投資のチャンスを掴むゲームは何が違うのか? VC・開発者が語る判断基準と準備すべきこと

左から若山泰親氏、岸上健人氏、放生會雄地氏、堀達也氏

4月8日、東京都内にて、IGDA日本SIG-Growthは「日本のインディーゲームに対する投資・資金提供機会を創出するには」と題したセミナーを開催した。このセミナーは、インディーゲーム開発者の視点から、日本のインディーゲームに関する全体像を解説し、インディーゲーム投資の可能性と課題を探るというものだ。

セミナー後半では、「日本のインディーゲームに対する投資と資金提供機会を創出するには」と題したパネルディスカッションが実施された。
本セッションには、投資を受けたゲーム開発会社、投資家、行政支援といった異なる立場のメンバーが登壇した。ブレイクポイント株式会社代表取締役の若山泰親氏、MyDearest株式会社代表取締役の岸上健人氏、ビッグブル株式会社代表取締役およびGeneral Partnerの放生會雄地氏、そして経済産業研究所コンサルティングフェローの堀達也氏の4名に加え、司会として株式会社ヘッドハイの一條貴彰氏が引き続き登壇した。

日本のインディーゲームに対する投資と資金提供機会を創出するには


最初のテーマとして、「ここ数年での『ゲームスタジオ』『ゲームプロジェクト』への出資の現状」が取り上げられた。

まず若山氏は、投資の枠組みについて説明した。投資には大きく分けて、企業そのものに出資する「コーポレートファイナンス」と、個別のコンテンツやプロジェクトに出資する「プロジェクトファイナンス」が存在する。

現状では、企業の株式に投資するコーポレートファイナンスが主流であり、ゲーム作品そのものに投資を行うベンチャーキャピタルは依然として少ないと語る。この構造は過去10年にわたり大きく変わっておらず、プロジェクト単位での資金調達の難しさは継続していると指摘した。

これに対し岸上氏は、前向きな変化も見られると述べた。近年、ゲームが政策的な注目対象となり、いわゆる「新たなクールジャパン戦略」の文脈の中で位置付けが変化しているという。

その背景には、ゲームがグローバル市場でヒットしやすいコンテンツである点があるとし、「グローバルで売れる可能性」を明確に示せる場合には、投資判断が行われやすくなっているとした。

また、ゲーム業界外の企業がパブリッシング事業に参入している点にも言及し、こうした動きはインディー開発者にとって追い風であると評価した。従来からのゲーム会社は自社内開発との兼ね合いから外部プロジェクトへの出資を行いにくい構造があったため、異業種からの参入は、インディーにとって資金供給の新たな選択肢になりやすい。

放生會氏はこの点について、異業種参入の場合は企業側が新たなIPの創出を求めている状況にあると補足した。商業的な成功を目指すうえでIPの価値は重要であり、その種となるプロジェクトへの関心が高まっていると話す。

さらに放生會氏は、投資にはトレンドが存在すると指摘する。約10年前にはスマートフォンゲーム市場の拡大を背景に、GREEやDeNAといった企業を中心に資金が流入した時期があったが、その後は停滞した例を挙げた。

また、コロナ禍以前には中国系企業が日本の制作チームに出資する動きも見られたが、日本国内においては「外部スタジオに投資するよりも自社で制作する」という考え方が根強く、結果として投資の広がりを阻害している側面があるという。この数年では、投資事業から撤退する企業も見られるという。

最後に堀氏は、行政による支援の変化について言及。約10年前は流通支援、すなわちプロモーションや販売促進といった「届けるための支援」が中心であったが、近年では競争力のあるコンテンツそのものを生み出すことの重要性が認識されているという。
その結果、制作費に対する支援も徐々に拡充されており、「創風」も含め、こうした動きはここ2~3年で顕著になってきていると明かした。


ゲーム投資ならではの難しさ

続くテーマでは、「ゲームへの投資ならではの難しさ」について議論が行われた。

若山氏はまず、投資判断において整理すべき要素として、「リスク」「期待されるリターン」、そしてそれらをどのように定量化し、具体的な契約条件(ディール)に落とし込むかの3点を挙げた。これらを明確に整理することが不可欠であるとした。
そのうえで、ベンチャーキャピタルの視点からは、投資案件の大半はリターンを生めないであろうことが前提であり、複数の投資案件の中から生まれた限られた成功事例によって全体の収益を確保する構造になっていると説明する。

また、ベンチャーキャピタルは基本的に株式に投資を行うため、「ゲームを作りたい」という開発者側の意識と、「企業に出資する」という投資側の構造との間にギャップが存在する点も指摘した。こうした認識の違いを埋め、経済的な仕組みとして理解・整理していく必要があるという。

これに対し岸上氏は、自身がゲームスタジオとして投資を受けた立場として、同様の認識を示した。投資はあくまで企業に対して行われるものであり、個別のゲーム作品に直接資金が投じられるわけではないと説明する。

その結果、開発者は単なる制作者ではなく、事業を運営する経営者としての役割を担う必要があると語る。これは負担である一方で、事業としてゲーム開発に向き合う面白さでもあると述べた。

また、プロジェクト単位での出資と株式投資の違いについても言及した。ゲーム単体への出資であれば、プロジェクトの成功・失敗によって関係は完結するが、株式投資の場合は出資後も株主との関係が継続する。仮にプロジェクトが失敗した場合でも、「次の事業で成果を出すこと」が求められるが、そのための資金が続けて提供されるわけではなく、別の資金調達を行う必要がある。

さらに岸上氏は、投資対象となるプロジェクトの傾向についても触れた。すでに一定の成功を収めているゲームや市場が必ずしも投資対象になるわけではなく、むしろ将来的な成長が見込まれる「期待値の高い段階」にあるプロジェクトや市場の方が投資を受けやすいとのこと。

