【インタビュー】「業界や職種を越えた新しい気づきを生み出せる場所に」…CEDEC運営委員に訊くこれまでと今後 セッション講演者も募集中
コンピュータエンターテインメント協会(CESA)では、現在「パシフィコ横浜」で8月24日より開催する日本最大のコンピュータエンターテインメント開発者向けカンファレンス「CEDEC 2016」(CEDEC=セデック:Computer Entertainment Developers Conference)にてセッション講演者を公募している。今年のテーマは「Now is the Time !」。近年猛烈な早さで進歩するコンピュータエンターテインメント技術を使って、新しいエンターテインメントを作り、ユーザーに届ける、今がその時だ!という思いを込めているという。
今回「Social Game Info」では、「CEDEC 2016」開催に向けて、CEDEC運営委員会に所属する中村氏、堀口氏にインタビューを実施。日々どんな思いでCEDEC運営に携わっているのかを聞いてきた。
■技術戦略説明会としてのスタート
CEDEC2016運営委員会
副委員長 プログラムWGリーダー
中村樹之 氏 (写真左)
プログラムWGエンジニアリング
堀口真司 氏 (写真右)
――:本日はよろしくお願いします。はじめにお二人のご担当分野をお教え頂けますでしょうか。
中村樹之氏(以下、中村):CEDEC運営委員会では副委員長を担当しており、プログラムワーキンググループ(以下、PWグループ)のリーダーもやっています。PWグループはCEDECのセッション編成と実施を担当するワーキンググループで、公募案件の審査、招待セッションの企画取りまとめ、セッションの時間割作成などを行っています。普段は株式会社セガホールディングスにて開発全般のサポート業務を担当する部署に所属しています。
堀口真司氏(以下、堀口):私はCEDECでPWグループのエンジニア部門の一担当として参加させて頂いております。具体的には公募セッションのエンジニア部門ネットワーク分野の審査や、招待セッションの企画などもお手伝いしています。委員会は3年目になり、まだまだ若手なので、色々勉強しながらサポートさせて頂いております。普段はグリー株式会社の開発インフラストラクチャー部に所属しており、そこではインフラというよりも主にサーバーであったり開発のマネジメント系ツールを扱っています。
――:ありがとうございます。それでは改めてCEDECについてお聞かせ頂けますか。
中村:CEDECは日本で最も大きなコンピュータエンターテインメントのカンファレンスになります。参加者数も昨年は6,000人を超えており、年々増加傾向にあります。第1回が1999年の開催であり、今年で第18回となる歴史のあるカンファレンスになってきました。当初は東京ゲームショウの併催として小さく始まったイベントでしたが、そこから大学キャンパスをお借りしての開催などを通じ、現在はパシフィコ横浜で行うようになりました。
▲昨年開催の「CEDEC 2015」の様子
――:やはり当時から技術研鑽の場を皆で作っていこうとして発足されたのでしょうか。
中村:そうですね。私は参加していないのですが、技術戦略説明会としてスタートしたと聞いています。当時は次世代機に向けた開発技術の進化が業界としても鍵となっていた頃かと思います。
――:ちなみにこの数年で実際に参加されたゲーム企業やその他企業からの反響はいかがでしょうか。
中村:先ほども少しお話しした通り、参加企業数という面では年々増加しています。ここ数年の傾向では業種分野が多様になってきていますね。携帯・スマートフォン向けゲームが増えてきたのが特徴です。いわゆるゲーム専用機向けとの割合が去年で同程度の割合になりました。
▲昨年度参加者の業種割合
これまではゲーム開発というと、やはりゲーム専用機や業務用、PCが中心でしたが、携帯・スマートフォンゲーム向けの開発/運営を行う新規企業の参入が増えてきたことが、ここ数年の傾向として表れているのかなと思います。もちろん、これまでゲーム専用機向けのタイトルを作ってきていた会社のラインナップが変わってきたというのも近年の傾向かと思います。
――:聴講者としての参加者はどういった方が多いのでしょうか。
中村:こちらとしても意外だったのが、アンケート結果を見ると、初めて参加しましたという方が半分程度いらっしゃるんですよね。我々としては、常連の方が毎年ご参加頂くケースの方が多いのかなと思っていたのですが、新しく業界に入られた方も積極的に来て頂いているのだなとアンケートを見て実感しています。あとは印象として、比較的若い方のご参加が増えたと思います。それは、学生さんはもちろん、すでに業界に入られた方でも多く見られる印象です。
■CEDEC参加の経緯と実感したこと
