enish<3667>は10月30日、都内で決算説明会を開催した。2014年12月期第3四半期(3Q、7-9月期)は、売上高が前四半期比5%増の15億7000万円、営業利益が84%増の6300万円で増収増益となった。
なかでも既存タイトルでは、第2四半期(2Q、4-6月期)の売上高落ち込みから一転、マルチプラットフォーム展開を含む安定運用体制の再構築により増加した。また、広告宣伝費は新規タイトルに向けて、4Qで積極的に投下したとのこと。新作『千年の巨神』は第4四半期(4Q、10-12月期)から業績に寄与し、日本運営における売上・DAUなどのKPI(重要業績評価指標)を確認次第、順次アジア展開を進めていくようだ(以下、カギ括弧内は安徳孝平社長の発言)。
説明会に臨んだ安徳社長(写真)は、3Q業績の要因について「2Qから注力している安定運用体制の再構築により、既存タイトルの下げ止まりに成功した」と説明。新作『千年の巨神』の売上は、4Qより貢献してくるとのこと。
概ね運用体制の再編・強化対策の実施により、既存の主要タイトルは売上高増加に転じているが、唯一『魁!!男塾 ~連合大闘争編~』だけは未だ減少傾向にあり、「さらなる改善が必要」と何かしらの施策を考えていることを示唆した。
2Qにリリースした『ぼくのレストラン3』は、大幅リニューアルを含めたチューニングを継続中。しかし、予想よりもチューニングに時間がかかっており、4Qの売上貢献は「軽微になると考えている」とコメントした。同じく2Qにリリースした『バハムートクライシス』は、3Qに実施したマルチプラットフォーム展開により想定通りの上昇を達成。安徳社長は「この運営体制の力を、来期以降のネイティブタイトルに活かしていきたい」と言葉を添えた。
なお、前回の決算説明会でも伝えている通り、enishの損益分岐点は月商約5億円となっている。
▲四半期決算推移
▲タイトル別売上高の推移
販管費を占める広告宣伝費は、新規タイトルの投入は引き続き停止しているが、4Qは新作『千年の巨神』をはじめとしたネイティブゲームに、積極的なプロモーション施策を展開していくことを述べた。また、変動費である支払手数料(原価)以外は、コストコントロールを実現。従業員数では、引き続き厳選かつ積極的な採用を実施中とのこと。また、人員の効率的配置により、最適化も実現中のようだ。
通期の業績予想では、売上高が65億円、そして営業利益が0円と据え置いている。実際は3Qまでに3億円弱の営業利益が出ているが、4Qは来期に向けて積極的なプロモーション施策に注力するため、現状の予想で抑えているようだ。
続いて2Q以降の施策実行の効果について。既存タイトルでは、運用体制の強化で収益向上を図るが、引き続き漸減傾向が継続すると予想。主要タイトルの増収達成では、『ぼくのレストランII』が2.7%増(前四半期比)、『ガルショ☆』が6.4%増(同)、『ドラゴンタクティクス』が8.5%増(同)に。
増収達成のひとつの要因として、安徳社長は「積極的なマルチプラットフォーム展開で面を広げたことにより、ユーザー母数が増えて売上にも寄与した」と述べた。続けて「3Qは前四半期比で売上増だが、ブラウザゲームのマーケット全体が縮小傾向となっている。4Qの売上は保守的に漸減傾向を見積もる」と冷静な姿勢を見せた。
▲既存タイトルを対象にした2Q以降の施策実行
新規タイトルは、ゲームの完成度と運用後の体制強化にフォーカスを充て、2014年度は5タイトル→3タイトルに集中。『千年の巨神』は事前登録者数が10万人を突破、4Qから本格的に売上が寄与していく。
チューニング中の『ぼくのレストラン3』は、4Qの売上が増加しない見通しだが、「適切に運営は行っているため、DAUは微増の状態。ユーザーは維持されている」と土壌が着実に形成されていることを触れた。3Qにマルチプラットフォーム展開を行った『バハムートクライシス』は想定通りの売上増加。4Qには、App StoreとGoogle Playでネイティブゲーム版のリリースを予定しており、現在事前登録者数は1万人を突破している。
改めて現在判明している新規リリースタイトルを、配信済みも含めて下記にまとめてみた。来期以降のタイトルは、すべてフルネイティブとのこと。
コストコントロールでは、支払手数料(原価)が13.2%増(前四半期比)、人件費(労務費含む)が2.8%増(同)、外注費が0.4%減(同)、採用費が63.4%減(同)、支払手数料(販管)が32.6%減(同)、広告宣伝費が54.7%増(同)となった。なお、宣伝広告費は金額として1500万円と比較的小規模とのこと。
