
壽屋(コトブキヤ)<7809>が研究開発への投資を強めている。2026年6月期の研究開発費は6735万円となり、前の期の1100万円から506.6%増加した。2023年6月期以前は研究開発活動について「該当事項はなし」としていたが、2024年6月期から研究開発費を計上し、年々投資額を拡大している。
単純に研究開発費が増えたというだけではなく、その背景には、同社が成長戦略の一つとして掲げる「プラモデル・フィギュアに続く新領域の確立」がある。
■「次の柱」をつくるための研究開発
壽屋は、プラモデルやフィギュアを中心とするホビー関連事業を展開してきた。特に美少女やロボットといったカテゴリーでは、自社IPを含む商品群を育て、国内外のファン層を拡大してきた。
一方で、中長期的な成長を考えた場合、既存のホビー市場だけに依存するのではなく、新たな事業領域や顧客層を開拓する必要があると認識している。
同社は成長戦略の基本方針として「プラモデル・フィギュアに続く新領域の確立」を掲げており、研究開発についても、この取り組みの一環として位置づけている。つまり、今回の研究開発費の増加は、既存商品の改良にとどまらず、次の収益源を生み出すための投資が本格化していることを示すものといえそうだ。
■IPを「商品」から「事業」へ広げる
その際に重要になるのが、自社IPの創出・育成だ。壽屋は中長期的な成長に向けて、自社IPの創出と育成を継続的に推進し、収益基盤を強化する方針を示している。
具体的には、オリジナルIP「アルカナディア」についてTVアニメ化やスマートフォンゲーム化を発表するなど、プラモデルという既存の商品カテゴリーから他メディアへの展開を進めている。
また、自社IPによる美少女プラモデルシリーズは世界累計出荷数が980万個を突破しており、既存IPについてもファン層の拡大と認知度向上を進めている。
ここで重要なのは、IPを単にプラモデルの企画に利用するのではなく、アニメ、ゲーム、出版、デジタルコンテンツなどへ展開し、複数の市場から長期的に収益を得られるIPビジネスを構築しようとしている点だ。
同社は今後、新たなオリジナルIPの創出に加え、既存IPのさらなる育成、アニメやゲームなど他メディアとの連携強化を進めるとしている。
■デジタル、バーチャル空間、3Dへ
そして、もう一つ注目されるのがデジタル領域への進出だ。2026年6月期においてもデジタルコンテンツ領域での取り組みを進めている。さらに2026年7月には合弁会社「VEID」を設立し、バーチャル空間や3Dコンテンツ関連分野への事業展開を加速させる体制を整えた。
これは、同社が長年培ってきた「造形」をデジタル領域へ広げていく動きとして見ることができる。
プラモデルやフィギュアでは、キャラクターやロボットを立体物として表現してきた。そのノウハウを、3Dコンテンツやバーチャル空間など、デジタル上の表現へ広げることができれば、従来とは異なる顧客層や収益機会につながる可能性がある。
同社自身も、これまで培ってきたIP創出力、造形技術、クリエイティブ能力を活用しながら、デジタルコンテンツや関連領域、ライセンスビジネスなど新たな市場への展開を進める方針を示している。
■研究開発も「事業化」を意識した体制に
研究開発の進め方としては、専任の研究開発部門を設置しておらず、各事業部門が特定の案件ごとに研究開発活動を行っている。既存の事業やIP、クリエイティブと接続しながら、新しい事業につながるテーマを探索しているとみられる。
研究開発費そのものは6700万円と、同社全体の規模から見ればまだ大きな金額ではない。しかし、これまで研究開発費をほとんど計上していなかった同社が、2024年6月期から継続的に投資を拡大していることには意味がある。
特に2026年6月期には前期比で5倍を超える水準まで増えており、「新領域の確立」を掲げる経営戦略と研究開発投資が明確につながり始めている。
■既存事業を守りながら「その先」を作る
もちろん、壽屋がプラモデルやフィギュアから離れようとしているわけではなく、むしろ、同社が持つIP、造形技術、商品開発力、クリエイティブといった既存の強みを、新しい市場へ展開することが新領域戦略の基本にある。
既存事業でファンを獲得し、そこからIPを育て、アニメやゲーム、デジタルコンテンツ、3D、バーチャル空間、ライセンスなどへ展開していく―――こうした取り組みが進めば、これまで「プラモデル・フィギュアを売る会社」だった壽屋が、IPを起点に複数の事業領域で収益を生み出す会社へ変わっていくことになる。
研究開発費の急増は、その変化が数字として表れ始めたものともいえる。
現時点では、研究開発によってどの程度の新規事業や収益が生まれるのかはまだ見えていない。今後は、研究開発投資が具体的な商品・サービスとしてどのように事業化されるのか、また「アルカナディア」などの自社IPがプラモデル以外の領域でどこまで収益基盤を広げられるのかがポイントになりそうだ。
「プラモデル・フィギュアに続く新領域」は、壽屋にとって単なる新規事業開発ではなく、既存のIPとクリエイティブを次の市場へ広げるための成長戦略。そのための研究開発投資が、ここにきて本格化している。
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会社情報
- 会社名
- 株式会社壽屋(コトブキヤ)
- 設立
- 1953年1月
- 代表者
- 代表取締役社長 清水 一行
- 決算期
- 6月
- 直近業績
- 売上高165億200万円、営業利益16億1000万円、経常利益15億8500万円、最終利益10億9100万円(2025年6月期)
- 上場区分
- 東証スタンダード
- 証券コード
- 7809