コロプラ<3668>は、4月30日、第2四半期(13年10月~14年3月期)の決算説明会を東京都内で開催した。同日発表した第2四半期決算は、売上高が前四半期比で11.6%増の123億6000万円、営業利益が同9.0%増の53億2600万円となり、13年10~12月期ほどの強烈な伸びではなかったものの、増収・増益そして過去最高の数字となった。『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』の持続的成長に加え、『軍勢RPG 蒼の三国志』が寄与したことが主な要因だった。
決算説明会に臨んだ馬場功淳社長(右写真)は、『魔法使いと黒猫のウィズ』の急伸した翌四半期ということで手綱さばきの難しい四半期だったと振り返った。そして、『スリングショットブレイブズ』や『ほしの島のにゃんこ』などの新作が順調な滑り出しをみせたように、「次々と種をまいており、一部では芽が出てきた」と語り、新しい成長要素が育ち、今後の持続的な成長にも自信をのぞかせた(以下、断りのない限り「」は馬場社長の発言)。
まず、第1四半期(13年10~12月期)の決算を振り返っておこう。売上高が前四半期(13年7~9月)比で70%増の110億7300万円、営業利益は同2倍の48億8700万円と大幅な増収増益を達成した。『魔法使いと黒猫のウィズ』が引き続き伸びたことに加え、『蒼の三国志』が収益に寄与し始めたことが主な要因だった。
急成長を遂げた第1四半期と比較すると、第2四半期はやや物足りなく映るが、例年、第2四半期は難しい時期にあるという。10~12月期は年末商戦の後ということもあって、反動が出やすいことに加え、『プロ野球PRIDE』はシーズンのオフの時期にあたるためだ。昨年1~3月期にいたっては、前四半期に比べて営業減益となっていたほどだった(関連記事)。
『魔法使いと黒猫のウィズ』と『蒼の三国志』が引き続き収益面のけん引役となったが、2月以降、興味深い取り組みを行った。コロプラでは、2月以降、ARPPU(課金ユーザー1人あたりの売上高)を意識的に抑制しつつ、DAU(Daily Active Users)と課金率を高め、全体の売り上げを伸ばす施策を行ったという。この結果は狙い通りとなり、DAUと課金率の上昇を通じて、売り上げが伸びた。とりわけ、『魔法使いと黒猫のウィズ』については、3月のDAUは過去最高になったという。
では、なぜコロプラはDAUを重視するのか。スマートフォンの普及率が50%を超えたとの一部調査もあるが、今後、新規のスマートフォンユーザーの伸びが鈍化し、DAUの獲得は時間とともに難しくなると考えられるためだ。最近の新作アプリのプロモーションでは、WEB広告だけでは不十分で、テレビCMの重要性が高まっているが、今後もユーザーを集めることはますます難しくなるとみているという。また、これに関連して、ARPPUについてもユーザー満足度とARPPUの適切なバランスを取ることが必要だと考えているそうだ。ARPPUを上げて目先の収益を伸ばすよりも、継続的に長く遊んでもらうことで、中長期的な競争力を高める考えなのだろう。
他方、費用については、広告宣伝費を9億5300万円から13億3300万円に伸ばした一方、iDC関連費用やロイヤリティの伸びを抑えるなど最適化を行い、営業利益率は43%と高い水準を維持することに成功した。ちなみに、広告宣伝費で大きな割合を占めるテレビCMについては、『魔法使いと黒猫のウィズ』の出稿量を抑え、『蒼の三国志』の比重を増やしたという。
もうひとつ注目すべき点として、ライトアプリ群「Kuma tha Bear」の位置づけが変わっていることだろう。複数のアプリをリリースしてオンラインアプリの集客を行うという戦略だったが、近年では「実験」という側面が強くなっているようだ。『クマのみんなでリバーシ!』や『激闘オンラインベースボール!』などリアルタイム通信技術の強化など技術的そして企画面での実験を行う場となりつつある。MAU(Monthly Active Users)については200万近辺で下げ止まった。
馬場氏が冒頭、芽が出てきたサービスとして、『スリングショットブレイブズ』と『ほしの島にゃんこ』をあげたが、この2タイトルは「Unityブートキャンプ」以降に制作したアプリだ。『スリングショットブレイブズ』は、すでに100万ダウンロードを突破し、4月26日よりテレビCMの放映も開始した。馬場氏は、「Wi-Fiはもちろん、3G回線でもマルチプレイがさくさくと楽しめる。同じ時間を共有できるという新しさがユーザーから評価されたと考えている」と好調の要因を説明した。
