DLE、オルタナティブ動画とAI動画で新ステージへ 『野原ひろし 昼メシの流儀』快進撃 AIスタジオは設立2ヶ月で地上波と歴史的快挙

ディー・エル・イー(DLE)<3686>が、大規模な事業再編を通じて新たな成長戦略へ舵を切っている。収益性の低い周辺事業を段階的に手放す一方で、独自のコンテンツ制作に経営資源を集中させている。世界的なアニメ需要の増大と供給不足という業界構造変化を捉え、スピードと価格競争力を武器にした「新しい映像制作モデル」の確立を目指している。
■ スクラップ&ビルドで"選択と集中"を本格化
同社は近年、W TOKYO株式の売却、ちゅらっぷすの完全売却、ファンド案件の解散、MyFeelの売却など、一連の事業整理を行ってきた。2026年3月期中には完了する見込みで、同社は"コンテンツ制作"という本丸に経営資源を再集約するフェーズに入った。

その背景には、世界的なアニメ需要の急拡大がある。その一方で、日本のアニメ制作の現場は「コスト高騰」「制作期間の長期化」「制作会社の倒産」「放送遅延」など供給能力の限界に直面しているという。市場は、従来の"超高品質・長期間制作"に代わり、「スピーディでリーズナブルな制作」を求める段階へ移行しつつあるという。
DLEが磨いてきた制作スタイルは、まさにこの需要変化にフィットする。
■ "第三の選択肢"として台頭する「オルタナティブ動画」
同社が注力する領域のひとつが、手書き×FLASHを組み合わせた"中品質"を軸にしたオルタナティブ動画だ。ハイクオリティと低コストの間にある"新しい選択肢"として、優れた価格競争力と制作スピードを実現する。

このカテゴリーはすでに成功の兆しを見せている。
『野原ひろし 昼メシの流儀』
2025年10月クールに放送開始
・複数配信サービスでアニメカテゴリー週間1位
・100万再生を突破
・海外配信も決定

『小3アシベ QQゴマちゃん』
2026年春に放送開始予定
・テレビアニメ化が正式決定

同社は今後、オルタナティブ動画を年間4作品の制作ラインへ拡大し、シリーズ化・量産化による事業確立を狙う。
■ 制作スピードで革命を起こす「AI動画」も本格始動
もうひとつの柱が、AI技術を活用したAI動画制作事業となる。2025年8月にAIスタジオを設立し、同年10月には早くも地上波放送作品を決定させるという"異例のスピード"を記録した。
『小泉八雲のKWAIDAN(怪談)の世界』
2026年10月クールから地上波レギュラー放送
・AI動画として史上初の地上波レギュラー作品
・アニメルック版と実写ルック版の2ルックを同時展開

また、バラエティ番組へのAI映像協力など、AI制作技術の応用範囲も広がっており、DLEのAIスタジオは「制作の新たな武器」として存在感を高めている。
■ 大型契約獲得と安定成長へ――"新たな制作会社像"への進化
オルタナティブ動画とAI動画はともに引き合いが増加しており、DLEは2026年3月までの大型契約獲得を見込んでいる。これら2つの制作モデルは、いずれも従来の制作スタジオが苦手とする"スピードと価格効率"に強みがあり、業界の構造変化に合致した戦略といえるだろう。

スクラップ&ビルドによる選択と集中を経て、「制作需要の爆発に応える、新世代のコンテンツ制作会社」としての姿が明確になりつつあるDLE。来期となる2027年3月期の黒字化を目指している。

会社情報
- 会社名
- 株式会社ディー・エル・イー(DLE)
- 設立
- 2001年12月
- 代表者
- 代表取締役社長執行役員CEO 小濵 直人
- 決算期
- 3月
- 上場区分
- 東証スタンダード
- 証券コード
- 3686