日系リテーラーの海外展開革命。ドン・キホーテ擁するPPIHで日本IPキャラグッズが爆進中 中山淳雄の「推しもオタクもグローバル」第129回

中山淳雄 エンタメ社会学者&Re entertainment社長
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日本の小売事業者を売上順にならべてみるとセブン&アイ(12兆円)、イオン(10兆円)、ファーストリテイリング(3.4兆円)ときて、4位に輝くのが「驚安の殿堂 ドン・キホーテ」(2.2兆円)で有名なPPIHである。江戸期から続く岡田家イオン、大正期の伊藤家セブン、高度経済成長期の小郡商事ユニクロときて、1980年に生まれた新興の小売業者である。ドン・ドン・ドン・ドンキ~♪と耳に残る歌とペンギンキャラクターで有名な同社はこの10年、急激に海外化を進め、いまや国内655店舗に対して海外124店舗(2025年6月時点)。しかもエンタメでいえばキャラクターグッズを広く取り扱う「日本IPの発信基地」になってきている。今回はそんなドンキからみた現在のエンタメ業界のポテンシャルとその課題について話を伺った。

 

■海外急成長のドン・キホーテ。海外向けに「キャラクター商品」が売上15倍の売れ筋に

――:自己紹介からお願いします

渡辺和博(わたなべかずひろ)です。「ドン・キホーテ」などを運営する株式会社PPIH(パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)で執行役員 海外事業MD戦略担当をしております。

――:今回は台湾で行われたクールジャパン桃園未来観光サミットで「ドンキさんの海外展開があまりに凄い勢い」だったので、感動してお声かけさせてもらいました。

弊社の米国事業は基本的にM&Aを通じて進出してきました。2006年に米国・ハワイのダイエー3店舗を買いとったところを皮切りに、10年近くにわたって海外店舗運営のノウハウを積んできました。それで拡張志向になったのが2013年の日系スーパー「マルカイ」のフランチャイズ12店舗、2017年にハワイのローカルチェーン「QSI」24店舗、2021年にカリフォルニア州の高級スーパー「ゲルソンズ」27店舗と、どんどん広げていきました。現状(2025年6月期)北米には76店舗、展開しています。

――:海外の売上もすでに3500億円越え、さらに驚いたのはまだ10年に満たないアジア事業がすでに1000億円規模に達している点です。

米国と違って、アジア店舗はすべてM&Aではなく自前での立ち上げですね。2017年にシンガポールで1店舗目をつくったのが最初で、2018年には海外本部を設立。コロナ直後(2020年6月期の11店舗)から現在の47店舗まで、アジアの店舗展開も勢いを増しています。

――:各国でどんな商品がメインで商売されているのでしょうか?

日本だとだいたい非食品7割、食品3割ですが、国ごとに違いますね。例えばシンガポールでいうとおおよそ非食品1割の食品9割と、ほとんどが食品です。

――:実は私も2016~19年にシンガポールに在住していて、当時の「ドンキがシンガポールにきた!?」という衝撃を覚えています。

いらっしゃったんですね?安田がシンガポールに移住したときに、日本の商品が数倍の価格で売っているのはおかしい。しかもそれで売れている。だったら適正価格でもっと広げていくべきじゃないか、というのでアジア1店舗目をシンガポールで展開したんです。

――:現地では大ニュースでした。「日本人御用達のスーパー」のMEIJIYAがリャンコートにあって、みんなそこを使っていました。でもドンキがびっくりする価格で、日本の食材を展開。「人の流れ」も大きく変わりました(MEIJIYAは2020年3月に閉店)。

最初の店舗展開は、いったん全部日本からもっていくんですよ。それで何がうれるのかをPDCAまわしながら、だんだん売れる商品だけを厳選して集中させていく。シンガポールの場合は、結果的にそれが「食品」だったということですね。

――:それであの安さが実現できているのが驚きです。駐在含めて3万人の日本人人口がいる国ですからね。今回特に注目したいのは、国内のドンキさんの中でも「キャラクターIPグッズ」の割合が増えている、という点でした。医薬品/健康器具/菓子/コスメなどのカテゴリーと並ぶ規模まで「キャラクター」がカテゴリーとして増えている、と。

そうですね、コロナ後に伸びていて、我々商品部としてもどうやってIPごとの商品棚をつくっていくかが大事になってきました。

――:ドン・キホーテでのキャラクターグッズというのはどのくらい売れるようになったのでしょうか?

そうですね、詳細の売上額等の数字は出せないんですが、例えば国内キャラクターグッズだけでいえば2019年→24年で弊社の国内売上は約15倍になってますね。同期間で国内事業全体の売上が約2倍に伸長しているので、他の商材と比べても「キャラクター」は急激な成長を見せています。

――:まさに前回、三井不動産ららぽーとマレーシアでも「キャラクターは“食・衣料と並ぶカテゴリーになっている“」<https://gamebiz.jp/news/415005>という話と通じるものがあり、今回インタビューさせていただきます。

 

■2010年代半ばの「米国での『食』の成功」「インバウンド免税景気」「創業者の移住」がアジア展開の成功へ

――:私自身は2000年代の大学生時代によくドンキを使ってたんですけど、当時は「渋谷にあるおもしろグッズの店」というイメージでした。ハロウィーンなど非日常につかう仮装グッズとかを買っていて、逆に「食品を買いに行く」ところではなかった。

そうなんですよ、日本だと非食品から始まって、あとから食品系を増やしていきました。

国内では非日常→日常になっていったドンキですが、海外の場合は真逆なんですね。日常としての日本食などを普及させながら、あとからだんだんコスメや健康グッズなどが増えて、最終的に日本IPのキャラクターグッズまで非日常のものが売れるようになってきた。

――:「食」の領域はいつごろから力を入れ始めたのですか?

