イグニス決算説明会 14年9月期は無料アプリの広告収益伸び営業益82%増 15年9月期は中・大規模アプリや新作ソーシャルゲームに着手 漫画アプリは本格的な拡大期へ
イグニス<3689>は、11月18日、2014年9月期の決算説明会を東京都内で開催した。売上高は、前の期に比べて134.1%増の20億4700万円、営業利益は同82.1%増の5億6100万円となり、大幅な増収・増益を達成した。主力の無料アプリのユーザー数が増加し、アプリ上に掲載する広告から得られる広告収入が伸びたことが主な増収・増益の要因となった。
銭錕社長(写真)は「2週間~1ヶ月で開発した小規模の無料アプリを中心に提供してきた。今後は短期間で開発した無料アプリに加え、コミュニケーション分野を中心に中規模・大規模のアプリ開発にも取り組む計画だ。より大きな市場にチャレンジしていきたい」と述べ、前期の成果に満足しつつも、次なるステップに進む考えを示した(以下、「」内は銭社長の発言)。
先に上場したばかりのイグニスだが、銭社長は、スマートフォンアプリ業界における立ち位置から説明した。無料アプリとアイテム課金型を組み合わせたビジネスを展開する会社が多いが、イグニスは、ツールなど無料アプリを多数展開し、そこから得られる広告収入を主な収益源とする点で一線を画している。
したがって、同社の業績を見ていくうえで、課金率やARPPU(課金ユーザー1人当たりの平均月間売上高)といった指標よりも、MAU(月間アクティブユーザー数)や、重複なしのダウンロード数といったアクティブユーザー数がより業績に対して大きなインパクトを持つ。
まず、ダウンロード数に関しては、2013年10月との比較で86%増の9月末時点で6858万件に到達した。「開発者の増員した4月より、市場に投入されたアプリが増え、それに応じてダウンロード数も伸びた」とのことだった。11月17日に7000万ダウンロードを突破した旨のアナウンスがあるなど、2015年9月期も引き続き伸びているそうだ。
また、MAUは、2013年10月との比較で42%増の771万人に到達した。グラフを見ると7月に大きく伸びたが、学生インターンの一環として制作した「チャット分析 for LINE」がヒットしたことによるものだ。「インターンで入った大学生の開発したアプリのダウンロード数がものすごく伸びた。ただ、このアプリは、趣旨を鑑みて広告を入れてないため、当社の売り上げに貢献していない」という。
この結果、無料ネイティブアプリの売上高は前の期に比べて66.3%増の14億4100万円と大きく伸びた。アプリを49本リリースしたが、大きく貢献したのは『ネズミだくだく』だった。3人で開発したゲームアプリだが、6月のリリース後、ダウンロード数が伸びた。ほぼ運用する必要のないカジュアルゲームだったため、リリース後の売り上げがほぼ利益となってくるという。
また10月には匿名SNS「暇スイッチ」を開発するALTR THINKを買収すると発表した。「ALTR THINKは、2名の会社だったが、今回、インターネットサービスを創るプロデューサーとして仲間に加わってもらった。現在、次世代SNSの開発を行っている」とのこと。プロデュース能力の向上で中規模・大規模アプリでのヒット作量産を目指していく模様だ。
続いて全巻無料型ハイブリッドアプリは、売上高は2億5600万円だった。昨年9月以降、11タイトルを配信し、400万ダウンロードを突破した。急速な立ち上がりだが、銭社長自身、この数字には満足していないそうだ。「当初の見込みでは5億円近くまで伸びると想定していたが、権利元との協議で時間がかかかった。このため、予定していた作品を出せず、後半伸び悩んだ。すでに協議させていただき、タイトルも複数許諾いただいているので、これから順次配信していける」と今後の巻き返しに自信を示した。
