インディーゲームのプレスリリース、「不利なタイミング」を避けよう 大手と同じ土俵で戦わない「弱者の戦略」が重要【クリエイターの広報術:番外編(10)】

木村英彦 取締役 編集長
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インディーゲームのプロモーションで、プレスリリースは比較的取り組みやすい施策の一つだ。ゲームの発売日決定、新情報、アップデート、イベントへの出展など、ニュースとして伝えたい情報があれば、メディアに向けて発信できる。

ただ、せっかく時間をかけてプレスリリースを作っても、思ったほど記事にならないことがある。その理由は、リリースの内容だけではない。「出すタイミング」が悪かった可能性も考えたい。

インディーゲームの場合、大手ゲーム会社と同じようなプロモーション予算や知名度を持っているケースは少ない。だからこそ、限られた手段の中で、わざわざ不利な条件を選ばないことが重要になる。これはいわば、「弱者の戦略」だ。

 

■メディアにも「すべての記事を扱う」余裕はない

まず理解しておきたいのは、メディア側にも限界があるということだ。ゲームメディアには毎日のように大量のプレスリリースが届く。新作ゲームの発表、発売日決定、大型アップデート、キャンペーン、コラボレーション、イベント情報……。

しかし、届いた情報をすべて記事にすることはできない。編集者の人数にも、記事を作る時間にも限りがあるからだ。当然、情報量が多い日には優先順位が生まれる。

読者の関心が高い大型タイトル、継続的に情報提供を受けている企業、過去に大きな反響があったタイトルなどに、限られた編集リソースを振り向けることになる。

これは「大手だから優遇する」という単純な話ではない。メディアも事業として運営されている以上、より読まれる可能性が高い情報に力を割くのは自然なことだ。

だからインディー側が考えるべきなのは、「どうすれば大手に勝てるか」ではなく、「そもそも大手と同じ場所で戦わない」ということになる。

 

■まず避けたいのは木曜日と金曜日

その代表例が曜日だ。ゲーム業界では木曜日や金曜日に、新作タイトルの発売や発表、大型アップデートなどが集中しやすい。つまり、メディア側にとってもニュースが増えやすい。

そんな日に、「インディーゲーム○○、○月○日に発売決定!」とプレスリリースを送ったとしても、他のニュースに埋もれてしまう可能性がある。

もちろん、そのタイトル自体に非常に強い話題性があれば話は別だが、そうした強い武器を持たないタイトルであれば、わざわざニュースが集中する日に発信する必要はない。

まず、木曜日と金曜日を避ける。それだけでも、インディー側ができる「弱者の戦略」の一つになる。

 

■土日祝日も基本的には避けたい

同じ理由で、土曜日・日曜日・祝日も通常のプレスリリースにはあまり向かない。ゲームメディアの中には、土日祝日でも記事を掲載している媒体があるため、「休日に送っても絶対に見てもらえない」というわけではない。

ただし、休日に編集者が稼働している場合、速報性の高いニュースや、あらかじめ予定されている重要な記事など、別の仕事を抱えている可能性が高い。

そこへ通常のインディーゲームのプレスリリースを送っても、優先順位が上がるとは限らない。

運良く拾ってもらえる可能性はあるが、PR戦略を「運」に委ねる必要はない。イベントに合わせるなど、休日に発信する明確な理由がないのであれば、平日の通常営業日に送る。まずはこれを基本にしたい。

 

■大型連休前も避ける

大型連休の前も注意したい。ゴールデンウィーク、夏季休暇、年末年始などは、メディア側の業務体制が通常と異なる。連休中の記事を事前に準備したり、休暇前に処理する仕事が増えたりするためだ。

このタイミングで通常のプレスリリースを送っても、普段と同じように確認してもらえるとは限らない。特に急ぎではない情報なら、「空き家」になる連休明けに回したほうがいい場合もある。

