【ハッカドール×SGIコラボVol.04】プロデューサー岩朝暁彦氏インタビュー「アニメ『ハッカドール』は妥協せずに作り上げた自信作」


オタク向けスマホニュースアプリ『ハッカドール』が昨年8月のリリース以来、快進撃を続けている。ユーザー数を順調に増やすとともに、2015年8月にはなんと1億PVを突破した。さらにアプリに登場するハッカドールたちが活躍するアニメ『ハッカドール THE あにめ~しょん』が10月より絶賛放送中である。
 
Social Game Infoでは、関係者インタビューを通じてニュースアプリをアニメ化するという前代未聞の試みに迫る。4回目となる今回は、DeNAの『ハッカドール』プロデューサーである岩朝暁彦氏にインタビューを行った。また、第2回のインタビューに登場した村上貴志氏にもご参加いただいた。


【これまでの掲載記事】
第1回 ハッカドール1号を演じる声優 高木美佑さんに放送直前に迫ったアニメの見どころを聞く!
第2回 音楽Pの村上貴志氏インタビュー「楽曲の基礎は昨年夏にできていた」「ユニットとしていつかは興行やアルバムも…」
第3回 声優の高木美佑さんがおすすめアプリを紹介 アプリライフをはかどらせちゃうぞ! 今回は『Deemo』です!



 
■プロデューサー 兼 監修 兼 お世話係

―――:お久しぶりです。岩朝さんはアプリではプロデューサーという立ち位置ですが、アニメにおいてはどういった仕事をされているのですか?

岩朝氏:製作委員会のプロデューサーであり、原作者として監修する立場でもあります。最初はそれだけのつもりでしたが、監督や脚本の佐藤さん、トリガーのプロデューサーの稲垣さんとやりとりしているうちに、気が付くと脚本のシリーズ構成や版権イラストの監修、原画ラフの作成、ラッシュフィルムを見てのリテイクなど色々とやるようになりました。いわゆるお世話係といったほうがいいかもしれません。現場で足りないこと、困っていることを見つけてひとつひとつケアしていたら、こうなりました。

村上氏:こういう言い方を嫌がる方もいますが、岩朝さんは「製作総指揮」といった立場に近いと思いました。原作者という立場でありながら、あらゆることをこなしておられます。

―――:プロデューサーというと、ドーンと構えて、OK・NGを出す人という勝手なイメージがありましたが、だいぶ違ったんですね。

村上氏:私は、最初の打ち合わせの時から、岩朝さんは積極的に関わっていくと予想していました。そうしたほうが絶対にいいものができますよね。

―――:まず、今回、アプリをアニメ化した経緯を教えていただけますか。

岩朝氏:昨年、アプリのプロモーションビデオ(PV)をつくった後、昨年11月ころに有志の方々にテレビアニメーション化を勧められました。私個人はアニメ化に関して少し懐疑的でしたが、他のスタッフは皆、やりたい、やるべきだというので、それならばやってみる方法もあるのではないかと思い、作ってみることにしました。私もアニメに関しては知らないことだらけでしたが、チャレンジしようという気持ちでしたね。

村上氏:エイベックスでは、全員が賛成するプロジェクトはたいていうまくいなかない、といわれています。全員賛成すると周りが見えてなくなり、うまくいかないということです。岩朝さんはどこかで力を抜くことがなく、いいものを作るために少しでも悪いところがあればすぐに修正するといったことをやっておられますね。
 
―――:今回、アニメ化に動き始めたのはいつ頃だったんですか?

岩朝氏:本格的に動き始めたのは今年の1月くらいからです。それよりも少し前に脚本家やアニメのプロデューサー、監督と一緒に、13話のシリーズ構成から話を始めました。村上さんが参加される前に、1~3話のプロットに手を付けていました。原作のアプリにはキャラクターがあるのみで、ストーリーはありませんでしたので、ほとんどオリジナルです。


 
■「そこまでやる?」が魅力 ショートアニメの限界に挑戦

―――:アニメ化と聞いた時、アプリのPVのような作品になるのかと思ったんですが、違う展開になりましたよね。

岩朝氏:そうですね。『ハッカドール』たちが登場しますが、ショートショートのような形で、バラエティ豊かなお話しが展開されます。毎回、『ハッカドール』たちがアプリと同様、ゲストで登場したキャラクターをはかどらせるために奮闘する、という作品となっています。