会場からは、出版社自らが無料アプリを出ているほか、類似のビジネスモデルを採用して進出するケースが増えてきたが、競争激化が懸念されるのではとの質問が出た。これに対し、銭社長は「当社の配信する作品は、出版社の眠れる資産を活かすためのソリューションで、終了した作品を取り扱っている。大手出版社は、連載中の漫画を配信したり、終了したものでも一度に配信する量を限定している点で異なる。うまく住み分けができているのではないかと考えている」と回答した。また、類似のビジネスモデルを採用する会社は、イグニスと異なり、タイトルの獲得が進んでいないように見受けられ、大きな脅威になるとは考えていないとのことだった。
3本目の収益の柱であるネイティブソーシャルゲームは、前の期の800万円から3億4900万円に大きく伸びた。『神姫覚醒!!メルティメイデン』が貢献したが、マイネットに譲渡された。今後の得られる想定収益と売却価格を勘案して得られる判断したそうだ。「ゲームの運営を行うことで一定水準のノウハウ獲得に目途が付いたことから、このまま運用を続けるより、新しいタイトルに集中したほうがいいと考えた」という。現在、『ぼくとドラゴン』というタイトルを開発中で、現在、ブラッシュアップを続けている最中だそうだ。
なお、第4四半期期間(7~9月)に限ると、売上高は前四半期比で41.1%増の7億3700万円となったものの、営業利益は同3.6%減の2億1100万円となり、増収・減益となった。これは人件費や開発費などのコストが圧迫したというわけではなく、来期に向けた仕込みとトライアルとして新しい広告手法を試した結果だそうだ。広告費を積みました効果もあり、売り上げも予想を上回るものになったという。
続く2015年9月期は、売上高が前期比61.9%増の33億1400万円、営業利益が同78.1%増の10億円と引き続き大幅な増収・増益を見込んでいる。事業別でみると、無料のネイティブアプリが38%増の20億円と引き続き伸ばしつつ、全巻無料型ハイブリッドアプリが193%増の7億5000万円、ネイティブソーシャルゲームが121%増の7億7000万円が大きく伸びて、収益を押し上げていくというイメージとなっているとのこと。また収益は下期偏重となるもようだ。
まず、無料ネイティブアプリは、小規模の開発で年間30本、開発期間1~3カ月の中規模が8本、そして3カ月超で開発する大規模アプリを2本を出す計画。銭社長は「現在開発しているのはコミュニケーションサービスはボリュームゾーンであり、もっともニーズの多いサービスだ。ただ、難易度の高い領域でもあるので、本業が揺らぐような状況にはしない。まずコアバリューを少人数でつくり、サービスとして見込みがあれば人数を増やして開発規模を大きくしたい」と説明し、いきなり大人数で開発に入る考えはないことを示した。
続けて「当社は、かつて『peep』というサービスで大失敗したが、当時のわれわれは、いわば小学生のレベルだった。そこから必死に練習をしてプロ野球レベルくらいになったが、将来的にはメジャーリーグのワールドシリーズでホームランを打ちたいと考えている。まだまだ練習が必要だが、そろそろチャレンジしていきたい。サービスによっては今年の前半には出せるのではないか」とコメントした。ちなみに中規模・大規模アプリは売上計画に入れておらず、小規模アプリだけで売り上げを伸ばす計画となっている。
また、全巻無料型ハイブリッドアプリは、出版社への営業は前期でおおむね完了したとのこと。上場時の資料で、「出版社からタイトルを提供してもらい定期的に配信できることが課題と書いたが、それが実現した。今後は順次タイトルを増やしていく。ハマるまで無料で提供するビジネスモデルなので、海外でも積極的に展開していきたい」と語った。今年度中にも1作品の海外向けにリリースする可能性もあるそうだ。
ネイティブソーシャルゲームについては、『ぼくとドラゴン』の事前登録を近日中に開始するほか、上期中に3作目の開発にも着手する予定だ。「冷静に見て、現段階で当社で『パズル&ドラゴンズ』や『モンスターストライク』クラスのゲームアプリを作るのは難しいだろう。1タイトル目がそこそこヒットしたが、すぐに開発ラインを増やすのではなく、開発チームのレベルを上げて、1タイトルずつしっかりとつくっていきたい」という。
