【インタビュー】開発陣の考える『サガ』の魅力とは?そして、ソーシャルゲームのジレンマを乗り越えた先に生まれた『ロマサガRS』のシステムにも言及


IPタイトルのスマートフォンゲーム化で多くの人気作を手掛けるアカツキ<3932>。また、これまで数多くのビッグIPを創造してきたゲーム業界の雄、スクウェア・エニックス<9684>。

2018年12月6日、この2社の強力タッグにより開発された『ロマンシング サガ リ・ユニバース(ロマサガRS)』が配信直後から注目を浴びたのは記憶にも新しい。

Social Game Infoではアカツキが制作しているタイトルに携わっている方々を対象にインタビューを実施。第2回となる今回は、前回に引き続き『ロマサガRS』の開発および運営チームにお話を伺ってきた。『サガ』シリーズに対するそれぞれの想いや、スクウェア・エニックスとアカツキで互いの視点だからこそ見えた両社の強み、さらに今後『サガ』シリーズの進化はどこへ向かっていくのか、より『ロマサガRS』を深掘りしたインタビューをお届けしていく。

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【インタビュー対象者】

写真左から順に、
アカツキ プロデューサー 山口修平氏
スクウェア・エニックス プロデューサー 市川雅統氏

アカツキ クリエイティブプロデューサー兼エンジニア 島崎清山氏
アカツキ ディレクター 仲田理樹氏

 

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『サガ』らしい自由さをスマホで表現するために


――:皆さんが『サガ』シリーズの中で、特に好きだと思っている箇所についてもお聞きしたいのですが、いかがでしょうか。

市川雅統氏(以下、市川):『サガ』シリーズは、ある程度までゲームを進めると、次にどこに向かうか悩む瞬間が訪れます。本当の旅のように選択肢がいくつもあるので、本当にその身ひとつでバックパックを持って旅行をしているような感覚が得られるんです。その時は気付いたらもうゲームの中に没入していて、無限の世界が広がって見える。その感覚が、自分は凄く好きです。

バトルを繰り返してキャラクターを育てる時も、次にどう育てていこうと考えるのが楽しみです。僕はそこだけで結構満足できます。


――:本作には、レアリティの異なる同じキャラクターから技をひとつだけ継承させられるシステムが入っていますが、それもキャラクターを育てる楽しみに繋がっているのだなと感じます。

市川:そうですね、レアリティの高いキャラクターを手に入れたらそれで終わりにはしたくなかったんです。どの技を継承させるか悩んだり、「あのキャラにこの技を継承させたらこうなるかも……?」と考えている時が一番楽しいです。正解がひとつではないので、トライアンドエラーを繰り返しながら「あぁ、やっぱりこっちだったな」と、ずっと遊んでしまいますよね。


山口修平氏(以下、山口):やはり”『サガ』らしさ”を表すひとつの要素として、自由さが挙げられますが、その中で今回の技継承はそれを表現するものとして考えました。

島崎清山氏(以下、島崎):『サガ』シリーズは元々、技の入れ替えができるようになっていますので、今のままで満足かと問われると難しいところではあります。スマホのゲームとしては自由さがあると感じられるかもしれませんが、もっとこうして欲しいというご要望もあると思います。運営型ゲームですので、何とか今以上のことをできないか、という思いは常にあります。


――:そんな島崎さんは、『サガ』のどういったところがお好きなのでしょうか?

島崎:何周かプレイすると「今回の旅はどんなものにしよう」、「どっちから攻めよう」、「どのキャラをどう鍛えよう」などを考えます。ただ、『サガ』は複雑な部分もあり、どこかで思い通りにならない場面に遭遇するんです。例えばロマサガ2であれば、次はこの国を救おうと思っていたら、行ってみると滅亡している、というように。そうした、思い通りにいかない一期一会なこともまた『サガ』の魅力だと思います。

シリーズでは『アンリミテッド:サガ(アンサガ)』を一番長くプレイしているのですが、この作品は特に一期一会感があります。また、作品の中で多くを語らないゲームになっていて「この世界は何なんだ!?」などと想像力を搔き立てられるのも好きなところです。