作品のみどころは、もう放送されていて、ご存知かと思いますが、「ここまでやるの?」というところです。いろいろな作品のオマージュが入っていますし、アニメではあまり取り扱わないネタを『ハッカドール』風にアニメに落とし込むとこうなる、といったことが楽しめるかと思います。

深夜、仕事に疲れて帰宅し、テレビをつけたら、どんなアニメを見たいかと考えた時、気楽にみられるものがいいと思いました。とはいえ、一般的な萌アニメにせず、キャラアニメだけど尖っていて、「ちょっとよくわからないけど面白かった」と思えるような作品がいいと思いました。


 
▲第1話「パーソナルエンタメAI! ハッカドールです!」の場面カットより。

 
▲第3話「そのためのハッカドールです」の場面カットより


―――:かなり密度の高い作品になっていますね。

岩朝氏:はい。満腹感があると思います。ショートアニメではないとできない作品でしたし、ショートアニメの限界に挑戦した作品です。お話の密度的には30分アニメには負けていないと思います。

―――:これに関連してですが、高木さんにお話を聞いた時、ショートアニメとしてはセリフ量が非常に多いというお話しでした。

岩朝氏:10分のアニメでショートショートをやるのは想像以上に難しいことに気づきました。テンポよくストーリーをつながるように、なるべく絵で説明したいけど、作画が必要以上多くなって大変だ、というジレンマです。そして、ショートコントのような形になるとどうしてもセリフ量が多くなります。そういう意味で言うと、30分アニメよりもセリフを入れるのが難しかったと思いますね。

―――:作品への自信は。

岩朝氏:もちろんあります。トリガーの稲垣プロデューサーから他の作品では「これは何か違う」と思うことがあったけど、「『ハッカドール』」は目論見通りに仕上がったというお話しをいただきました。それは妥協しないで作ったという意味で、「やりきった」ということです。そういったところは、フィルムにも出ていると思います。納品ぎりぎりのビデオ編集会場でも粘り強くリテイクをしていましたし、本当に頑張ってくださったと思います。

村上氏:大変な作業ばかりだったと思います。やはり勢いのある作品、妥協しないでいいものを作ろうと言う空気感が強かったですね。ビデオ編集もすごく時間がかかりましたが、最後まで皆、残っていました。途中で妥協せずに、やりきれたと思います。


 
■純粋に作品として面白いものを目指した

―――:アニメでアプリの宣伝的な要素は。

岩朝氏:当初、作品中に「そんなときは『ハッカドール』で…」と宣伝的なキャッチコピーを入れるアイディアもありましたが、やめました。あからさまな相乗効果を狙わず、アプリの『ハッカドール』を視聴者がご存知でなくても楽しめるようにしました。毎週、「『ハッカドール』とはニュースアプリである」などと7分50秒のなかで20秒も使ったら、見てる方はいやじゃないですか(笑)

我々は「ハッカちゃんねる」というニコニコ生放送の番組もやっているんですが、それと同じです。ニコ生でアプリやゲームの紹介を単純にやっても誰も見ないですよね。アプリの画面を全くみせず、アプリに出演している声優さんたちがほとんどの時間、話をしています。アプリの紹介は、2分くらいでしょうか。


―――:そういえば、アニメ放送日にApp Storeの検索した人が多かったみたいですね。

岩朝氏:もしかしたらなにか相乗効果はあるのかもしれませんね。アニメとタイトルが一緒ですし、もともとニュースアプリだったと人から聞いたり、自分で検索してアプリにたどり着いて知ったり…ということはあるかもしれません。

 


―――:まだ放送中ですが、これまでを振り返って楽しかったことは。

岩朝氏:正式な脚本読みの前段階が一番楽しかったですね。トリガーさんのオフィスで集まって話していたのですが、会話の内容が高校生のようでした。お菓子を食べながら、ゲームやアニメなどサブカルチャーを中心に、脚本とは直接、関係ない話をしていました。そういった雑談を通じて、面白いアイディアが浮かんできますし、参加者の人となりがわかります。そして、全員が面白いと思っている要素やパーツが見えてきて、それが脚本づくりのベースになりましたね。

―――:逆に大変だったことはなんでしょうか。

岩朝氏:毎度ながらモノづくりの苦しさ全般でしょうね。

村上氏:0からモノを作っていくわけですから、大変です。岩朝さんの場合、原作という立場と、製作委員会のプロデューサー、そして、制作にも携わっていましたので、産みの苦しみは並大抵のものではないと思います。立場が変われば見方も変わります。岩朝さんの場合、いずれの立場の見方もわかっているわけですから。一番大変だったと思います。


 
■アプリのアニメ化を考える人はアニメとゲームの違いに気をつけて

―――:アニメを作る仕事は始めてだったんですか?

