
ゲームメディアに届くプレスリリースを見ていると、最近、海外のインディーゲーム開発者やパブリッシャーからの情報提供が目立って増えている。体感としては、インディーゲーム関連のプレスリリースでは海外からのものが半数を超えることは日常となっている。
なぜ海外のインディーゲーム関係者は、日本のゲームメディアに積極的に情報を届けるようになったのか。その背景には、日本市場への関心の高まりだけでなく、海外インディーに特徴的な「メディアへの素材の渡し方」もあるように感じる。
■海外インディーから届くリリースは「動画」が多い
国内のインディーゲームと海外のインディーゲームを比較して、編集部側から見て分かりやすい違いの一つが、動画素材の有無だ。
もちろん国内でも動画を用意しているケースはあるが、海外から届くプレスリリースでは、YouTubeなどのやゲームプレイ映像が添えられているケースが比較的多い。
しかも、必ずしも完成度の高いプロモーションムービーではなく、開発者自身がコメントしながらゲームプレイを短時間収録した簡易的な動画である場合も多々ある。素材としてはこれで十分だ。ゲームメディアにとって重要なのは、映像作品としての完成度ではなく、「このゲームがどういうゲームなのか」を短時間で理解できることだからだ。
例えば30秒程度、実際にゲームをプレイしている映像を見るだけでも、ゲームのジャンルや操作方法、画面のテンポ、キャラクターの動き、戦闘やゲームシステムなど、文章やスクリーンショットだけでは伝わりにくい情報を一気に把握できる。
■スクリーンショットを何枚送っても「動き」には勝てない
ゲームのプレスリリースでは、スクリーンショットを大量に用意することがある。もちろんスクリーンショットにも意味はある。ゲーム画面を記事に掲載したり、特定のキャラクターやシステムを紹介したりする場合には必要になる。
ただ、ゲームそのものを理解するという点では限界がある。例えば「ローグライトアクション」「デッキ構築型ゲーム」「農業シミュレーション」といった説明があったとしても、スクリーンショットを何枚か見ただけでは、実際のプレイ感覚までは分からない。
一方、ゲームプレイ動画なら、プレイヤーが何をして、画面上で何が起きるのかを一目で確認できる。ゲームは「動くコンテンツ」だからこそ、動いているところを見せることには大きな意味がある。
そのため、編集部側の感覚としては、極端に言えば、
キービジュアル+ゲームプレイ動画
だけでも、ゲーム記事を作るための素材としてかなり成立する。
■記事を作る側から見ても「KV+動画」は扱いやすい
実際に記事を掲載していると、スクリーンショットを大量に掲載するよりも、キービジュアルと動画を組み合わせたシンプルな構成のほうが、読者にゲームの内容が伝わりやすいと感じる。
役割を整理すると分かりやすい。
・キービジュアルは「何のゲームなのか」を伝える。
・ゲームプレイ動画は「どういうゲームなのか」を伝える。
・本文は「発売日や対応プラットフォーム、ゲームシステムなどの詳細」を伝える。
この3つが揃えば、読者は短時間でゲームの概要を把握できる。逆にスクリーンショットを何枚も並べても、ゲームの全体像を理解するためには、読者自身が複数の画像から情報を組み立てなければならない。
記者がゲームデベロッパーに勤務していた時、営業先からしばしば言われたのは、プレゼン資料や画像素材よりもどんなゲームを作れるのか、動いている動画を見せてほしいということだった。情報量が多いことと、情報が伝わりやすいことは必ずしも同じではない。
■「メディアに取り上げてもらう」ことまで考えた素材設計
海外インディーのプレスリリースを見ていると、単にゲームの情報を発表するだけでなく、メディアやクリエイターがその情報を使いやすいように素材を用意しているように感じる。
キービジュアル、ゲームプレイ動画、Steamページ、ゲームロゴ、スクリーンショットなどをまとめて提供し、受け取った側が短時間でゲームを理解できる状態にしている。
これはインディーゲームにとって特に重要だ。
