【インタビュー】Donuts、安藤武博氏と森山尋氏による新プロジェクトが始動!スマートフォンならではの新しい“遊び”とは…二人が描くゲーム作りに迫る

達川能孝 gamebizプロデューサー/TeeL合同会社代表
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Donutsは、4月27日、PICTOYの森山尋氏との新規スマートフォンゲームプロジェクトを開発していることを明かした。
 
森山尋氏といえば、アソビズムにて『ドラゴンリーグ』や『ドラゴンポーカー』、『城とドラゴン』など独創的な作品を手掛けてきたことでも知られているだろう。
 
そんな森山氏が今回、Donutsと新しいゲームを開発しており、完全新作プロジェクト「DRAGON」が進行中であることが公開された。

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発表の際にはDonuts安藤武博氏と森山氏による対談も行われた。今回、SocialGameInfoでは、その対談を取材。新規プロジェクトにおける開発経緯や意気込み、森山氏からみたDonutsについて語られたので、その内容を紹介する。(特設サイトにても後日、対談動画は公開予定だ)
 
プロジェクト「DRAGON」
特設サイト

 

■新しい“遊び”を作って、新しい体験をユーザーに届けたい

 

 


安藤:まず伝えたいのは、「森山さんが新作を作っている」ということですよね。アソビズムで数々のオリジナルヒット作を出してきた森山さんが、新作をわれわれと作るということが決まって、大変めでたいです。
 
森山:ありがとうございます。アソビズムを辞めてから1週間ぐらいかな。安藤さんからFacebookで連絡があって、「何かしましょうよ」みたいな。
 
安藤:そう。もともと僕は、森山さんのゲームのファンでしたから。『ドラゴンリーグ』をガラケーの時代に遊んで、あまりに斬新で面白かったから、ただ「面白かったです」っていうことを言いに行ったことが始まりでした。
 
森山:懐かしいですね。アソビズムには10年ぐらいいて、入った頃は、20人ぐらいの会社だったんで、そこから10年ぐらいですかね。
 
安藤:そう。だから、卒業されたのは結構、衝撃だったと同時に、これはチャンスだと思いました。
 
森山:もう僕自身、40中盤を超えて、いろんなクリエイターさんや、いろんなプロデューサーさんと仕事をして生きていきたいなっていう思いが強く出てきて、一番最初にやりたいと思ったのが、安藤さんでした。
 
安藤:うれしいですね。ありがとうございます。森山さんは、任天堂さんとやっていた時期、アソビズムさんとやっていた時期がありますよね。
 
森山:だいたい10年ずつぐらいです。
 
安藤:新しい10年が始まりゲームデザイナー森山尋の次のフェーズがスタートした。ここで、われわれDonutsとゲーム作るということになった。せっかく組むなら、今までの良さはありつつも、今までにないことをしてみたいです。
 
僕自身、森山さんのゲームデザインに、結構ほれ込んでいるっていうところがあります。毎回、新しい“遊び”が生まれますよね。だから、今回もそれをやろうと。
 
森山:オリジナルということですかね。
 
安藤:オリジナルです。森山さんはずっとオリジナルを作ってきており、僕もスクウェア・エニックスから今Donutsでやっていますけど、ずっとオリジナルタイトル中心にやっています。Donutsのゲーム事業部のスローガンとして「オリジナルタイトルでナンバーワンを取る」ということを決めています。
 
森山:僕もオリジナルを作る会社がいいです。
 
安藤: IPを作る難しさと素晴らしさみたいなものもむちゃくちゃ分かるんですけど、せっかく、この世に生まれてきたからには、僕らと森山さんがここで出会ったからこそ生まれたもので、お客さんに喜んでもらいたいなぁという想いがあって、今オリジナルタイトルを作っています。
 
森山:ずっとやりたかったネタです。何年か前から、いろんな人に話すと、みんなに面白いって言ってもらえたんで、どっかでやりたいなあと思っていたものです。
 
安藤:とある例え話を混ぜながら、話してくれましたね。某有名国民的アニメに例えて。例え話として、こういう体験があったらいいんじゃないかっていう話をしてくれたときに、かなり盛り上がりました。その時のワクワクがベースになって、スタートしています。
 
Donutsのゲームはこれまで、音楽や映像の力を最大化したゲームを多く作ってきたんですけど、今回は“遊び”からのスタートになります。
 


僕は普段、”テーマ”から入って“遊び”は一番最後に考えるので、かなり珍しいアプローチです。何故かというと、“遊び”そのもので、お客さんを引き付けることができる人って、結構、少ないんです。
 