そして年末年始はさらに特殊だ。年間ランキングや年間総括など、この時期ならではの記事が増えるため、通常の新作ゲーム情報が普段以上に埋もれやすくなる。

「みんなが休むから」ではなく、「メディア側のニュース環境が通常と変わるから避ける」と考えると分かりやすい。

 

■早すぎても遅すぎてもいけない

もう一つ考えておきたいのが、送信する時間だ。「できるだけ早く送ったほうがいい」と考える人もいるかもしれないが、これも必ずしも正解ではない。

深夜や早朝に送ったとしても、編集部がまだ業務を始めていなければ、受信箱の中で他のメールに埋もれてしまう可能性がある。

重要なのは、「自分が送りたい時間」ではなく、「相手が確認しやすい時間」に送ること。一般的な広報の考え方と同じように、編集部が通常業務を始めた後、ニュースを確認し、記事を組み立てる時間帯に届くようにする。

目安としては、午前中から昼過ぎ、遅くとも15時前くらいを意識するといいだろう。もちろん媒体によって業務時間や記事制作の流れは異なるため、絶対的なルールではない。

むしろ、普段から記事を掲載してほしいメディアがあるなら、その媒体が何時ごろから記事を更新しているのかを見ておくのもいい。相手の動きを知れば、より適切なタイミングを考えられる。

 

■「出したい日」ではなく「埋もれない日」を選ぶ

ここまで挙げた話は、実は特別なインディーゲームPRのノウハウではない。

・木曜日・金曜日を避ける。
・土日祝日を避ける。
・大型連休前を避ける。
・年末年始を避ける。
・深夜や早朝を避ける。
・できるだけ編集部が情報を処理できる時間帯に送る。
※運用型ゲームの場合、月末・月初などもイベントが集中しがちである。

いずれも一般的な広報の基本として知られていることだが、インディーゲームにとっては、その「基本」を守ること自体が重要になる。

大手ゲーム会社は、ニュースが集中する日でも戦える。大型タイトルなら、それ自体がニュースになる。広告を大量に出すこともできる。長年のブランド力やメディアとの関係もある。

一方、インディーゲームはそうはいかない。だからこそ、「大手と同じ日に、同じやり方で勝負しない」という考え方が重要になる。

100本のプレスリリースが届く日に自分たちの情報を投げるより、20本しか届かない日に送ったほうが、少なくとも「埋もれる」というリスクは減らせる。

  

■ただし「絶対に避ける」必要はない

もちろん、ここで紹介したタイミングを絶対的なルールにする必要はない。例えば、東京ゲームショウやBitSummit、東京ゲームダンジョンなどのイベントに合わせて発表するのであれば、土日であってもイベント開催日に合わせる意味がある。

大型タイトルの発売日と同じ日でも、そのタイトルとの関連性があるなら、それを利用する方法もある。

また、時事ネタや記念日など、「その日に発表する理由」そのものが話題になる場合もある。

重要なのは、「木曜だからダメ」「土曜だからダメ」という機械的な判断ではない。「その日に発信することで、自分たちにどんなメリットがあるのか」を考えることだ。メリットがないのなら、わざわざ競争の激しい日に飛び込む必要はない。

 

■弱者だからこそ「戦う場所」を選べる

インディーゲームのPRで、大手と同じだけの予算や人員を使うことは難しい。だからといって、何もできないわけではない。大手にはできない、あるいは大手がわざわざやらないことを選べる。

その一つが、「ニュースが集中する場所を避ける」ということだ。プレスリリースの内容を工夫することも大切だ。魅力的なタイトルを付けることも、ゲームの内容が伝わる画像を用意することも、動画を用意することも重要だ。

しかし、その前にできることがある。「そもそも、その日に出して大丈夫なのか?」と一度考えてみる。良いリリースを作ることだけがPRではない。リリースが埋もれにくいタイミングを選ぶこともPRの仕事である。

大手と同じ土俵に上がるのではなく、自分たちが少しでも戦いやすい場所を選ぶ。それもまた、インディーゲームが取れる「弱者の戦略」の一つではないだろうか。

 

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