――:そうなのですね。初めて来る方が多いというのは少し意外でした。堀口さんも業界に入れられた頃から参加されてのでしょうか。
堀口:私が初めて参加したのは、パシフィコで初めて開催された時期でした。2010年くらいから勉強会というものが、ゲーム業界に限らず増えてきていたと思うのですが、私も当時その流れにのって、いろんな勉強会に参加していました。そこで実際に登壇してみたりもしていて、結構楽しんでいたんです。そんな中、CEDECも興味程度で応募してみたら通っちゃって、そこからがきっかけでしたね(笑)。
――:当時はどういった内容を講演されたのでしょうか。
堀口:ネットワーク系のセッションで、プログラムの不正行為とその対策や事例といったものでした。当時はソーシャルゲームでも不正行為が増えてきたので、聴講者の方達も興味があるのかなと思い、公演させて頂きました。
――:応募の後、ご登壇されるまではいかがでしたか。
堀口:まず、公募からの発表が結構時間があるんですね。公募結果は6月くらいで、発表は8月になる。なので、三ヶ月くらい緊張してました(笑)。また発表資料も、ちゃんとしたものを作らないとと思い、始まる前から結構緊張していましたね。実際に会場に入ってみると、300人くらいの聴講者がいらっしゃったので、凄いところに来てしまったというのが第一印象でした(笑)。
――:審査はどういった形で行っているのでしょうか。
中村:運営委員会の中で行うのですが、一次審査としては、誰が応募したかわからない状態で行います。そのあとに二次審査として、委員全員が合宿を行い、協議をして決めています。結構な応募件数になるので、大変です(笑)。
――:実際にご登壇してみてどうでしたか
堀口:登壇してみて思うのは、いろんな方に会う機会が増えますね。登壇する前はゲーム業界のイベントだと思っていたのですが、他業界の方も多かったです。「ゲームのことは分からないけど、面白かったです」と声を掛けて頂いたりですとか、ご質問を頂いたりとか。CEDECでは懇親会もあるのですが、そこでも質問されたりと、ただ一聴講者として参加するよりかは色んな分野に接触する機会が多かったです。ちょっとした人気者にもなれると思います(笑)。
スピーカー同士の集まりとして、ウェルカムパーティーといったものもあるのですが、そこでも同じ志の方が多いので、新しい出会いや体験ができたと思います。あとは、『CEDEC AWARDS』というゲーム業界に関係する技術や知見を表彰するものがあるのですが、その審査員もやってくれないかとオファーを頂くこともありましたね。昔はCEDECを「大きい勉強会」くらいでしか見ていませんでしたが、結構見方が変わりました。そして、そうしている中、元々CEDEC運営委員会をやっていた同僚から「お前もやってみないか」と言われ、今に至ります。
▲昨年のパーティーの様子
▲CEDEC AWARDS 2015
――:ちなみにご登壇されて、実際の業務にても何か影響はありましたか?
堀口:そうですね。CEDECで発表した自身資料が結構社内でも共有されましたね。多分、社内で自分から発信するよりも効果的な場合もあると思います(笑)。というのも、会社さんによっては部署やチームが細かくあって、中々共有が難しいケースもあるじゃないですか。そこで、資料がCEDECにて公開されるので、自ずと見てもらうことができるのかなと。私の場合も、相談事が直接の連絡としてきたりしましたので、会社全体としても良い影響は作れたのかなと思います。
■業界や職種を越えて、新しい気づきを生み出せる場所に
――:CEDECのような活動は地方はもちろん、海外でも見られるものでしょうか。
中村:先日、サンフランシスコで行われていたGDCが世界最大の開発者向けカンファレンスですが、GDCの運営メンバーとの交流も行っており、協力体制もとっていますね。海外招待セッションというのも毎年あり、GDCで好評だったセッションをCEDECでも講演して頂いたりしています。地方開催についても過去に札幌、大阪、福岡の3都市で行いました。今後の展開については検討中で、様々な地域の方々に向けて、何かできればとは考えています。
――:今後CEDECをどのようにしていきたいとお考えですか。
中村:こちらは毎年掲げていることでもあるのですが、今より多くの業種や職種の方にご参加いただけるような取り組みをしていきたいですね。業界を越えてのオープンな交流や活発な意見交換ができる環境を提供し、それぞれの業界が交じり合うことで、新しい気づきを得られるような場にしたいです。
CEDECも歴史を重ねていく中で、カンファレンスとしてだいぶ成熟してきたかと思います。以前はゲーム専用機や業務用、PCゲームの開発事例が中心でしたが、昨今では携帯・スマートフォンゲームの開発事例もかなり増えてきました。新しいプラットフォームへの対応、何に対して遊びを創っていくかというところに合わせてCEDECも着実に変化していっています。
