ソニーG、ゲーム事業における生成AI活用戦略を紹介 「人のクリエイティビティが常に中心」だが開発効率化から次世代ゲーム体験、PF運用まで拡大

ソニーグループ<6758>は、この日(5月8日)に開催した決算説明会で、生成AI(人工知能)の活用戦略について説明した。今回はゲームについてピックアップすると、中核子会社であるソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)では、ゲーム開発現場での効率化だけでなく、新たなゲーム体験やプラットフォーム運営、ハードウェア機能まで幅広くAI活用を進めているという。
「人のクリエイティビティが常に中心であるべきだ」という考えを大前提としつつ、「AIはクリエイターを置き換えるものではなく、創造性を拡張する存在である」と強調した。AIを“効率化ツール"に留めず、エンタテインメントの新たな成長機会につなげる姿勢を打ち出した。「人の手では日程制約上実現できないような、より複雑でリアルな表現を、生成AIを活用することで創出するなど、新たな可能性も見えてきている」。
SIE社長 CEOの西野秀明氏は、「PlayStationはこれからもプレイヤーにとって最高の遊び場であり、パブリッシャーにとって最高のパートナーであり続けたい」と述べ、その実現においてAIが重要な役割を果たすと説明した。

西野氏によれば、AIによってコンテンツ制作のハードルは下がり、開発速度も向上することで、今後はより多くのクリエイターが市場に参入し、ゲームの量と多様性が拡大していく見通しだという。その一方で、選択肢が増えるほど、プレイヤーは実績ある高品質IPやフランチャイズに惹かれるとも分析。PlayStationプラットフォームの価値は、膨大なコンテンツ群の中からプレイヤーごとに最適な作品を届ける“発見性"にあるとの考えを示した。
■AIでアニメーション制作を高速化
SIEはすでにゲームスタジオでAI実装を進めている。その代表例として紹介されたのが、社内開発ツール「Mockingbird」だ。これはパフォーマンスキャプチャーデータから高品質な3Dフェイシャルアニメーションを自動生成するもので、従来数時間を要していた処理を短時間で完了できるという。
重要なのは、「演技そのものをAIが代替する」のではなく、人間が演じたデータ処理工程を効率化する点だ。同ツールはすでにNaughty DogやSan Diego Studioなどで導入されており、 Horizon Zero Dawn Remasteredでも活用されているという。
また、髪の毛のアニメーション生成でもAIを活用しているそうだ。実写ヘアスタイル映像をもとにAIが数百本単位の髪の3Dモデルを生成することで、大幅な作業効率化を実現しているとした。

ゲーム開発では近年、AAAタイトルの巨大化に伴って開発費・制作期間の増加が大きな課題となっている。ソニーの説明からは、AIを「人員削減」よりも、「制作コスト増大への対抗策」として位置付けている姿勢がうかがえる。
■『グランツーリスモ』AI「ソフィー」も紹介 “生きた世界"へ
AI活用は効率化だけにとどまらない。説明会では、Gran Turismoで展開されているAIレーシングエージェント「ソフィー(GT Sophy)」にも言及。熟練プレイヤーにとっても挑戦しがいのあるレース体験を実現した事例として紹介した。
さらに、個性を持ったNPCが自律的に振る舞い、プレイヤーが“生きているような世界"を探索できる新たなゲーム体験のプロトタイプも生まれていると説明した。生成AIや機械学習が、ゲームデザインそのものを変えていく可能性を示唆した。
近年のゲーム業界では、NPCとの自然会話生成や動的ストーリー生成などへの関心が急速に高まっている。ソニーの発言からは、同社も単なる開発支援用途に留まらず、“ゲーム体験そのもの"へのAI統合を視野に入れていることが読み取れる。
■AIレコメンドで7億ドル超の増収
SIEはプラットフォーム運営でもAI活用を拡大している。同社によると、AIを用いた決済処理最適化によって、過去3年間で7億ドル超の増収効果があったという。現在はさらに、機械学習を活用したレコメンデーション機能強化を進めている。
西野氏は、「プレイヤーの選択肢が増えるほど、プラットフォームの価値はパーソナライズ能力にある」と説明。AIによる推薦はすでに人手によるマニュアル作業を上回る成果を示しているとして、今後はゲームタイトルだけでなく、ゲーム内イベント、サブスクリプション、周辺機器、グッズなども含めた提案最適化を進める考えを示した。
ゲーム市場では近年、ライブサービス化やタイトル数の増加に伴い、「何を遊ぶか分からない」状態がユーザー体験上の課題になりつつある。ソニーはAIを通じて、この“コンテンツ過多時代"のプラットフォーム競争力強化を狙っているとみられる。
■PS5 ProにもAI技術 高フレームレート4K描画を実現
AIはハードウェア機能にも活用されている。PS5 Proに搭載された「PlayStation Spectral Super Resolution(PSSR)」では、機械学習を用いて映像解像度を向上。高フレームレートでの4K描画を実現しているという。
説明会では、Stellar BladeやGhost of Yoteiなどが、より鮮明な映像表現を実現している例として紹介された。
ゲーム業界では現在、生成AI導入を巡って慎重論も根強い。一方で、ソニーグループは今回の説明会で「クリエイター主体」を繰り返し強調しつつ、制作支援、レコメンド、ゲーム体験、映像処理まで含めた包括的なAI戦略を提示した形だ。
特に印象的なのは、AIを単なる「コスト削減手段」ではなく、「コンテンツ量の爆発的増加」と「プラットフォーム価値向上」の両面から捉えている点だろう。PlayStationの巨大ユーザーベースとIP資産を背景に、ソニーグループは“AI時代のエンタメ・プラットフォーム"としてのポジション強化を狙っている。
会社情報
- 会社名
- ソニーグループ株式会社
- 設立
- 1946年5月
- 代表者
- 代表執行役社長CEO 十時 裕樹
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高及び金融ビジネス収入12兆9570億6400万円、営業利益1兆4071億6300万円、税引前利益1兆4737億2600万円、最終利益1兆1416億円(2025年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 6758
会社情報
- 会社名
- 株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)
- 設立
- 1993年11月
- 代表者
- 社長CEO 西野 秀明