SIE、『DEATH STRANDING』ディレクター・小島秀夫監督へのインタビューを公開…「直接会って体温を感じるのは人間に必要なこと」


11月10日、PlayStation4用ソフトウェア『DEATH STRANDING (デス・ストランディング)』の発売を記念し、特別イベント"『DEATH STRANDING』 World Strand Tour(ワールド・ストランド・ツアー) 2019 TOKYO"を開催。小島秀夫監督をはじめ、日本語吹き替えを担当した豪華声優7人が登壇し、会場に集まった約200人のファンとの交流は大盛況となった。

本イベント終了後、メディア向けの質疑応答が行なわれ、久しぶりのファン交流イベントを終えての想いや、『DEATH STRANDING』の世界観や思想などについて語られた。

■ファンとの交流イベントを終えて

──2つのギネス世界記録に認定されたことへの感想と、フォロワー数世界一のゲームディレクターとして今後どのようなことをSNSで発信し、繋がりを深めていきたいかをお聞かせください。

素直に嬉しいです。SNSは諸刃の剣というか、使い方しだいですが、繋がっていくのは悪いことじゃないと思います。僕の場合は、読んだ本や見た映画についてつぶやくと、僕のファンがどんどん拡散してくれて、最終的にはその作家さんに届く。そこからDMで友達になるような、そんな繋がりが可能な時代です。SNSが本来持っているパワーというのはポジティブなので、繋がることの良さをみなさんに拡散していきたいと思います。けっこう疲れてきていましたが、やっぱりもうちょっと頑張りたいです。

──ワールドツアー中に発売を迎えて、実際にプレイをした方の声が届き始めていると思います。それらについてどんな感想をお持ちですか?

間接的に繋がるというコンセプトのゲームですが、僕は遊んでほしいと思っていました。世界は繋がっているのにヘッドショットばかりしていて、それはそれで楽しいんですけど、そこに問いかけをしたわけです。ゆるい繋がりが良いという人が想像していた以上にいて、それはちょっとビックリしました。とくに日本の方ですね。



──日本のユーザーと海外のユーザーで、遊び方の違いを感じるところはありますか?

そうですね、今は個の時代じゃないですか。個人が自由に動いて、ゲームがその象徴でもある。そういうものとは真逆の行為をしているゲームで、国によって多少の印象の違いはあると思います。

──ファンと交流するイベントは久しぶりだったと思いますが、やってみてどんな感想を持たれましたか?

4年ぶりの新作で、ワールドツアーは10年ぶりくらいになります。パリ、ロンドン、ベルリン、ニューヨーク、サンフランシスコ、そして東京。繋がろう、繋がろうと言っていますが、実際に会うのが一番良いと思うんですね。会えない人はネットを使うわけで。直接、フォトセッションやサイン会をして、接触や握手をするのは、しばらくやってなかったことなんですが、すごく良いなと。初めて会う人ばかりで言葉も違いますが、握手をして体温を感じて、直接会って話をするということは、やっぱり人間に必要だと思いました。今回、10年ぶりにやって非常に良かったですし、日本の方とはギュッと近づいて写真を撮れませんが、今日はそれをやってみました(笑)。「肩を組んでいいですか?」と、意外にみんな喜んでくれました。


■『DEATH STRANDING』について

──本作にはノーマン・リーダスをはじめ、映画界で活躍するキャストがたくさん出演しています。監督自身は、映画とゲームの垣根をどのように考えていますか?

ずっと言い続けていることですが、映画とゲームは、インタラクティブの部分で180度違うものでした。フィルムとデジタルだったので。今は両方デジタルになって、将来はストリームという同じ場所に集まるはずです。映画は映画でスクリーンや劇場に残りますし、今のゲームも残りますが、その間がどんどんなくなってきて、どちらでもないデジタルのエンターテインメントが出てくると思います。映画とゲームは、プロセスが途中まで一緒なんです。世界観を作ったり、モデルを作ったり、パフォーマンスキャプチャーも映画でやっていることです。ただ、ゲームは最終出力がインタラクティブなだけです。途中まで一緒ですし、同じテクノロジーを使いますし、そうなると当然、同じクリエイターや同じキャストがストリームの中に入ってきます。そこに垣根というものはなくなって、すごく広い大地で繋がる、そういうものになると思います。僕は映画とゲームの橋渡しをするというか、そういうことをしないといけない世代だと思うのでやっていますが、5年、10年も経てば、こうした議論はなくなるかもしれません。



──『DEATH STRANDING』を実際にプレイして、すごく新しいゲーム体験だと感じました。開発中も新しいことはたくさんあったと思いますが、監督にとって一番のチャレンジだったのはどんなところでしたか?