このほか、開発者の採用に関する質問も出た。2014年9月期の正社員は75名だったが、今期は130名、次の期は170名まで増やす計画だ。爆発的に増員させる計画はないという。「上場後、会社の事業内容への理解が深まったことで、応募者数が増えている。採用をかなり絞っている状況が、頼もしい戦力がどんどん入っている」とのこと。
銭錕社長(写真)は「2週間~1ヶ月で開発した小規模の無料アプリを中心に提供してきた。今後は短期間で開発した無料アプリに加え、コミュニケーション分野を中心に中規模・大規模のアプリ開発にも取り組む計画だ。より大きな市場にチャレンジしていきたい」と述べ、前期の成果に満足しつつも、次なるステップに進む考えを示した(以下、「」内は銭社長の発言)。
■無料・非ゲームが中心のアプリ開発会社:DL数やMAUがKPIに
先に上場したばかりのイグニスだが、銭社長は、スマートフォンアプリ業界における立ち位置から説明した。無料アプリとアイテム課金型を組み合わせたビジネスを展開する会社が多いが、イグニスは、ツールなど無料アプリを多数展開し、そこから得られる広告収入を主な収益源とする点で一線を画している。
したがって、同社の業績を見ていくうえで、課金率やARPPU(課金ユーザー1人当たりの平均月間売上高)といった指標よりも、MAU(月間アクティブユーザー数)や、重複なしのダウンロード数といったアクティブユーザー数がより業績に対して大きなインパクトを持つ。
また、MAUは、2013年10月との比較で42%増の771万人に到達した。グラフを見ると7月に大きく伸びたが、学生インターンの一環として制作した「チャット分析 for LINE」がヒットしたことによるものだ。「インターンで入った大学生の開発したアプリのダウンロード数がものすごく伸びた。ただ、このアプリは、趣旨を鑑みて広告を入れてないため、当社の売り上げに貢献していない」という。
この結果、無料ネイティブアプリの売上高は前の期に比べて66.3%増の14億4100万円と大きく伸びた。アプリを49本リリースしたが、大きく貢献したのは『ネズミだくだく』だった。3人で開発したゲームアプリだが、6月のリリース後、ダウンロード数が伸びた。ほぼ運用する必要のないカジュアルゲームだったため、リリース後の売り上げがほぼ利益となってくるという。
また10月には匿名SNS「暇スイッチ」を開発するALTR THINKを買収すると発表した。「ALTR THINKは、2名の会社だったが、今回、インターネットサービスを創るプロデューサーとして仲間に加わってもらった。現在、次世代SNSの開発を行っている」とのこと。プロデュース能力の向上で中規模・大規模アプリでのヒット作量産を目指していく模様だ。
続いて全巻無料型ハイブリッドアプリは、売上高は2億5600万円だった。昨年9月以降、11タイトルを配信し、400万ダウンロードを突破した。急速な立ち上がりだが、銭社長自身、この数字には満足していないそうだ。「当初の見込みでは5億円近くまで伸びると想定していたが、権利元との協議で時間がかかかった。このため、予定していた作品を出せず、後半伸び悩んだ。すでに協議させていただき、タイトルも複数許諾いただいているので、これから順次配信していける」と今後の巻き返しに自信を示した。
会場からは、出版社自らが無料アプリを出ているほか、類似のビジネスモデルを採用して進出するケースが増えてきたが、競争激化が懸念されるのではとの質問が出た。これに対し、銭社長は「当社の配信する作品は、出版社の眠れる資産を活かすためのソリューションで、終了した作品を取り扱っている。大手出版社は、連載中の漫画を配信したり、終了したものでも一度に配信する量を限定している点で異なる。うまく住み分けができているのではないかと考えている」と回答した。また、類似のビジネスモデルを採用する会社は、イグニスと異なり、タイトルの獲得が進んでいないように見受けられ、大きな脅威になるとは考えていないとのことだった。