山口:僕は、RPGは、シナリオや世界観から入るタイプなのですが、サガシリーズの独特な物語体験は唯一無二だと思います。

特に『サガ』シリーズは、ストーリーとシステムが相まって深みが増しているのと感じています。例えば、ロマサガ3でいうと、一番初め、僕は王道の主人公キャラに見えるユリアンでプレイを始めたのですが、戦闘面のことを考えるとあまり目立って育たないんですよね。僕の中ではお話的にもお姫様であるモニカを推していきたいのですが、実際のバトルでは幼馴染のエレンに依存している状態が続いている……。


では、この時のユリアンの気持ちとは……ということを考えるのが面白く、システムと物語が絶妙バランスでかみ合っていますよね。これは、河津さんが、プレイヤーの想像の羽を伸ばす余白をあえて用意していただいているんだと、思っています。

市川:そういった意味では、僕は『サガ スカーレットグレイス 緋色の野望』に登場するバルマンテとアーサーのくだりが本当に好きです。物語を進めていくと、段々これが現実か現実じゃないのか、わからなる瞬間があります。

バルマンテとアーサーが、まるでホームズとワトソンのような関係で毎回、謎を解いていくのですが、ゲームが進むにつれて2人の掛け合いでゾッと怖くなる瞬間があったり、ふいに関係性が分からなくなる瞬間があるんです。それがまたゲームシステムと相まっていて、凄い物語体験になっています。ゲームでないと味わえない物語体験が、さらにユーザーのプレイスタイルによって変わっていく。制作の中で、こういった新しい体験を感じられたことが嬉しかったですね。

仲田理樹氏(以下、仲田):僕は『サガ フロンティア』のレッド編が好きです。誰もいないところでアルカイザーに変身して強くなるという、ゲームシステムとストーリーのマッチは、シンプルですが、ゲームの奥深さを出していて好きです。こういったシステムとストーリーによる奥深さは、色々なところで体験することができますよね。

島崎:シリーズごとに違った体験ができるのも『サガ』の良いところで、私は物語としては『サガ フロンティア2(サガフロ2)』が大好きです。その好きなシーンで『ロマサガRS』の演出に入っているものもあります。『サガ』ファンの皆さまが好きな場面もあると思いますので、喜んでいただけるようなものを今後も実装していきたいと思っています。


――:自分が好きな『サガ』の要素を『ロマサガRS』に取り入れたいという想いは、やはり皆さん持たれているものなのでしょうか。

仲田:僕も市川さんと同じで、『サガ』の自由さや「さて、今回はどんな旅を楽しもうかな」と何周も遊べる面白さが本当に好きな部分です。そういった面白さは、スマホでも、今以上に表現できるはずだという想いは持っています。

そのため、常に遊び場をもっと追加していきたいと考えているのですが、『サガ』らしいインパクトのあるもので、且つ何回遊んでも楽しめるようなものを作っていきたいです。少しお時間をいただくかもしれませんが、定期的に新しい要素を入れて、今までとは違った遊びを提供していきます。

 

『ロマサガRS』から得られる体験とは


――:先ほど、『サガ』シリーズは作品によって違う体験ができるという話もありましたが、『ロマサガRS』では今後どのような体験ができるのでしょうか。

山口:開発時の目標の一つとして、「プレイヤーが独自のスタイルで楽しんでいただけるようにする」というのがあったのですが、現在、プレイヤーの皆さんのお声を拝見しますと、「この技を使えば楽に勝てたよ」、「色々考えたけど結局力でゴリ押した」といったように、皆さんそれぞれのスタイルで楽しまれていただけているように思いますので、これはひとつ達成できてよかったな、と考えています。

仲田:この点については、これからもひたすら肯定し続けていきたいです。全キャラクターがなるべく活きるように設計しているので、何かひとつの答えを正解にするのではなく、全てのやり方が正解であるということを突き詰めていきたいです。今はひとりで遊ぶゲームになっていますが、将来的に複数人で遊べるような機能が入ったとしても、そこは守りたいと思います。


――:前回のインタビューで、途中に大改修があったというお話も伺いましたが、逆にここは変えなかったというポイントはありますか?