それが実現できるのは僕の中では、端的に言うと、任天堂さんや森山さんになるかなと思っているんです。
 
森山:任天堂さんと長く仕事をさせていただいて、その中で本当、叩き込まれたというか、教えられたのでしょうね。そこからしか始まらないというか。
 
安藤:特殊ですよ。ほとんどゲームって、お客さんはテーマで手に取るので。バトルシステムが激アツでRPGを遊ぶ人よりは「このキャラ、見た目かっこええなあ」とか、「このヒロインかわいい」とかが多いと思います。
 
遊び”で引き付けられるのは、いまどき稀有なんです。令和の時代に新しいゲームデザインにチャレンジしたいクリエイターには、とてもエキサイティングなプロジェクトになると思います。
 
このプロジェクトのゲームデザインとしてすごくいいなあと思ったのは、いろんなゲームのプラットフォームがある中で、携帯電話で遊ぶ意味がすごくあるゲームになっているんですよ。
 
わざわざ携帯電話で遊ぶという、ある種、立ち返っているところがすごく良い。多分、今回のゲームは携帯電話じゃないとできない、スマホが一番、面白いですよね。
 
森山:あるものを作るのは嫌なんですよ。人生って、そんなに長くない。長くないのに、ゲーム作りって、何年もかけて本当に大変じゃないですか。
 
安藤:続編IPを作るのも、オリジナルタイトル作るのも、どっちもキツいですね。
 
森山:だとしたら、新しいものを作って、新しい体験をユーザーに、ユーザーの初体験を奪いたいってよく言っています。そういうようなゲームを、今回も目指しています。
 

 

■ずっとゲームを作っていく…森山氏からみたゲーム会社Donuts

 
安藤:“遊び”が新しい体験をもたらすようにデザインするというのは、以前に森山さんが言っていたように、暗闇に向かってジャンプし続けるキツさみたいのがあると思います。
 
森山:M的な、ね。
 
安藤:思い切り暗闇に飛んだら、奈落の底に落ちる日もあるんですけど(笑)。
 
でも、よじ登って、もう一回飛ぶ。「絶対にここには新しい大陸がある」と決め打ちして飛ぶ。そういうことに、燃えるような人には、うってつけの好環境だと思います。粘り強く自信を持ってジャンプしてくれる人とぜひ一緒にやりたいなと思っています。
 
Donutsのゲーム事業部は「オーディオビジュアルに強いゲーム会社」というのを打ち出そうとしています。すでに音楽ゲームを3つも出している通り、音と映像の魅力をちゃんとお客さまに伝えるゲーム会社になっていくと決めています。
 
その点においては、今回のプロジェクトも、妥協なくやっていきたいなと思っているので、森山さん的もこれまでの作品と違った新しさを出せるだろうとと思っています。
 
森山:僕の作品の中でも、結構、違う感じの毛色になりそうですね。
 
安藤:もともとある原作の世界設定を、忠実にファンサービスする楽しさがある一方で、オリジナルタイトルはみんなが一斉に生み出したところから始まるような作り方。絵が出たから、ゲームのほうもこうしようみたいなことがあったりとか。逆に、ゲームがこうだったら絵はこうしようとか、そういう形でキャッチボールをしながら制作ができる。
 
ものすごく基本的な、オリジナルタイトルの作り方ではあるんですが、令和の世の中では、意外と少なくなってきてしまった作り方を進めています。
 
森山:Donutsさんは、僕が働いてきた環境とすごい近いっていうか、所謂SAPさんとか、そういう感じの作り方っていうよりは、割と働いてる子たちも、ゲーム会社の人たちって感じがすごいしますよ、ものづくりに対しての姿勢とか。
 
安藤:それは、めっちゃうれしいですね!Donutsのゲーム事業部はゲーム会社になりました!これを、とくにアピールしておかないといけない!森山さんに、ゲーム会社だって言ってもらって、めっちゃうれしいです。
 
Donutsは、ゲーム以外のこともどんどんやっていく会社なんです。僕たちDonutsのゲーム事業はDonutsGamesっていうゲームを作るゲーム屋であるくらいに考えています。ゲームに人生を捧げてずっと面白いゲームを作っていくことをスローガンにしてやっています。
 
森山:敏さんの影響もあるのかもしれないですね。Donutsの人たちの考え方とか哲学は。
 
安藤:そうなんですよ。Donutsのゲーム事業部に所属している三船敏という大先輩なんですけどね。
 
森山:遊んでいたな、(三船敏さんが携わった)ゲームを。
 
安藤:これ、ピンとくる人がいたら、ドンピシャなんですけど、デビュー作が『ハングオン』なんです。『ハングオン』に関わった人がDonutsにいるんですよ・・・!
 
