家庭用ゲーム大手6社、第1四半期決算は増益3社、減益3社 新作投下する下期に収益集中 リピート販売や運用型ゲームへの注力もカギに

家庭用ゲーム大手6社の第1四半期(25年4~6月)決算で、3社が本業の儲けを示す営業利益が増益となった一方、残りの3社が減益または赤字となった。いずれもアニメやアミューズメント関連、遊技機、スポーツ事業など複数事業を展開しているため、ゲーム事業にフォーカスした場合でも3社が増益、3社が減益と明暗が分かれた。バンダイナムコHD<7832>とカプコン<9697>、コナミグループ<9766>が増益となり、コーエーテクモHD<3635>とセガサミーHD<6460>、スクエニHD<9684>が減益となった。
【ゲーム大手第1四半期決算】
【大手ゲーム各社のゲーム事業の業績】

増益組を見ると、バンダイナムコHDは、モバイルなど運用型ゲームでヒット作品を送り出しただけでなく、コンソールゲームでヒットタイトルをリリースするなど好調だった。コナミGは運用型ゲームを中心に伸びた。カプコンは、自社タイトルのアニメ化や新作発表にあわせて旧作のリピート販売を伸ばした。
減益となった3社については、「開発したゲームが思うように売れずに減益になりました、赤字になりました」といった業況の悪化というよりも、新作タイトルの発売スケジュールを下半期に集中させていることが主な要因だ。
大手ゲーム会社に限らずゲーム会社の一部は、海外企業の参入で競争が厳しくハイリスクな運用型ゲームへの投資を控え、コンソールゲーム開発に注力する姿勢を強めている。"一球入魂”で開発した大型新作の発売する四半期に収益が集中する傾向になりつつあるようだ。
かつての家庭用ゲームの上場企業は、年末商戦などにあわせて新作を発売するため、下期に収益が集中する傾向が少なからず見られた。ソーシャルゲーム/スマホゲームやデジタル販売の普及を背景に、一定の季節性を持ちつつも年間を通じて安定した収益を稼げるようになった。
大手ゲーム会社の一角におけるこうした戦略の変化を考えると、かつてみられた下期偏重の業績に回帰する会社が出てくるのは必然のように見える。
■コーエーテクモホールディングス
減収減益だった。コンソールゲーム・PC分野、オンライン・モバイル分野ともに減収となった。コンソール・PC分野については、前期(25年3月期)と同様、大型の新作タイトルの発売がなく、旧作のリピートが中心となったため、としている。大型新作は下期以降に発売する予定で、下期に収益が集中する計画となっている。
オンライン・モバイル分野については、売上の大半を占めるモバイルの売上が久々に80億円を割り込んだ。とりわけ2023年度の配信タイトルの収益や許諾ロイヤリティが減少したとのこと。
■セガサミーホールディングス
減収減益だった。「フルゲーム」の売上高については、新作、リピートともに減収となった。『龍が如く0 誓いの場所 Director's Cut』と『ぷよぷよテトリス2S』『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』を発売したが、同社によると、新作が堅調に推移した一方、リピートタイトルが想定を下回ったとのこと。『ソニックレーシング クロスワールド』や『Football Manager』など第2四半期以降に主力新作タイトルの販売を本格化していく予定。
他方、F2P(基本プレイ無料)」の売上高は、8四半期連続で前年同期比マイナスが止まり、増収に転じた。グローバル市場向けF2Pタイトルの新作『ペルソナ5: The Phantom X』が6月26日に正式サービスを開始し、順調なスタートを切った、としている。既存タイトルも想定内で推移したとのこと。
■バンダイナムコホールディングス
増収増益だった。家庭用ゲームソフトだけでなく、モバイルも好調だった。「ELDEN RING」のスピンオフタイトル「ELDEN RING NIGHTREIGN」が発売初日に世界累計出荷本数200万本を記録するなどワールドワイドでヒットした。また、「たまごっちのプチプチおみせっち おまちど~さま!」が、トイホビー事業のたまごっちとの話題の相乗効果により人気となった。
新作モバイルゲーム「SDガンダム ジージェネレーション エターナル」が「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」との連携が奏功し、新たなファン層も獲得するなど好調にスタートした。また、「DRAGON BALL」や「ONE PIECE」「アイドルマスター」シリーズ等の主力タイトルが安定的に推移した。
■スクウェア・エニックス・ホールディングス
減収減益だった。HD(High-Definition)ゲームとスマートデバイス・PCブラウザが増益となったが、MMO(多人数参加型オンラインロールプレイングゲーム)が減益となったことが響いた。
HDゲームでは「キングダム ハーツ」シリーズの過去作3タイトルのSteam版などを発売した前年と比較して、新作タイトルからの売上が減少したことにより、前年同期比で減収となった。一方で、開発費の償却負担や広告宣伝費が減少したことで増益となった。
MMOは、前年同期比で減収減益となった。スマートデバイス・PCブラウザなどをプラットフォームとしたコンテンツにおいては、既存タイトルの弱含みになったことで減収となったものの、アプリ外決済の導入により、収益性が改善し増益となった。
