CRI・ミドルウェア、2030年に売上高100億円・営業利益率20%を掲げる…ゲームへの依存から「3本柱」体制への転換を加速

 

CRI・ミドルウェア<3698>は、「成長可能性資料」を公開し、2030年度を見据えた中長期ビジョンとして、売上高100億円(25年9月期実績比2.9倍)、営業利益率20%(25年9月の実績は16.0%)という高い収益目標を掲げていることを改めて示した。従来はゲーム向けミドルウェアを中心に成長してきたが、今後はモビリティやオンラインコミュニケーション分野を含む事業構造への転換を進め、安定性と成長性を兼ね備えた企業体制の構築を目指す。 

 

■2030年に向けた経営目標――高収益体質の確立へ

同社が描く2030年度の「めざす姿」は明確だ。

ゲーム事業への依存度が高い現行の事業構造から脱却し、「ゲーム」「モビリティ」「オンラインコミュニケーション」の3分野をコアとする事業ポートフォリオへ転換する。経営指標としては、売上高100億円、営業利益率20%、ROE15%以上を掲げ、収益の中核となる許諾売上高比率を60~70%まで引き上げる計画だ。

許諾ビジネスは、同社が強みとする音声・映像のデジタル信号処理技術をミドルウェアとして提供し、複数顧客・複数案件へ横展開できる「×n型」の成長が可能で、高い利益率を実現しやすい。この構造をいかに拡張できるかが、中長期成長の鍵となる。 

 

 

■成長戦略――ゲームで培った技術を他産業へ展開

成長戦略の基本方針は、ゲーム事業で蓄積した技術・ノウハウ・資金を、エンタープライズ事業へ再投資する循環モデルの構築だ。

ゲーム事業では、スマートフォンや家庭用ゲーム向けに音声・動画ミドルウェア「ADX®」「Sofdec®」を提供するほか、オンラインコミュニケーション基盤「CRI TeleXus®」などを展開。海外市場、とりわけ中国を中心とした成長市場での展開も進めている。

 

一方、エンタープライズ事業では、ゲーム分野で培ったリアルタイム処理技術を他産業へ転用。モビリティ分野では、車載メーター向けグラフィックソリューション「CRI Glassco®」やTeleXusを軸に、自動車産業への本格展開を進める。 

 

さらにクラウドソリューション分野では、Web動画ミドルウェアやネットワークシステム開発にも参入し、事業領域の拡張を図っている。

  

■足元の進捗――モビリティが想定超の成長を牽引

2025年9月期の業績は、同社の成長戦略が着実に成果を上げつつあることを示した。売上高は34億48百万円と期初計画を2.6%上回り、営業利益は5億54百万円と計画比44.4%増となった。営業利益率も16.1%まで改善し、収益性の向上が際立つ。

【2025年9月期決算概要】
・売上高:34億4800万円(前の期比8.9%増)
・営業利益:5億5400万円(同50.5%増)
・経常利益:5億6600万円(同47.8%増)
・最終利益:4億2000万円(同38.2%増)

業績上振れの主因は、エンタープライズ事業、とりわけモビリティ分野だ。新製品「Glassco」が想定を大きく上回る採用実績を獲得したほか、組込み分野ではリアルカジノ向けの年間許諾売上を計上したことが利益押し上げに寄与した。

ゲーム事業では、子会社ツーファイブによる音響制作分野が中国市場の旺盛な需要を取り込み、過去最高の業績を達成。全体としては計画どおりの着地となった。

一方、研究開発投資は、TeleXus関連の人員をモビリティ分野へ一部シフトした影響で、計画比ではやや未達となったものの、重点分野へのリソース配分は進んでいる。

 

 

■2026年9月期の施策――次の成長ステージへ

2026年9月期は、売上高39億1000万円、営業利益6億円を目標に掲げる。

 

【2026年9月期業績予想】
・売上高:39億1000万円(前期比13.4%増)
・営業利益:6億円(同8.2%増)
・経常利益:6億1600万円(同8.7%増)
・最終利益:4億6200万円(同9.8%増)

  

モビリティ分野では、Glasscoのグローバル展開を本格化させ、国内メーカーに加えてインド市場での実績作りに注力。

組込み分野では、省電力・低発熱を特徴とする次世代製品「D-Amp Driver × GaN」の開発を進め、CESへの出展も予定している。

クラウドソリューション分野では、新製品開発を上期に完了し、下期から市場投入を開始する計画だ。

 

ゲーム事業では、次世代「LipSync」の投入に加え、中国での大手顧客との関係強化や、北米・欧州での販路拡大を進める。音響制作分野についても、中国子会社との連携を深め、需要取り込みを図る。

 

全体としてCRI・ミドルウェアは、高収益な許諾ビジネスを軸に、ゲーム企業から「技術プラットフォーム企業」への進化を目指している。モビリティ分野の想定以上の立ち上がりは、その戦略が現実味を帯びつつあることを示しており、2030年に向けた成長シナリオの進捗が注目される。

株式会社CRI・ミドルウェア
http://www.cri-mw.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社CRI・ミドルウェア
設立
2001年8月
代表者
代表取締役会長 鈴木 正彦/代表取締役社長 押見 正雄
決算期
9月
直近業績
売上高34億4800万円、営業利益5億5400万円、経常利益5億6600万円、最終利益4億2000万円(2025年9月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3698
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