当にすごかったです。セリフはもちろんですが、言葉ではないうめき声とか叫びのような感情表現、あれは本当に難しいと思うんです。自分がやるとしたらどうするかな…と考えてしまうくらい。でも愛之助さんはそれを完璧に演じられていて、「うわ、こういう表現があるんだ」と衝撃を受けました。素晴らしかったです。さすがですね。

――その無邪気さと不気味さという意味では、サリファも印象的なキャラクターでしたね。

浪川:
サリファも驚きました。演じている森川葵さんが、本当に子役かと思うくらい自然な無邪気さを出していて。彼女は自分のペースで喋っているのに、周囲がそれに巻き込まれてしまう。まるで自分たちが手のひらの上で踊らされているような、そんな感覚になります。
同じ世界にいるはずなのに、どこか俯瞰で全体を見ているような雰囲気があって、大人びているというか、どこかお嬢様的な印象もある。不思議なキャラクターだと思いました。

――手のひらの上で踊らされている感覚だと、峰不二子も少し似た印象がありますが…。

浪川:
でもタイプは違いますね。不二子はもっとまとわりつくような感じで、じわじわと惑わせてくるタイプ。サリファはむしろサバサバしているのに、気づいたら自分がそっちの流れに乗せられてしまっている、みたいな。明るい笑顔で誘導されてしまうような、不思議な怖さを持っています。

――せっかくなので、五ェ門以外のメインキャラクターについてもお伺いしたいです。本作におけるルパン、次元、不二子、銭形警部などの印象はどうでしたか?

浪川:
これだけ一人ひとりが、別々の形で追い込まれる作品って、シリーズ全体を通しても珍しいと思うんです。今回はそれぞれがスポットを浴びながら、全員が深刻なピンチに立たされていて、まるで「全員が主役」みたいな印象でした。

特に銭形警部には、これまで以上に人情味が感じられました。ただの追う側・捕まえる側という存在ではなくて、この物語の中で欠かせないひとつのピースになっています。そういった意味でも、すごく深みが出ていたと思います。

全体的に、登場人物それぞれのハードさが違っていて、それぞれの魅力が際立っていました。ピンチであるからこそ、逆に彼らのかっこよさが浮き彫りになったんじゃないかと思います。

――ルパンの描かれ方も、これまでと大きく違いますよね。コミカルな側面が少なく、弱さも見え隠れして。

浪川:
いや、本当にそうなんです。あれだけ弱いルパンの姿を見るのは、ある意味つらかったですね。見たくない部分、でも見たい、そんな複雑な気持ちにさせられました。
「ルパンがこんな姿に…」って、ちょっと信じられない気持ちもありましたし、「これはもしかしたら、最後の冒険なんじゃないか」とすら感じてしまって。個人的には少ししんどかったです。

――五ェ門の視点で見ると、前作『血煙の石川五ェ門』に登場したホークとの再会も大きなポイントですね。

浪川:
正直「また出てくるの!?」って思いました(笑)。あれだけ大変な戦いをした相手なので、「うわ、またいるよ…」って、台本を読んだときに本気で思いました。
しかも今回の五ェ門とホークの対決は、想像以上に衝撃的な展開を迎えます。「この作品、あと何分残ってるの!?」って(笑)。本当に、心がざわつくくらい強烈なシーンになっています。

――敵キャラクターとしては、他にも「ゴミ人間」という2人組が登場しますね。

浪川:
まずはもう、その名前ですよね。「ゴミ人間」って、口に出すのも少し躊躇うような、かなり強烈なワードだと思います(笑)。今さらっと言いましたけど、やっぱりインパクトがすごい。

もちろんフィクションの世界の話ではありますが、それでもやっぱり、ただのネーミング以上に強いメッセージ性や、観る側の心にざらっとした感覚を残す存在として描かれているのかなと感じました。恐怖を煽るというより、不快感や不穏さを狙った演出、あえて目をそらせない存在として描かれている印象です。そういう意味では、とても重要な役割を担っていると思います。

――この2人を演じているのが、お笑い芸人の空気階段・鈴木もぐらさんと水川かたまりさんですね。

浪川:
はい、空気階段のお二人って、演技のできる芸人さんという印象が以前からありました。起用された時点で、「あ、これは(音響監督の)清水さんのスイッチが入ったな」と思いました(笑)。

実は以前、彼らと別の現場でご一緒させていただいたことがあったのですが、そのときから独特のニュアンスを感じていたんです。もぐらさんとかたまりさんって、声優には出せない雰囲気を持っているんですよね。
そういう異質さがこの作品にどう融合するのか。お二人の演技と、作品全体のトーンがどのように絡み合っていくのかは、すごく興味深いポイントです。

――ゴミ人間との戦いをはじめ、アクションシーンも多く描かれています。注目してほしいポイントはありますか?

