ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>は、10月28日、東京・渋谷にある「渋谷ヒカリエ」でクリエイター向けセミナー「Game Graphics Groove #4」を開催した。今回、Aiming、DeNA、ランド・ホーに在籍するゲームグラフィック担当者が登壇した。
スマートフォンゲームアプリ開発では、Unity、Unreal Engine、Cocos2d-xなどのツールが活発に利用されているが、こうしたなか、スマートフォンゲームの画質も大幅に上がってきている。今回のセミナーでは、クリエイティブ面でのゲームの進化をさらに加速させるため、現役のクリエイターが最新ヒットタイトルの開発ノウハウを共有するという。
DeNAJapanリージョンゲーム事業本部デザイン部の関谷 哲史氏(写真)が登壇し、「戦魂VFX Unity開発事例」と題し、戦国シミュレーションRPG『戦魂』におけるUnityを使ったVFX(ブイエフエックス)の制作事例を紹介した。今回の記事では、その模様をレポートする。
『戦魂』開発におけるグラフィックのミッションとして、DeNAで初のUnityのプロジェクトとなるため、オーソドックスに3Dアセットを使った制作体制に慣れること、競争力を高めるため、アプリらしいリッチな絵作りを実現することだったという。そのもとでのエフェクトのゴールは、
(1)ユーザーに何が起こっているのかを一瞬で感じさせることにすること
(2)リッチな絵づくりに貢献すること
(3)何度も再生させるものであるため、飽きのこないデザインにすること
を掲げたそうだ。
開発にはUnityを使うことになったが、ハイエンドの家庭用ゲームソフトを開発してきた関谷氏にとっては「次世代エンジンの機能限定版」とあまり良いイメージがなかったそうだ。難しいことができないのではないかと感じたという。同様にUnityのエディタ「Shuriken」についてもド定番でミニマムな機能しかないという印象を受けたとのこと。
夕食に例えると、「一汁一菜」的なイメージだったが、例えば、味噌汁のだしを香り高く、味わい深くすることで、ユーザーに楽しさを提供できるのではないかと思うようになったという。DeNAでは、DeNA Qualityという社訓があり、エフェクトを開発する上で、機能ではなく、工夫することでユーザーに良い体験を届けたいというところに立ち返ったそうだ。
エフェクトの実装の内訳は下のスライドのとおり。PS2のレベルで、「難しいテクノロジーは一切使っていない」とのことだった。
ただ、Unityは、やはりUnreal Engineに機能面を比べると大きく劣るため、「ベクターフィールド」や「ソフトパーティクル」、「HORIZONTALビルボード」といった「Shuriken」の機能を最大限活用しつつ、様々な工夫を加えることで、リッチなエフェクトを実現していったそうだ。
また、中規模~大規模な開発になってきたため、「GitHub」と「SourceTree」を活用した。「GitHub」だけでもデータはアップできるが、ビジュアライズされた「SourceTree」を使うことで事故を防ぐことができるという。エフェクト実装のワークフローは、以下のようになるという。
(1)モック作成
(2)仮データ作成
(3)GitHubにデータUP
(4)エンジニアが実装
(5)調整
特に重要なのは、(1)と(5)だそうだ。(1)モック作成は、Unityを使わず、「After Effects Style」を使用する。クオリティのボーダーラインを上げることでUnityに持ってきた時にどういう風に実装するかを考えることがクリエイティブにつながると考えたという。(5)エンジニアの実装後に再度、「調整」することで、自分のエフェクトがゲームのデザインに対して正しいのか、貢献しているのかをチェックし修正することでリッチな絵作りに貢献することができるという。
最後に、「Unityは、Unreal Engine 4に比べて良くないと思っていたが、Unityと付き合って、これからもDeNAは良いゲームを世に出していきたい」と述べて講演を締めくくった。
(編集部 木村英彦)
会社情報
- 会社名
- 株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
- 設立
- 1999年3月
- 代表者
- 代表取締役会長 南場 智子/代表取締役社長兼CEO 岡村 信悟
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上収益1367億3300万円、営業損益282億7000万円の赤字、税引前損益281億3000万円の赤字、最終損益286億8200万円の赤字(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 2432