モブキャスト決算説明会 藪社長、業績下方修正「未経験分野で予想外の事態が発生」 広告費も重荷に リリース遅れの『ドラスピ』には自信
モブキャスト<3664>は11月8日、2013年12月期第3四半期(7~9月)の連結決算を発表し、都内で決算説明会を開いた。1週間前に2013年12月期通期業績の見通しを大幅に下方修正しており、説明会ではその理由について時間を割いた。新作のリリースが相次いで遅れたため売上高が計画よりも減少。新作不在のなかで長期契約を結んでいた広告を出し続けなければならず、広告費用が利益を大きく圧迫した。説明会で藪考樹社長はリリース遅れの原因を「ネイティブアプリや海外展開など今年初参入の分野すべてで遅延した。未経験で、予想できなかった事態が多く発生した」と語った。開発管理体制の強化や広告の見直しなど必要となる対策を打っていく方針を語った。一方、『ドラゴン★スピン』は月商1億円のタイトルに育つかという説明会参加者の質問に「必ずそういうタイトルになるだろうと思っている」と回答し、新作に対する自信を確認した。(以下、かぎ括弧内は藪社長の発言。説明会での写真撮影は断られた)
まず自社開発で初のネイティブアプリとなる『ドラゴン★スピン』、『激闘!ぼくらのプロ野球』のいずれも、8月に予定していたAndroid版の投入が10月中旬にずれ込んだ。モブキャストのプラットフォームに投入する予定だったブラウザの新作『モバイルグランプリ』も、リリースが9月から10月末にずれ込んだ。パートナーとの協業ゲームも、3Q(7~9月)に10本の新作リリースを予定していたが、実績は2本しか投入できなかった。
海外事業においても、提携した韓国のNEOWIZ INTERNETとの協力がうまくいかなかったようだ。『野球の達人』(『モバプロ』韓国版)は、NEOWIZにライセンスを提供し、NEOWIZのプラットフォームで5月に提供する予定だったが、「NEOWIZの都合上」、結局、10月に韓国のモブキャストプラットフォームで提供することになった。連動して、韓国モブキャストプラットフォームのオープン化も11月に後ずれする予定だ。
当初予定していた売上高80億円のうち、自社ゲームで約57億円、オープン化による外製ゲームの収入で6.2億円、海外で10億円、ネイティブで4.5憶円を見込んでいたという。自社ゲーム以外の3つの分野全てでリリース遅れが発生した。自社ゲーム以外の3分野の売り上げは「数千万円規模で、少しずつだがのびてきている」とのこと。
なぜ、新作がことごとく遅延したのかという質問に対して、「(プラットフォームの)オープン化やネイティブ、海外など今年初めて参入したところですべて遅延した。未経験で、予想できなかった事態が多く発生した。ネイティブアプリの開発は自社でやっておらず外注。(遅延による)3か月分の見積もりで(1作品あたり)1000万円もいかないが、開発費は増えた」と話した。
リリースの遅れや広告費の状況は8月時点で分かっていたのではないか、という質問に対して会社側は「確かに8月時点でリリースの遅れがわかっていたが、リリース後の初動の数字が見えた段階で発表しようと考えた」と回答した。
広告費については、来期以降、長期固定枠を一切取りやめるなど、広告媒体を大幅に見直す。3Qの5億800万円をピークに長期固定広告費は減り、4Q(10~12月)に3.6億円、2014年12月期1Q(1~3月)は9000万円になる。長期固定広告費は主にテレビCM、野球やサッカーなどクラブチームとのスポンサー契約、東京ドームなどの看板費用が含まれており「1Qは看板費用が中心」という。また人件費の増加については、開発中案件の終了に伴い、業務委託など固定費の圧縮を進めて対応する。
4Q以降の事業戦略はこれまで通り。スポーツプラットフォーム1位の座を確立するために、ブラウザゲームのコンテンツを投入する方針は変えない。10月にブラウザゲームを自社開発、パートナーとの協業含め5タイトル投入。11、12月合計でさらに7タイトルを予定している。このほかにも、超大型IPでビッグメーカーとの共同開発案件を進めているという。
また同社の抱えるブラウザゲームのユーザー層を強みとしたネイティブアプリをリリースし、新規ユーザーの獲得につなげる狙いだ。国内では、リリースの遅れた『ドラゴン★スピン』と『激闘!ぼくらのプロ野球』の2タイトルを、「初めてのネイティブアプリであるため、修正しやすいAndroidで10月に先行してリリースした」という。『ドラゴン★スピン』は11月中旬のアップデートで当初予定していた仕様に仕上がり、その後、遅くとも12月中旬にはiOS版を投入する予定だ。『ぼくらのプロ野球』は「10月半ばからのクライマックスシリーズに合わせて、広告を出している間にリリースしたかった」ため、10月18日にAndroid版を配信。11月7日に当初予定していたバージョンとなったという。こちらも11月中旬にiOS版を配信予定だ。
