ケイブの人的資本戦略、「AI×権限移譲」を通じた人材育成で組織を変える 業績立て直しにつなげられるか

ケイブ<3760>の人的資本に関する方針からは、単なる福利厚生の充実にとどまらない、人材・組織に対する考え方が見えてくる。特徴的なのは、「権限移譲によるOJT」と「AI活用の全社浸透」を人材育成の取り組みとして明確に掲げている点だ。

業績の立て直しを進める局面にあるケイブにとって、人材戦略は採用や待遇改善だけの問題ではない。限られた人材の力をどう引き出し、組織としての生産性をどう高めていくか。今回の人的資本開示は、そうした経営課題ともつながっているように見える。

 

■「仕事を任せる」ことで人を育てる

ケイブは人材育成について、「権限移譲による、OJTを通じた実践的な育成」を掲げている。研修を用意して社員に知識を身につけてもらうだけではなく、実際の仕事を任せることで、一人ひとりが挑戦し、成長できる環境をつくるという考え方だ。

ゲーム開発・運営では、現場での判断や経験の積み重ねが重要になる。そこで権限を移譲し、実際の業務を通じて人材を育てることは、単なる教育制度というよりも、現場の自律性を高める組織づくりと捉えることができる。

さらにケイブは、昇給・昇格についてMBO制度を導入し、期待された役割や専門性、職能、職位、業績などを総合的に評価するとしている。「どれだけ長く在籍しているか」ではなく、役割や成果、専門性などを重視する考え方も明確だ。

 

■AIは「導入」ではなく「組織への浸透」

今回の人的資本戦略で特に目を引くのがAIだ。ケイブは、AIの活用を全社に浸透させるため、専門部署を設置。さらに、AIによる業務改善を推進するための管理職・リーダーの育成にも取り組むとしている。

ここは「生成AIを導入する」という一般的な話とは少し違う。AIを扱える専門人材を一部に配置するだけではなく、現場の管理職やリーダー自身がAIを活用し、業務改善を進められるようにする。つまり、AIを単なる新しいツールとして導入するのではなく、組織全体の仕事の進め方を変えるための仕組みとして位置付けている。

これは、先に掲げた「権限移譲」とも相性がいい。現場に判断を任せる一方で、AIを活用して業務を効率化する。その両方を担えるリーダーを育てることができれば、現場の意思決定を速めながら、生産性を高めることも期待できる。

 

■人的資本から経営改革、そして業績回復へ

こうして見ると、ケイブの人的資本戦略は、人事部門だけの取り組みというより、経営改革の一部として捉えることができる。業績の立て直しを進める際、コストを削減するだけでは持続的な成長にはつながりにくい。一方で、新たな人材を大量に採用することも、コストの増加につながる。

そこで重要になるのが、現在いる人材の能力を引き出し、組織としての生産性を高めることだ。ケイブが掲げる「権限移譲によるOJT」は、社員がより大きな役割を担うことで成長を促す取り組み。そして「AI活用の全社浸透」は、そうした現場の仕事そのものを効率化する取り組みと見ることができる。

今回の人的資本開示からは、人を育てるだけではなく、人がより大きな仕事を担える組織をつくり、その仕事をAIによって効率化する、といった方向性が読み取れる。

 

■多様性や働きやすさも整備

もちろん、ケイブはこうした生産性向上だけを人材戦略としているわけではない。年齢・性別・国籍を問わない人材の確保、公正公平な評価・処遇、福利厚生制度の拡充、ハラスメント研修など、労働環境の整備も進める。

また、育児や介護などライフステージの変化に合わせた柔軟な働き方を支援するとともに、健康診断やストレスチェック、産業医との連携、有給休暇の取得推進などを通じて、長期的に働ける環境づくりを目指している。

人的資本に関する指標では、女性従業員の割合50%を目標としているのに対し、実績は21%。一方、男性育児休業取得率は目標50%に対して100%となった。

ただし、育児休業取得率は「取得したかどうか」を示す指標であり、対象となった人数や取得期間まではこの数字だけでは分からない。したがって、100%という数字だけから育児と仕事を両立しやすい環境になっていると評価するのは慎重であるべきだろう。

 

■「人材」を業績回復の原動力にできるか

今回の人的資本開示で興味深いのは、ケイブが人材を単なる「従業員数」や「福利厚生」の問題として扱っていないことだ。

・権限を移譲して人材を育てる。
・AIを全社に浸透させる。
・AI活用を推進できる管理職・リーダーを育てる。
・役割や専門性、成果を評価してさらなる挑戦を促す。

こうした取り組みが機能すれば、組織の意思決定や業務効率、開発・運営の生産性にも影響してくる可能性がある。もちろん、人的資本への取り組みが、そのまま業績回復につながるわけではない。最終的には、ゲームをはじめとする事業で成果を生み出せるかが問われる。

業績の立て直しを進めるケイブにとって、AIと権限移譲によって変えようとしている組織が、今後どのように事業成果へ結びついていくのか。人的資本戦略が「人事施策」で終わるのか、それとも経営改革の原動力となるのか、今後の取り組みが注目される。

 

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株式会社ケイブ
https://www.cave.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社ケイブ
設立
1994年6月
代表者
代表取締役社長CEO 高橋 祐希
決算期
5月
直近業績
売上高139億6900万円、営業利益11億3300万円、経常利益11億3100万円、最終利益2億4600万円(2025年5月期)
上場区分
東証スタンダード
証券コード
3760
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