近年、「レトロゲーム」の需要が国内外で急速な高まりを見せている。当時を懐かしむ旧来のファンのみならず、ドット絵などに新鮮さを求めるZ世代や、日本のゲーム文化を愛するインバウンド層も取り込み、その市場は一過性のブームから定着したカルチャーへと変貌を遂げた。
こうした市場の激変を受け、全国に店舗を展開する「ゲオ(GEO)」は、以前に取り扱いを終了していたレトロゲームの買取および販売を本年2月より本格的に再開させた。
一方で、直近ではプレイステーションにおけるパッケージ版ソフトの販売終了がアナウンスされるなど、ゲーム業界全体でダウンロードやストリーミングといったデジタル移行への動きが加速している。物理的な「パッケージソフト」の存在意義が改めて問われる大きな転換期を迎えていると言えるだろう。
本稿では、最前線で市場を見つめるゲオの中古ゲームバイヤー・藤崎祐尚氏と、ゲオデジタルベース開発推進課の﨑間麗紀氏へのインタビューを実施。なぜゲオは今、レトロゲーム事業の強化に踏み切ったのか。そして、デジタル化が極まる現代において、パッケージソフトと中古市場が持ち続ける「本当の価値」とは何か。両氏の言葉から、ゲオの次なる戦略に迫る。
「一過性のブームではない」。ゲオがレトロゲーム取扱を再開した背景
──本日はよろしくお願いします。まず根本的なお話になりますが、レトロゲームの取り扱いを改めて強化しようと思った理由についてお聞かせいただけますか。
藤崎氏:
元々「レトロゲーム」という言い方はしていなかったのですが、2021年に店舗運営の効率化を求める中で商品の全体的な見直しが入りました。その中で、現在のレトロゲームにあたる商品の取り扱いを一旦終了する方向になりました。
しかしここ数年で、レトロゲームという市場が大きく盛り上がってきました。当時遊んでいた世代が懐かしくて買い求めるケースや、Z世代などの若い世代が新鮮なゲームとして楽しむケース、さらにはインバウンド需要も増えてきました。これは一過性の流行ではなく、継続的な市場として定着していると感じたんです。そういった市場の変化を捉えた上で、今年の2月に販売を再開させたという経緯になります。
──レトロゲームの人気の高まりや、市場の変化といった背景はどのように分析されていますか?
﨑間氏:
今までも秋葉原などの一部の専門ショップでインバウンド需要があったり、ニッチな層に購入されたりというのはずっと続いていくものだと思っていました。しかし、CtoC(個人間取引)などの活性化もあり、流通量が明らかに見えやすくなって変わったのだと思います。
いきなり盛り上がったというよりは、以前からあったものが顕在化して、流通の形態が変わっていったことでより多くの人が手に取れるようになり、ちゃんと欲しい人が増えているという状況です。
あとは配信者の影響などで、新しい世代が刺激されている傾向もあります。最初はPS3やPS4などトレンドのゲーム、例えば『バイオハザード』などが盛り上がっていましたが、だんだんと最新ゲームだけでなく、過去作の掘り起こしやインディーゲームからの派生で「これは」というものが注目されているのだと思います。
──ちなみにゲオさんでは、どのあたりから「レトロゲーム」扱いになるのでしょう。
藤崎氏:
難しいところで、私たちも結構悩んでいるところです。今のところ私たちが考えているのは、ハードの発売から「20年経過」をひとつのラインとしています。20年ってなんだろうと考えたときに、PSPやニンテンドーDSですね。おそらくそれがそのくらいだったと思うので、そこをラインにしておいて、それより後のハードはまだレトロという扱いでは括らずに、20年以上経過しているハードをレトロゲームという呼び方にしています。

──実際のレトロゲームの販売において、どのような客層が多いといったデータはありますか?
﨑間氏:
実際にお店の方の反応などを伺っていると、元々想定していた「もう一度遊びたい」という旧来のユーザーさんはやはりメインです。今はゲームをしていないけれど、あの時遊んでいた懐かしいゲーム、実家にあったゲームを思い出して、動かないからPS2を探しに来たというような、回帰的な層がとても多いですね。
もう一つは想定通り、Z世代を中心とした若い方々です。20代の方も多くて、昔のゲームを新しいものとして捉え、ドット絵などを「エモい」と感じたり、ゲーム性に魅力を感じたりと、新規の楽しみ方でやっている方もいる印象です。
あとはインバウンドのお客様です。郊外店舗の方でレトロゲームの取り扱いを再開しているお店が多いのですが、そこでも免税対応であったり、海外のお客様がしっかりいる店舗もありますので、需要を確認できています。国内外問わず、幅広い層に購入されていますね。
──特に人気の高いソフトやハードのジャンルのデータはいかがですか?