韓国でのプラットフォーム立ち上げも続ける。韓国のネイティブは日本でPCで展開している作品のスマホ版である『銀河大戦S』や、韓国パブリッシャーを通じてAndroidに『ダイスアドベンチャー』を配信する予定だ。リリースの遅れた『野球の達人』や、バスケットボールのゲームを投入するほか、好調な『モバサカ』で11月に日韓戦(11月18日~11月30日、12月1日結果発表)を開催する。
『ドラゴン★スピン』は「全く広告を打っていないが、KPIは予定した通り出ている」という。月商1億、2億円のタイトルに育つか、という会場からの質問には「年内に(その売り上げが)出るかどうかは別として、必ずそういうタイトルになるだろうと思っている」と答え、自信を示した。『ぼくらのプロ野球』は、「ネイティブで本格的な野球シミュレーションが少ないことを狙って出している」という。新作のリリーススケジュールが10月に集中しているのは逆風ではないかとの質問には、「(新作のネイティブタイトルは)過去に作ってきたブラウザ型ゲームと同じような立ち上がりを見せている。年内は当初計画は見込めないものの、狙いは間違っていなかったと考えている」と述べた。
なお、3Qまでの業績概要は以下の通り。7月に課金者数が伸びたのは、新規会員が増えるなかで、低額課金ユーザー向けのイベントを実施したためという。3Qには欧州のモバイルゲームディストリビューターであるブースターメディア社と業務提携をしており、欧州展開への布石も打っている。
■関連リンク
・決算説明会資料
■大幅下方修正:新作リリースが軒並み遅れる ネイティブ開発遅延、韓国事業も難航
まず自社開発で初のネイティブアプリとなる『ドラゴン★スピン』、『激闘!ぼくらのプロ野球』のいずれも、8月に予定していたAndroid版の投入が10月中旬にずれ込んだ。モブキャストのプラットフォームに投入する予定だったブラウザの新作『モバイルグランプリ』も、リリースが9月から10月末にずれ込んだ。パートナーとの協業ゲームも、3Q(7~9月)に10本の新作リリースを予定していたが、実績は2本しか投入できなかった。海外事業においても、提携した韓国のNEOWIZ INTERNETとの協力がうまくいかなかったようだ。『野球の達人』(『モバプロ』韓国版)は、NEOWIZにライセンスを提供し、NEOWIZのプラットフォームで5月に提供する予定だったが、「NEOWIZの都合上」、結局、10月に韓国のモブキャストプラットフォームで提供することになった。連動して、韓国モブキャストプラットフォームのオープン化も11月に後ずれする予定だ。
当初予定していた売上高80億円のうち、自社ゲームで約57億円、オープン化による外製ゲームの収入で6.2億円、海外で10億円、ネイティブで4.5憶円を見込んでいたという。自社ゲーム以外の3つの分野全てでリリース遅れが発生した。自社ゲーム以外の3分野の売り上げは「数千万円規模で、少しずつだがのびてきている」とのこと。
なぜ、新作がことごとく遅延したのかという質問に対して、「(プラットフォームの)オープン化やネイティブ、海外など今年初めて参入したところですべて遅延した。未経験で、予想できなかった事態が多く発生した。ネイティブアプリの開発は自社でやっておらず外注。(遅延による)3か月分の見積もりで(1作品あたり)1000万円もいかないが、開発費は増えた」と話した。
■大幅下方修正:新作不在のなか、長期契約の広告費が重荷に
期待していた新規タイトルが出てこないなか、広告費の負担がのしかかる。今年は「広告の購入単価を下げるため、長期間(6カ月から1年間)にわたる広告を年初から購入してきた」という。ただ、「新作の投入遅れで広告効果が低くなる状態でも長期契約の広告は出さざるを得ない。途中からゲーム広告ではなく、モブキャストのブランディングの広告に切り替えたものの、営業利益の押し下げの主因となった」と述べた。ネイティブ開発や海外展開のために、人件費も増加。ソフトウェアの減損処理も利益にマイナスとなった。リリースの遅れや広告費の状況は8月時点で分かっていたのではないか、という質問に対して会社側は「確かに8月時点でリリースの遅れがわかっていたが、リリース後の初動の数字が見えた段階で発表しようと考えた」と回答した。
■対策として組織体制の変更と、長期広告の取りやめを提示
