ベクター<2656>は10月23日、都内で2014年3月期第2四半期(2013年7~9月)の決算説明会を開催した。説明会で梶並伸博社長は、アジアなど海外ゲームのローカライズパブリッシュを軸に、オンラインゲーム事業に注力していく方針を強調した。四半期業績の赤字が続いていることについては「3Q(第3四半期、10~12月)を最後にしたいと思っている」と述べた。説明会の最後に雑談として、ゲームポットの買収額について「ショック」と話し、PCオンラインゲーム事業の厳しさを再確認した。(以下、かぎ括弧内は梶並社長の発言)
■不採算ゲームの終了と経費削減で赤字幅縮小
ベクターは10月22日、第2四半期の決算を発表した。第2四半期累計(4~9月)の売上高にあたる営業収益は、既存タイトルの伸び悩みなどが響き、計画を5100万円下回る11億1500万円だったが、経費削減を続けたことで営業赤字額は1億3100万円と計画よりも1100万円縮小した。最終赤字額も1億1200万円と、計画よりも2600万円少なかった。
前年の同期(2012年4~9月)と比べると、オンライゲーム事業全体で運営するタイトルを23タイトルから15タイトルに縮小したため、売上高は6800万円(5.8%)減った。一方、不採算タイトルを終了させ、インフラなど固定費の削減を進めたため、営業費用は12億円と、前年同期比で1億5600万円(11.2%)減少。売上高の減少額以上に、費用削減が進んだため、赤字額は前年同期よりも縮小した。
■第3四半期も赤字継続予想、チャネリングやスマホ新作のプロモーション本格化
10~12月の営業収益は6億円と7~9月(5.7憶円)からの増加を見込むが、営業赤字は7000万円と赤字継続を予想する。黒字転換には売上高の減少以上の費用削減を続けるか、あるいは売上高が増加に転じるか、どちらかが必要となる。売上高は低迷が続いており、2012年3月に発生したサーバーへの不正アクセスの影響で減少したところから立ち直ったとは言い切れない。
10月以降の方針は、ブラウザゲーム分野でYahoo!Mobageやmixi、ニコニコアプリなど主要ポータルに対して積極的にチャネリング(販路開拓)を実施し、売り上げの増加を計るという。また、スマートフォン(スマホ)向けゲームでは、6月にリリースした新作iOSアプリ『アルカナ・マギア』について、現在、日本市場に合わせた改修を実施中で、改修後に本格的なプロモーションやAndroid版の提供を始める予定だという。複数の「新規事業」についても、予想には織り込んでいないが、調査・検討段階に入っているとのこと。
■ローカライズパブリッシャーとしての立ち位置「今後も伸ばせる」
説明会では、10月下旬から事前登録を開始している新作のPCブラウザ用カードバトルゲーム『創星紀アステルゲート』のムービーを流した。梶並社長は「上海(中国)の会社が開発したものだか、いままで、中国製タイトルでこれだけ違和感無く、日本の絵のように思えるものはなかった。クオリティが上がってきている」と期待をにじませて紹介した。
また、梶並社長は「(日本への)ローカライズパブリッシングに力を入れているのは、スマートフォン向けになるとベクターと中国の非上場の2社くらいしかない」と説明。同社のローカライズパブリッシャーとしての「特異な立ち位置」を指摘し、「この分野(ローカライズパブリッシング)が今後も確実に伸ばせると思っている」と述べた。梶並社長によれば、現在同社が提供中のPC向けオンラインゲーム、スマホ向けゲームは、すべてアジア製という。
■赤字は「3Qを最後にしたい」
質疑応答では、参加者から四半期業績の黒字化のタイミングに関する質問が出た。梶並社長は、赤字は「3Q(10~12月)を最後にしたいと思っている」と回答した。
また、海外作品のローカライズにおける作品選別方法や費用動向、リスクについての質問もあった。
同社では、ローカライズする海外作品は、3段階のチェックをかけるという。まず絵柄が日本で受け入れられるかどうかをチェックする。「日本は特殊。日本的な絵で人気が出るのは、台湾くらい」とのこと。次に仮テストをはじめ、静止画だけでなく動きのある絵や操作の爽快感、コンテンツの持続力を確認する。最後に数十~100時間以上のヘビーテストをする。四半期で200本、年800本ほど確認して、最終的に残るのは4~5本という絞り込み方をしているという。
開発タイトルでローカライズ費用が上昇しているという質問者の懸念については、「それほどでもなく安定している。(契約の条件なども)スマホ分野は落ち着いてきたという印象」と回答した。ローカライズのリスクについては本国で人気が出ず、開発停止になることが最大のリスクとした。もちろん、開発会社の倒産もリスクとなる。
■ゲームポットの買収額は「ショック」
梶並社長は最後に「ついでに雑談」といい、弊社の記事をスクリーンに映して、GMOインターネット<9449>がゲームポットを約9億円で買収したことにも言及した。2008年にソネットが買収したときの買収額が約74億円で、今回は9億円と、この5年間の金額の目減り具合が「ショックだった」と話した。
その後、同社やゲームポットが手掛けるPCオンラインゲーム事業の環境が厳しくなっていることを指摘し、10年以上続いた老舗MMORPGを抱えるゲーム企業のPCオンライン事業が赤字に転落したことにも触れた。この業界環境の中で、筋肉質な企業体質への強化をはかり、生き残りを目指す姿勢を示した。
■関連リンク
・『アルカナ・マギア』の公式サイト
・『創星紀アステルゲート』の公式サイト
(c)iFree Games All Rights Reserved.
