クルーズ決算説明会 ネイティブゲームは「ここから巻き返し」…業績は通販サイト「SHOPLIST」の成長が支え、コマース分野の新事業も検討

クルーズ<2138>は8月8日、2014年3月期第1四半期(1Q、4~6月)の連結決算を発表し、都内で決算説明会を開いた。売上高は前四半期比4%増の54.8億円、営業利益は同52%減の4.6億円と、増収減益となった。ソーシャルゲーム事業の売上減少を、ネット通販事業の成長が補い増収を確保。もっとも利益率の高いゲーム事業の売上減やネイティブアプリの開発負担などが利益を圧迫した(関連記事)。

小渕宏二社長は、ネイティブアプリ開発体制への移行が非常に困難を伴うものだったと述べつつ、今後の成長方針として「ネイティブゲームでヒットを出す。ゲーム事業ではこれ以外に成長の方法はない」と指摘。ブラウザゲームのコスト抑制と、ネイティブゲームの生産速度向上で、ヒット作創出につなげていく方針を語った。一方、ネット通販事業の更なる成長への自信も述べた。

なお、説明会では、新作ネイティブアプリとなるストラテジーゲーム『Breakin' Grounds』のリリースが間近であること、そして「IS<インフィニット・ストラトス>」のゲーム化版権を獲得したことを明らかにした。(以下、かぎ括弧内は小渕社長の発言)
 
 

■SHOPLISTの四半期売上高が過去最高に…ゲーム事業の落ち込み補う


説明会の冒頭にインターネットコマース事業の成長を持ちだし、同事業の成長を強調した。実際、同社の主力2事業を見ると、インターネットコンテンツ(=ソーシャルゲーム)事業が前四半期比で減収減益、インターネットコマース(=ネット通販)事業が増収増益と、明暗が分かれた。

コンテンツ事業の売上高は前四半期比で8%減の32.9億円、営業益も6割減の3.7億円と低調だ。四半期としてピークの45.7億円を売り上げた1年前(2013年4~6月)と比べると、売上は7割程度に落ち込んでいる。

一方、ファストファッション通販サイト「SHOPLIST.com」を運営するコマース事業の売上高は31%増の21.6億円と過去最高を更新、利益も8700万円と改善した。コマース事業の売上高は、クルーズ全体の4割を占めるまでに拡大した。
 

「SHOPLIST.com」は7月の単月取扱高が9億円を突破するなど、依然、成長中。商品数の拡充、メンズ・キッズなどへのジャンルの拡大、物流、プロモーションの4つを強化することで、「さらに伸ばせる」と自信を語った。
 

■大幅減益…高利益率のゲーム事業の売上減、開発・宣伝費用が重荷


一方、全体の利益は大幅減。「ソーシャルゲーム事業の粗利率は60%強、SHOPLISTは20~40%」と説明するように、2つの事業の利益率には大きな差がある。現状のSHOPLISTの成長では、ゲーム事業による利益低下を補いきれなかった格好だ。

ほか、ゲーム事業の再加速に向けた費用も利益の重荷だ。クルーズは徐々にネイティブアプリゲームをリリースしているが、これまで資産計上していた開発段階のネイティブゲームについて、リリース後から減価償却を開始する。「ネイティブゲームの売上が立っていないため、償却費用を補えなかった」という。

加えて、ネイティブアプリゲームの開発で外注費、労務費も増加傾向。1Qに大規模プロモーションを実施したことで宣伝費も増加した。
 
 

■「ネイティブゲームでヒットを出す」コマース分野の新事業に挑戦


小渕社長(写真)は、ある企業の大ヒットゲームを話題に挙げ、ネイティブゲーム市場について「1本当たった時の影響が大きい」といい、ヒットの登場という「確率論の世界が大きく占めてくる」と読みにくさを語った。それでも、「ネイティブゲームでヒットを出す。ゲーム事業では、これ以外に成長の方法はない」と、ネイティブゲームのヒット創出を追求する姿勢を示した。

開発体制については、ブラウザゲームの開発コストを抑制し、開発体制を効率化しつつ、ネイティブに移行していきたいという。ネイティブゲーム1作目の『ACR DRIFT』と比べると、1本のゲーム開発にかける開発期間を約70日短縮できたという。人件費などコストも約35%削減し、ネイティブゲームの生産ラインが2倍に増加。「ネイティブへの移行は相当きつかったが、ここから巻き返していきたい」と強調した。

さらに、海外でのパブリッシング案件を推進するという。各地の拠点では、現地の会社と提携し、マーケティングもかねて、売上・利益を出すことを目指しているという。

ネットコマース分野でもショップリストに加え、ブログやショップリストのユーザー資産を活かした新事業に挑戦していくという。
 

■新作2本…ストラテジーゲームと美少女IPタイトル


説明会では、新作ネイティブアプリとなるストラテジーゲーム『Breakin' Grounds』の開発が終わり、配信プラットフォームの審査段階であること、そして「IS<インフィニット・ストラトス>」のゲーム化版権を獲得したことを明らかにした。
 


『Breakin' Grounds』は全世界展開を視野に入れたアプリで、資源を奪い合うタイプのストラテジーゲームだ。類似ゲームの差別化という点については、「従来のストラテジーゲームに比べて、領土を奪い合う際の操作感が違う。領土を奪った感じにこだわった」と述べた。「IS」のタイトルについては、ゲーム性とリリース時期についての明言は避けた。
 
クルーズ株式会社
http://crooz.co.jp/

会社情報

会社名
クルーズ株式会社
設立
2001年5月
代表者
代表取締役社長 小渕 宏二
決算期
3月
直近業績
売上高140億円、営業利益6億4400万円、経常利益6億2800万円、最終利益2億5400万円(2023年3月期)
上場区分
東証スタンダード
証券コード
2138
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