ミクシィ決算説明会 今期営業益100億円を目指す 森田氏「地に足の着いた運営で『モンスト』を伸ばす」 売上高300億円、営業利益90億円を見込む【追記】

ミクシィ<2121>は、5月14日、2014年3月期の決算発表を行うとともに、東京都内で決算説明会を開催した。同社の発表した第4四半期(14年1-3月期、4Q)の連結決算は、売上高が前四半期(13年10-12月期、3Q)に比べて143.8%増の57億9800万円と驚異的な伸びを見せるとともに、営業利益も9億9000万円と前四半期の1億1100万円の赤字から一転して大幅な黒字に転換した。13年10月よりリリースしたスマートフォンアプリ『モンスターストライク』の売上が好調だったことが主な要因だ(14年3月通期の数字はこちらを参照)。

これに続く2015年3月期は、売上高400億円(前期比229.1%増)、営業利益100億円(同1982.4%増)、経常利益100億円(同3690.3%増)、当期純利益60億円(黒字転換)と、大幅な増収増益を見込んでいる。引き続き『モンスターストライク』を中心とした伸びとなる見通し。『モンスターストライク』だけで売上高300億円、営業利益で90億円程度を見込んでいるという。月商ベースでは25億円となる。『モンスターストライク』は、4月以降も順調に利用者と売り上げを伸ばしており、アプリストアの売上ランキングでも2位の常連タイトルとなっている。

決算説明会に臨んだ執行役員の森田仁基氏(写真)は、「『モンスターストライク』については、ユーザーの声に耳を傾け、地に足の着いた運営を行い、売り上げを伸ばすことに注力したい。(今期の業績予想は)アグレッシブな目標と取られるかもしれないが、足元の数字をみると十分実現可能と考えている」と述べた。また、グローバル展開に積極的に挑戦する方針も明らかにした。「日本発のタイトルで世界で大ヒットを遂げたタイトルはまだないと考えているが、『モンスターストライク』がその第1号になりたい。2014年はチャレンジングな年になるだろう」と語った。業績予想に『モンスターストライク』の海外売上は含まれていないが、業績面での上振れ要因としても期待できそうだ。

今回のレポートでは第4四半期の決算と取り組みを中心に報告していきたい(以下、「」内は森田氏の発言)。

 

■驚異的な回復を見せた4Q


4Qの売上高は、前四半期比で143%増とまさに驚異的な伸びを見せたが、その要因はいうまでもなく『モンスターストライク』の成長にある。『モンスターストライク』が中心となっているコンテンツ領域の売上高は、3Qは2億6100万円だったが、4Qには31億1300万円となった。月商10億円を突破したことになる。さらに12月から連結に加わった結婚支援事業も収益に加わり、ライフイベント領域の売上高が5億8400万円から12億2100万円に伸びたことも見逃せない。
 

費用面では、『モンスターストライク』に関連した費用の増加が目立った。売上原価をみると、外注費は、3Qには4億0100万円だったが、4Qには5億6900万円に増加した。さらに販売管理費のうち、決済手数料3億4800万円から12億9400万円に、広告宣伝費が1億4900万円から9億4100万円にそれぞれ増えた。また業績回復に伴う賞与により、一時的に人件費も5億5200万円から7億5900万円となった。
 


この結果、増加した費用を増収効果で吸収し、4Qの業績は、売上高57億9800万円(前四半期比143.8%増)、営業利益9億9000万円(3Qは1億1100万円の赤字)、経常利益9億円(同1億1100万円の赤字)、四半期純利益13億4500万円(同2億2100万円の赤字)となり、大幅な増収・黒字転換を達成した。
 
 

■テレビCMでステージが変わった『モンスターストライク』


(1)口コミ中心からテレビCM主導で躍進

続いて事業領域ごとの取り組みに関する説明があった。『モンスターストライク』は、リリース当初は口コミ中心のノンプロモーションでユーザー数を増やしていった。14年3月より、全国でテレビCMの放映を行ったが、「友人などと一緒にワイワイガヤガヤとゲームを楽しむ」といった利用シーンをイメージできるようなクリエイティブを3パターン用意した。同社初のテレビCMだったが、口コミによる増加が鈍化しはじめたタイミングでもあり、放映開始直後から一気にインストールが伸びたという。以降、プロモーション期間中、アプリストアのダウンロードランキングで常に上位をキープでき、4月27日にはインストール数が600万件を突破した。
 


プロモーション活動でユーザーの獲得に成功したが、すぐに売り上げの伸びにもつながった。アプリストアの売上ランキングでは、1月の平均順位はiOSが9.9位、Androidが14.6位だったが、テレビCMを実施した3月以降、売上ランキングでの「ステージ」が変わり、3月にはiOSで3.6位、Androidで4.7位となり、4月には2.8位、2.9位、さらに過去最高となる2位まで順位を上げており、5月に入ってもそのポジションをキープしている。
 

余談だが、今後のプロモーション活動に関しては、『モンスターストライク』だけで毎月5億円程度の広告宣伝を行っていく予定だ。公募増資で約65億円の調達を行ったが、その主な資金使途となる。これ以外にも新規事業に毎月1億円程度の支出を行っていくとのこと。



