
広告会社として知られる電通の社内横断型クリエイティブチーム「デンツウゲームセンター」が、インディーゲーム展示会「東京ゲームダンジョン14」に3タイトルを出展した。メンバーは普段、広告制作に携わるクリエイターたち。ゲーム好きが集まり、自分たちでもゲームを作ってみようというところから活動が始まったという。
今回出展したのは、生成AIをゲームの仕組みに取り入れた『Verse of Birth(バースオブバース/バスバス)』と、開発中の『異常美術修復士』『QUARLECT(クアレクト)』。それぞれ異なる発想やアプローチを取り入れた作品となっている。
ビジネスとしての展開も大切にしながら、まずは自分たちが面白いと思うものを作ってみる。そんな活動の背景や、ゲーム開発を通じて得られる気づきについて話を聞いた。
――:今回、東京ゲームダンジョン14に出展した経緯を教えてください。
電通の社内でゲーム好きが集まって活動している「デンツウゲームセンター」というチームがあります。もともとは広告制作業務のスタッフィングのために、それぞれの社員が詳しいタイトルを知るための集まりだったのですが、「自分たちでもゲームを企画してみよう」という声が上がり、ゲーム開発に挑戦することになりました。今回の東京ゲームダンジョン14では、その中で生まれた3タイトルを出展しました。
――:ゲームが好きというところから始まった活動で、ビジネスとしての展開を当初から考えていたわけではないのでしょうか。
そうですね。正直なところ、ビジネス面で成果を上げるのは簡単ではないとわかりつつも、「まずはやってみよう」という感じで、みんなで挑戦してみている状態です。
今回出展したタイトルのうち、『Verse of Birth』は2年前から開発を始めたものです。残りの2タイトルは今年の夏ごろから開発を始め、ようやくプロトタイプができたので、今回遊んでいただける形で出展しました。
――:出展した3タイトルについて、それぞれの特徴や見どころを教えてください。
まず『Verse of Birth』は、生成AIを使って手札となるユニットを生み出し、チームを編成してダンジョンに挑むローグライクゲームです。プレイヤーが唱えた言葉からAIが「ロゴス」と呼ばれるユニットを生成する仕組みになっています。
「AIを遊びに使うとどうなるか」ということに挑戦した作品です。AIを使うことで、こういう楽しみ方ができるんだというところを味わっていただければと思います。2026年内の発売を予定しています。

『異常美術修復士』は、「間違い探し」と「立体音響」を掛け合わせたホラーゲームです。企画者はもともと美術大学で美術を学んでいたアートディレクターなのですが、美術作品を間違い探しにしたら面白いのではないかと思ったことから生まれました。
プレイヤーは、怪異に取り憑かれた美術品の異常を見つけ、本来の姿に戻す「異常美術修復士」となります。特殊なろうそくをともしている間だけ絵に潜む異常を見つけられるのですが、ろうそくの光は怪異にもこちらの存在を気づかれやすくします。
怪異が近づいてきたらろうそくを消して絵を見えなくし、遠ざかったら再び火をつけて異常を探す。目で見ながら、音でも怪異との距離を測るという、2つの感覚を使って遊ぶ作品です。

『QUARLECT』は、もともとリアルのカードゲームとして作っていたものをデジタル化した作品です。同じ色、または同じマークのカードを4枚そろえると獲得でき、その枚数を競います。縦・横・斜めだけでなく、2×2の四角形でもそろえられるため、シンプルながら読み合いが楽しめます。
リアル版では最大8人で遊べるゲームとして作っていましたが、今回初めてデジタル版のプロトタイプを出展しました。デジタル化してみると、リアル版とはまた違った難しさもあると感じています。

――:今回の出展で、来場者の反応はいかがでしたか?
『異常美術修復士』は、皆さんかなり集中してプレイされていて、すごく怖がっていただけました。最後には「楽しかった」と言っていただけることもありました。
ただ、今回のバージョンは難易度が高くなりすぎてしまったので、今後はもう少し難易度に幅を持たせたいと思っています。実際に出展してみないと分からないことも多く、いろいろなご意見をいただけるので、とても勉強になります。
『QUARLECT』についても、「面白かった」「難しかった」といった感想をいただきながら、楽しんで遊んでもらっています。こうした機会を通じて、改善につなげていきたいと考えています。

――:メンバーの皆さんは、普段どのような仕事をされているのでしょうか。
本業は広告会社のクリエイターです。普段は広告制作をしています。ゲーム開発は初めてというメンバーもいますし、今回の『異常美術修復士』のように、もともとホラーゲームが好きで、自分でも作ってみたいと思ったことから始めたケースもあります。
『Verse of Birth』についても、普段の仕事でAIを活用しているメンバーが、仕事とは違った使い方をしてみたいと考えたことがきっかけです。AIでキャッチコピーを作るシステムなどを扱っている中で、仕事に使うだけでなく、もっと遊び心のある使い方をしたらどうなるか、という発想から生まれました。
それぞれが普段の仕事で培っているものや、個人的に興味を持っていることを持ち寄って、ゲームを作っています。

――:会社としても、こうした活動を後押ししているのでしょうか。
会社としても、こうした取り組みは初めてだと思います。ただ、クリエイティブ部門には、それぞれがやりたいことを応援する風土があります。
音楽を作っている人もいれば、個展を開いたり、漫画を描いたりしている人もいます。その中の一つとして、「ゲームを作っている人がいてもいいだろう」という形で、活動を後押ししてもらったのかなと思います。
――:ゲーム開発を通じて、本業にもつながる部分はありますか?
もちろんあります。普段の広告制作だけでは、ゲームのプログラムを組む人たちと接点を持つ機会はなかなかありません。一方で、広告はCMやポスターが全てではないので、広告として機能するゲームというものもあり得ます。ここで得た人脈が「ゲームを広告として使う」というアイデアの選択肢になると思っています。また、ゲームを作ることで、見るだけの広告では実現できないような、双方向のコミュニケーションに必要なことを知ることができます。
人の心を動かすという部分では、広告もゲームも共通するところがありますし、学べることは多いと思っています。今回の出展で得た気づきや経験を、本業にも活かしていきたいです。
――:今後もゲームイベントへの出展や、ゲーム開発を続けていくのでしょうか。
はい。今後もどんどんイベントに出展していきたいと思っています。そこで得た学びを本業にも活かしながら、ゲーム開発も続けていきたいです。いろいろな形でクリエイティブの可能性を広げていければと考えています。
もちろん大変なこともありますが、「作ってみたい」という気持ちを原動力にしながら、我々なりの挑戦を続けていきたいです。
▼『Verse of Birth』Steamストアページ
https://store.steampowered.com/app/4736800/Verse_of_Birth/
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