【インタビュー】第四境界・藤澤仁氏が語る、人々を熱狂させるコンテンツ作りの秘訣――『050-5893-5336展(ひとのでんわ展)』で挑む“体験”の設計


ぴあと第四境界は、体験型展示イベント『050-5893-5336展(ひとのでんわ展)』を7月17日から8月16日まで、東京建物 ぴあ カンファレンス TO YAESU HALLにて開催している。

本展は、ベルの電話機から現代のスマートフォンまで、電話の歴史をたどりながら、20名を超える人物たちの通話記録をたどる体験型イベント一見すると「電話の歴史展」のように見えるが、会場では来場者自身が受話器を手に取り、情報を集めながら物語へ参加していく、第四境界ならではの体験が用意されている。

先に掲載した体験レポートでも紹介したように、『050-5893-5336展(ひとのでんわ展)』は、展示を見るだけでは終わらず、来場者自身を物語の当事者へと変えていく仕掛けが大きな特徴となっている。

では、なぜ第四境界は、こうした「自分自身が体験する」コンテンツ作りにこだわるのか。さらに、人々が誰かに語りたくなり、熱狂へとつながる体験はどのように生み出されているのか。

今回は、ゲーム作品『ドラゴンクエスト』シリーズの元ディレクターであり、現在は第四境界の総監督を務める藤澤仁氏に、『050-5893-5336展(ひとのでんわ展)』の制作背景や、同社が目指す体験設計、人々を熱狂させるコンテンツ作りについて話を聞いた。


▲第四境界 総監督・藤澤仁氏。本展の制作背景や、体験設計へのこだわりについて語った。

■「人の持ち物」から物語を生み出す――『ひとのでんわ展』誕生の背景

第四境界が手掛ける作品には、身近なものを入口に、その裏側にある人々の物語を描き出すという特徴がある。

その代表的な取り組みが「人のシリーズ」だ。『人の財布』をはじめ、『人の給与明細』『人の交換日記』『人のカレンダー』など、さまざまな持ち物を題材に物語を展開してきた。

今回の『050-5893-5336展(ひとのでんわ展)』も、その流れを汲む作品であり、第四境界にとってリアルイベントとして大きく展開する新たな挑戦となる。

――:『050-5893-5336展(ひとのでんわ展)』はどのような経緯から生まれたのでしょうか。

藤澤仁氏(以下、藤澤):第四境界というチームが世の中に知られるきっかけになった作品が『人の財布』でした。そこから、誰かの持ち物をモチーフにして、その裏側にある物語を語っていくということを続けています。

その中で、以前『人のワンルーム』という小規模なイベントも実施しましたが、今回の『050-5893-5336展(ひとのでんわ展)』は、より大きなイベントとして展開する第1弾となります。

■展示から体験へ――電話というメディアを選んだ理由

「人のシリーズ」では、これまで財布や給与明細、交換日記、カレンダー、ゲームカセットなど、さまざまな“人の痕跡”が残る持ち物を題材にしてきた。

その中で今回、第四境界が選んだのが「電話」だった。身近な存在でありながら、時代によって使われ方や人との関わり方が大きく変化してきた電話には、どのような物語が込められているのか。

――:数ある題材の中で、今回“電話”を選んだ理由、そして本展ならではの魅力について教えてください。

藤澤:「人のシリーズ」はいろいろ展開してきましたが、そうした中で、僕たちは「人と人とをつなぐメディア」を使って物語を表現していくことがよくあります。

電話は、時代によって使い方もスタイルも大きく変化してきたものです。僕らが若い頃は、黒電話が家に1台だけあって、家族で共有しながら使っていた時代でした。

さらに前には別の電話の形もあったと思いますが、それらをまとめて体験できること自体が、なかなかないものになるのではないかという仮説がありました。

実際にさまざまな時代の電話を並べてみると、「黒電話の受話器ってこんなに重たかったっけ」と感じるような発見もあります。僕らにとっては懐かしい体験であり、若い世代にとっては「こんな重たいもので話していたのか」という新鮮な発見になる。