(2)台湾の事前登録は日本と同ペースで獲得、早くも手応え

『モンスターストライク』のグローバル展開の準備も進めている。中国・香港・マカオでの提供については、中国Tencentと配信に向けた開発を行っている。言語を翻訳するだけの単純なローカライズだけでなく、中国のユーザーの好みや文化に合わせたカルチャライズも行っているという。「中国でもNo.1を狙っており、その準備をしっかりと行っている」。

同時に台湾への提供も開始した。当サイトの読者ならご存知だろうが、5月9日から13日までの5日間、事前登録を行い(関連記事)、5月14日からAndroid版の配信を開始した。台湾で日本文化が受け入れられていることを考慮し、日本語版をローカライズしたものになっている。説明会終了後に森田氏に台湾での事前登録に関して質問したところ、わずか5日間だったが、日本で行った事前登録の際と同じようなペースで獲得できたそうだ(【追記】)。Facebookページの「いいね!」も5000件を超えた。日本のヒットタイトルということで現地の注目度も高く、台湾展開に関して早くも手応えを感じているという。

 

また、「ある程度の規模のあるか、急激に伸びているマーケットから」となるが、中華圏以外の地域でも提供していくことも視野に入れている。「引っ張って離すだけのシンプルなゲーム性とコミュニケーションを誘発する仕組みは全世界で共通で受け入れられるものと考えており、グローバル展開に注力していきたい」と意気込みを語った。会場からは海外での売上目標についての質問があったが、森田氏は「ゲームがどの程度受け入れられるのか未知数でもあり、具体的な目標数字は設けてない」と回答しつつ、「トランプやUNOは世界の多くの人が遊んでいるゲームだが、『モンスターストライク』もそうした存在になりうると考えている」と世界ヒットへの自信を示した。

 

■「mixi」はリアルソーシャルグラフから興味・関心でのつながりに


メディア領域は、主にSNS「mixi」となっている。売り上げの減少傾向が続いているが、徐々に下げ止まりの傾向も見えてきた。ブラウザソーシャルゲームの課金売上の減少傾向は続いているものの、広告売上に関しては横バイだった。広告に関しては、現在、ネットワーク広告への移行を進めている。
 

「mixi」に関してはリアルソーシャルグラフをベースにしたサービス提供を行ってきたが、それが一定の完成を見たと判断し、興味・関心でのつながりを活性化させる施策を実施した。具体的には、SNSにログインしなくてもコミュニティやニュースが読めるようにしたほか、トップページからコンテンツへの誘導を強化するといった取り組みだ。この結果、ログオフユーザーの数が右肩上がりで上がった。これ以外にも、ログインするユーザー向けには、コミュニティに「いいね」機能を追加したほか、プロフィールの改修、通知などのチューニングなどを行い、既存ユーザーがコンテンツの更新状況に気づくような改善も行った。
 

他方、利益率向上を図るため、先のネットワーク広告の運用を強化するとともに、選択と集中を行い、人員配置の見直しを行った。2013年7月には従業員の56%がmixi事業に携わっていたが、『モンスターストライク』をはじめとした新規事業にリソース配分を行った結果、14年3月には43%に低下した。その結果、これまで低下傾向にあった利益率も第2四半期を底として上昇基調にある。
 
 

■フォトブック「nohana」のマネタイズに光明


フォトブック事業「nohana」は、会員数が70万人を突破するなど順調に利用者が伸びた。このサービスは各方面から注目を集めたものの、課題はマネタイズだった。3月以降、料金改定を行ったほか、販売促進企画を行ったところ、フォトブックの有料購入比率が上昇し、「マネタイズの光が見えてきた」。また求人広告事業「Find Job!」も長期にわたり安定した収益を維持し、結婚支援事業も好調に推移した。
 


 
決算説明会での質疑応答は当然のことながら、『モンスターストライク』に集まったが、森田氏は、『モンスターストライク』のさらなる成長を図るとともに、第2、第3の『モンスターストライク』の創出にも取り組んでいく方針を明らかにした。それは「人々に受け入れられる新しい価値のあるサービス」であり、必ずしもゲームにはこだわらないとのことだった。『モンスターストライク』ばかりが注目されるミクシィだが、その一方で「DeployGate」や「nohana」など「あると便利」「かゆいところに手が届く」サービスを生み出していることも忘れてはならない。ミクシィが今後、どういったユニークなサービスを生み出すのか、目が離せない。


 


【追記】
 

台湾の事前登録5万人は聞き間違いでしたので訂正しました。大変失礼しました。お詫び申し上げます。◆ミクシィ決算説明会 今期営業益100億円を目指す 森田氏「地に足の着いた運営で『モンスト』を伸ばす」 グローバル展開にも挑戦 | http://t.co/v91R4QxtKK

— SocialGameInfo (@SocialGameInfo) 2014, 5月 15
株式会社MIXI
https://mixi.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社MIXI
設立
1997年11月
代表者
代表取締役社長 木村 弘毅
決算期
3月
直近業績
売上高1468億6800万円、営業利益:191億7700万円、経常利益156億6900万円、最終利益70億8200万円(2024年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
2121
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