3本目の収益の柱であるネイティブソーシャルゲームは、前の期の800万円から3億4900万円に大きく伸びた。『神姫覚醒!!メルティメイデン』が貢献したが、マイネットに譲渡された。今後の得られる想定収益と売却価格を勘案して得られる判断したそうだ。「ゲームの運営を行うことで一定水準のノウハウ獲得に目途が付いたことから、このまま運用を続けるより、新しいタイトルに集中したほうがいいと考えた」という。現在、『ぼくとドラゴン』というタイトルを開発中で、現在、ブラッシュアップを続けている最中だそうだ。
なお、第4四半期期間(7~9月)に限ると、売上高は前四半期比で41.1%増の7億3700万円となったものの、営業利益は同3.6%減の2億1100万円となり、増収・減益となった。これは人件費や開発費などのコストが圧迫したというわけではなく、来期に向けた仕込みとトライアルとして新しい広告手法を試した結果だそうだ。広告費を積みました効果もあり、売り上げも予想を上回るものになったという。
■2015年9月期の予想
続く2015年9月期は、売上高が前期比61.9%増の33億1400万円、営業利益が同78.1%増の10億円と引き続き大幅な増収・増益を見込んでいる。事業別でみると、無料のネイティブアプリが38%増の20億円と引き続き伸ばしつつ、全巻無料型ハイブリッドアプリが193%増の7億5000万円、ネイティブソーシャルゲームが121%増の7億7000万円が大きく伸びて、収益を押し上げていくというイメージとなっているとのこと。また収益は下期偏重となるもようだ。
まず、無料ネイティブアプリは、小規模の開発で年間30本、開発期間1~3カ月の中規模が8本、そして3カ月超で開発する大規模アプリを2本を出す計画。銭社長は「現在開発しているのはコミュニケーションサービスはボリュームゾーンであり、もっともニーズの多いサービスだ。ただ、難易度の高い領域でもあるので、本業が揺らぐような状況にはしない。まずコアバリューを少人数でつくり、サービスとして見込みがあれば人数を増やして開発規模を大きくしたい」と説明し、いきなり大人数で開発に入る考えはないことを示した。
続けて「当社は、かつて『peep』というサービスで大失敗したが、当時のわれわれは、いわば小学生のレベルだった。そこから必死に練習をしてプロ野球レベルくらいになったが、将来的にはメジャーリーグのワールドシリーズでホームランを打ちたいと考えている。まだまだ練習が必要だが、そろそろチャレンジしていきたい。サービスによっては今年の前半には出せるのではないか」とコメントした。ちなみに中規模・大規模アプリは売上計画に入れておらず、小規模アプリだけで売り上げを伸ばす計画となっている。
また、全巻無料型ハイブリッドアプリは、出版社への営業は前期でおおむね完了したとのこと。上場時の資料で、「出版社からタイトルを提供してもらい定期的に配信できることが課題と書いたが、それが実現した。今後は順次タイトルを増やしていく。ハマるまで無料で提供するビジネスモデルなので、海外でも積極的に展開していきたい」と語った。今年度中にも1作品の海外向けにリリースする可能性もあるそうだ。
ネイティブソーシャルゲームについては、『ぼくとドラゴン』の事前登録を近日中に開始するほか、上期中に3作目の開発にも着手する予定だ。「冷静に見て、現段階で当社で『パズル&ドラゴンズ』や『モンスターストライク』クラスのゲームアプリを作るのは難しいだろう。1タイトル目がそこそこヒットしたが、すぐに開発ラインを増やすのではなく、開発チームのレベルを上げて、1タイトルずつしっかりとつくっていきたい」という。
このほか、開発者の採用に関する質問も出た。2014年9月期の正社員は75名だったが、今期は130名、次の期は170名まで増やす計画だ。爆発的に増員させる計画はないという。「上場後、会社の事業内容への理解が深まったことで、応募者数が増えている。採用をかなり絞っている状況が、頼もしい戦力がどんどん入っている」とのこと。
(編集部 木村英彦)
会社情報
- 会社名
- 株式会社イグニス
- 設立
- 2010年5月
- 代表者
- 代表取締役社長 銭 錕(センコン)/代表取締役CTO 鈴木 貴明
- 決算期
- 9月