【インタビュー】アプリの収益最大化に向けたKPI管理の在り方とは…GMO NIKKO「GMO MARS」担当者が語るアプリマーケティングの最前線

アプリマーケティングの手法は、これまで主流だったリワード広告だけでなく、テレビCMによるマスプロモーションから、アプリリリース前に特典情報と共に事前登録を促す事前登録プロモーション、友達・ユーザー同士の拡散を狙ったソーシャルメディアなど、多様化している。取捨選択や予算配分を進める上で、マーケティングのROI(投資回収率)を追求するための効率的な効果解析が重要だが、その効果解析ツールも日々進化している。
 
今回、GMOアドパートナーズ株式会社<4784>の連結会社で、インターネット広告代理事業を展開するGMO NIKKO株式会社が提供するスマホアプリ広告効果測定ツール「GMO MARKETING SUITE (GMO MARS)」の開発担当者に、サービスの詳細はもちろん、SNS・アプリ内行動ログの活用といったアプリマーケティングの最新動向や、今後の見通しなどを伺った。
 
インタビューに応じたのは、デジタルマーケティング本部を統括する常務取締役・谷本秀吉氏(写真右)と、同本部でアドテクノロジーチームのリーダーを務める中村智彦氏(写真左)。谷本氏はネット広告論考サイト「アド論」の編集長を務め、中村氏は「MARS」の開発現場でマーケティング担当者の要望を直接受け取る立場にある。アプリマーケティングの最前線に触れる2人から興味深い話が聞けた。
 

GMO MARKETING SUITE
(GMO MARS)

 

■競争進む効果測定ツール…「機能だけでなくマーケッター視点のUIで差別化」

 
――:よろしくお願いします。まず、GMO NIKKOのアプリマーケティング関連サービスについて紹介していただけますか?
 
谷本氏:「当社の提供している広告効果測定ツールのGMO MARKETING SUITE(GMO MARS)は、多種多様なアプリプロモーション効果の評価指標を一元的に管理、視覚的に把握できるツールで、アプリマーケティングにおける予算配分や広告配信の最適化に活用できます。主要なアドネットワークに連携しており、現在の連携メディア総数は約70を超えます。新しいメディアへの対応も迅速に実施しています。他、リワード広告やGMO DSP(Demand Side Platform、広告主側の広告管理プラットフォーム)、ソーシャルメディア分野でのネット広告代理事業も手掛けています」
 
▼MARSの主な対応ネットワーク、メディアの一覧
 

――:広告効果測定の分野にも様々なサービスがありますが、GMO MARSの特徴を教えてください。
 
谷本氏:「GMOインターネットグループでは、GMOインターネット本体の他、複数のグループ会社がモバイルゲーム事業を展開しており、もともとMARSはグループ内のゲームプロモーション支援という位置づけで始まりました。それを2012年10月ごろからグループ外に提供し始めたという格好です。導入アプリ数で言えば、グループ内外で半々くらいですね。グループ外企業の利用がどんどん増えています」
 
「各社が効果測定ツールの開発を強化しているので、基本的に計測できる指標や機能は、ほぼ横並びの状態になりつつあります。我々が差別化として意識し、実際にユーザーの好評を得ているのは、収益の最適化分析のしやすさに主眼を置いたユーザーインターフェース(UI)、開発対応の迅速さ、そして安定稼働の3点です」
 

■”ボトルネック”を探せ…UIは収益最適化に主眼、段階別に分析しやすく

 
――:収益の最適化分析に主眼を置いたUIですか。
 
谷本氏:「アプリ収益化のPDCA(Plan、Do、Check、Act)を回すうえで重要なのは、KPI(評価指標)の把握とボトルネックの速やかな発見です。GMO MARSはKPIの把握とボトルネックの発見、その要因詳細分析をスムーズに進めるためのユーザービリティ(使いやすさ)強化に力点を置いています」
 
「その最大の特徴はダッシュボード機能です。アプリ利用者の誘導・獲得・定着・継続・課金といった各段階におけるKPIを一覧でき、収益化に向けてどの段階がボトルネックになっているかを簡単に把握できるようにした画面です。それぞれの段階で、様々な主要KPIを選択し、表示させ、詳細な分析もできるようになっています」
 


 
「また、これらUIや機能は、クライアントのニーズに迅速に開発対応をしてきた結果でもあります。我々は毎月、クライアントであるアプリ開発企業から改善要望を頂き、開発要件として迅速に対応しています。GMO MARSは、クライアントニーズによって成長してきた、といっても過言ではありません」
 

■分析のトレンド…リテンション率の詳細分析、非Cookie計測などにも対応

 
――:最近ではどのような分析ニーズが高まっているのですか。
 
中村氏:「最近は、ユーザーのリテンション率(継続率)の把握が非常に重視されており、このKPIを把握しやすいよう様々な改善を施したところ、大変評価を頂いております。具体的には、例えば縦軸に日付、横軸に経過日数をとった表でKPIの日次データを表示し、各マスの継続率の高低を色付けすることで、イベントが好調だったか、不調だったかを一目で把握できるように改善しています」
 