森山:今の人、分かんないよ(笑)。
 
安藤:『バーチャストライカー』にしましょう(笑)。ボールがキャラに、見えない糸で付いているようなサッカーゲームが多い中で、ボールが常に選手からフリーになるっていう仕様だった。
 
森山:不思議な操作感なんですよ。
 
安藤:サッカーゲームは技術と相談しながら新しい“遊び”を作るみたいなところはありますね。そんな超ベテラン先輩がDonutsにもいますし、若手にも継承されているかなと。
 
森山:ちゃんとって言えば失礼かもしれないけれど、Donutsの若い人たちは“遊び”に対してちゃんと考えているというイメージは、今ずっと持っています。すっごいよく考えるなって。
 
安藤:このプロジェクトメンバーの特徴も若いです。ディレクターとかエンジニアも含めて20代です。僕たちはおっさんになってきたじゃないですか。
 
まだまだ負けねえぞっていうのもあるんだけども、若い才能と一緒にやっていきたい気持ちもすごくある。
 
切磋琢磨する中で、自分たちがやってきたことを継いでいってもらったり、僕らの脳みそにはないような提案が出てきてほしいなと思っています。
 


Donutsのゲームプロジェクトは基本的に、若い人に、ものすごいチャンスを与える機会があるところが特徴です。ゲーム会社によっては、スタメンやベンチの枠が埋まっていて、20年ぐらいは枠に入れそうにない大手球団のようなところもあるんすけど、Donutsは、創設期の楽天とか広島みたいなとこがあったりします。キャリア不問でどんどん機会を与える。
 
森山:結構サラっと、「やってみれば?」みたいな感じで任せていますね。
 
安藤:僕もそうやって、エニックスの時にやらせてもらって、それがとても良かったんです。一番最初にプロデュースした作品が世に出たのって、24歳だったんですよ。
 
この仕事ほど実務が大事な仕事はないかなと思っていて、学校でどれほど学んできても、結局、作り始めてからのほうが、ものすごい学びがある。
 
当然、失敗も多いんですけど、そこから改善してくみたいなことができるから、見る前に飛んじゃったほうがいいのかなあって思います。森山さんもそうですよね。
 
森山:僕も25歳ぐらいまで、ずっとディレクターやりたいって言い続けていたら、当時スキップっていう会社で「そんなに言うんだったらやってみろ」って言われ、『ちびロボ』をやらしてもらったっていう感じです。
 
安藤:結果、みんなそうですよね。
 
森山:あと一個、すごくDonutsさんのいいところだと思うところ。社内の人たちが、お互いをリスペクトし合っているなと思います。そういうのって結構ないと思います。もちろん、行き過ぎるのも良くないですけど。
 
安藤:僕自身Donutsの好きなところの一つです。チーム間のリスペクトはもちろんあるんですけど、違うチームへのリスペクトもあります。
 
分かりやすく言うと、違うチームが作ったゲームをやっている人が、めちゃめちゃ多いんですよ。
 
森山:普通、ライバル関係になってやらない人もいるじゃないですか。
 
安藤:そう、ライバルだから意外とやらないことも多い。Donutsのメンバーは他のチームを応援することが往々にしてある。僕は全員の日報を読むことを毎日楽しみにしているんですが、同じ会社の違うプロジェクトの話がよく書かれているんですよね。例えば「『ナナシス』のアニメの劇場版あるから見に行く」とか、「『ブラックスター』のライブ見ました」とか。
 
森山:一つのチーム感がありますね。他の会社って、一つのタイトルに所属すると、そのタイトルの人になっちゃって、他のところは興味ない人が多いと思う。
 
安藤:ゲーム会社としてのDonutsは、まだまだこれからです。だから今回、この記事をきっかけにDonuts入ってきてくれる人は、自分が伸ばしていく、引っ張っていく、時代を創っていく心意気をもった人に入ってきてほしいんです。
 
いろんな人がいろんなプロジェクトを手伝わないと、ちゃんとお客さまに納得してもらえるようなゲームやサービスが完成しないという新進のゲーム会社ならではの事情もあったりしますので。どんどん自分からチャンスをつかみ取りに行く人が良いんです。
 
森山:それ、すごい良いやり方だなあと思うんです。働き過ぎにならなければ、ですけど。いろんなところでいろんな経験して、いろんなものを手に入れるし。だからかな。Donutsの人たちにお互いのリスペクトとか、そういうところをすごく見掛けるのは。
 
安藤:同じプロジェクトに延々といるということは、基本的にDonutsでは、してほしくないなって思っています。才能ある人には新しいチャレンジを、どんどんしてってほしいなってふうに思っています。
 
それを引き継いだ2代目、3代目の人は、その人だけの色みたいなのを出してくれたら良いのかなと思ってはいます。僕の前職でいくと『ファイナルファンタジー』みたいになればいいと思っているんですよ。毎回その人なりの『ファイナルファンタジー』がありますよね。
 