ただ、 CEDECとしては変化についていくのではなく、変化を追い越して、逆にリードするくらいの勢いが大事でないかと思います。その為には、同じ業界の中だけで仲良く勉強会ということではなく、周辺を含めた色々な業界の情報を受け入れることで、新たな遊び、気づきが得られると思います。コンピュータエンターテインメント全体として今後どうなっていくか、今後どうしていきたいのかというようなことが、CEDECをコアとしての交流で生まれるというような、そのようなイベントになればと良いなと思います。
――:開発者だけでなく職種も越えて交わっていければと。
中村:もちろん現状はエンジニアが40%以上の参加者比率ですが、エンジニアの枠に限らずご参加いただきたいですね。職種を越えることで新しい気づきやその人脈で新しいサービスができるかもしれませんから。セッション内容も多種多様になっており『ビジネス&プロデュース』といったビジネス部門のセッションも多くあります。
10年前に、スマートフォンでここまで楽しい遊びができるのかと、当時は誰もそこまで読めなかったと思うんですよね。そういうのってどこから生まれてくるかわからないじゃないですか。我々は、その時にあるデバイスやモノに対して遊びを提供することが使命だと思っているので、どんなに新しいモノがきても、そこに遊びを提供できればいいよね、という想いですね。まさしく今、VRが注目されていますが、どんな新しい遊びができるのだろうと想像するだけでも楽しみですね。
――:最後に「Social Game Info」の読者にメッセージをお願いします。
中村:まず、CEDECを見たことがない方やご登壇されたことがない方にお伝えしたいのは、遠慮なくご参加頂きたいという点ですね。自分は大した内容がないからとおっしゃる方もいますが、他の人にとってはものすごいアイデアの種になるので、畏まって頂かなく、お互いに刺激を受け合う良い機会なので是非ご活用頂きたいですね。
堀口:例えば、SIerからソーシャルゲームやスマートフォンゲームにシフトした方からは、ゲーム業界の勉強会と思われているかもしれないんですけども、そんなことはありません。逆に、別の業界からゲーム業界に踏み込んだ方こそ歓迎はされるとは思いますので、良いイベントとしてご活用頂きたいですね。
――:ありがとうございました。
■CEDEC 2016 セッション講演者 募集要項
募集内容
CEDEC 2016では以下の各形式につきましてセッションを公募いたします。
<レギュラーセッション(60分)>
・講演者が登壇し、講演して頂く形式です。
<ショートセッション(25分)>
・レギュラーセッションより短い時間で講演して頂く形式です。
<パネルディスカッション(60分)>
・あるテーマについて数人の討論者が討議を行う形式です。
<ラウンドテーブル(60分)>
・テーブルを囲んでモデレーターと参加者が、あるテーマについて全員で討論します。
<インタラクティブセッション>
・会場内に展示スペースを設け、発表内容の掲示及びデモンストレーションをして頂く形式です。
<ワークショップ>
・参加者の作業する環境を整えて実施する参加型学習の形式です。
<チュートリアル>
・主に入門、初心者を対象に基礎的な部分から応用までを解説し、一通りの基本的な内容を学べる形式です。
<CEDEC CHALLENGE>
・決められたテーマや制限内で作成された成果物に対して、レビューやコンテストを実施する形式です。
対象技術分野
次の部門に関連した技術・アイデア
エンジニアリング、プロダクション、ビジュアルアーツ、ビジネス&プロデュース、サウンド、ゲームデザイン、アカデミック・基盤技術、ほか
応募方法
CEDEC 公式Web サイト上のWeb 応募フォームに、必要な項目を記入し、ご応募ください。
※記載方法等詳細は、順次CEDEC 公式Web サイトにて公開いたします。
応募受付
~4月3日(日)必着
採択審査
応募いただいた内容をCEDEC運営委員会が審査し、講演者としての採択を決定します。
※ 必要に応じて、追加資料を提出いただく場合があります。
採択発表
2016年4月~6月頃、CEDEC 事務局より応募者に直接ご連絡します。
特典
<講演採択者>
・CEDEC 2016受講パス無償進呈
・講演者同士の交流を目的としたパーティへのご招待
<応募者全員>
・CEDEC 2016受講パスをCESA会員価格にてご提供
・CEDEC 2016基調講演への優先入場(要・別途受講者パス)
・CEDEC 2016ステッカー
個人情報
ご応募いただいた内容および個人情報は、CEDEC運営目的以外には使用いたしません。
■関連サイト
会社情報
- 会社名
- 一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)