また、これまで人材紹介会社経由の採用が多くを占めていた採用費だが、2Qから社員紹介プログラムを立ち上げ、採用活動の軸を移していることを明らかにした。これにより採用費が2Qで63.4%減と大幅なコストコントロールとなった。「社員紹介はコスト削減だけではなくて、より優秀な人員確保にも繋がっている」とコメント。
▲コストコントロールを対象にした2Q以降の施策実行
海外の子会社展開では、enish Korea(ソウル)で2タイトル、enish China(上海)で1タイトルのオフショア開発を進めており、いずれも順調とのこと。両社とも現地の開発パートナーと一緒に新規のネイティブゲームを開発することに加えて、自社で運営できる体制も整ったスタジオという。
enish Thailand(タイ)は、日本語向けのカスタマーサービスとQAテストの拠点。日本で行うよりもコストが十分に下げられるため、コスト削減が目的となっているようだ。「直近の海外配信では、『千年の巨神』を第1弾としてアジア展開に向けて準備している」と安徳社長。なお、Q3末時点の海外子会社人員数は韓国が11名、中国が9名、タイが6名。
また、会場からは“欧米の展開は考えているのか”との質問げ挙がった。これに安徳社長は「まずはネイティブ市場の半分を占めているアジアにフォーカスしており、一定の成果が出たら欧米の展開を考える。実施する際は、自社で運営するか、現地のパブリッシャーと組むかは未定」とコメントした。
説明会の最後には、新作『千年の巨神』のゲーム紹介と魅力、意気込みついて語ってくれた。動画再生も含めて、この『千年の巨神』に関する説明にはやや時間を費やした。同社による並々ならぬ自信と想いが込められていることが、傍からでも伺えた次第だ。
さて、2014年11月4日にリリースされたiOS/Android端末向けの新作アプリ『千年の巨神』は、200種類以上の個性豊かなモンスターたちが可愛く動き回るタワーディフェンスゲームである。プレイヤーは、モンスター使いとなってモンスターたちと一緒に迫り来る巨神に挑んでいく。事前登録者数は10万人を突破して、リリース前からも多くのユーザーから期待が寄せられていた作品だ。
安徳社長は「ゲームの遊び方は『にゃんこ大戦争』(ポノス)や『LINEレンジャー』(LINE)と同じタワーディフェンスだが、ターゲットはカジュアル層であり、女性の比率が多くなることを想定」と述べた。複雑な操作性を加えずに、そのほか基本的なゲームデザインも従来のタワーディフェンスゲームに踏襲しているとのこと。
『千年の巨神』独自の魅力としては、ストーリー展開にマンガ要素を取り入れたことを挙げた。マンガでは文字による説明もなく、イラストだけで視覚的に物語を理解できるとして、老若男女分け隔てなく楽しめるほか、アジア展開の際に特別翻訳を施す必要が無いというメリットがあるそうだ。また、多くの女性に受け入れてもらうために、可愛いキャラクターになるようアートワークのクオリティにも注力したという。
なお、アジア展開は日本におけるDAUや売上のKPIを確認したうえでリリース日を決めていく。「韓国と中国は、自社の子会社で運営していく方針。日中韓以外のアジア圏は、現地のパブリッシャーと一緒に配信を考えている。すでに翻訳作業は進んでいる」と現況と今後の方針について明らかにした。また、会場からは“『千年の巨神』による直近の目標”について質問が挙がり、「高ければ高いほど良いが、ストアの売上ランキングで20位~40位台を安定して維持できるように努めていく」と現実的な回答で切り替えした。
■関連リンク
決算説明会資料
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なかでも既存タイトルでは、第2四半期(2Q、4-6月期)の売上高落ち込みから一転、マルチプラットフォーム展開を含む安定運用体制の再構築により増加した。また、広告宣伝費は新規タイトルに向けて、4Qで積極的に投下したとのこと。新作『千年の巨神』は第4四半期(4Q、10-12月期)から業績に寄与し、日本運営における売上・DAUなどのKPI(重要業績評価指標)を確認次第、順次アジア展開を進めていくようだ(以下、カギ括弧内は安徳孝平社長の発言)。
■既存タイトルの下げ止まりに成功し増収増益…『男塾』だけが減少