岩朝氏:もちろんです(笑) アニメは好きで見ていましたけど、ここまでガッツリ作る側になるとは夢にも思いました。ただ、新しいことを覚えるのは楽しいですね。制作資料の読み方を教えてもらったり、版権イラストの取り回し方を考えたりと、色々なことを覚えました。同時に、ゲームとアニメとの違いなども見えてきて、純粋に楽しかったですね。

―――:これから自分のアプリをアニメ化したいと考えているプロデューサーもいらっしゃるでしょうから、そういった方に何かアドバイスを。

岩朝氏:いや、そういうことは狙ってやった人に聞いてください(笑) 今回始めて取り組んだ私には特にお出しできるようなアドバイスもメッセージもないですが、言えることは、ゲームとアニメのものづくりや商習慣の違いを意識しないと大変です、ということですね。

ゲームのプロデューサーは非常に決定権が強くて、いわば「神」ですよね。ゲームは、基本的に1社資本で作りますし、たくさんの人がその実現にむけて分業する中で、プロデューサーがすべてを決める権限を持っています。そういったモノづくりをされている人が多いなかで、自分の作品世界をアニメ化したいという人が多いと思います。

これに対し、アニメづくりは、分業ではなく、むしろ共同作業になることが多いです。利害や考えの違う人たちがすこしずつすり合わせながらものを作っていき、そしてそれが想像よりもかなり短い時間で作り上げられているからこそ、一緒に作ることの難しさがあります。これを1発やればいいというわけでなく、3ヶ月あまり毎週放送するという恐ろしいことをし続けるわけですから、制作陣の中にいて、自分が考えていることを伝える努力と、人の考えていることを理解する努力が求められます。

何年もアニメ制作の世界に携わっている異業種の専門家・職人と一緒に仕事をすることになります。これが大変でかつ面白いことでもあります。純粋に学べること、面白いことがいっぱいありますので、アニメに関わる方はこういう機会を活かして楽しんでいただければと思います。


―――:今後の展開についてはどういったことをお考えですか?

岩朝氏:アプリの『ハッカドール』はゲームと違っていて、継続的に利用しやすいニュースサービスです。継続的に利用するお客様が増えていくストック型のサービスですので、引き続き伸ばしていきます。純粋なメディアとしてのパワーもそうですし、キャラクターや声優さんの魅力との掛け算になるので、そちらの展開も考えなくてはならないでしょうね。

また、アニメで関わった方々とは、折り返し地点に来て「今のところ、いいモノがつくれているね」と話しています。イレギュラーな要素もありましたが、やりやすかったと思っていただいているようです。同じメンバーで違うテーマのモノづくりができたら、とも考えています。作り方が同じで横展開といったら少し語弊がありますが、そういうものもやりたいなと思っています。何をするか、考えなくてはなりません。


―――:ありがとうございました。
 
(編集部 木村英彦)
 
■『ハッカドール』公式サイト
 

アニメ公式サイト

アプリ公式サイト




(C)DeNA/ハッカドール THE あにめ~しょん 製作委員会
 
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
https://dena.com/jp/

会社情報

会社名
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
設立
1999年3月
代表者
代表取締役会長 南場 智子/代表取締役社長兼CEO 岡村 信悟
決算期
3月
直近業績
売上収益1367億3300万円、営業損益282億7000万円の赤字、税引前損益281億3000万円の赤字、最終損益286億8200万円の赤字(2024年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
2432
企業データを見る
エイベックス・ピクチャーズ株式会社
http://avex-pictures.co.jp/

会社情報

会社名
エイベックス・ピクチャーズ株式会社
設立
2014年4月
代表者
代表取締役社長 寺島 ヨシキ/代表取締役副社長 勝股 英夫
決算期
3月
直近業績
非公開
上場区分
未上場
企業データを見る