【インタビュー】PCオンラインゲームの雄DMMがネイティブアプリ開発を強化 個性的な人材を集めて"混沌"としながらも前に進む組織に


『刀剣乱舞』や『艦隊これくしょん』などPCブラウザゲームでヒットタイトルを配信するDMMが現在、スマートフォン向けゲームアプリに注力している。いわゆる"ネイティブシフト"だ。今回、DMM.comラボのゲーム事業開発本部の坂本学本部長にインタビューを行い、ネイティブシフトへの取り組みや開発体制の特徴、考え方について話を聞いた。


■"ネイティブシフト"を今年から開始

―――:よろしくお願いいたします。DMMさんというとPCブラウザゲームの印象が強いのですが、スマートフォンアプリへの取り組みを教えて下さい。

その前に、DMMのゲームプラットフォームの歴史から説明します。当社は、ブラウザソーシャルゲームの全盛期だった2011年にオンラインゲーム事業を開始しました。フィーチャーフォンのプラットフォームを立ち上げ、外部のSAPに参画していただきました。その後、PCとスマートフォンのプラットフォームを立ち上げ、2012年春から内製でもゲーム開発に着手しました。開発スタッフは社内公募から選抜し、2タイトルが開発され、いずれもヒットしました。現在では、ブラウザゲームを中心に6タイトル提供し、いずれも売り上げは上々です。

そして、昨年からDMMゲームズ全体として「ネイティブシフト」が本格的に意識されはじめ、内製チームも今期からスマートフォンアプリ開発への注力を決定しました。自社開発の実績は、1年半以上前からWEBビューベースのアプリとして『三国志戦姫』を提供しています。現在でもアプリストアのランキングでも上位に入るなど良好です。

 

また、当社では、外部のゲーム開発会社と協業しゲームを提供するパブリッシング事業も行っています。タイトル数は内製ゲームに比べて圧倒的に多いです。ネイティブアプリのパブリッシングについては、去年から仕込み始めており、『精霊の翼』など、いくつかのタイトルがリリースされています。

―――:御社のヒット率は高いですよね。

内製ゲームのヒット率はかなり高いと思います。今年3月にリリースした2タイトルはまだ初動なので何ともいえないですが、それ以外ですと4本を出して3本の売り上げが大台に乗っています。全体売上の3分の1を内製ゲームにすることが我々のミッションですので、そこが目標となります。目標達成のためには数は出せませんから、一つ一つしっかり作ってヒット率を上げることが重要です。

―――:PCブラウザゲームが良好なことを考えると、無理してネイティブアプリにいかなくてもいいじゃないかと思ってしまうのですが。

確かにPCブラウザゲームは、DMMの強みが活かせ、2014年度はPCで1番をとろうと目標を掲げましたが、おかげさまでお客様に喜んでいただけるゲームを多く提供できるようになり、DMMの提供するゲームへの認知が進みました。
 
ネイティブアプリとなると、他社のプラットフォームで配信されますし、提供されるデバイスによって、今までと違った技術やノウハウが必要です。今後もPCゲームは一定の存在感を維持するでしょうが、ボリュームとして少なからず減っていくという予測もあり、ヒットタイトルを提供し続けていくためにはネイティブシフトを進めていく必要があると考えています。PCとのマルチデバイス展開など当社の強みを活かしたタイトルを提供していきたいですね。




■注力ジャンルは"女性" タイトルを投入するかどうかは現場が決める

―――:ジャンルとしてはどういうタイトルに注力しようという考えはあるのですか?
 
ここ最近は「女性」がキーワードとなりました。女性向けゲームで実績をあげるタイトルが出始めたため、各プロデューサーやディレクターがそれを強く意識しているのは事実です。ただ会社として、ジャンルを指定してゲーム開発するよう、指示したことはありません。DMMプラットフォームのポートフォリオをみて、どのジャンルのタイトルを開発していくか、という判断はプロデューサーが行います。

例えば、DMMでは『千年戦争アイギス』というタワーディフェンスゲームが人気のあるゲームの一つですが、それに続くタワーディフェンスのゲームを出すと判断するプロデューサーもいるでしょうし、カードバトルという王道ジャンルでIP(知的財産)を活かしたゲームを出すと考えるプロデューサーもいます。また複数タイトルを見ているプロデューサーが多いので、そのなかにチャレンジングなタイトルを取り入れることもあります。

 

【千年戦争アイギス】
 
―――:プロデューサーとして働く場合、自由度が高いですね。

そうですね。特にパブリッシングに関しては、行けるだけ行くようなスタイルです。当社には企画部が5つあります。部署によって、シミュレーションが得意だったり、クライアントゲームが得意だったりと、各部の色が出てきていますが、各自がどういう戦略でタイトルを出していくかを決めることができるため、責任も求められますが、仕事としては非常にやりがいがあると思います。
 
―――:なるほど。内製はいかがでしょうか?
 
今期はいくつまでラインを増やすという計画のもと、採用活動を行っていますが、企画ありきの採用は行っていません。集まってくるメンバーの実績や入社タイミングを見定めラインを作成し、ラインの中で企画を検討してもらいます。入社するタイミングによっては企画が決まっているケースもありますが、事前にこの企画をこちらでやりたいといっても、それを実現できるメンバーが揃っていないと実現は難しいですよね。



■プロジェクトごとに独自のルールを設定

―――:開発体制に関して、御社ならではの特徴はありますか?
 
