【GGG#4】Aiming『ぐるぐるイーグル』にみるゲーム性を左右する背景マップの作り方…職種を超えた挑戦が効率的なワークフローを生む



ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>は、7月10日、東京・渋谷にある「渋谷ヒカリエ」でクリエイター向けセミナー「Game Graphics Groove #4」を開催した。今回、Aiming、DeNA、ランド・ホーに在籍するゲームグラフィック担当者が登壇した。

スマートフォンゲームアプリ開発では、Unity、Unreal Engine、Cocos2d-xなどのツールが活発に利用されているが、こうしたなか、スマートフォンゲームの画質も大幅に上がってきている。今回のセミナーでは、クリエイティブ面でのゲームの進化をさらに加速させるため、現役のクリエイターが最新ヒットタイトルの開発ノウハウを共有するという。

Aimingの企画運営グループプロデューサーの廣田 隆行氏(写真)が登壇し、「ゲーム性を左右する背景マップをつくるには? ~ぐるぐるイーグル~」と題し、スマートフォン向けオンラインゴルフゲーム『スマホでゴルフ! ぐるぐるイーグル』における事例を紹介した。今回の記事ではその模様をお伝えしよう。

昨今、スマートフォンゲームはゲーム性が高くなるなか、「背景」がビジュアル的な役割を担うだけでなく、ゲーム性を左右するものになっていると指摘した。そして、こうした背景を作る難易度は高いが、Aimingではどうやって作っていったかを明らかにした。

ゲームを紹介した後、ゴルフゲームは、見た目とゲーム性が直結するジャンルの一つと述べた。フェアウェイの傾斜や、バンカー、池、樹木などがコースにはあるが、設置する位置や大きさを変えるだけで、難易度やゲーム性が大きく変わってくるからだ。
 
 
それでは、Aimingではどうやって作ったのか。2013年の年末から開発に着手したが、その当時のワークフローは、企画がコースの設計を行い、デザイナーがそれを受けてコースを作成し、それをエンジニアが実装する。その後、企画がコースでテストプレイをしてフィードバックする。それを受けてデザイナーが再度コースを修正し…という流れとなる。
 

ここで大きな問題が発生した。「コースの修正→実装→テストプレイ→フィードバック」が延々と続き、開発が遅延したのだ。「最初のコースを作るのに2、3ヶ月を要した」という。データの受け渡し回数が多く、「永遠に完成しない」と思ったという。さらに、見た目の変化がゲーム性の変化につながるため、デザイナーだけでは判断できない部分もあった。リリース時、4エリア+アップデート分1エリアで、合計90ホール用意する考えだったが、このまままで難しい状況となったそうだ。
 

そこで解決策として、

(1)データのやり取りをスムーズに行える仕組みを作る
いつでもプレイ感覚を確認できる状態にするもので、デザイナーも「GitHub」と「SourceTree」を活用して、開発を行うことにした。データの共有とバージョン管理を行った。
 


(2)企画が背景を作る
設計した人がコースを作ればいいと判断したという。手戻りもなく、齟齬も生まれない。企画もMAYAでコースが作れるよう、便利なツールも開発した。MAYAとUNITYを連携させ、テストプレイもすぐにできるようにした。
 


この結果、ワークフローは以下のように変化した。
 

・コンセプト(コンセプトアート)
ユーザー体験をベースにどういうエリアにするか、どういうホールにするかを決める。しっかり描くようにしていたが、それは見た目とゲーム性が表裏一体となるため、両方をフォーカスしないと完成させるのは難しいと考えた結果だという。また台湾のスタジオでも作っていたため、イメージを共有できるようにするためでもあった。
 




・設計図
コンセプトに基づく設計図を作成する。職種にかかわらず、チームで持ち寄ってプレゼンを行ったという。一番良かったものや、良いアイディアを組み合わせたものを採用した。これをベースに詳細設計図をつくる。フェアウェイやハザードの位置、高低差、障害物の種類、距離などを確定する。
 


 
・ラフモデル
ほぼ完成している。設計図をMAYAに読み込ませてカーブを描いていく。この段階で、Y軸を動かすだけでコースの高低差をつけられるようにした。この段階で作ったものをUNITYで動かし、ボールを打ってコンセプト通りになっているのかを確認する。この段階で、修正とテストを繰り返す。
 



・本モデル
ラフモデルをデザイナーに渡す。これにもとづいて地形を整えて、テクスチャを貼り付けてコースを作っていく。ウォーターハザード、やOB、自然物、にぎやかしのもの、ライトマップを載せて完成。





・仕上げ
最終調整としては、風の強さの設定やエフェクトの追加、動くオブジェクトの設定などを行う。
 


こうしたプロセスを経て、無駄のないワークフローができあがった。2015年10月現在、8エリア・144ホールが実装されているという。
 

廣田氏は、「企画がMAYAを使ってデータを作り、デザイナーがgithubを深く使うのは、ハードルが高くて、一見すると効率が落ちるように見えるが、実際にやってみると、常識にとらわれないワークフローができあがった。そのプロジェクトに何が必要なのかを見極めて、スタッフがチャレンジしてくれたからこそこれだけの数ができた。」とまとめた。

 
(編集部 木村英彦)