【SPAJAM2018】「シリコンバレー企業の働き方」がテーマのトークセッションをレポート…村上臣氏、三淵啓自氏、千代田まどか氏、市川博之氏が登壇



スマートフォンアプリのハッカソン「スマートフォンアプリジャム2018」(SPAJAM 2018)でオープニングを飾るトークセッションが行われたので、その模様をレポートしておこう。トークセッションには、SPAJAM2018実行委員長の村上臣氏(LinkedIn)、三淵啓自氏(デジタルハリウッド大学大学院)、千代田まどか氏(マイクロソフト)、そして、前回SPAJAM2017の優勝チーム「市川電産」の市川博之氏が登壇した。

トークセッションのテーマは、「シリコンバレー企業での働き方」だった。現地に13年住んでいたという三淵氏は「車で通勤するため、満員の通勤電車を経験したことがない」と述べつつ、勤務時にジョブディスクリプション(職務記述書)で仕事の内容が明確に定義づけられているため、それ以外のことはやる必要がないことが大きな違いと指摘した。自分のやれること、やることが明確で働きやすいという。シリコンバレーというより広く米国企業との違いと言ってもいいかもしれない。

村上氏は「日本企業ではジョブローテーションで広く経験をつみ、チームでいろいろなことをやろうという文化がある。LinkedInは日本企業に近い」と紹介した。また、何か新しいことをやる場合、他の部署や担当への「横の根回し」が大事で、それがなかなか大変とのこと。根回しができて「やろう」と一度決まると全世界で動いてくれるので、プロジェクトが一気に進むという。「夜寝ている間も地球の裏側で仕事を進めてくれるので助かる部分がある」。

 
▲三淵啓自氏(デジタルハリウッド大学大学院)


もう一つの大きな違いとして、企業としてのミッションやビジョンなどを従業員に深く理解させる点にあるという。シリコンバレー企業の特徴として、「企業のビジョン、ミッション、カルチャーを重視している。LinkedInに入社した時にも研修で叩き込まれた」と述べた。千代田氏もマイクロソフトのミッションを紹介し、シンガポールでビジョンを叩き込まれたという。

また、千代田氏は、会議は何かを決める場であると明確に決まっていることがあるとし、日系企業からマイクロソフトに転職してきた人の話を紹介した。「会議で何かを決まったのは初めてと話していた」。以前に働いていた日本企業ではとりあえずみんなで集まって、状況報告や偉い人の話を聞いて終わり、何も決まらずに解散ということが多かったそうだ。

村上氏は「会議で発言しない人は次回からは呼ばれない。それはハブにするということではなく、あなたのために時間をお返ししますという考え方だ。時間はコストだから。また重要なのはD(決める人)を決めてから会議に臨むことだ。会議参加者は意見を自由に出す。それに基づいて決定者が決める、となる。日本だと合議制が多い。1人でも反対すると決まらないこともある」。

 
▲ちょまどこと千代田まどか氏(マイクロソフト)。


三淵氏は、日本企業の会議について、報告や調整の場と位置づける考え方が強いとしつつ、企業風土の問題も大きいとコメントした。「日本企業には責任を取りたがらない文化がある。日本は不祥事が起きたときに誰がやったのか、誰の責任なのか明確にならないことが多い」。村上氏は「問題が起きても誰も首にならないことが多い。LinkedInに限らず、ボスが人事権を持っているので、解雇される可能性もある」という。

このほか、市川氏は「働き方」というより、世界の企業のシリコンバレーにおける取り組みを紹介した。昨年、シリコンバレーツアーに行った際、SAPなど"工程"を考える企業が多いと印象を語ったあと、ヤマハやトヨタなど日系企業がシリコンバレーに拠点を置いて、現地のスタートアップのようなことをやっていたことに驚いた。「日本でできないことを現地でやりたいと考えていることが多い」。

これを受けて、村上氏は、「SAPも日系企業と同じだ。ERPとは違うサービスを作る目的で、シリコンバレーに拠点を作った。そして、いまやSAPは、ERP以外の収益が上回る勢い。シリコンバレーでのイノベーションに成功した会社のひとつといっていいだろう」とコメントした。

 
▲SPAJAM2017の優勝チーム「市川電産」の市川博之氏


最後に市川氏は、SPAJAMで優勝してシリコンバレーツアーに行くと昼間にプレゼンしてボコボコにされて、その夜に修正して英語を覚え直して…の繰り返しで毎日徹夜で大変だったものの、ハッカソンを含めて限られた時間で集中して取り組むことで大きな成長につながったという。また行きたい会社の希望があれば、3社ほど伝えると、MCFがその強力なネットワークでアポイントメントをとってくれるので事前に決めておくといいというアドバイスもあった。

村上氏は、「普段との業務と異なるギリギリのことをやることは大きな成長につながる。ハッカソンはその第一歩。優勝してシリコンバレーツアーという慣れない環境、つたない英語でプレゼンするのだから当然うまくいかないことばかりだが、そこで学ぶことは非常に大きい。今回優勝したチームが来年もここで成長した姿を見せてもらえれば嬉しい」と述べてトークセションをまとめた。
 
▲村上臣氏(LinkedIn)

 

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