藤崎氏:
当社ですと、やはり任天堂さんとソニーさんの機種が安定しています。PS、PS2、PSPなど。任天堂さんだとスーパーファミコン、ゲームボーイなどですね。その辺りが非常に好調に推移しています。
ソフトとしては、広く出回っていたタイトル、例えば『ポケットモンスター』や『スーパーマリオ』、『ドラゴンクエスト』など、大衆の皆様によく知られているようなものは多く流通しているので、やはり集まりやすいです。
逆に30年以上経過している機種のタイトル、例えばメガドライブやネオジオ、PCエンジンなどは1点ものの可能性が高く、なかなか集まりにくいですね。おそらく他社さんでも希少価値が高いものになっていると思います。
﨑間氏:
よく売れたゲームはいっぱい戻ってきますね。特に印象的になのは『モンスターハンター ポータブル3rd』で、似たジャンルだと『ゴッドイーター』も多いです。
──みんなで遊ぶ系のゲームは集まりやすい傾向がある?
﨑間氏:
それ以前はみんなで共有する趣味という認識は薄く、一気にPSPの時代に広がりましたよね。その時のソフトが爆発的に「みんなで遊ぶもの」として増えました。そんな当時の状況を思い返すと、ひょっとしたら売らずに思い出として残していた人もいるのかもしれません。
それ以外だとセガサターンやドリームキャストのゲームソフトは、人気に対してソフトの流通量が少なかった影響もあり、入荷すると比較的すぐに動きますね。
──数量で言えばメジャータイトルが圧倒的でも、回転数で見ると馬鹿にできない存在感があるのですね。
﨑間氏:
やはりセガハードはファンの熱量が高いというか。有名ではありますが、「やっぱりそうだよね」と思いながら見ています(笑)。
第一は“遊んでもらうこと”。ゲオのレトロゲーム哲学

──仕入れや在庫管理の点で意識されていることはありますか? 例えば在庫が増えすぎたら買い取りを拒否するなど。
藤崎氏:
基本的に拒否はしないですね。お持ちいただいたものは快く買い取りさせていただくという方針です。ただ、当然(在庫が余るような)そういったものも出てきたりはしますので、そこは販売価格や買い取り価格を調整して設定させてもらっている形になります。
──販売する際の価格というのは、どのような基準で決めていらっしゃるのでしょうか?
藤崎氏:
再開当初はほぼゼロからのスタートなので、当然過去の実績はありましたが、市場が全く変わっていてあまり参考になりませんでした。そのため、市場の方を再調査させてもらって、設定させていただいたという形になります。
──世の中には数十万円といったプレミア価格がついているソフトもありますが、そういったタイトルが実際に買い取りに持ち込まれた事例はありますか?
﨑間氏:
ありますね。プレミアといっても価格差は大きく、市場で数十万円の値がついているものもあれば、定価を数千円超える程度のものもあります。そういった希少なタイトルも含め、満遍なくお売りいただいています。
──そういったプレミアソフトを販売する際は、現在の市場価格に合わせて高額に設定されているのでしょうか?
藤崎氏:
再開当初はそのように設定させていただいていましたが、今は市場の状況も鑑みながら柔軟に設定させていただいています。
﨑間氏:
インバウンド層に向けた都心部のような高額な価格帯には、最初からしたくないという思いがありました。私たちが一番大事にしたいのは「実際にプレイして遊んでほしい」という点ですので、できるだけ手に取りやすい価格を設定してあげたいという気持ちを持っています。
──価格設定や査定もなかなか難しそうですね。
藤崎氏:
そうですね。私自身が生まれる前の世代のソフトもたくさんあるので、「何だこれは?」と驚くようなタイトルも多く、日々勉強しています。
その点で言うと、過去にレトロゲームの取り扱いを終了する前まで使っていた商品マスター(データベース)が残っていたのはありがたかったです。規格番号やタイトルを入力すれば基本的にはデータが出てきますし、「こういう風に調べてください」という店舗スタッフ向けのマニュアルもしっかり整理しています。ただ、それでも査定が難しいソフトが持ち込まれることは当然ありますね。
──レトロゲームファンからすると、お店に掘り出し物がありそうな予感もしてワクワクします。ネットでは状態や価格が分かりにくいことも多いため、実際に店舗へ足を運ぶ価値がありそうですね。
﨑間氏:
はい、そういう目的で来店される方もいらっしゃると思います。店舗であれば実際に商品を手に取っていただけるので、状態をしっかり確認した上で購入をご検討いただけるのが強みです。

──買い取りの際、パッケージのケースや説明書の有無などは重要視されているのでしょうか?