なお、コロプラでは研究開発として、リアルタイム通信用のライブラリが完成しており、既存タイトルにも簡単に低コストで実装できるようになったという。リアルタイム通信は『蒼の三国志』にも導入しており、今後、新作だけでなく、既存タイトルにも導入する予定だ。リリースから日数の経過したタイトルにアドオンすることで、「もう一花咲かせることができる」。
また『ほしの島にゃんこ』については、「びっくり」ともいうべき滑り出しで、『魔法使いと黒猫のウィズ』に次ぐDAUの規模になっている。アプリローンチ後のDAU比較を行うと、既存のタイトルを大きく上回っていることがわかる(上図のグラフ)。知育アプリとして作ったが、子供だけでなく、大人のプレイヤーも多いそうだ。このため、子供が遊べる仕組みは維持しつつ、「ちょっとだけ、本当にちょっとだけ売り上げが伸びるような調整を行った」という。
このほか、ゲーム以外では、おでかけ研究所の位置情報活用プロジェクトとして、初めての売り上げが計上された。KDDIと共同で位置情報のビッグデータを活用して、観光地動態調査をレポートとして提出するもので、岐阜県飛騨市に納品したとのこと。現在、複数の案件を抱えており、「1件あたり数百万円単位で売り上げが計上される見通し」だ。
この日(4月30日)発表のあった、通称『白猫プロジェクト』についても言及された。「ゲームの概要すら公開していないが、社内のエリートチームが開発を担当しており、誰に見せても『すごい』といわれるタイトルに仕上がっている。15日後の全容公開を楽しみにしてほしい」と語った。
さらに、スマートフォン向けの位置情報ゲームを新しく開発することも明らかになった。馬場氏としては、2年半前からスマートフォンの新しい位置情報ゲームを作りたいという考えがあったものの、位置ゲーを楽しむ人がスマートフォンを持っていない状況のなか、あえて新作を出してもヒットしないと判断したという。そうしたなか、スマートフォンが普及し、技術的な蓄積も進んだため、馬場氏自らがプロジェクトリーダーとして開発に着手したという。「類を見ないスマホゲームにするため、企画を詰めている。来年にはお見せできるかと思う」と自信を示した。
質疑応答では海外市場への取組みについて複数質問がでた。海外市場への取り組みについては通常、ディベロッパーが現地のアプリストアで直接配信する方式と、海外の有力パブリッシャーにライセンス提供を行い、その会社を経由して配信する方式がある。長谷部潤取締役CSO(写真)は、「アジアについては直接配信することも視野に入れていたため、ライセンス供与の交渉を止めることが多かった。しかし、今年に入り、随時ライセンス供与で売り上げを出していくための交渉を行っている。先日発表した『魔法使いと黒猫のウィズ』の中国展開などもあり、パートナーシップの広がりを次の四半期決算でみせられるのではないか」と回答した。
続けて長谷部氏は「直接出す方式については広告宣伝費の効果が見込めないため、広告宣伝費なしで配信していたが、月間5000~6000万円の売り上げになっている。『ほしの島のにゃんこ』も海外でのDAUが国内に匹敵する規模になっている。どのタイトルを中心に展開するかどうかはともかく、ある程度、広告宣伝費を積みながら事業展開を行うことも視野に入れている状況だ」と説明した。
M&Aに関する質問も出た。市場の競争環境が厳しくなり、テレビCMを打つ会社が増えているが、無茶なマーケティング活動の結果、経営の厳しくなる会社が出てくると予想される。こうした会社が出てくるとすれば、その時期はいつ頃と見ているのか、そして、そういった会社を買収するとすれば、どういった会社を買収したいと考えているのか、といった趣旨の質問だった。
これに対し、馬場氏は、「市場が厳しい状況にある。革新的な、面白いアプリを作るだけでなく、WEB広告とテレビCMを組み合わせないとユーザーが集められないため、成功するには一定規模の資本がいるためだ。スマートフォンの普及率が5割に達し、フレッシュなユーザーが少ない市場でテレビCMを打ってもペイするケースが減ってくるだろう。指摘するような状況は、非常に答えづらいが、年末くらいになるかもしれない」との見方を示した。