森山:『ファイナルファンタジー』は、シリーズでいろんな『ファイナルファンタジー』の個性があるじゃない。
 
安藤:そういったチャレンジって、昔からのレジェンドと新しい才能との組み合わせで、生まれていると思うんです。
 
そんなイメージで、どんどん新しいことをチャレンジしていくゲーム会社が、Donutsゲーム事業部のあるべき姿かなと思っています。
 
森山:やっと土台と準備ができて、ここから本当に大事なところが始まるなあっていう感じですよね。
 


安藤:今は、全プロジェクトがあらゆるポジションで新メンバーを募集中です。きちんと納期も考えながら、面白さも両立させてくという難しさにもチャレンジがあると思っています。そこにチャレンジしてもらえるようなプロジェクトマネジメントができる人は特に、門をたたいてもらいたいと思っています。
 
森山:PMっていうのは、僕が関わったタイトルでは今までいなかったんですよ。例えば、どんな能力とか、どんなモチベーションがあれば、PMに入りたいって言っていいのかどうかっていうのは結構、多いのかなと思うんですけど。
 
安藤:最初にイメージに浮かぶのは、手塚治虫先生と編集者の話があります。今と違ってデジタルでない分、昔は締め切りも特に厳格だったと思うんです。手塚作品って、締め切りを守ってあのクオリティーの高さだった。
 
手塚先生の有名な話で、締め切りから逃げるために逃亡したりとか、いろんな言い訳を作ったという話もあるんだけど、そこに対して立ち向かった編集者がいたわけですよね。「読者が待ってる」「何曜日には、雑誌が発売されるから絶対に落とせない」って言う。
 
先生も逃亡も企みつつも(笑)最終的には、読者がである子どもたちがめっちゃ喜ぶように仕上げたっていうのは、編集者がいたからこそなんですよ。
 
優れた作家には、優れた編集者がいないといけないっていうところにおいては、優れたエンターテインメント出すためには、PMは絶対に必要不可欠。

いわばPMは、名作をお客様にたくさん出すために、必要不可欠な人だと思っています。
 
そういうことをやってみたい人が増えてほしいし、これはできるなと思ったら、ぜひ、連絡を欲しい。すぐに一緒に作りたいですね。面白い仕事だと思います、PMって。
 
森山:今、聞いていて、マネージャーとお笑い芸人みたいな関係性に似てるなぁ。
 
安藤:それもあるかも。だから、いるのといないのでは、全然アウトプットは変わってくるポジションの代表だと思います。
 
Donutsとしては、そこも重要視しているポジションだったりするので、ぜひ来てほしい。
 
あとは、実はこの森山プロジェクトのような魅力的な新プロジェクトが、他にもどんどん立ち上がっているんですよ。しかも全部オリジナルタイトル。
 
ここに来たら、オリジナルタイトルを作るっていうチャレンジが、全ポジションいたるところにあると思ってもらいたいです。
 
森山:全部オリジナルタイトルって、すごいことですよ。
 
安藤:あとは、これもDonutsのいいところなんですけど、一度運営を始めると、中々撤退しない。ご長寿運営タイトルの集まりです。
 
森山:確かにそうですね。
 
安藤:『単車の虎』というヤンキーのゲーム、今年10年目なんですよ、10周年。
 
森山: 10年目ってすごいですね。中々ないですよ。
 
安藤:『Tokyo 7thシスターズ』というアイドルのゲームは7周年ですし。『ブラックスター』も、今年の9月で2周年だったりします。
 
始めて何ヶ月かで、サービス終了とか撤退みたいなことはやらない。運営に関しては相当、粘り強く、お客さまに提供していくっていう考え方を徹底しています。
 
森山さんとの新プロジェクトも、始まったら長く続けていきたい気持ちが当然あります。作ることと、長く楽しんでもらうっていうところも含めて運営です。
 
長く楽しんでもうらうところにも興味持ってもらいたいと思うし、今プロジェクトに参加すると、長く楽しんでもらうためには、こういう“遊び”とか、こういうデザインがあったほうがいいなど運営を見据えた話もできると思います。
 
それを自由にデザインできる。オリジナルタイトルの面白いところですよね。ワクワクがありますね。
 
この辺りに、共鳴してくれた人は、ぜひ話をしたいなと思っています。僕は、面接は基本的に全員に会うようにしています。
 
少しでも興味あったら、僕と話をしに来るぐらいのつもりで、門を気軽にたたいてもらいたいです。森山さんと僕と一緒にナンバーワンのオリジナルタイトルをつくりましょう!
 

 

 

プロジェクト「DRAGON」
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