前述しているように3Qの業績は、売上高が前四半期比5%増の15億7000万円、営業利益が84%増の6300万円で増収増益となった。
説明会に臨んだ安徳社長(写真)は、3Q業績の要因について「2Qから注力している安定運用体制の再構築により、既存タイトルの下げ止まりに成功した」と説明。新作『千年の巨神』の売上は、4Qより貢献してくるとのこと。
概ね運用体制の再編・強化対策の実施により、既存の主要タイトルは売上高増加に転じているが、唯一『魁!!男塾 ~連合大闘争編~』だけは未だ減少傾向にあり、「さらなる改善が必要」と何かしらの施策を考えていることを示唆した。
2Qにリリースした『ぼくのレストラン3』は、大幅リニューアルを含めたチューニングを継続中。しかし、予想よりもチューニングに時間がかかっており、4Qの売上貢献は「軽微になると考えている」とコメントした。同じく2Qにリリースした『バハムートクライシス』は、3Qに実施したマルチプラットフォーム展開により想定通りの上昇を達成。安徳社長は「この運営体制の力を、来期以降のネイティブタイトルに活かしていきたい」と言葉を添えた。
なお、前回の決算説明会でも伝えている通り、enishの損益分岐点は月商約5億円となっている。
▲四半期決算推移
▲タイトル別売上高の推移
販管費を占める広告宣伝費は、新規タイトルの投入は引き続き停止しているが、4Qは新作『千年の巨神』をはじめとしたネイティブゲームに、積極的なプロモーション施策を展開していくことを述べた。また、変動費である支払手数料(原価)以外は、コストコントロールを実現。従業員数では、引き続き厳選かつ積極的な採用を実施中とのこと。また、人員の効率的配置により、最適化も実現中のようだ。
■「ブラウザゲーム市場は縮小傾向」…既存タイトルの漸減傾向を見積もる冷静な姿勢
通期の業績予想では、売上高が65億円、そして営業利益が0円と据え置いている。実際は3Qまでに3億円弱の営業利益が出ているが、4Qは来期に向けて積極的なプロモーション施策に注力するため、現状の予想で抑えているようだ。
続いて2Q以降の施策実行の効果について。既存タイトルでは、運用体制の強化で収益向上を図るが、引き続き漸減傾向が継続すると予想。主要タイトルの増収達成では、『ぼくのレストランII』が2.7%増(前四半期比)、『ガルショ☆』が6.4%増(同)、『ドラゴンタクティクス』が8.5%増(同)に。
増収達成のひとつの要因として、安徳社長は「積極的なマルチプラットフォーム展開で面を広げたことにより、ユーザー母数が増えて売上にも寄与した」と述べた。続けて「3Qは前四半期比で売上増だが、ブラウザゲームのマーケット全体が縮小傾向となっている。4Qの売上は保守的に漸減傾向を見積もる」と冷静な姿勢を見せた。
▲既存タイトルを対象にした2Q以降の施策実行
新規タイトルは、ゲームの完成度と運用後の体制強化にフォーカスを充て、2014年度は5タイトル→3タイトルに集中。『千年の巨神』は事前登録者数が10万人を突破、4Qから本格的に売上が寄与していく。
チューニング中の『ぼくのレストラン3』は、4Qの売上が増加しない見通しだが、「適切に運営は行っているため、DAUは微増の状態。ユーザーは維持されている」と土壌が着実に形成されていることを触れた。3Qにマルチプラットフォーム展開を行った『バハムートクライシス』は想定通りの売上増加。4Qには、App StoreとGoogle Playでネイティブゲーム版のリリースを予定しており、現在事前登録者数は1万人を突破している。
改めて現在判明している新規リリースタイトルを、配信済みも含めて下記にまとめてみた。来期以降のタイトルは、すべてフルネイティブとのこと。
タイトル | ターゲット | 開発拠点 |
ぼくのレストラン3 | 女性/ライト | 東京 |
バハムートクライシス | 男性/ミッドコア | 東京 |
千年の巨神 | 女性/ライト | 東京 |
Project4(来期) | 男性/ミッドコア | 東京 |
Project5(来期)アクションゲーム | 男性/ミッドコア | ソウル |
Project6(来期)農園系SLG | 女性/ライト | ソウル |
Project7(来期)中国マーケット向け | 男性/ミッドコア | 上海 |
■社員紹介制度で採用費を大幅削減
コストコントロールでは、支払手数料(原価)が13.2%増(前四半期比)、人件費(労務費含む)が2.8%増(同)、外注費が0.4%減(同)、採用費が63.4%減(同)、支払手数料(販管)が32.6%減(同)、広告宣伝費が54.7%増(同)となった。なお、宣伝広告費は金額として1500万円と比較的小規模とのこと。