そうした部分が、僕たちが紡ぎたい物語と相性が良かったのではないかと思い、今回『050-5893-5336展(ひとのでんわ展)』を開催しました。


▲黒電話からスマートフォンまで、時代ごとの電話が展示されている。本展では、それぞれの電話を通して人々の物語が描かれる。

藤澤:世の中を見ると「○○展」のような展示イベントは増えていると思いますが、「展」というものは基本的には何かを展示して見ていただくものです。

その中で我々は、単に電話を展示しているのではなく、その電話がたどった歴史や、電話を通じて交わされた通話の記録、そこに残る人々の記憶や営みを展示しています。

電話というメディアを使って、人の物語を表現しているところが、通常の展示会とは異なる部分ではないかと思っています。

■人はなぜ誰かに話したくなるのか――熱狂を生む体験設計

第四境界の作品は、体験後に「誰かに話したくなる」という魅力を持っている。単に物語を楽しむだけではなく、自分が経験したことを共有したくなる。その感情が、作品への熱量やコミュニティの広がりにもつながっている。

では、人々が誰かに伝えたくなる体験は、どのように設計されているのか。

――:第四境界の作品は、体験後に誰かへ話したくなる魅力があります。そのような体験はどのように設計されているのでしょうか。

藤澤:
僕たちもイベントをやる際に、人が「自分がやったことを人に伝えたくなる」ということは大切な要素だと考えています。

その一番大きな要素は、「人によって体験が異なること」ではないかと思っています。

今回の『ひとのでんわ展』では、会場に入ると実際には2つのルートがあり、どちらを選択するかによって体験が変化します。

藤澤:また、体験の中でも、ただ電話の声を聞くだけではなく、電話という媒体ならではの双方向性があり、自分から何かを伝えることでリアクションを得る場面もあります。その結果、人によって体験そのものが変わってくる。

そうした「人によって違う体験ができる」という部分が、誰かに共有したくなる要素であり、今回の大きな特徴になっているのではないかと思います。

■「一度やったことはもうやらない」――第四境界が挑戦を続ける理由

人によって異なる体験を生み出すことに加え、第四境界が大切にしているのは「まだ誰も体験したことのないものを作る」という姿勢だ。

同チームの作品は、毎回異なる仕掛けや表現方法を取り入れている。その背景には、「一度やったことはもうやらない」という藤澤氏の制作哲学がある。

――:第四境界の作品が多くの支持を集める理由について、どのように考えていますか。

藤澤:
何をもって人が熱狂したくなるのかという点については、やはり「こんな体験をしたことがない」と思えるかどうかが大きいのではないかと思っています。

自分たちで首を絞めているので、最近は少し口にするのをためらうようになっているのですが(笑)、僕たち第四境界には「一度やったことはもうやらない」という鉄の掟があります。

それによって、僕たち自身も毎回、作ったことがないものに挑戦することになりますし、それは世の中に対しても、まだ誰も体験したことのないものを作ることにつながります。

もしかすると、多くの方から第四境界というチームを支持していただけている理由は、そうした我々の姿勢にあるのではないかと思っています。


▲「時空のテレホンカード」を使って通話記録を収集。来場者自身が行動しながら物語を紡いでいく体験は、「まだ誰も体験したことのないもの」を追求する第四境界の姿勢を象徴している。

■「見る展示」から「体験する展示」へ――リアルイベントで追求した空間設計

『050-5893-5336展(ひとのでんわ展)』では、電話の歴史を紹介する展示空間から、来場者自身が物語へ参加する体験へと変化していく構成が特徴となっている。

その独自の体験を生み出すために、リアルイベントならではの空間作りでは、どのような点を意識したのだろうか。

――:リアルイベントならではの空間作りで意識された点を教えてください。

藤澤:そこは今回、まさに少し悩んだ部分でした。

多くの展示会は、先ほども申し上げた通り「見る」ということ、展示物を見ることが主体になっています。ですので、まず「電話展」というからには、ちゃんと電話を見ていただくスペースは作ろうと考えていました。

その先に、僕たちなりの「何が起こるか分からない」という展開を作ろうと思っていたので、そこから先については、あまり言いすぎるとネタバレにもなってしまうのですが、通常の電話を展示しているだけではない体験が待っている、という全体の構造を最初にイメージしました。

また、実際に会場で体験している方々を見た時に、電話が並んでいる姿を久しぶりに見たなと感じました。

僕らが若い頃は、電車が止まった時などには電話ボックスの前に長い列ができるような時代がありましたが、そんな光景を思い出すくらい、みんなが1台の電話に並んでいるという情景が非常にエキサイティングでした。

実際に体験を終えた方からも、「面白かった」という感想をいただきました。内容の新鮮さだけでなく、「しっかり物語に入り込めた」という感想をいただけたことは、とても良かったと思っています。