 
谷本氏:「効果測定分野の最近の動向ですが、ブラウザのCookieを使ったCookie計測から非Cookie計測への変化が挙げられると思います。国内では前者、世界では後者が主流ですが、ストア運営者の対応などを見ていると、日本でも近い将来、非Cookie方式が主流になってくると想定しています。MARSでは非Cookie計測が可能な体制を2013年11月に構築しており、導入社数は着実に増えています」

中村氏:「現在進めている改善項目の一つとしては、”アプリ内収益についてストアへのフィー(手数料)を差し引いたNET金額の表示がないと正確にROAS(広告費用対効果)を把握出来ない”という要望を広告主様から頂きましたので、MARSではGROSS金額とNET金額の両方を表示できるように改修を進めています」
 

■ストア首位狙いのリワードは「最初の1時間で3~5万ダウンロード」の高負荷


――:安定性も重要な評価ポイントとされているようですね。
 
谷本氏:「グループがインフラ事業を手掛けていることもあって、ツールの安定稼働には定評があります。現在、システムインフラとして、(クラウドサービスの)GMOアプリクラウドを活用しています」
 
「安定稼働が重視されるのは、とりわけリワード広告でトラフィック(送信データ量)が急増するときですね。リワードを実施すると瞬間的にトラフィックが急増し、インフラが脆弱だとツールが落ちやすくなります。実際、我々はインフラリソースの約8割をリワード対応に費やしています
 
中村氏:「リワードでアプリをストアの無料ランキング首位に上げる広告施策の場合、30分~1時間という非常に短い時間で1アプリあたり3~5万ダウンロードが集中します。実際、このような施策を過去何度も測定してきましたが、GMO MARSのインフラは、そのような場合でも問題なく測定できるよう日々増強を繰り返しています」
 

■米国“ゲーマー”の広告インベントリは日本の数十倍…今後はSNSの活用がポイント

 
――:リワードの話が出ましたが、アプリプロモーションの主戦場はテレビCMやSNSに移ってきているように見えます。
 
中村氏:「リワードはすぐにはなくならないでしょうが、ストアやユーザーは、純粋なゲームの面白さだけのランキングを求めているように思えます。確かに、マーケティング手法は多様化していくでしょう」
 
谷本氏:「海外のトレンドという視点では、SNSでの拡散を使ったプロモーションにも注目しています。アプリプロモーションの主な手法は、日本はリワードですが、海外ではSNSです」
 
「米国において、“ゲーマー”という分類でのSNS広告インベントリ(広告配信可能なインプレッション在庫)は、日本の数十倍の多さとも言われています。ゲーマーの人口は変わりませんが、ゲームに対してSNSでオープンな風土があるためです。日本人と比べると、欧米人はゲームを遊ぶこと、またゲームの進行度合いをSNSでよく開示・拡散します
 
「今後、アプリ開発企業がグローバル展開をするときはもちろん、日本でも今後は最も重要なマーケティングの場として重視する必要があります」
 

■「アプリ内ユーザー行動解析」の重要性…多機能解析ツールが普及か

 
――:SNSを使ったマーケティングは今後、ノウハウ蓄積が必須となりそうですね。ほかに、注目の分野はありますか。
 
谷本氏:「マーケティング施策の話ですが、効果測定だけでなく、今後更に重要視されていくのは、アプリ内ユーザー行動(いわゆる生ログ)の解析だと考えています。日本のゲーム企業は開発現場とマーケティングの現場が分かれており、マーケティング側は広告効果測定ツールを使用する一方、開発側はアプリ内のユーザー行動を解析し、ゲームの調整などを行っています」
 
ユーザー行動解析については、10年前のWebブラウザ分野に似ていると思っています。Web解析でサイトカタリストのような多機能解析ツールの活用が主流となった流れが、アプリ領域でも起こるのではないかという考えです。ユーザー行動解析の機能が進化するなか、自社でユーザー行動の生ログを解析して対応するには限界があるため、いずれ高機能の外部ツールを活用するのが一般的になるでしょう。WebにはGoogle Analyticsやサイトカタリストが登場しましたが、そのアプリ版が出てくる、ということです」
 
「当社は、このトレンドに対応するため、広告効果測定はもちろん、アプリ内ユーザー行動解析として世界最高峰のツールである「Apsalar」の独占販売権を獲得しました。アプリ内のイベント施策に対するアクション、利用時間、離脱タイミングなどのユーザー行動を詳細に解析するツールです」
 
――:確かに、広告効果だけでなく、アプリ内ユーザー行動の解析力がアプリの成功を左右するという話はよく聞きます。注目の分野ですね。最後にSocial Game Infoの読者へ何かメッセージはありますか。
 
谷本氏:「当社はツール提供会社ではなく、広告主様にとって最も身近なブレインチームとして、マーケティングのROIを高めることをミッションとしており、そのサービスの一環としてツールを開発、提供しております。今回、紹介したツールに加え、集客施策からアプリ収益最適化に向けたコンサルティングまで、施策全体を設計し実行することで、総合的にゲーム開発企業を支援することができると思います」
 
――:ありがとうございました。
 

GMO MARKETING SUITE
(GMO MARS)

 

GMO NIKKO株式会社
https://www.koukoku.jp/

会社情報

会社名
GMO NIKKO株式会社
設立
2009年8月
代表者
代表取締役社長 佐久間 勇
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