ガンホー、定時株主総会へのファンド側提案の全議案に反対を表明

ガンホー・オンライン・エンターテイメント<3765>は、2月13日、2026年3月30日開催予定の第29期定時株主総会に付議される株主提案について、取締役会として全議案に反対する方針を決議したと発表した。提案を行ったのは、ストラテジックキャピタルなどの提案株主(SC)、LIM Japan Event Master Fund(LIM)。取締役会は、社外取締役を含む全会一致で「いずれの議案も中長期的な企業価値向上に資さない」として反対を表明している。

 

■SC側は大規模還元とガバナンス変更を要求

SC側は6議案を提案した。柱となるのは、特定株主からの自己株式取得と大幅な追加配当だ。特定株主が保有する約1200万株を自己株式として取得する案では、過剰資本の削減や需給悪化懸念の払拭を主張した。これに対し取締役会は、会社法の趣旨にそぐわないうえ、対象株主に売却意思がないと指摘し「実質的に意味をなさない」と退けた。

また、1株当たり311円(既存配当控除後)を追加配当する剰余金処分案については、実施すれば連結配当性向が約1200%、DOEが約13.8%に達すると試算しているという。このため、財務基盤を大きく毀損し、中長期成長を阻害するとして反対した。

このほか、

・期末配当の決定を原則として株主総会決議に限定する定款変更
・取締役会議長を社外取締役とする定款変更
・取締役会長を社外取締役に限定する定款変更
・ゲームタイトル別売上高の開示を義務付ける定款変更

などを提案した。取締役会は、ゲーム業界の不確実性を踏まえた機動的な資本政策の必要性や、競争上の機微情報流出リスクを挙げ、「一律に定款で縛ることは適切でない」と反論した。

 

■LIM側は不正調査や資本コスト開示を提起

LIM側は4議案を提示。元従業員による不正行為を巡り、第三者委員会の設置と調査報告書の公表を定款で義務付けるよう求めた。

これに対し取締役会は、独立社外監査役主導の社内調査チームが外部専門家の支援を受けて実施しており、独立性・客観性は確保されていると説明。警察捜査への配慮から詳細公表を控えているとし、再調査は不要とした。

さらに、

・資本コストの算定根拠を含む開示義務化
・取締役報酬の個別開示義務化
・総額213億円、818万株を上限とする自己株式取得

などの提案もあた。

213億円規模の自社株買いについては、単体現預金残高の約31%に相当すると試算。SC提案の追加配当と合わせて可決された場合、現預金の約57%が短期間で流出するとして、「短期利益志向の提案」との見解を示した。

 

■会社側はDOE4%方針と50億円の自社株買いを提示

同社は新たな株主還元方針として、DOE4%を指標としつつ、連結配当性向50%以上を目安とする方針を導入。2025年12月期の期末配当は1株90円を予定している。

また、総計210万株または取得総額50億円を上限とする自己株式取得を実施予定としており、「機動的かつ継続的な還元を通じて中長期的な企業価値向上を図る」としている。

 

■焦点は“短期還元"か“成長投資"か

今回の株主提案は、個別タイトルの売上開示の義務化を定款に入れるなど、無茶な提案も見受けられるが、豊富なネットキャッシュを背景に大規模還元やガバナンス強化を迫る内容となっている。一方、取締役会はゲーム業界特有のヒット依存型ビジネスモデルを踏まえ、財務余力の確保と柔軟な意思決定の重要性を強調する。

3月30日の株主総会では、資本政策とガバナンスの在り方を巡り、株主と経営陣のスタンスが問われることになりそうだ。

 

■背景と蛇足

ガンホー社は、MMORPG『ラグナロクオンライン』をひっさげて華々しく上場したものの、思うようなヒットタイトルを生み出せず、業績は低迷していった。MobageやGREEの拡大の波にも乗れず、Android向け自社プラットフォームの展開なども試みたが、大きな成功にはつながらなかった。

そんななか、2012年に生み出された『パズル&ドラゴンズ』の大成功によって業績が大きく改善し、2013年12月期には営業利益942億円を計上した。その後、ヒットタイトルを創出できず、徐々に業績を落とし、25年12月期の営業利益は50億円とピーク時の5%強まで落ち込んでいる。

 

これはガンホー社だけに限らずゲーム業界全体に感じていることだが、IR活動上、以下の点を再考してみてはいかがかと考えている。

・注力した新作ゲームが不発だった場合、個別タイトルの売上まで開示する必要はないが、有耶無耶にせず、状況説明と総括をできているか
・ゲームビジネスは当たり外れが避けられないビジネスである以上、一定のキャッシュは必要だが、それは適正な規模なのか、そして資金使途を説明できているか
・成長戦略やストーリー、道筋をわかりやすく説明するだけでなく、途中経過の説明や年度ごとの総括はできているか
・「株価は市場が決めるもの」と思考停止になり、下がっていく株価を放置していないか

これはあくまでゲーム会社に在籍していた時に抱いていた個人の印象・感想だが、経営側が管理部門を非生産部門、コストセンターとみなして軽視する風潮が少なからずあるのも、資本市場に向けた「率直な説明」を妨げる要因と感じている。

ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社
https://www.gungho.co.jp/

会社情報

会社名
ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社
設立
1998年7月
代表者
代表取締役社長CEO 坂井 一也
決算期
12月
直近業績
売上高1036億円、営業利益174億9100万円、経常利益200億1300万円、最終利益111億7100万円(2024年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3765
企業データを見る