浪川:
やっぱり、これまでの『ルパン三世』シリーズに親しんできた方であれば、スタイリッシュでスマートなアクションを想像されると思うんです。ルパンなら華麗に躱し、次元なら一撃で撃ち抜き、五ェ門なら一刀両断みたいな。

でも今回は、それとはかなり違っていて。「やられる痛み」がきちんと描かれている印象です。人数的にも敵が圧倒的に多くて、それに対して苦しむルパン一味の姿に、ものすごくリアリティがあるんです。

敵キャラクターもただ倒されるだけじゃなくて、きちんとリアクションがあって。やられたときの間や手応えまでしっかり演出されていて、「あっさり終わらない戦い」になっていると思います。

――終盤の展開では、テンポの早さにも驚かされました。

浪川:
そうなんです。あまり詳しくは言えませんが、展開がとにかく早くて、実は収録中、僕たちもついていけないくらいの勢いでした(笑)。コマ送りで一つひとつ確認しながら、丁寧に収録を進めていきました。
緩急のバランスや見せ場の強弱、それに監督のアイディアが詰まっていて、アクションに対する本気のこだわりを感じました。

――まさに「一瞬の出来事」を印象的に切り取るような演出でした。

浪川:
そうですね。五ェ門の殺陣シーンも、ただ斬るだけではなくて、「何回斬るのか」「どの動きは見せるのか、あえて見せないのか」といった部分まで、かなり細かく詰めていきました。
「ここは斬ってるけどあえて画面に映さない」といった演出も含めて、テンポの良さやに繋がっていると思います。

――今回は時系列的に「シリーズ初期のルパン一味」が描かれていて、キャラクター同士の関係性にもやや距離感がありますよね。演技の上で、そのあたりは意識されましたか?

浪川:
「よそよそしい」って言葉を使うとちょっと違和感があるんですよね。あえてよそよそしくすると、どこかあざとさが出てしまいそうで…。そういうのではなくて、どちらかといえば“慣れていない感じ”のほうがニュアンスとしては近いと思います。

たとえば何かをしてもらったとき、これまでのシリーズであれば「そのくらい当然だろ」という反応だった場面でも、今回は「え、やってくれるんだ…?」という、ちょっとした驚きが混じるんです。

やり取りの内容自体はこれまでと同じでも、受け取り方や返し方が少し違うんです。誰かの言葉に対して、あらかじめ「こう返ってくるだろう」と予測して返すのではなく、返ってきた言葉に「ああ、そうか」と生の返事をする。それが、この作品ならではの関係性だと思います。

――そういった微妙な距離感って、演じる側としても難しそうです。

浪川:
めちゃくちゃ難しいです。仲が悪いわけでもないし、だからといって完全に信頼し合っているわけでもない。けれど、状況によっては信用せざるを得ない場面もあって…。

そういう距離のある信頼関係って、実は一番難しい。演技の中でも、「どこまで踏み込むか」「どこで引くか」のさじ加減がすごく繊細なんですよ。関係性のバランスをどう取るかは、常に意識していました。

“五ェ門の核”に初めて触れた感覚

――浪川さんが五ェ門を演じて、もうすぐ15年目を迎えます。この年月の中で、ご自身の中の「石川五ェ門像」に変化はありましたか?

浪川:
やっぱり最初は、どうしてもモノマネというか、これまでの五ェ門像を崩さないように演じていたと思います。でも『血煙の石川五ェ門』、いわゆる「小池ルパン」シリーズに参加してから、そこに変化がありました。

特に今回の『不死身の血族』は、物語としても五ェ門の初期を描いていて、「五ェ門ってこういう考え方をするのか」「こんなふうに成長していくんだ」と、ようやく自分の中で五ェ門という人物像が分かってきたように感じています。

15年間を通して変化したというよりは、むしろシリーズターニングポイントになった実感があります。もしかしたら、それは僕の中だけの感覚かもしれませんが、それでも今作は特別な意味を持つ一本です。

――一方で、15年経っても変わらない、五ェ門の「核」となる部分は何でしょうか?

浪川:
それはやはり…先代の声優である大塚周夫さん、井上真樹夫さんのお二人の存在です。僕は三代目ですが、これまで五ェ門を支えてきた声優の皆さん、そして長年応援し続けてくれているルパンファンの皆さんが築き上げてきた「石川五ェ門」というキャラクターを、ずっと追い続けています。

「自分の中に核がある」というよりは、常に追いかけている感覚です。そこが変わらない部分ですし、これからも変えたくない部分でもあります。

――ずっと追い続けてきた核に、今回少し触れられた実感があると。そんな浪川さんから見て、本作はファンにとってどんな作品になると思いますか。

浪川:
昔からルパン一味を応援してくださっている方にとっても、大満足の作品になっていると思います。そして、「昔のルパンはよく知らないんだよね」という若い方にも、ぜひ観てほしいです。「ルパンってこういう魅力もあるんだ」と感じてもらえるんじゃないかと。

シンプルに「ハードボイルドな物語」を求めている人にも刺さる内容になっていますし、アニメという表現の奥深さにも触れてもらえると思います。まずは劇場で観ていただきたいです。

――ありがとうございました。

LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族

公開日 : 6月27日(金)より大ヒット上映中
配給 : TOHO NEXT

原作:モンキー・パンチ ©TMS

東宝株式会社
https://www.toho.co.jp/

会社情報

会社名
東宝株式会社
設立
1932年8月
代表者
取締役会長 島谷 能成 / 取締役社長 松岡 宏泰
決算期
2月
直近業績
営業収入3131億7100万円、営業利益646億8400万円、経常利益644億5500万円、最終利益433億5700万円(2025年2月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
9602
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