また、これまで人材紹介会社経由の採用が多くを占めていた採用費だが、2Qから社員紹介プログラムを立ち上げ、採用活動の軸を移していることを明らかにした。これにより採用費が2Qで63.4%減と大幅なコストコントロールとなった。「社員紹介はコスト削減だけではなくて、より優秀な人員確保にも繋がっている」とコメント。
▲コストコントロールを対象にした2Q以降の施策実行
■「韓国・中国の開発タイトルは順調」…欧米市場はアジア展開の成果を見てから
海外の子会社展開では、enish Korea(ソウル)で2タイトル、enish China(上海)で1タイトルのオフショア開発を進めており、いずれも順調とのこと。両社とも現地の開発パートナーと一緒に新規のネイティブゲームを開発することに加えて、自社で運営できる体制も整ったスタジオという。
enish Thailand(タイ)は、日本語向けのカスタマーサービスとQAテストの拠点。日本で行うよりもコストが十分に下げられるため、コスト削減が目的となっているようだ。「直近の海外配信では、『千年の巨神』を第1弾としてアジア展開に向けて準備している」と安徳社長。なお、Q3末時点の海外子会社人員数は韓国が11名、中国が9名、タイが6名。
また、会場からは“欧米の展開は考えているのか”との質問げ挙がった。これに安徳社長は「まずはネイティブ市場の半分を占めているアジアにフォーカスしており、一定の成果が出たら欧米の展開を考える。実施する際は、自社で運営するか、現地のパブリッシャーと組むかは未定」とコメントした。
■「『千年の巨神』のターゲットは女性」…まずは売上ランキング20位~40位台をキープ
説明会の最後には、新作『千年の巨神』のゲーム紹介と魅力、意気込みついて語ってくれた。動画再生も含めて、この『千年の巨神』に関する説明にはやや時間を費やした。同社による並々ならぬ自信と想いが込められていることが、傍からでも伺えた次第だ。
さて、2014年11月4日にリリースされたiOS/Android端末向けの新作アプリ『千年の巨神』は、200種類以上の個性豊かなモンスターたちが可愛く動き回るタワーディフェンスゲームである。プレイヤーは、モンスター使いとなってモンスターたちと一緒に迫り来る巨神に挑んでいく。事前登録者数は10万人を突破して、リリース前からも多くのユーザーから期待が寄せられていた作品だ。
安徳社長は「ゲームの遊び方は『にゃんこ大戦争』(ポノス)や『LINEレンジャー』(LINE)と同じタワーディフェンスだが、ターゲットはカジュアル層であり、女性の比率が多くなることを想定」と述べた。複雑な操作性を加えずに、そのほか基本的なゲームデザインも従来のタワーディフェンスゲームに踏襲しているとのこと。
『千年の巨神』独自の魅力としては、ストーリー展開にマンガ要素を取り入れたことを挙げた。マンガでは文字による説明もなく、イラストだけで視覚的に物語を理解できるとして、老若男女分け隔てなく楽しめるほか、アジア展開の際に特別翻訳を施す必要が無いというメリットがあるそうだ。また、多くの女性に受け入れてもらうために、可愛いキャラクターになるようアートワークのクオリティにも注力したという。
なお、アジア展開は日本におけるDAUや売上のKPIを確認したうえでリリース日を決めていく。「韓国と中国は、自社の子会社で運営していく方針。日中韓以外のアジア圏は、現地のパブリッシャーと一緒に配信を考えている。すでに翻訳作業は進んでいる」と現況と今後の方針について明らかにした。また、会場からは“『千年の巨神』による直近の目標”について質問が挙がり、「高ければ高いほど良いが、ストアの売上ランキングで20位~40位台を安定して維持できるように努めていく」と現実的な回答で切り替えした。
■関連リンク
決算説明会資料
© 2014 enish,Inc All Rights Reserved.
会社情報
- 会社名
- 株式会社enish
- 設立
- 2009年2月
- 代表者
- 代表取締役社長 安徳 孝平
- 決算期
- 12月
- 直近業績
- 売上高35億800万円、営業損益12億600万円の赤字、経常損益12億6500万円の赤字、最終損益13億7400万円の赤字(2023年12月期)
- 上場区分
- 東証スタンダード
- 証券コード
- 3667