去年からラインを拡大したため、在籍期間が1年未満のメンバーが7割を超えています。ですから、中途採用で即戦力のメンバーがそれぞれバックグランドを持ってチームを構成して、そのなかで各ラインが独自のルールを作っています。「DMMのゲームの作り方はこうですよ」といえるものはまだ定めていません。メンバーは自分のバックグランドをベースにしつつ、他社から入ってきたバックグランドを吸収しながらいいゲーム作りを試すことができます。DMMのゲーム開発の文化が作れるという意味でも良い経験ができると思います。

当社の開発組織は、ディレクター、デザイン、システムに分かれます。ディレクター業務においては、プロジェクトマネージメントやアートディレクションやコンテンツディレクションなど色々な役割がありますが、こちらで職種を細かく区分することはしていません。いまいるメンバーで最適なパフォーマンスを出すために、どういう役割分担にするのか、現場に任せています。もちろん、私に判断を仰がれるときもあるので、そのときには意見を聞きつつ指示をすることもありますが、基本的にはチーム内のメンバーでどうするか考えてもらっています。


―――:納得してやるのと、指示されてやるのでは生産性が全く違いますよね。

ここはDMMの文化だと思います。様々な計画を決める際に、まずは現場からあがってくる計画をベースにすることが多いです。自分たちで決めた計画で取り組むため、現場では上から強いられているとはあまり思わないでしょう。プロジェクトですから途中でトラブルもあるでしょうが、その時、プロジェクトをどう調整するかも自分たちで決めます。納得性を持ちつつ、決めた計画にどう合わせるかの判断を現場主体で行います。

―――:他社から入ってきた方は、御社の内製チームの魅力がどういった点にあるとおっしゃいますか?
 
「ルールや仕組みなど、決めなければいけないことがあるけど、様々なことにチャレンジできる環境がある」と言われます。

また、当社は手をあげて行動に移す人や革新的に物事を進めていく人のバックアップを積極的に行う文化があります。例えば、石川の拠点でデザイナーとして働く女性スタッフが新規タイトルを企画し、恵比寿に来てプレゼンテーションを行い、企画会議で承認されました。その後、彼女は、デザイナー兼プロデューサーとして活躍し、3月に無事そのタイトルがリリースされました。


―――:なるほど。面白い事例ですね。プロデューサー間での情報共有する取り組みはありますか?
 
かなり大きな枠組のものとなりますが、失敗体験の共有を行っています。例えば、開発会社との契約や開発の進め方、クローズの判断にいたった経緯、振り返っての問題点の共有などを行っています。最低限押さえなければならないもの、やってはいけないことの共有です。その一方で、このタイトルがこういう理由で売れました、こういうガチャ施策をやったら売上が伸びましたといった施策の共有は現状行っていません。



■混沌としながらも着実に前に進む組織にしたい

―――:どういった職種を募集されているのでしょうか?
 
ディレクター、システム、デザイナーとすべての職種で募集を行っています。面接で得意とする業務や実績をお聞きして、その人に合うラインにアサインしていきます。

また、内製ではプロデューサーとディレクターの職種を分けていませんので、各ラインでプロデューサーの役割を行っていただくディレクターも存在します。

 
―――:いまどういった人材を募集されているのでしょうか。
 
ディレクターですと、ゲームのロジックやパラメータなどをゼロから設計できる人がいらっしゃると非常に助かります。ゲームのコアとなる部分を作れる人です。ネイティブになるとその点の難易度が上がりますから。ロジックやパラメータの業務を専念していきたいと考えている方がいらっしゃれば是非お会いしてみたいです。

―――:システムやデザイナーはいかがでしょうか。
 
システムでは、積極的に採用しているのはネイティブアプリ開発で実務経験のあるメンバーですね。特にUnityやCocos2d-xを使える方を募集しています。デザイナーも同様です。演出やアニメーションなどの経験がある方には、活躍する場を多く提供できると思います。
 
―――:ネイティブの開発者はかなりいらっしゃるのですか?
 
人数としてはかなり少ないです。内製のスタッフは200名ほどですが、1割もいないですね。もともとWEBサービスを提供する会社ですので、当社にとっては新しい人材です。今期中には東京と石川を合わせて、プラス100名くらいにできればいいですね。いままでの経験を活かしてネイティブの開発を引っ張って行きたい人にはかなりいい環境ですし、当社でも求めています。

―――:DMMの内製ゲームをこんな風にしたいという夢はありますか?

とにかくユニークな人材を集めたいです。全員が同じ作り方で同じ方向で同じゲームを作っていく、という組織は目指しません。独自のポリシーを持ったラインを複数持ち、一見混沌としていますが、結果として、ヒットタイトルを安定して提供できる組織が理想です。綿密に戦略を立てた組織もいいですが、混沌としながらしっかりと前に進んでいくという組織を目指しています。

―――:ありがとうございました。
 
(編集部 木村英彦)


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合同会社DMM.com
https://dmm-corp.com/

会社情報

会社名
合同会社DMM.com
設立
1999年11月
代表者
最高経営責任者 亀山 敬司
決算期
2月
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株式会社DMM.comラボ

会社情報

会社名
株式会社DMM.comラボ
設立
2000年4月
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DMM GAMES(EXNOA)

会社情報

会社名
DMM GAMES(EXNOA)
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