対策として組織体制の変更を掲げた。成長分野への人員移動のほか「開発スケジュールの遅延をおこさないため、ゲームの開発部門外に社長直轄のスケジュール管理部隊を組織することを検討している」という。また「ジャンルによって変わってくるが、(ネイティブアプリなどの)開発費を見積もれる力はついた」と述べた。広告費については、来期以降、長期固定枠を一切取りやめるなど、広告媒体を大幅に見直す。3Qの5億800万円をピークに長期固定広告費は減り、4Q(10~12月)に3.6億円、2014年12月期1Q(1~3月)は9000万円になる。長期固定広告費は主にテレビCM、野球やサッカーなどクラブチームとのスポンサー契約、東京ドームなどの看板費用が含まれており「1Qは看板費用が中心」という。また人件費の増加については、開発中案件の終了に伴い、業務委託など固定費の圧縮を進めて対応する。
■来期の損益分岐点は「45億円」、広告宣伝費の売上高比率を10%に縮小 新作で巻き返し狙う
来期(2014年12月期)の損益分岐点(黒字になる売上高の水準)は「45億円を目指す」という。売上高に対する広告宣伝費の比率は、3Q累計(1~9月)期間で34.8%に膨らんでいたが、来期はこれを10%まで縮める。4Q以降の事業戦略はこれまで通り。スポーツプラットフォーム1位の座を確立するために、ブラウザゲームのコンテンツを投入する方針は変えない。10月にブラウザゲームを自社開発、パートナーとの協業含め5タイトル投入。11、12月合計でさらに7タイトルを予定している。このほかにも、超大型IPでビッグメーカーとの共同開発案件を進めているという。
また同社の抱えるブラウザゲームのユーザー層を強みとしたネイティブアプリをリリースし、新規ユーザーの獲得につなげる狙いだ。国内では、リリースの遅れた『ドラゴン★スピン』と『激闘!ぼくらのプロ野球』の2タイトルを、「初めてのネイティブアプリであるため、修正しやすいAndroidで10月に先行してリリースした」という。『ドラゴン★スピン』は11月中旬のアップデートで当初予定していた仕様に仕上がり、その後、遅くとも12月中旬にはiOS版を投入する予定だ。『ぼくらのプロ野球』は「10月半ばからのクライマックスシリーズに合わせて、広告を出している間にリリースしたかった」ため、10月18日にAndroid版を配信。11月7日に当初予定していたバージョンとなったという。こちらも11月中旬にiOS版を配信予定だ。
韓国でのプラットフォーム立ち上げも続ける。韓国のネイティブは日本でPCで展開している作品のスマホ版である『銀河大戦S』や、韓国パブリッシャーを通じてAndroidに『ダイスアドベンチャー』を配信する予定だ。リリースの遅れた『野球の達人』や、バスケットボールのゲームを投入するほか、好調な『モバサカ』で11月に日韓戦(11月18日~11月30日、12月1日結果発表)を開催する。
■『ドラゴン★スピン』は月商1億円タイトルに「必ずなると思う」
『ドラゴン★スピン』は「全く広告を打っていないが、KPIは予定した通り出ている」という。月商1億、2億円のタイトルに育つか、という会場からの質問には「年内に(その売り上げが)出るかどうかは別として、必ずそういうタイトルになるだろうと思っている」と答え、自信を示した。『ぼくらのプロ野球』は、「ネイティブで本格的な野球シミュレーションが少ないことを狙って出している」という。新作のリリーススケジュールが10月に集中しているのは逆風ではないかとの質問には、「(新作のネイティブタイトルは)過去に作ってきたブラウザ型ゲームと同じような立ち上がりを見せている。年内は当初計画は見込めないものの、狙いは間違っていなかったと考えている」と述べた。なお、3Qまでの業績概要は以下の通り。7月に課金者数が伸びたのは、新規会員が増えるなかで、低額課金ユーザー向けのイベントを実施したためという。3Qには欧州のモバイルゲームディストリビューターであるブースターメディア社と業務提携をしており、欧州展開への布石も打っている。
▲「その他」はその他ゲームと外製ゲームの手数料収入、「子会社」は海外事業子会社
■関連リンク
・決算説明会資料
会社情報
- 会社名
- 株式会社モブキャストホールディングス
- 設立
- 2004年3月
- 代表者
- 代表取締役CEO 藪 考樹
- 決算期
- 12月
- 直近業績
- 売上高33億7100万円、営業損益4億2800万円の赤字、経常損益4億3600万円の赤字、最終損益3億8000万円の赤字(2023年12月期)
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 3664