さらにM&Aを行う対象については、「他社が弱っている状況に付け込むようなことはやりたくない。われわれが培ったマーケティング力・開発力を必要とする会社と一緒に事業展開を行いたい」と語った。ただし、その条件として、「ある程度の人数が在籍し、開発ラインを3本持っていること、そして、社風が素直な会社であること」をあげ、「該当するような会社があれば積極的に声をかけていきたい」と語った。
決算説明会に臨んだ馬場功淳社長(右写真)は、『魔法使いと黒猫のウィズ』の急伸した翌四半期ということで手綱さばきの難しい四半期だったと振り返った。そして、『スリングショットブレイブズ』や『ほしの島のにゃんこ』などの新作が順調な滑り出しをみせたように、「次々と種をまいており、一部では芽が出てきた」と語り、新しい成長要素が育ち、今後の持続的な成長にも自信をのぞかせた(以下、断りのない限り「」は馬場社長の発言)。
まず、第1四半期(13年10~12月期)の決算を振り返っておこう。売上高が前四半期(13年7~9月)比で70%増の110億7300万円、営業利益は同2倍の48億8700万円と大幅な増収増益を達成した。『魔法使いと黒猫のウィズ』が引き続き伸びたことに加え、『蒼の三国志』が収益に寄与し始めたことが主な要因だった。
急成長を遂げた第1四半期と比較すると、第2四半期はやや物足りなく映るが、例年、第2四半期は難しい時期にあるという。10~12月期は年末商戦の後ということもあって、反動が出やすいことに加え、『プロ野球PRIDE』はシーズンのオフの時期にあたるためだ。昨年1~3月期にいたっては、前四半期に比べて営業減益となっていたほどだった(関連記事)。
『魔法使いと黒猫のウィズ』と『蒼の三国志』が引き続き収益面のけん引役となったが、2月以降、興味深い取り組みを行った。コロプラでは、2月以降、ARPPU(課金ユーザー1人あたりの売上高)を意識的に抑制しつつ、DAU(Daily Active Users)と課金率を高め、全体の売り上げを伸ばす施策を行ったという。この結果は狙い通りとなり、DAUと課金率の上昇を通じて、売り上げが伸びた。とりわけ、『魔法使いと黒猫のウィズ』については、3月のDAUは過去最高になったという。
他方、費用については、広告宣伝費を9億5300万円から13億3300万円に伸ばした一方、iDC関連費用やロイヤリティの伸びを抑えるなど最適化を行い、営業利益率は43%と高い水準を維持することに成功した。ちなみに、広告宣伝費で大きな割合を占めるテレビCMについては、『魔法使いと黒猫のウィズ』の出稿量を抑え、『蒼の三国志』の比重を増やしたという。
■実験としての側面が強まった「Kuma tha Bear」
もうひとつ注目すべき点として、ライトアプリ群「Kuma tha Bear」の位置づけが変わっていることだろう。複数のアプリをリリースしてオンラインアプリの集客を行うという戦略だったが、近年では「実験」という側面が強くなっているようだ。『クマのみんなでリバーシ!』や『激闘オンラインベースボール!』などリアルタイム通信技術の強化など技術的そして企画面での実験を行う場となりつつある。MAU(Monthly Active Users)については200万近辺で下げ止まった。
■芽を出した種
馬場氏が冒頭、芽が出てきたサービスとして、『スリングショットブレイブズ』と『ほしの島にゃんこ』をあげたが、この2タイトルは「Unityブートキャンプ」以降に制作したアプリだ。『スリングショットブレイブズ』は、すでに100万ダウンロードを突破し、4月26日よりテレビCMの放映も開始した。馬場氏は、「Wi-Fiはもちろん、3G回線でもマルチプレイがさくさくと楽しめる。同じ時間を共有できるという新しさがユーザーから評価されたと考えている」と好調の要因を説明した。
なお、コロプラでは研究開発として、リアルタイム通信用のライブラリが完成しており、既存タイトルにも簡単に低コストで実装できるようになったという。リアルタイム通信は『蒼の三国志』にも導入しており、今後、新作だけでなく、既存タイトルにも導入する予定だ。リリースから日数の経過したタイトルにアドオンすることで、「もう一花咲かせることができる」。
また『ほしの島にゃんこ』については、「びっくり」ともいうべき滑り出しで、『魔法使いと黒猫のウィズ』に次ぐDAUの規模になっている。アプリローンチ後のDAU比較を行うと、既存のタイトルを大きく上回っていることがわかる(上図のグラフ)。知育アプリとして作ったが、子供だけでなく、大人のプレイヤーも多いそうだ。このため、子供が遊べる仕組みは維持しつつ、「ちょっとだけ、本当にちょっとだけ売り上げが伸びるような調整を行った」という。
