【イベント】短い文章で壮大な物語を紡ぐシナリオ制作の裏話…小説「TERRA BATTLE 英雄失格」トークショーを取材 そして『テラバトル』の今後


ミストウォーカーは、7月10日、アニメイト池袋本店において、スマートフォン向けRPG『TERRA BATTLE(テラバトル)』の210万ダウンロード公約の小説「TERRA BATTLE 英雄失格」のトークショーを開催した。

当日は、同作のプロデューサーである坂口博信氏に加え、シナリオを担当した波多野大氏(セブンスエンタテインメント株式会社 代表取締役)が出演し、『テラバトル』のシナリオに関する話や、小説「TERRA BATTLE 英雄失格」のシナリオについても語られた。本稿では、裏話も飛び出した貴重なトークショーの模様をレポートしていく。

 

■ふたりの出会いはWii用ソフト『ラストストーリー』から


本小説では、ゲーム本編でもシナリオを担当する、波多野大(はたのまさる)氏が執筆。ゲーム内では明かされることのなかった、岩人の世界を治める女王パルパと運命の男ペペロペのふたりの隠された物語が解禁されるなど、ファン必携の一冊となっている。当日の進行は、司会者が質問を投げかけて、おふたりが答えていく形式で進行していった。

はじめに登壇した坂口氏と波多野氏は、小説が発売された率直の感想を述べた。執筆した波多野氏は「こういう機会を与えていただき、今でも信じられないです。とにかく楽しかったですが、最後のほうは締切が危なかったです。なんとか完成したときは、ちょっと泣きました(笑)」と当時の状況を振り返った。

坂口氏は「『FF』(ファイナルファンタジー)を手掛けていた際も、納期ギリギリまで格闘していたことがありました。そういう意味では、小説もゲーム作りも似ているところがありますね」と自分と重ね合わせていた。

続いて「スマートフォン向けのRPGを小説化するうえで、何かコンセプトはあったのか」という質問に移った。「すでに遊んでいる方もいるので、その方たちが”ニヤッ”としてもらう要素を詰め込むことと、かつゲーム本編に戻った際にシナリオの見え方が変わるように施しました」と波多野氏。

ちなみに坂口氏は、波多野氏のことを名前が大(まさる)ということか、終始「大先生」と茶化していた。垂れ幕の「波多野大先生」と書いてあるところには、「もう少し文字の大きさを調整してほしい(笑)」と会場を笑わせた。
 

そもそもおふたりの出会いは、坂口氏が手掛けたWii用ソフト『ラストストーリー』からとのこと。坂口氏がプロットを書いて、実際のゲーム中のシナリオとイベント演出を担当したのが最初の仕事だったようだ。ちなみに『テラバトル』でも同様の制作スタイルとなっている。

「『テラバトル』は運営形式のため、レベルデザインなどが非常に重要で、当初考えていたプロットから途中で話が変化することもありました」と坂口氏。このほか、坂口氏は波多野氏に「ゲーム体験として”グッとくる”演出。シナリオがゲームのシステムに絡んでいくような形に」というお題を開発当初に投げかけたという。というのも坂口氏いわく「全員が全員、シナリオを見てくれるわけではない」と持論を展開しつつも、「こだわって作れば、たとえ10%の方でも分かってくれる。結果、想像以上の多くの方に支持されました」とこだわりを覗かせた。
 

▲シナリオが表示される背景もバラエティに富んでいて、ときには息をのむシーンも……。

続いて「初期シナリオ・設定からの変換」について、坂口氏は「お酒が無いと喋れないんですけどね(笑)」と前置きしながらも、シナリオの裏話を語ってくれた。まずキャラクターのネーミングの法則について。キャラクターの名前には種族ごとにルールがあり、ケモノには濁音が入っていて、岩人が半濁音が、トカゲは促音が入っているとのことだ。一部そのルールから外れたキャラクターもいるようだが、大半がこれらのルールに則っているという。

