消費者庁、コンプガチャを中止要請との報道…資本市場関係者との問答(放談)

5月5日付の読売新聞朝刊は、消費者庁は、ソーシャルゲームの「コンプガチャ」(コンプリートガチャ)に対して、景品表示法の懸賞に当たると判断し、近く見解を発表すると報じている。実は数日前、当サイトに読売新聞から問い合わせがあったこともあり、週明けに何か動きがあるかと予想していたのだが、本日だった。 報道によれば、今後、業界団体等を通じてソーシャルゲーム各社に指導を行い、従わない業者には景表法に基づく措置命令を出す方針とのこと。「コンプガチャ」とは、ガチャとビンゴのようなシートを合わせたもので、シートに指定されているカードをガチャで全て埋めることで、さらにレアなカードを得られる仕組み。 なお、コンプガチャについては、課金ユーザー1人あたりの単価(ARPPU)を上げるための施策として、2011年から順次取り入れ始めていた。シートの全てを埋めるために多額の課金が求められるケースも多く、射幸性の高い商品として批判は根強くあった。またRMTと絡むことで、賭博性も問題視されている。 各社は18歳未満の利用を制限したり、RMT対策を行っているが、コンプガチャそのものに規制がかかることになる。ソーシャルゲーム各社は、新しい収益獲得の手法を模索する必要に迫られる。   以下はまったくの余談(放談)なので、適当に読み流してほしい。サイトの性質上、資本市場関係者と情報交換することが増えてきたのだが、特に今年に入ってからの特徴として、やはりコンプガチャへの規制の影響についてよく質問されるようになったように思う。質問の意図として、コンプガチャによる客単価の上昇で収益を伸ばしてきたソーシャルゲーム会社は規制が入った途端、収益が急速に縮小することが懸念されるのでは、とのことだった。問答では具体的な上場会社が出たが、ここでは出さないでおく。 これに対し、そもそもコンプガチャの導入に対する問題意識としては、ソーシャルゲームの構造的な問題として、提供されるゲームが多様化・複雑化し、プラットフォーム内でのユーザーが分散する中、限られたユーザー基盤から収益を稼ぐ状況になっていることがあるように思うと回答した。そうしたなかで、昨年夏あたりからARPPUを上げる手法が模索されており、そのひとつとして注目されたのが連続ガチャやコンプガチャ、レベルアップガチャだったと思われる。背景にある問題は、PCのMMO市場などと似ていると話した。 GREEやMobageのランキングで、例えば、Mobageでは昨年は40~50万人集めてようやく入れたのに対し、10~20万人規模の会員数で全体ランキングの上位に入るケースが増えてきた。これは同じように感じている方も少なくないと思う。ユーザーが分散化しているのか、アクティブユーザーが減ったのかは定かではない。こうしたなか、一部ではARPPUではなく、ARPU(会員1人あたりの単価)を上げる動きもあると聞いているが、ユーザー数という制約があるため、成長を目指す場合、基本線はARPPUを上げることになるだろう。 これは全くの思いつきだが、ガチャ以外の可能性としてカード合成周りが注目されると考えられる。MMORPGなどのオンラインゲームでは武器・防具などを強化する仕組みとして、鍛錬や精錬等と呼ばれるシステムが取り入れられており、大きな収益源となっている。ゲームによって異なるが、武器・防具と素材アイテム、ゲーム内通貨を組み合わせて「合成」するもので、大成功・成功・失敗などに分かれる。合成関係に課金するケースはまだ少ないので、このあたりはポイントになるだろう。成功確率をいじったり、失敗時はロストするなどの仕様を盛り込めば、かなりえげつないものができあがる。 ということで、現実社会や他のコンテンツの要素を取り入れるなどして、ARPPUを上げる手法は無数に考えられるため、規制が入った直後は収益への影響は避けられないだろうが、中期的な影響については限定的だろうが、長期的にはわからない、というか長期的に業界そのものがどうなっているかもわからない、と回答した。個人的には、ソーシャルゲーム企業の「成長性」という観点では、ゲームの多様化・複雑化によるユーザー離れやユーザーの分散化、それに伴い、各タイトルは、ユーザー数の前提を下げて、そこからいかに多くの利益を上げるかという収益モデルになりつつあり、これが負のスパイラルになることを懸念していると答えた。ガチャ問題は本質的ではないと。 もうひとつ、資本市場関係者によく聞かれたこととして、「業界としての年数も短い、世界に打って出ようとしている。さらに行政からの指導や規制が入ろうとしている。なのに、なぜ未だにお互いに訴訟しあって足の引っ張り合いをしているのか。なぜ業界団体をつくるなどしてまとまれないのか」という指摘も多かった。これはあまりうまく答えられなかった。 思えば、かつてソーシャルゲームの収益は、ユーザーの「負の心理」を刺激することで伸ばしてきたといわれてきたものだった。他のユーザーとのバトルで勝ちたい、仲間の役に立ちたい、負けたくない、ランキング上位に入りたいといったユーザーの欲求を刺激していた。それがいつしか、強くなるための手段である強いカードの収集が目的となった。ユーザーに提供するサービスの本線であるゲームからいかに収益を上げるかに立ち返ることが今後のポイントになるのではないか。
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
https://dena.com/jp/

会社情報

会社名
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
設立
1999年3月
代表者
代表取締役会長 南場 智子/代表取締役社長兼CEO 岡村 信悟
決算期
3月
直近業績
売上収益1367億3300万円、営業損益282億7000万円の赤字、税引前損益281億3000万円の赤字、最終損益286億8200万円の赤字(2024年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
2432
企業データを見る
グリー株式会社
http://www.gree.co.jp/

会社情報

会社名
グリー株式会社
設立
2004年12月
代表者
代表取締役会長兼社長 田中 良和
決算期
6月
直近業績
売上高613億900万円、営業利益59億8100万円、経常利益71億2300万円、最終利益46億3000万円(2024年6月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3632
企業データを見る