このほか、ゲーム以外では、おでかけ研究所の位置情報活用プロジェクトとして、初めての売り上げが計上された。KDDIと共同で位置情報のビッグデータを活用して、観光地動態調査をレポートとして提出するもので、岐阜県飛騨市に納品したとのこと。現在、複数の案件を抱えており、「1件あたり数百万円単位で売り上げが計上される見通し」だ。
■『白猫プロジェクト』と新しい位置情報ゲーム
この日(4月30日)発表のあった、通称『白猫プロジェクト』についても言及された。「ゲームの概要すら公開していないが、社内のエリートチームが開発を担当しており、誰に見せても『すごい』といわれるタイトルに仕上がっている。15日後の全容公開を楽しみにしてほしい」と語った。
さらに、スマートフォン向けの位置情報ゲームを新しく開発することも明らかになった。馬場氏としては、2年半前からスマートフォンの新しい位置情報ゲームを作りたいという考えがあったものの、位置ゲーを楽しむ人がスマートフォンを持っていない状況のなか、あえて新作を出してもヒットしないと判断したという。そうしたなか、スマートフォンが普及し、技術的な蓄積も進んだため、馬場氏自らがプロジェクトリーダーとして開発に着手したという。「類を見ないスマホゲームにするため、企画を詰めている。来年にはお見せできるかと思う」と自信を示した。
■質疑応答(1) 海外市場での取り組み
質疑応答では海外市場への取組みについて複数質問がでた。海外市場への取り組みについては通常、ディベロッパーが現地のアプリストアで直接配信する方式と、海外の有力パブリッシャーにライセンス提供を行い、その会社を経由して配信する方式がある。長谷部潤取締役CSO(写真)は、「アジアについては直接配信することも視野に入れていたため、ライセンス供与の交渉を止めることが多かった。しかし、今年に入り、随時ライセンス供与で売り上げを出していくための交渉を行っている。先日発表した『魔法使いと黒猫のウィズ』の中国展開などもあり、パートナーシップの広がりを次の四半期決算でみせられるのではないか」と回答した。
続けて長谷部氏は「直接出す方式については広告宣伝費の効果が見込めないため、広告宣伝費なしで配信していたが、月間5000~6000万円の売り上げになっている。『ほしの島のにゃんこ』も海外でのDAUが国内に匹敵する規模になっている。どのタイトルを中心に展開するかどうかはともかく、ある程度、広告宣伝費を積みながら事業展開を行うことも視野に入れている状況だ」と説明した。
■質疑応答(2) M&Aについて
M&Aに関する質問も出た。市場の競争環境が厳しくなり、テレビCMを打つ会社が増えているが、無茶なマーケティング活動の結果、経営の厳しくなる会社が出てくると予想される。こうした会社が出てくるとすれば、その時期はいつ頃と見ているのか、そして、そういった会社を買収するとすれば、どういった会社を買収したいと考えているのか、といった趣旨の質問だった。
これに対し、馬場氏は、「市場が厳しい状況にある。革新的な、面白いアプリを作るだけでなく、WEB広告とテレビCMを組み合わせないとユーザーが集められないため、成功するには一定規模の資本がいるためだ。スマートフォンの普及率が5割に達し、フレッシュなユーザーが少ない市場でテレビCMを打ってもペイするケースが減ってくるだろう。指摘するような状況は、非常に答えづらいが、年末くらいになるかもしれない」との見方を示した。
さらにM&Aを行う対象については、「他社が弱っている状況に付け込むようなことはやりたくない。われわれが培ったマーケティング力・開発力を必要とする会社と一緒に事業展開を行いたい」と語った。ただし、その条件として、「ある程度の人数が在籍し、開発ラインを3本持っていること、そして、社風が素直な会社であること」をあげ、「該当するような会社があれば積極的に声をかけていきたい」と語った。
会社情報
- 会社名
- 株式会社コロプラ
- 設立
- 2008年10月
- 代表者
- 代表取締役会長 チーフクリエイター 馬場 功淳/代表取締役社長 宮本 貴志
- 決算期
- 9月
- 直近業績
- 売上高309億2600万円、営業利益28億5800万円、経常利益32億7600万円、最終利益18億9300万円(2023年9月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3668