そして、『テラバトル』で特徴的な要素と言えば各キャラクターのプロフィールである。キャラクター設定を基に執筆している波多野氏は、プロフィールについて「ブレイドイーグルは、最初設定では剣だけだったんですよ。ただ、実際にゲーム本編では人がいてビックリしました(笑)」と当時の裏話を明かしてくれた。「あれは藤坂さん(藤坂公彦氏:本作のキャラクターデザイナー)が途中で描きなおしたものです。正直僕もビックリしました(笑)」と坂口氏が補足。
 
 
▲なお、ジョブチェンジ後には、プロフィール欄が加筆されるのも特徴。
 
さて、小説では、タイトルロゴにも写っているパルパとペペロペを中心とした物語が描かれているが、今回何故ふたりの物語を題材にしたのか。「本編のシナリオを作るとき、ゲームテンポを意識したため、あまり語りすぎないようにしました。そういう意味でも、パルパとペペロペが”あの時どうしていたのか…”と小説のうえでじっくりと描くことができました」と波多野氏。ちなみに、当初はプロフィールを楽しんでいる方が多かったため、キャラクターひとりひとりの短編集にしようと考えていたようだ。

波多野氏が執筆した『テラバトル』小説の第一稿を読んだ坂口氏は、「やっぱ本で読むと違う、感情移入できるね。個人的に中盤のグラマンテとの戦闘シーンが凄い格好良かった」と高評価。というのも『テラバトル』のバトルシーンは、上から見下ろしたトップビューで進行するため、これが小説のなかで平面で別のカメラアングルで描かれているとのことで、かなりの臨場感となっているようだ。
 
 
▲『テラバトル』のバトルシーン
 


 
▲と、ここで気を利かせたスタッフが坂口氏のためにお酒を用意。満足げな様子だった。
 

現在『テラバトル』のメインクエストは32章まで存在。もちろん今後も随時追加されていくとのことだが、果たして本作のこれからはどのような展開を迎えていくのか。波多野氏は「最初の段階から坂口さんと構想を考えているため、まずはそこに向かっていくかと思います。34章までのシナリオは仕上がっていて、35章以降は現在執筆しています」と現況について語ってくれた。

一方で坂口氏は「まだまだ描き切れていないものがたくさんあります。スマホゲームが3〜4年まで長く続いていくという風潮があるならば、それとは裏腹なこともやってみたいという気持ちもあります。とはいえ、多くの方に遊んでいただいているので、今後も作り続けつつも、新しいものには挑戦したいです」とコメント。

最後に波多野氏より、「ゲーム本編があっての小説です。『テラバトル』を遊んでくださっている方は、ゲームのなかのパルパたちの印象が変わるかもしれません。逆にゲームを遊んでいない方が読んだとしても、実際に本編を始めたら様々なところで気付かされる部分など、多くのネタを散りばめさせています。ぜひ楽しんでいただければ幸いです」とのメッセージでトークショーを締めた。
 
 
▲トークショーの最後には、坂口氏と波多野氏のサイン入りポスター4枚をかけてのジャンケン大会が行われた。最終的に5人残ってしまったが、スタッフたちのはからいで、急遽会場のポスターを取って、その場でおふたりがサインを書くひと場面も。最後の最後までサービス精神旺盛な坂口氏と波多野氏だった。


■小説「TERRA BATTLE 英雄失格」概要

発売日: 2015/7/3(金)
販売価格: 864 円(税込)
発行:集英社 著者:波多野 大(セブンスエンタテインメント株式会社)
カバーイラスト:藤坂 公彦(MISTWALKER)
挿絵イラスト:楠木 学(株式会社アーゼスト)
 


■『TERRA BATTLE(テラバトル)』
 

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会社情報

会社名
株式会社ミストウォーカー
設立
2004年1月
代表者
坂口博信
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