(c)Shanghai Tong Shi Network Technology Co., Ltd. All Rights Reserved.
(c)Vector Inc. All Rights Reserved.
■不採算ゲームの終了と経費削減で赤字幅縮小
ベクターは10月22日、第2四半期の決算を発表した。第2四半期累計(4~9月)の売上高にあたる営業収益は、既存タイトルの伸び悩みなどが響き、計画を5100万円下回る11億1500万円だったが、経費削減を続けたことで営業赤字額は1億3100万円と計画よりも1100万円縮小した。最終赤字額も1億1200万円と、計画よりも2600万円少なかった。
前年の同期(2012年4~9月)と比べると、オンライゲーム事業全体で運営するタイトルを23タイトルから15タイトルに縮小したため、売上高は6800万円(5.8%)減った。一方、不採算タイトルを終了させ、インフラなど固定費の削減を進めたため、営業費用は12億円と、前年同期比で1億5600万円(11.2%)減少。売上高の減少額以上に、費用削減が進んだため、赤字額は前年同期よりも縮小した。
■第3四半期も赤字継続予想、チャネリングやスマホ新作のプロモーション本格化
10~12月の営業収益は6億円と7~9月(5.7憶円)からの増加を見込むが、営業赤字は7000万円と赤字継続を予想する。黒字転換には売上高の減少以上の費用削減を続けるか、あるいは売上高が増加に転じるか、どちらかが必要となる。売上高は低迷が続いており、2012年3月に発生したサーバーへの不正アクセスの影響で減少したところから立ち直ったとは言い切れない。
10月以降の方針は、ブラウザゲーム分野でYahoo!Mobageやmixi、ニコニコアプリなど主要ポータルに対して積極的にチャネリング(販路開拓)を実施し、売り上げの増加を計るという。また、スマートフォン(スマホ)向けゲームでは、6月にリリースした新作iOSアプリ『アルカナ・マギア』について、現在、日本市場に合わせた改修を実施中で、改修後に本格的なプロモーションやAndroid版の提供を始める予定だという。複数の「新規事業」についても、予想には織り込んでいないが、調査・検討段階に入っているとのこと。
▲『アルカナ・マギア』の画像
■ローカライズパブリッシャーとしての立ち位置「今後も伸ばせる」
説明会では、10月下旬から事前登録を開始している新作のPCブラウザ用カードバトルゲーム『創星紀アステルゲート』のムービーを流した。梶並社長は「上海(中国)の会社が開発したものだか、いままで、中国製タイトルでこれだけ違和感無く、日本の絵のように思えるものはなかった。クオリティが上がってきている」と期待をにじませて紹介した。
▲『創星紀アステルゲート』の画像
また、梶並社長は「(日本への)ローカライズパブリッシングに力を入れているのは、スマートフォン向けになるとベクターと中国の非上場の2社くらいしかない」と説明。同社のローカライズパブリッシャーとしての「特異な立ち位置」を指摘し、「この分野(ローカライズパブリッシング)が今後も確実に伸ばせると思っている」と述べた。梶並社長によれば、現在同社が提供中のPC向けオンラインゲーム、スマホ向けゲームは、すべてアジア製という。
■赤字は「3Qを最後にしたい」
質疑応答では、参加者から四半期業績の黒字化のタイミングに関する質問が出た。梶並社長は、赤字は「3Q(10~12月)を最後にしたいと思っている」と回答した。
また、海外作品のローカライズにおける作品選別方法や費用動向、リスクについての質問もあった。
同社では、ローカライズする海外作品は、3段階のチェックをかけるという。まず絵柄が日本で受け入れられるかどうかをチェックする。「日本は特殊。日本的な絵で人気が出るのは、台湾くらい」とのこと。次に仮テストをはじめ、静止画だけでなく動きのある絵や操作の爽快感、コンテンツの持続力を確認する。最後に数十~100時間以上のヘビーテストをする。四半期で200本、年800本ほど確認して、最終的に残るのは4~5本という絞り込み方をしているという。
開発タイトルでローカライズ費用が上昇しているという質問者の懸念については、「それほどでもなく安定している。(契約の条件なども)スマホ分野は落ち着いてきたという印象」と回答した。ローカライズのリスクについては本国で人気が出ず、開発停止になることが最大のリスクとした。もちろん、開発会社の倒産もリスクとなる。
■ゲームポットの買収額は「ショック」
梶並社長は最後に「ついでに雑談」といい、弊社の記事をスクリーンに映して、GMOインターネット<9449>がゲームポットを約9億円で買収したことにも言及した。2008年にソネットが買収したときの買収額が約74億円で、今回は9億円と、この5年間の金額の目減り具合が「ショックだった」と話した。
その後、同社やゲームポットが手掛けるPCオンラインゲーム事業の環境が厳しくなっていることを指摘し、10年以上続いた老舗MMORPGを抱えるゲーム企業のPCオンライン事業が赤字に転落したことにも触れた。この業界環境の中で、筋肉質な企業体質への強化をはかり、生き残りを目指す姿勢を示した。
■関連リンク
・『アルカナ・マギア』の公式サイト
・『創星紀アステルゲート』の公式サイト
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(c)Vector Inc. All Rights Reserved.
会社情報
- 会社名
- 株式会社べクターホールディングス
- 設立
- 1989年2月
- 代表者
- 代表取締役社長 渡邊 正輝/代表取締役副社長 加藤 彰宏
- 決算期
- 3月
- 上場区分
- 東証スタンダード
- 証券コード
- 2656