
転職先を探す際、求人票や企業の採用サイトだけでなく、転職口コミサイトやSNS、検索結果まで確認することが当たり前になりつつある。そうしたなか、企業にとってネット上の口コミや投稿が採用活動に影響する「デジタルリスク」となっている。
SAKURA法律事務所は8月19日、転職口コミサイトやSNS、掲示板などに投稿された事実と異なる情報や誹謗中傷への法的対応を支援する企業向け特設サイトを開設した。削除請求や発信者情報開示請求、投稿者への損害賠償請求の検討などを通じ、企業の採用活動や社会的信用を守るリーガルサービスとして展開する。
■「求人票」だけでなく「口コミ・検索結果」が応募判断に影響
企業の採用活動を取り巻く情報環境は大きく変化している。かつては求人票や企業の採用ページが求職者にとって主要な情報源だったが、現在では転職口コミサイトやSNS、検索エンジンで企業名を検索し、実際に働いた人の声や第三者の評判を確認したうえで応募するケースも珍しくない。
こうした口コミは、企業にとって貴重なフィードバックになる一方、投稿された内容が必ずしも現在の企業の実態を反映しているとは限らない。過去の情報が長期間残り続けるケースもあれば、事実と異なる内容や、個人・企業への誹謗中傷に該当する投稿が公開されるケースもある。
特に問題となるのが、こうした情報が企業名を検索した際に表示され続けることだ。採用活動への影響としては、応募数の減少だけでなく、選考途中での離脱や内定辞退、採用ブランドの毀損、採用単価や採用期間の増加などが考えられる。
実際、企業の採用担当者からは、転職口コミサイトを巡る悩みを聞く機会も増えている。問題になるのは、単純な「悪い口コミ」だけではない。「事実と違う内容が書かれている」「すでに改善した問題が何年も残っている」といったケースだ。
しかも企業側からすれば、口コミサイトに直接反論するのは簡単ではない。企業が投稿者とやり合っているように見えれば、かえって求職者に悪い印象を与える可能性もある。一方で、採用サイトやSNSで自社の魅力を発信しても、求職者が企業名を検索した際には口コミサイトの情報が先に目に入ることもある。
「悪い口コミがある」ことよりも、「事実と異なる情報を企業側が訂正しにくい」ことが、採用担当者にとって大きな問題になっている。
■採用広報を強化するだけでは消せない「検索結果」の問題
企業側も採用サイトの充実やSNSでの情報発信、オウンドメディアの運営など、採用広報への投資を進めているが、企業がどれだけ自社について積極的に情報発信しても、求職者が企業名を検索した際に表示される口コミサイトや掲示板の情報を直接コントロールすることは難しい。
そのため、採用広報を強化するだけでは対応しきれない領域が存在する。今回、SAKURA法律事務所が打ち出したのもこの部分だ。
同事務所では、転職口コミサイトや企業口コミサイトへの削除請求に加え、SNSや掲示板上の誹謗中傷への対応、発信者情報開示請求による投稿者の特定、投稿者への損害賠償請求の検討・対応などを提供する。
さらに、検索結果表示を含むデジタルリスク全般について、継続的な法務相談にも対応するとしている。
■「都合の悪い口コミを消す」サービスではない
もっとも、今回のサービスで重要なのは、企業にとって都合の悪い口コミを片っ端から削除するというものではない点だ。SAKURA法律事務所は、体験に基づく正当な意見や事実に基づく批判については、企業が真摯に受け止めるべき情報であり、削除請求の対象とはしていないと説明している。
対応するのは、事実と異なる投稿や、名誉毀損、侮辱、信用毀損など、違法性が認められる投稿だ。
法的根拠の乏しい削除請求を行えば、かえって企業側の信用を損なう可能性もある。そのため、投稿内容を精査したうえで、法的に対応可能なのか、どの程度の見込みがあるのかを判断し、対応方針を提案するという。
同事務所の依田俊一パートナー弁護士も、「何が違法な投稿で、何が受け止めるべき声なのか」という線引きを法的な観点から明確にすることが、企業の健全な採用活動につながるとの考えを示している。
■誹謗中傷対策そのものは新しくない 「採用リスク」として捉える動きに
ネット上の誹謗中傷に対する削除請求や発信者情報開示請求は、もちろん今回初めて登場したものではない。SNSや掲示板、口コミサイトなどを対象に、以前から弁護士による法的対応は行われてきた。
今回の動きで注目したいのは、こうした従来から存在する法的手段を、「採用」という企業活動に紐づけて明確にサービス化していることだろう。人材獲得競争が激しくなるほど、企業にとって採用ブランドの重要性は高まる。
求職者が企業について調べる際、検索結果や口コミが応募するかどうかの判断材料になるのであれば、ネット上の情報管理も採用活動の一部として考える必要が出てくる。
もちろん、口コミには企業が改善すべき問題を発見するための重要な情報も含まれている。ネガティブな投稿をすべて排除すればいいという話ではない。
むしろ企業側に求められるのは、「改善すべき口コミ」と「法的に対応すべき投稿」を切り分けることなのかもしれない。採用広報で自社の魅力を伝えるだけでなく、明らかに事実と異なる情報や違法性のある投稿については法的手段を検討する。
転職口コミサイトが求職者の企業選びにおいて存在感を増すなか、採用活動における「口コミとの向き合い方」も変わりつつある。
今回のSAKURA法律事務所のサービス開始は、ネット上の評判を単なる広報上の問題ではなく、企業の採用競争力に関わるリーガルリスクとして捉える動きが広がっていることを示すものと言えそうだ。
■関連サイト
▼公式サイト
https://sakura-lawyers.jp/digitalrisk/lp03/
【AD】ゲーム業界の転職支援サービス「エンターエンタ」
「エンターエンタ」はゲームを含むエンタメ業界に特化した転職支援サービスです。「gamebiz」ならではの強みを活かし、有力ゲーム企業の求人情報を掲載しています。プロデューサー、ディレクター、プランナー、サーバーサイド・フロントサイドエンジニア、AIエンジニア、マーケター、広報・宣伝など注目求人を多数取り扱っています。転職をお考えの方、よかったら登録してみてください。