■カプコン
リピート販売が伸び、増収増益だった。『モンスターハンターワイルズ』のリピート販売が想定を下回ったものの、「バイオハザード」の最新作を発表したことに併せ、『バイオハザード ヴィレッジ』および『バイオハザード RE:4』をはじめとした同シリーズタイトルの販売も続伸した。
ネットフリックスでアニメ配信を行った『デビル メイ クライ5』も好調に推移し、過去最高の売上を記録した。『デビル メイ クライ5』は、この四半期ではカプコンで最も販売本数を記録したタイトルとなった。さらに、『ストリートファイター6』について、引き続きeスポーツ展開との連携強化等によるブランド認知とユーザー数の拡大を推し進めたことなどにより、累計販売本数が全世界で500万本を突破した。
■コナミグループ
増収増益だった。『eFootball』は、対応する全ての家庭用ゲーム機/PC版同士のクロスプレーが可能となるアップデートを実施し、引き続き好調に推移した。「プロ野球スピリッツA」では、イチロー氏・松井秀喜氏とのコラボレーションや、プロ野球での協賛試合を開催し、盛り上がりを見せた。
新作では、『SILENT HILL f』の9月発売を発表したほか、シリーズ第1作『SILENT HILL』のリメイク版の制作を決定した。8月に発売する予定の「METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER」の新要素についても発表したとのこと。
会社情報
- 会社名
- 株式会社カプコン
- 設立
- 1983年6月
- 代表者
- 代表取締役会長 最高経営責任者(CEO) 辻本 憲三/代表取締役社長 最高執行責任者(COO) 辻本 春弘/代表取締役 副社長執行役員 兼 最高人事責任者(CHO) 宮崎 智史
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高1696億400万円、営業利益657億7700万円、経常利益656億3500万円、最終利益484億5300万円(2025年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 9697
会社情報
- 会社名
- 株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス
- 設立
- 1975年9月
- 代表者
- 代表取締役社長 桐生 隆司
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高3245億0600万円、営業利益405億8000万円、経常利益409億3900万円、最終利益244億1400万円(2025年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 9684
会社情報
- 会社名
- コナミグループ株式会社
- 設立
- 1973年3月
- 代表者
- 代表取締役会長 上月 景正/代表取締役社長 東尾 公彦
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高4216億200万円、営業利益1019億4400万円、最終利益746億9200万円(2025年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム(ロンドン証券取引所にも上場)
- 証券コード
- 9766
会社情報
- 会社名
- コーエーテクモホールディングス株式会社
- 設立
- 2009年4月
- 代表者
- 代表取締役会長 襟川 恵子/代表取締役社長 襟川 陽一
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高831億5000万円、営業利益321億1900万円、経常利益499億8800万円、最終利益376億2800万円(202年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3635
会社情報
- 会社名
- 株式会社バンダイナムコホールディングス
- 設立
- 2005年9月
- 代表者
- 代表取締役社長 浅古 有寿
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高1兆2415億1300万円、営業利益1802億2900万円、経常利益1864億7000万円、最終利益1293億100万円(2025年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 7832
会社情報
- 会社名
- セガサミーホールディングス株式会社
- 設立
- 2004年10月
- 代表者
- 代表取締役会長 里見 治/代表取締役社長 グループCEO 里見 治紀
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高4289億4800万円、営業利益481億2400万円、経常利益531億1400万円、最終利益450億5100万円(2025年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 6460