藤崎氏:
現在のSwitchやPS5などのソフトよりは希少価値があるという判断になりますので、重要視はしています。しかし、何よりも「ソフトで遊んでほしい」という思いが第一です。
他社さんですと「説明書と箱が揃った完品ならこの価格、ソフトのみならここまで下がる」といった大きな価格差をつけるケースもあると思いますが、当社ではそういったことはあまりせず、基本的には一定の価格で買い取りをさせていただいています。
──子供の頃の思い出として、中古ゲームショップに行くとディスクだけがむき出しで売られていることがありました。そういったケースは今でもあると
藤崎氏:
もちろん、今でもあります。保管の過程でパッケージが破損してしまったり、割れてしまったりするケースもありますので、そういったものも快く引き受けさせていただいています。
──やはり、まずは「遊べること」を第一に考えていらっしゃるのですね。
藤崎氏:
そうですね。そこが第一になります。
──気軽に遊べない状況になって、過度に神格化していくのは少し違いますよね。
﨑間氏:
そうですね。ずっと中古ゲームを取り扱ってきた立場としての気持ちは、やはり「より多くの方に楽しんでいただきたい」というものです。完品のものをガラスケースに飾って眺めるだけというような感じではなく、気軽に楽しんでいただきたいです。もちろん、高価なものを安く売るのは難しいためショーケース等で展示させていただいてはいますが、基本はそこですね。
また、レトロゲームは「知っている」「持っていた」といった話のネタになったり、思い出を共有するコミュニケーションツールとしてもウェイトを占めていると思います。
循環するゲーム需要とパッケージの行方

──今後の展開についてお伺いします。中古レトロゲームを取り扱う店舗を、さらに増やしていく可能性はあるのでしょうか?
藤崎氏:
今後については、お客様の反応や販売状況、在庫状況などを総合的に踏まえながら拡大を検討していく形になります。現時点では、まだ検討段階というステータスです。
――先日はソニーが、プレイステーションタイトルのパッケージ販売を終了、配信に移行するニュースもありました。ゲオさんのパッケージ販売において、今後はどのような影響があるとお考えですか?
藤崎氏:
パッケージソフトに対して一定の需要は確実にあります。例えば、「遊び終わったから次のゲームを買う資金にしよう」というお客様もいらっしゃいますし、中古であれば新品よりも安価に買えることが魅力です。また、コレクションとして手元に残せるという、ダウンロード版にはない価値があります。
そういった価値を支持してくださるお客様も多いので、中古ゲームを取り扱う当社としては、パッケージ販売が終了すると聞いた時はやはり「惜しいな」という気持ちはありました。
ただ、ソニーさんの発表によるとディスクをやめるのは2028年の1月以降とのことですので、すぐ当社の販売や買い取りに影響するものではないと認識しています。現時点でも影響はない状況ですので、今後についてはソニーさんともお話をさせていただきながら、お客様の状況などを見て判断していきたいと思っています。
──最後に、ゲーム市場全体を見たとき、今後のレトロゲーム需要はどのように変化していくとお考えですか?
藤崎氏:
需要自体はこれからもずっと続くと思いますし、逆に今出ているゲームソフトもいずれはそういったカテゴリーになっていきます。最新ゲームとレトロゲームが、どちらも同じように市場で流通するひとつの「当たり前のカテゴリー」になっていくのかなと思っています。
ゲーム文化が続く限りその量はどんどん増えていくので、そういった形でゲームライフを提供できるように、会社として取り組んでいけたらと考えています。
──長い目で見れば、今のSwitchのソフトもいずれレトロゲームとしての価値を持つようになるというサイクルですね。
﨑間氏:
年が経つにつれて、レトロゲームが骨董品のような扱いになる日も近いと思っています。しかし、当社としてはできる限りそれに逆らって、実際にお客様に手に取っていただきたいです。「昔のゲームはこんなに面白かったんだよ、じゃあ今のゲームも遊んでみて」というように、ゲーム人口が増え続けるようなお店作りができればと思っています。
──確かに、懐かしさから入って新しいゲームに興味を持つ可能性も十分にありますよね。最近は過去作のリメイクも多いですし、相乗効果に期待できそうです。本日はありがとうございました。
会社情報
- 会社名
- 株式会社ゲオ