▲展示物を眺めるだけではなく、自ら受話器を手に取り物語へ参加していく。展示から体験へと変化する空間設計も、本展ならではの特徴だ。

■次世代へ受け継がれる第四境界――新たな監督・滝沢桃氏への期待

第四境界では、藤澤氏自身が多くの作品で監督を務めてきた一方で、チームとして新たなクリエイターが成長している。

今回の『050-5893-5336展(ひとのでんわ展)』では、滝沢桃氏が監督として制作を牽引。藤澤氏は、第四境界の新たな挑戦を支える存在として、その仕事ぶりに手応えを感じているという。

――:今回、滝沢桃氏が監督として本作を手掛けています。藤澤さんが総監督として関わる中で、滝沢氏に期待していることや、チームの成長について感じていることを教えてください。

藤澤:第四境界もだんだん人が成長してきまして、これまでは自分がほとんどのイベントで監督を担当していました。

今回も総監督という形で、企画のクオリティチェックなどはさせてもらっていますが、その中で新人の「滝沢」という新しい監督が、今回責任者としてやってくれました。

本当に良い仕事をしてくれたと思っていますし、第四境界というチームとしても、こうした新しい才能が育ってきていることは大きなことだと思っています。

――:本日はありがとうございました。


▲出口には来場者が感想を書き込めるメッセージボードを設置。第四境界 総監督・藤澤仁氏と、本展の監督を務めた滝沢桃氏からのメッセージも添えられ、作品を体験した人々を迎えていた。


 『050-5893-5336展(ひとのでんわ展)』は、電話という身近な存在を入り口に、人それぞれ異なる物語体験を生み出す作品だ。その背景には、「人によって異なる体験を設計すること」や「一度やったことはもうやらない」という第四境界の一貫した哲学があった。これからも誰も体験したことのないエンターテインメントを追求し続ける彼らが、次にどのような"日常侵蝕"を生み出すのか、今後の挑戦にも期待したい。

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【体験レポート】チケット購入から物語は始まる――第四境界『050-5893-5336展(ひとのでんわ展)』が生み出す新たな"日常侵蝕"体験

(取材・文 編集部:山岡広樹)

 

 

■開催概要

【イベント名】
「050-5893-5336展」(ひとのでんわ展)

【開催スケジュール】
2026年7月17日(金)~ 8月16日(日)
※A日程:7月21日(火)~7月24日(金)、7月27日(月)~7月31日(金)、8月3日(月)~8月7日(金)、8月10日(月)、8月12日(水)
※B日程:7月17日(金)~7月20日(月)、7月25日(土)~7月26日(日)、8月1日(土)~8月2日(日)、8月8日(土)~8月9日(日)、8月11日(火・祝)、8月13日(木)~8月16日(日)

【開催時間】
10:00~20:00 ※最終入場は19:00

【集合時間】
各回15分前から ※混雑状況によってご入場までお待ち頂く場合がございます

【会場】
東京建物 ぴあ カンファレンス TO YAESU HALL
〒103-0028 東京都中央区八重洲一丁目6番1号 TOFROM YAESU TOWER 6F

【アクセス】
JR、東京メトロ丸の内「東京」駅 地下直結(八重洲地下街経由)
東京メトロ東西線、銀座線、都営浅草線「日本橋」駅 徒歩3分
東京メトロ半蔵門線、銀座線「三越前」駅 徒歩6分

【チケット情報】
<通常入場券>
A日程:3,400円(税込)
B日程:3,900円(税込)
<特典グッズ引換券付きチケット> ※グッズ付き
A日程:7,800円(税込)
B日程:8,300円(税込)
<スペシャルゲストチケット>
100,000円(税込)
・7月16日(木)開催 関係者プレビュー招待
・無制限周回
・特典グッズ同梱の特権枠
※3名まで同伴可能(同伴者への時空のテレホンカードのお渡しはございません)
<子ども・学生割引入場券>
2,500円(税込)
※15歳以下、または学生の方対象
※全日程共通
<リピートチケット>
2,500円(税込)
※7月17日(金)以降、販売開始予定

 【チケット販売URL】
・ぴあ:https://w.pia.jp/t/hitonodenwaten/
・アソビュー:https://www.asoview.com/base/164889/
※販売券種:一般、子ども・学生割引 のみ / 電子チケット

【主催】
ぴあ株式会社/第四境界

【制作】
LIMINÆL(リミナル)

【公式HP】
https://www.hitonodenwaten.com/

【第四境界公式X】
https://x.com/daiyonkyokai

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