大手タイトルであれば、ゲームそのものに知名度があり、メディア側が調べて記事にすることもできる。しかし、無名のインディーゲームの場合、最初に「どんなゲームなのか」を理解してもらわなければ、その先の情報にも興味を持ってもらいにくい。
その意味で、動画は単なる宣伝素材ではない。メディアにゲームを理解してもらうための資料でもある。
■「豪華なPV」ではなく「30秒のプレイ動画」でいい
ここで重要なのは、必ずしも高品質なプロモーションビデオを制作する必要はないということだ。むしろプレスリリース用なら、 「ゲームを30秒程度プレイしているところを録画した動画」でも十分に役に立つ。
ナレーションや凝った編集も必須ではない。ゲームの特徴が分かる場面を短く見せるだけでいい。YouTubeなどにアップロードしてURLを1本添えるだけなら、ファイルサイズを気にする必要もなく、メディア側もすぐに確認できる。
GIFのような素材も便利ではあるが、環境によってはセキュリティ上の理由などから扱いづらい場合がある。その点でも、一般的な動画プラットフォームにプレイ動画を置いておくほうが、メディア側にとって扱いやすい。
■「素材の数」ではなく「理解までの時間」を考える
プレスリリースの素材を考える際、重要なのは「何枚送ったか」ではないのかもしれない。むしろ、「そのゲームを知らない人が、何秒でゲームの内容を理解できるか」という視点が重要になる。
スクリーンショットを10枚送るより、30秒のプレイ動画を1本送ったほうがゲームの理解につながることが多々ある。
そして、これはメディア側にとっても大きな意味を持つ。
毎日大量のプレスリリースが届く状況では、一つひとつのゲームを長時間かけて調べることは難しい。短時間でゲームの特徴を理解できる素材があれば、「これは記事にしよう」という判断もしやすくなる。
つまり、動画は読者向けの素材であると同時に、編集部が記事化を判断するための素材でもある。
■海外インディーの増加は「日本市場への接近」の表れか
海外インディーから日本のゲームメディアへの情報提供が増えている背景には、日本市場への関心の高まりもあるだろう。
Steamをはじめとするグローバルな販売プラットフォームによって、海外の小規模開発者にとって日本市場へアプローチするハードルは以前より下がっている。
その一方で、ゲームの数が増えれば増えるほど、今度は「どうやって知ってもらうか」が問題になる。
そこで日本のゲームメディアやインフルエンサーなどへの情報発信が重要になってくる。
そう考えると、海外インディーから届くプレスリリースの増加は、単なる海外タイトルの増加ではなく、海外の開発者やパブリッシャーが日本を一つの重要なマーケティング市場として捉え始めていることの表れとも考えられる。
そして、その際に「メディアが使いやすい素材」を用意することも重要になっている。
■インディーゲームのPRに必要なのは「大量の素材」ではない
ゲームのプレスリリースに必要な素材をあえてシンプルに考えるなら、
・キービジュアル
・ゲームプレイ動画
・ゲームロゴ
・Steamなどのストアページ
・発売日・対応プラットフォームなどの基本情報
これだけでも、かなりのところまで対応できる。スクリーンショットは必要に応じて追加すればいい。
もちろん、ゲームの魅力を伝えるために豊富な素材を用意すること自体は悪いことではない。ただ、素材を増やすことと、ゲームの魅力が伝わることは別の話だ。
インディーゲームのPRで大切なのは、豪華なPVを作ることでも、大量のスクリーンショットを添付することでもない。まずは、「このゲームがどういうゲームなのかを、30秒で分かってもらう」ことなのかもしれない。
その意味では、ゲームメディアにとって最もありがたいプレスリリースは、意外とシンプルだ。キービジュアル1枚と、短いゲームプレイ動画1本。この2つがあれば、ゲームの魅力を伝えるためのスタートラインには十分立てる。
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