【シリコンスタジオ説明会】新作『グランスフィア』は足元60万DL突破 下期計画は『WONDER BLOCKS』の売り上げ貢献を見込まず策定


シリコンスタジオ<3907>は、7月14日、東京都内で決算説明会を開催した。その前日(7月13日)に発表した2015年11月期第2四半期(12~5月)の連結決算は、売上高38億2100万円(前年同期比9.5%減)、営業損益2800万円の赤字(前年同期6億2100万円の黒字)、経常損益3400万円の赤字(同6億400万円の黒字)、四半期純損益2100万円の赤字(同3億5400万円の黒字)と赤字転落した。

さらに、これを四半期期間で見てみると、売上高19億7400万円(前四半期比6.9%増)ながら、営業損益1億900万円の赤字(前四半期実績8100万円の黒字)、経常損益1億1100万円の赤字(同7700万円の黒字)、四半期純損益7100万円の赤字(同5000万円の黒字)と第1四半期の黒字分を帳消しにする赤字計上となっている。

決算説明会では、同社の寺田健彦代表取締役社長がまずは説明を一通り行い、その後に質疑応答が行われた。質疑応答では、直近リリースされた『グランスフィア』や次の新作についてのほか、業績予想下方修正の一因にもなった子会社イグニス・イメージワークスの状況などの質問が行われた。そうした内容も踏まえつつ、会見の様子をまとめてみた。
 

■今11月期予想の下方修正の最大要因は『WONDER BLOCKS』


まずは7月3日に発表された2015年11月期通期予想の下方修正の内容をおさらいしたいが、売上高が従来予想92億7700万円から87億200万円、営業利益は同9億300万円から3億6200万円、経常利益は同8億8700万円から3億4800万円、当期純利益は同5億3200万円から2億200万円にそれぞれ下方修正された。今回の説明会ではその修正要因を細かく開示していたので、まずはそこから見てみたい。

売上高下方修正の最大要因となったのは、2月に配信を開始した『WONDER BLOCKS』の売り上げを従来予想から14億9800万円分引き下げたことだ。これは会社側によると、下期の売上高貢献なしで計算したものということになるようだ。

そのほか、『グランスフィア』の配信開始が当初より遅れたことに加えて、現在開発中の次の新作が新機能追加や仕様変更などで配信開始が遅延する見通しであること、大型受注案件の開発見直しに伴う失注が発生したことも影響したとのこと。
 

一方、利益面の下方修正は、売上高の計画未達分に加え、開発推進事業のコスト増加が大きく影響したという。この要因は、ソリューションサービスにおいて、開発案件の一部に瑕疵対応が必要となったことや、既存案件の一部で想定以上のサーバー台数を要したこと、コンテンツ開発案件の外注費がかさんだことなどだという。
 
 

■開発推進・支援事業とコンテンツ事業は減収減益、知名度向上効果で人材事業は増収増益


続いて、各セグメントごとの状況を見てみたい。ちなみに同社のセグメント業績は前回同様、開示された数字はセグメント間の内部取引消去前のものとなる。そのため、数値を合算しても全体業績とイコールとはならないので注意が必要だ。

さて、まずは開発推進・支援事業の第2四半期の実績値を見ると、売上高16億1300万円(前年同期比8.2%減)、セグメント利益3億7200万円(同34.5%減)ということになる。大型案件失注の影響はここに大きく出ている形になる。
 

次に人材事業の状況が下のグラフだ。人材事業は売上高4億3200万円(同21.2%増)、セグメント利益1億3900万円(同14.9%増)と増収増益での着地となった。ここは上場による知名度向上がストレートに業容拡大につながっているといえよう。
 

そして、コンテンツ事業となるが、売上高は17億7500万円(同15.7%減)、セグメント利益1億9500万円(同57.8%減)と大幅な減収減益に落ち込んだ。やはりここが7月3日に発表された業績予想の下方修正の最大のポイントとなったことは否めない。ちなみに『WONDER BLOCKS』は、同社としては新ジャンルに挑んだ意欲作だったのだが、同社の従来の主力タイトルであるカードゲームと比べ、マネタイズ面で大きな課題があったようだ。なお、第1四半期の決算説明会で課金率の向上に取り組むとしていたが、「施策の効果も限定的」(寺田社長)だったとのことだ。
 

2015年11月期通期の予想は、下記のグラフの通り、売上高は増収を確保するものの、利益は大きく落ち込むことになる。なお、前回発表の業績予想における為替前提は、1ドル=100円だったが、今回の修正予想の前提は1ドル=120円となっている。ここからさらに為替差益が発生する可能性は低いと言えるだろう。

なお、今期予想の下方修正の一因となったイグニス・イメージワークスだが、新規開発案件が来期にずれ込んだことが影響している。ただ、それでも今期は売上高11億円程度を見込んでいるという。
 

 

■コンテンツ事業は『刻のイシュタリア』『グランスフィア』に注力


続いては、今期の重点施策の中から今回もコンテンツ事業に関するものを取り上げたい。まずは、足元が好調なタイトルへの注力を進めるとのことで、コンテンツ投入などの施策の効果によってアクティブユーザー数が増加した『刻のイシュタリア』や、6月に配信を開始し、「足元は今日(7月14日)の時点で60万DLを突破した」(寺田社長)という『グランスフィア』に集中して、プロモーションやイベントなどの各種施策に取り組むとしている。

また、質疑応答で『グランスフィア』のマネタイズ面での質問が出たが、「基本的には従来のカードゲームのマネタイズを踏襲した仕組み」(寺田社長)ということで、手探りだった『WONDER BLOCKS』と比べると手応えを感じているようだ。

なお、未発表の次の新作は、「既存タイトルの続編的なもの」(寺田社長)としていたが、現時点で詳細は不明だ。今後の続報を待ちたい。
 

■第3四半期は新製品「Mizuchi」がいよいよ販売開始


新レンダリングエンジン「Mizuchi」がいよいよ第3四半期に販売開始となるミドルウェアについては、「OROCHI」「YEBIS」など既存製品のユーザーを中心に、引き続き「Mizuchi」販売のアプローチをかけている状況だ。

なお、質疑応答で、同社の3D技術のVR(バーチャルリアリティ)での活躍の可能性に関する質問があったが、応用は可能とのことで、今後のハード面の環境整備を待ちつつ、製品投入などが行われれる可能性は十分ありそうだ。
 
 
(編集部:柴田正之)

 
シリコンスタジオ株式会社
http://www.siliconstudio.co.jp

会社情報

会社名
シリコンスタジオ株式会社
設立
2000年1月
代表者
代表取締役社長 梶谷 眞一郎
決算期
11月
直近業績
売上高45億5400万円、営業利益2億3800万円、経常利益2億4600万円、最終利益2億円(2023年11月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3907
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