いろいろな要素と何百というメカニズムでバランスを取ってできているゲームです。以前のステルスゲームでもそうでしたが、新しいものは形がないとわからないんですよ。僕の頭の中を見せるわけにもいかないので、言葉で説明したり、絵を描いたり。最初はスタッフにわかってもらえないのが大変で、「とにかく信じてください」ということで作り始めて、ある程度までできてくると、わかってくる。「いいね」を例にすると、ポジティブはあってもネガティブな評価がありません。するとスタッフが「なぜネガティブがないんですか? SNSにはあるじゃないですか」と言ってくるわけです。それと、お金やアイテムにならないことも同意してもらえませんでした。またスタッフが「ゲームのプレイヤーは自分が有利にならないことはしませんよ」と言ってきますが、それをやったら普通のゲームなんです。ポジティブというのは無償の愛や! と言って作り始めて、ようやく伝わったのは1年半くらい経ったころでしたね。

──ゲームの世界観を構築する要素に、エジプトの死生観が取り入れられていると思いますが、そうした考え方の中でエジプトを挙げているのは、どんな意図があるのでしょうか。

エジプトだけではないんですよ。僕は毎週、博物館とかに行くのでそういうことが好きですが、東洋と西洋の死生観は違いますよね。エジプトも違いますし、あらゆる死生観を入れています。これ、喋りだすと長いですが(笑)。生命が生まれて、進化していって、ある時点で「死」を確認したんですね。そこで宗教が生まれて、屈葬とかもそうで、エジプトでは死んだ者が帰ってくるためにピラミッドを作りました。生と死の概念が生まれたのが人類の起こりになるので、そこにフォーカスして、いろいろな要素を入れています。インカ帝国のことなども入れていますが、それは知りたい人だけ知るようなアーカイブに入れています。ヒッグスのファッションもそうですね。わかる人はわかる、知らなくていい人はわからない、そういう構造になっています。映画とは違うのでね。

──監督のツイートで月や月面に関するつぶやきがありますが、そこにどんな思い入れがあるのか、また『DEATH STRANDING』に取り入れていることはありますか?

僕は不可能と言われることの7割は可能だと思っています。絶対不可能もありますが、そもそも人間は空を飛べませんし、でも飛行機で飛べますよね。人生でできないことはありますが、できないことを諦めると、評価はされません。それを越えるためにどうするかが、知恵じゃないですか。まともに越えなくてもいいじゃないですか。壁があっても横から行くとか。これがゲームデザインになるわけですけどね。今から50年前、アメリカ人の宇宙飛行士が3名、何千人ものサポーターがいて、9日間で月に行って生きて帰ってきたんですよ。嘘かもしれませんけどね(笑)。50年前に、人類は月に行って帰ってきたんです。誰も見たことのない、前例もないところに。それを考えたら、何でもできるような気がして。クリフのセリフもそういう意味合いです。人間は月に行ったし、南極や北極に行って、何でもできる。ちょっと個人的な考えですが。



──プレイしてみて、オープンワールドでありながら、非常にナラティブなゲームという印象を受けました。このバランスはとても難しいと思いますが、どのようなことを意識して制作したのでしょうか。

ゲームとストーリーテリングは、本当は相性が良くないんですよ。マルチエンディングと呼ばれるものがたくさんありますが、僕はあれがストーリーではないと思っています。そういうゲームは好きですけどね。ある1本の運命があって、どれだけ頑張っても彼と彼女は別れる、それがストーリーじゃないですか。ゲームでは右に行くと別れない設定というのがよくありますが、それは僕のゲームではないんですね。『DEATH STRANDING』はオープンワールドなので、そこに自由度がないと意味がありません。このゲームに関しては、AからB、BからCへと繋いでいって、その時間の流れがあるからストーリーが進むという設計です。AからCには行かないし、AからDにも行かないけれど、AからBに行くのは山を登っても川を渡ってもルートは自由です。東京、渋谷、上野という3点に行くのは決まっていても、電車で行く、歩いて行く、自転車で行く、タクシーに乗る、途中のどこかで休憩するとか、その自由度をオープンワールドの醍醐味にしています。

──人を殺すゲームはたくさんありますが、『DEATH STRANDING』は人を殺すことのペナルティが重くなっています。これにはどんな理由があるのでしょうか。

僕は棒となわの話をよくしますが、人間はそれ以前に四つ足だったのが直立歩行になり、両手が自由になって、それで棒を持ちました。これが最初の武器というか、道具です。棒で嫌なものを遠ざけて、次はなわを発明して、好きなものをなわで繋いでおけるようにした、と。この2つで今の世界があります。人間の手は、グーを握ってパンチするのが棒、握手するとなわです。棒となわの両面を持っていて、それが人間の生まれた宿命のようなものです。どう使うかは僕らに任されているわけですが。このゲームは、なわをテーマにしているので、棒を使うことをポジティブにしてしまうとゲーム性としてよくないですね。ただ、そこまで強く意識しているわけではありません。



──いろいろなBTが登場する中で、赤ん坊のBTが混ざっていることがありました。何か特別な違いはあるのでしょうか。

BTにもバリエーションをたくさん作りたかったんですが、いろいろな制限があって今の形になっています。赤ちゃんのまま死んだ人もいて、そこはBBとの対比やメタファーとして入れています。

──ゲームのクリア後も、任務を続けたい人やほかのプレイヤーと繋がりたい人がいると思います。そうしたプレイヤーに向けて、何らかのアップデートや施策をする予定はありますか?

ストーリーは終わっても、配達任務はずっと続きます。たくさんのミッションがありますし、隠れているプレッパーズもいますし、プレイヤー同士のミッションもあるので、ストーリーが終わっても長く遊べる作りにはなっています。DLCという意味では考えていませんが、あったほうがいいですか?(笑)






■『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』
 

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1993年11月
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