そのため、開発者側には、プロジェクトの期待値をいかに高めるかが重要となる。具体的には、ファンコミュニティの形成や情報発信を通じて、「将来的に大きく伸びる可能性がある」と認識される状態を作ることが求められる。

堀氏は行政の立場から、ゲームプロジェクトの価値評価の難しさについて言及した。ゲームに限らず映像などのコンテンツ作品全般において、制作途中の段階でどの程度の市場価値を持つのかを判断することは難しいとする。

海外では、たとえばハリウッドにおいて映画の制作途中の段階で一定の評価を行う仕組みが存在するが、日本ではそうした評価の枠組みが十分に整備されていないと指摘した。一條氏も、ゲームにおける技術面の評価が非常に専門的である点に触れ、ファンドなどがゲーム産業の経験者による評価機関を持つことへの必要性を述べた。

さらに、国の補助金制度についても課題を挙げた。多くの支援は単年度での運用となるため、年度末の時点で成果を評価する必要があるが、開発途中のコンテンツをどのような指標で評価するかは非常に難しい問題であるとした。この評価の仕組みを確立できれば、より持続的な支援体制の構築につながる可能性があると述べた。


投資を受けるために求められる準備

3つ目のテーマは「投資を受けたいと考えるスタジオに最低限求められる準備」について。

まず若山氏は、開発者側に対して株式や投資の仕組みに関する理解を深めておくことの重要性を指摘。ゲーム開発のスキルとは別に、資金調達の前提となる金融的な知識を持つことが有用であるとする。

岸上氏は、投資判断が組織的に行われる点に着目し、説得材料の準備の重要性を挙げた。ベンチャーキャピタルでは、担当者が社内で投資提案を行うケースが多く、その際には上司や意思決定者を納得させるための根拠が求められる。
そのため、開発者側としても、自身の作品がどの市場に位置し、どの程度の売上が見込めるのかを説明できるようにしておく必要がある。具体的には、「類似タイトルと比較してどの程度の販売規模が期待できるか」といった形で、過去の事例をもとにした説明も時には有効であるとのこと。一條氏は、アドバイザーとしてかかわるiGi indie Game incubatorや創風においても、類似タイトルの分析を含めたピッチドキュメント作成のノウハウを伝えていると述べた。

放生會氏も同様に、類似タイトルの分析の重要性を強調した。対象となるジャンルにおいて、どの程度のタイトルが収益を回収できているのか、いわゆるリクープ率を把握したうえで、投資担当者との認識をすり合わせることが不可欠だという。

さらに、単なる売上規模だけでなく、どのようなプレイヤーが存在し、どのような遊び方をしているのかといったユーザー像まで含めて整理することも重要。ターゲット層や市場の特性を具体的に説明し、「このジャンルには一定の需要と固定ファンが存在する」という点を示すことが、投資判断において有効に機能すると述べた。

日本の強みを活かすゲームプロジェクト・スタジオ投資とは

最後のテーマは、「日本の強みを活かすゲームプロジェクト・スタジオ投資とは何か」について。

若山氏は体制づくりの一例として、アニメ業界における製作委員会方式のように、開発チームの外部から複数の専門人材を集める形も選択肢になり得ると述べた。具体的には、株式や投資に詳しい人材をチームに加えることで、資金調達に関する判断力や交渉力を補完することが可能になるのではと指摘。こうした仕組みについては、今後新たに構築していく必要があるとの認識を示した。

岸上氏は、実際にコンテンツを制作する立場から、日本と海外の開発スタイルの違いに言及した。アメリカにおけるコンテンツ制作は合理性を重視する傾向が強く、必要に応じた人員整理なども一般的であるとする。

一方で日本のゲームは、良くも悪くも合理性だけでは説明できない側面を持つ。たとえばシリアスな作品の中に突発的にユーモアが差し込まれるなど、一見すると統一感を欠く要素も含まれるが、こうした予測不能な要素が海外のユーザーにとっては魅力として受け取られているとした。

そのうえで、開発者に対してはまず規模の大小に関わらず作品をリリースすることが重要であると強調した。完成に至らないまま開発が長期化し、最終的に頓挫するケースが少なくないと指摘する。
作品を市場に出すことで初めて、ユーザーが何を求めているのかが明らかになる。開発者側の仮説とプレイヤー側の評価をすり合わせることで、次の作品に活かすことができると説明。

放生會氏もこれに同調し、投資対象としての「完成実績」の重要性を指摘した。作品を完成させていないスタジオについては評価を行うこと自体が難しいとし、開発の遅延によって資金が尽き、プロジェクトが中断されるケースが多い現状を挙げた。
また、過去に大規模タイトルに関わった実績よりも、スタジオとして一つでも完成した作品を持っていることの方が評価につながるという。

一方で、日本は構造的に開発資金を集めにくい環境にあるとしつつも、ノベルゲームなどの分野では一定の成功事例が存在する点に触れた。過去の作品群や文化的な蓄積が土台となり、そこから新たな作品が生まれていることが日本の特徴であるとする。
放生會氏は、こうした土壌から生まれる新たな作品に対して、投資家としての期待を示した。

堀氏は、日本の強みとして「多様性の蓄積」を挙げた。独自性の高いアイデアや、一見すると商業性とは距離のある試みが数多く存在しており、近年ではVTuber文化などもその一例であるとした。

その一方で、ビジネスとしての合理性のみが重視され、多様な試みが失われることへの懸念も示した。多様なコンテンツを生み出す土壌が失われることは、日本の競争力にとって大きな損失であるとする。
そのため、さまざまな挑戦を可能にする環境整備を、行政として引き続き支援していく必要があるとの考えを語った。