市川:元々『サガ』は主人公が多いタイトルです。なので、『ロマサガRS』の中ではAランクとして登場しているキャラクターでも、原作ではそのキャラを主人公にして遊んでいた方も当然いると思います。なので、どのキャラクターも大事にできる仕様にしたいという想いは譲りませんでした。

島崎:せっかく思い入れのあるキャラクターを手に入れたのに、しばらくしたら弱くなっていて使えない、ということが無いようにと。

市川:開発開始時から、好きなキャラクターをどこまでも掘り下げられるような仕様にしたいという話をしていたのですが、それだと新しいキャラクターを登場させても、欲しくなくなるかもしれない、という不安もあり、その部分はかなり悩みました。

島崎:リリース前、周囲からもその点をとても心配されましたが、そこは頑なに押し切りました。「色々な遊び方ができるゲームにしたいので、この方針でやらせてください」と。

仲田:結果、配布キャラのみをとことん育ててベリーハードのクエストを全てクリアしたという方も見受けられますね(笑)


島崎:気付くと独自ルールで縛りプレイを始めるのは、さすがの『サガ』ファンですね(笑)

――:現在『ロマサガRS』は非常に好調のように見受けられるのですが、現状をどのように分析されていますか?

山口:新しいキャラを手に入れることで、研究対象の幅が広がるという感覚があるんじゃないかなと思います。新キャラを手に入れた際、「よし、具材が揃ったから、これをどう料理しようかな」という楽しみがあるのかなと。キャラを手に入れたところで終わるのではなく、そこから始まる設計にしているからこそ、今多くの方に楽しんで頂けているのと考えています。

――:今のままでも十分楽しいけど、手に入ることで新たな楽しみが見つかるかもしれないという期待感でしょうか。

山口:はい、そういったところを実現できているからこそ、次のキャラも欲しいという気持ちになっていただけているのではないでしょうか

市川:むしろ、独自の楽しみ方を探していただくところが面白さですよね。

 

両社の共通点は「体験を大事にする意識」


――:これまで『ロマサガRS』の開発を通して一緒にお仕事をされてきて、互いの特徴などが見えた瞬間はありましたか? 

島崎:繰り返しになりますが、『サガ』チームと出会って、『サガ』を作ることにおけるチャレンジ精神を肌で感じられたのは刺激的でした。

山口:市川さんは、『サガ』シリーズと佐賀県でコラボした「ロマンシング佐賀」キャンペーンや、信濃屋さんから『サガ』のウイスキーの発売など、特にチャレンジをされていますよね。僕は、そういった試みこそファンの方々が長くファンで居続けていただくために、とても重要だと感じています。

常に話題を途切れさせないという意味ではソーシャルゲームの運営に近いところがあると思いますし、最近では舞台「SaGa THE STAGE ~七英雄の帰還~」も含めて日々刺激を受けています。


「ロマンシング佐賀」特設サイト:https://romasaga.jp/1/
「ロマサガ×信濃屋」特設サイト:https://shinanoya.co.jp/saga-stage/
「SaGa THE STAGE ~七英雄の帰還~」公式サイト:http://sagastage.jp/

市川:アカツキさんは若くてエネルギーのある会社です。自由に仕事をされている分、とてもコンテンツに集中されています。例えば、「誰かに共有しなくては」というような無駄なノイズが少ないので、チームとして取り組むスピードも速く、新しい会社ならではの強みだと感じました。また、一緒に仕事をしていて、新しいことにチャレンジしたい人たちを許容する会社だとも思いました。

『ロマサガRS』に限らず、アカツキさんが展開されている事業からは、利益よりユーザー体験を重視されているのかなという印象を受けます。その点は、先ほど仰っていただいた舞台やウイスキーでのコラボなどを含め、私も凄く大事にしているとこです。普段の事業とは取り組みが全く異なるので、会社としての利益のみを考えるのであれば実施しない方が良いということもあります。

しかし、ある日ふとBarに入った時に自分が好きだったゲームのウイスキーが並んでいたら嬉しいですよね。「ロマンシング佐賀」をきっかけに、佐賀県までひとり旅をしてみるなど、何か人生を変えるきっかけになる体験を『サガ』を通してしたいと考える人がいれば、実施する意味があると思っています。


