ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社は、2014年4月7日、8日の2日間にわたり、Unity 最大のカンファレンスイベント「UNITE JAPAN 2014」を、ホテル日航東京で開催した。当日はプロの開発者を対象としたものから、ビギナー向けの簡単なものまで、Unityに関する30以上の講演が実施。
本稿では、Unity TechnologiesのJussi Laakkonen(ユッシ・ラーコネン)氏が登壇した、「モバイルゲームを口コミで急速に普及させるには」の模様をレポート。同氏がゼネラルマネージャーを務めるサービス「Everyplay(エブリプレイ)」を用いた、新しい形のクチコミ効果に迫った。
■クチコミ効果で実際にダウンロードへ結びつく瞬間は…
今回講演を務めるUnity Technologiesのラーコネン氏は、ゲーム動画共有コミュニティーサービスの先駆け的存在である「Everyplay」を取り仕切るゼネラルマネージャーだ。
先日、Unity Technologiesが世界最大級のモバイルゲームサービスプロバイダーであるApplifier社を買収したことが記憶に新しいと思うが、このApplifier社の買収により、現在「Everyplay」は「Unity」に統合されている。
さて、はじめに講演では「Everyplay」の開発経緯を話してくれた。それはラーコネン氏が4年前の夕食会で、知人に“とあるゲーム”を紹介してくれたとき。そのとき知人は「最近、航空管制官をテーマにしたアプリが面白い」とゲームを勧めてきてくれたのだが、ラーコネン氏には聞いただけではゲームの内容が、いまいち想像ができなかったと話す。
そして、実際のゲーム画面を見せてもらったときに、ようやく飛行機の経路を動かして遊ぶ作品(『Flight Control』)であることが分かったようだ。ゲーム画面を見せてもらったラーコネン氏は、すぐさま本作をダウンロードして、いまなおも遊んでいるという。
まさにラーコネン氏は、知人によるクチコミによって、本作をダウンロードすることになったのだ。しかしながら、同氏が実際にダウンロードすることを決めたのは、結局、知人からゲーム画面を見せてもらったときである。
▲はじめにゲーム説明を聞いてラーコネン氏が思い描いたプレイ画面。
▲実際の『Flight Control』のゲーム画面。
やはり説明を“聞く”だけでは訴求ポイントとしては乏しい。
モバイルゲーム市場においては、もはやクチコミ効果というものは日常的に広がっている。けれど、そんなクチコミ効果で実際にダウンロードに結びつくのは、プレイ動画を見て“面白い”と感じてから、ということだ。これらの体験談があり、同氏は「Everyplay」を開発したと話す。
また、ここでラーコネン氏は、3000人以上のモバイルゲーム愛好者を対象とした、「モバイルゲームの探し方」に関するアンケート結果を提示。アンケート結果によると、ゲームを探す方法は大きく分けて「友達から聞いた・見せてもらった」と、「各アプリストアのフィーチャーで何となく見つけた」のふたつに絞られるようだ。そして同氏は、ゲーム画面から得られるプレイ意欲についても再度指摘した。
■「Everyplay」を通して新規のコアユーザー獲得へ
ここからは「Everyplay」における具体的な機能について。繰り返すようだが、「Everyplay」はゲーム動画共有コミュニティーサービスである。なかでも特徴的なのは、遊んでいるアプリを自動的に録画してくれたり、FaceTimeカメラで自身の顔も映像上に残せたりするところ。また、録画したプレイ動画は、編集したり「Face book」や「Twitter」などの各種SNSに共有できたりする。
なお、「Everyplay」のプラットフォーム上では、ユーザーをフォローすることもできて、各々がどのようなタイトルで遊んでいるのかを知ることも可能。プレイ動画をシェアすることで、コミュニティの広がりを見せるだけではなく、デベロッパー側としては新規のユーザーを獲得するきっかけにも繋がっていくのだ。そして同氏は、実際に人気スネークアクションゲーム『Nimble Quest』で「Everyplay」のデモプレイを行ってくれた。
▲こちらは実際にプレイ動画を投稿した「Everyplay」のプラットフォーム上。
ここから該当アプリをダウンロードすることもできる。
現在「Everyplay」は、iOS/Android併せて300タイトルに対応している。また、投稿されているプレイ動画は、毎月60万回も再生されているほか、登録ユーザー数は世界で850万以上という。さらに「Everyplay」は日本語化はもちろん、韓国語、中国語、英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペンス語などにも対応。
そして「Everyplay」を利用しているユーザー層については、“お金をかけて積極的にゲームを遊んでいる人たち”が多いと独自の研究結果で分かったと話す。「ゲームを積極的に遊んでいる人たちは、フィーチャーされることを望んでいます」とラーコネン氏が話すように、「Everyplay」にはコアユーザーに訴求できる座組があるようだ。
ここでラーコネン氏は、「Everyplay」が企業側に与えるメリットの具体例として、フィンランドのインディーズゲーム会社「Secret Exit」の一部タイトルが、リリース開始5ヶ月の期間で、「Everyplay」経由でダウンロードされた割合が7.5%を占めていたことも発表してくれた。微々たる数字と思うかもしれないが、「Everyplay」は無償でアプリに導入できるため、言わば“ダウンロード数が増える”というメリットしか残らないといえる。
▲「Everyplay」プラットフォームのTOP画面。
■着々と日本向けタイトルにも「Everyplay」が対応
次にラーコネン氏は、日本が誇るゲームキャラクター・ソニックを題材とした新作レースアプリゲームが、「Everyplay」にも対応していることを発表した。現在、アメリカで配信されているタイトルであり、残念ながら日本ではまだリリースされていない。しかし、日本市場について同氏は、「小さなシェアかもしれませんが、これから成長すると見込んでいます」と意気込みをあらわにした。というのも、同作のみならず日本向けのタイトルを着々と「Everyplay」に対応していくことも明らかにしたのだ。
さらに、日本におけるプロモーションを加速するために、日本常駐スタッフも採用したほか、Unity Japanとも手を組みながらデベロッパーサポートにも注力していくなど、頼もしい言葉も講演中には示してくれた。それほど真剣に日本の市場を捉えていると言える。
そして、最後にラーコネン氏は、「Everyplay」のビジネスモデルについて、「YouTubeのように広告を載せられるようにする」とコメント。まだ実装されていないようだが、将来的には各デベロッパーが「Everyplay」を通したプロモーション、あるいは収益化できるような形に整えていくようだ。
「Everyplay」の普及に伴い、手軽にアプリのプレイ動画を閲覧できる環境というものが、世界的に広がりを見せることで、これまで我々が考えていた“クチコミ効果”も多様な形に昇華されていくことだろう。「Everyplay」対応ゲームは、現在300タイトルほど。しかし、Unity傘下という確固たる地位も手伝って、これから先の伸び上がりには期待が持てる。
「Everyplay」は、Asset Storeで入手可能(無料)。
■関連サイト
「Everyplay」