また、ここ数年、ゲーム以外の部分で行った施策から『サガ』が好きな人とはどのような人々なのかというところを直接、開発チームのメンバーにイベントに来て見てもらった経験は今も活きています。お金を払って数値で見るリサーチだけでは得られない、実際に目と目を合わせて会話をすることで得られる経験があります。そういった価値観を、アカツキさんとシェアして進めていくことができました。

舞台の話だと、開催したタイミングがちょうど『ロマサガRS』としては開発末期で最も大変な時期だったんです。そんな状況だからこそ、会社の方針として「今は忙しいから舞台に行ってはダメだ」ということも言えたと思うのですが、ロマサガRS開発チームで会場まで見に来ていただけたのは嬉しかったです。こうした、社員がやることを許容できる土壌があるのは良いですね。

仲田:あの時は皆のテンションが超絶上がりました!

島崎:舞台を見たからこそ、自分たちも”この『サガ』を盛り上げていく一員である”という意識が、そこでまた一段と上がっていたように思います。

山口:今後も、スクウェア・エニックスさんとはゲームの取り組みをしっかりと続けていきつつ、それ以外の領域でも何か一緒にご協力できればと思っています。


――:最後に、これから『ロマサガRS』がどのように進化していくかという期待も含め、読者の方々にメッセージをお願いします。

山口:開発陣は、『ロマサガRS』で、新しさと懐かしさ、同時に提供することを心掛けてやってきました。運営においても通り一遍のことをするのではなく、斜め上の驚きや、新鮮な体験をお送りできるよう頑張ってまいります。是非、引き続きプレイして、この挑戦の応援をしていただければ幸いです。


島崎:まだまだ至らないところがあるので、改善を含め、より楽しんでいただけるよう頑張って開発をしていきます。ファンの方々のゲームプレイスピード、熱心さに対して我々が追いついていない部分もありますが、そこは温かく見守っていただけるとありがたいです。『ロマサガRS』は、『サガ』ファンの方々がずっと居続けられるような場所に育て続けたいと思っていますので、一緒に盛り上げていただけると嬉しいです。

仲田:『サガ』ファンの方々や『ロマサガRS』から新しく始めたという方々から、「面白い」というコメントや「ここ直して欲しい」というコメントを沢山いただいています。そういったご意見をエネルギーにして僕らはゲームを作れています。いつもありがとうございます。

今はストレスを感じてしまうところや、遊ぶことが尽きてきた方もいらして、大変心苦しく、また悔しい気持ちもあります。まずは至らない部分を早急に改善して土壌を整えてから、新しい遊びや『サガ』らしい遊びをどんどん追加していきますので、これからも期待していただければと思います。皆様のプレイ量に負けないくらい、僕たちも開発をしていくので、引き続きよろしくお願いします。

市川:ファンの方々やプレイして下さっている方々には感謝しかありません。色々なイベントでお会いしている人からは直接応援をいただくこともありますし、そうした声があって今があります。ありがたいことに多くの方に『ロマサガRS』を遊んで頂けたことで、またお客様にも色々な形で恩返しができるのではないかと思っています。

どういった形になるかは検討中ですが、『ロマサガRS』内を含めてシリーズとしても皆様に喜んでいただける事を考えていきたいと思います。


――:本日はありがとうございました。

(取材・文 編集部:山岡広樹)
(編集協力 ライター:谷山義人)
 

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■『ロマンシング サガ リ・ユニバース』
 

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株式会社スクウェア・エニックス
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会社情報

会社名
株式会社スクウェア・エニックス
設立
2008年10月
代表者
代表取締役社長 桐生 隆司
決算期
3月
直近業績
売上高2428億2400万円、営業利益275億4800万円、経常利益389億4300万円、最終利益280億9600万円(2023年3月期)
企業データを見る
株式会社アカツキ
http://aktsk.jp/

会社情報

会社名
株式会社アカツキ
設立
2010年6月
代表者
代表取締役CEO 香田 哲朗
決算期
3月
直近業績
売上高243億3600万円、営業利益57億円、経常利益52億700万円、最終利益13億4200万円(2023年3月期)
上場区分
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