2013年の日系スーパー「マルカイ」を買収してから、2015年に「TOKYO CENTRAL」という形で業態転向していくんです。高級店での外食というイメージが強かった日本食を、手軽に楽しんでもらうために日本で販売される総菜を中心に、日本産の食料品、日本製雑貨・日用品などをそろえていった。店内に厨房機器もいれて総菜を作れるようにしていった。これが米国でスマッシュヒットになった。これならアジアにだってもっていけるんじゃないか、というのがあって2017年のシンガポール開店につながっていくんです。

――:なるほど!2013~15年での米国店舗の「食」の成功が、2017年~のアジア展開へのきっかけになったんですね。それと同時に安田さんも社長退任して会長になり(2015年6月をもって社長から創業会長兼最高顧問に就任)、そのままシンガポールに移住。コミットの仕方が凄かったです。でもそもそもドンキってなぜ「安い」のでしょうか?現地製造などしていくのでしょうか?

いや、ほとんど日本製ですよ。基本的には自社取引で日本からもっていっています。委託販売もしないので自社リスクで在庫かかえながら行う商売です。

でもそれは関税や輸入規制との関係にもよっていて、香港やシンガポールのようにそれらのハードルが低い国は6-7割は日本からもっていく商品です。逆に台湾のように輸入障壁が高い国になってくると日本からもっていくのは1-2割でほとんどが現地調達、となります。アメリカもトランプ関税で、現地調達の割合を増やさないとキツくなっていきそうですね。

――:店舗の内装があまりに「ドンキ的」なので、全世界どこも同じものを扱っている印象でした。

生鮮食品も持っていける国、持っていけない国がはっきり分かれますね。マレーシアなんかは弊社としてもはじめてのハラール商圏でしたので、結構チャレンジがありました。華人系の競合店舗が多くて、なかなか難しいマーケットでもあります。

――:そうした各国の試行錯誤した結果が「食品が売上9割」みたいなシンガポールの状況になるんですね。

シンガポールも最初はサーモスのマグボトルとか、Gショックとか色々なものを持っていったんですけど、結局買われるのは食品ばかり。「たくさん果敢に挑戦して、失敗を許容し、迅速に撤退する」というのが弊社で繰り返してきた海外戦略なんです。

アジアは「食」を中心に伸ばしてきていて、初期は「総菜」がめちゃくちゃ売れましたね。2019~2021年ごろはコロナ前後の巣ごもり需要もあって、衣食住を中心にモノが動きました。それが2022年ごろから総菜だけでなく、生鮮食品も売れてくるようになり、最近になって巣ごもり下でアニメをみてきた若い世代を中心にキャラクターなど他の日本商品に派生していった印象です。

――:でもイオンさんだったり伊勢丹さんだったり、まわってみると日本のリテーラー全部が好調、ではなかったですよね?特にタイは激戦区でどこも苦労していました。なぜ同じ日本商品を扱いながらPPIHはここまで突き抜けたのでしょうか?

そうですね、日本商品は本当に売れるんですが、たぶん各社ごとの「軸の違い」があったんじゃないかと思います。PPIHって「日本の専門店であること」をブラさなかったんですよ。りんご一つとっても現地の安価なものとか質の低いモノなども混ぜて売っているリテーラーも多いなかで「ドンキにくると日本の商品が手に入る」というところのコンセプトが統一していたことが勝因じゃないかと思ってます。

――:なるほど!!それは気づかなかった。すごいですね。

でもそれは日本のドンキが強いからじゃなくて、店舗運営のシステムが強いからなんだと思います。どんどん挑戦して新しい商品を入れて、失敗しながらその地域で一番売れるものを提供する、それは店長どころかスタッフ単位で皆がやっているんですよ。

 

■日本で最もPLを背負った販売責任者の多い会社。圧倒的すぎるドンキの権限委譲システム

――:渡辺さんのPPIHでのキャリアはどんな感じなのでしょうか?

2001年入社ですね。当時は店舗も29店舗、売上も700-800億円くらい、という感じでしたでしょうか。営業本部も東京と千葉・埼玉など2つに分かれていて、私は東京側で府中1号店の配属になりました。2年ほど現場をやってから、2003年から今の商品部に配属になりました。

――:みなさん日本だとどのくらいで店長になるんですか?

平均7-8年スタッフをやって店長になっていきます。早い人だと2-3年というスピードです。最初に任せられる一区画の棚が、次にはフロアになって、店長として一店舗。そのうちエリアになって複数店舗みながら、たまに商品部のようにカテゴリー軸を本部でやるというケースもありますけど、「シンプルに担当するスケールがデカくなっていく」というのが典型的な出世コースですね。

――:めちゃくちゃ現場至上主義型ですね。

日本だと“ミリオンスター"という支社長のポジションがあって、おおよそ人口100万人商圏の3-4店舗を統括するポジションがあるんですが、それがいわゆる経営者コースですね。ただ年間の予算達成率によっては、昇格も早いですが降格も早い。常に下の2割が自動降格してしまう仕組みなので、「下がる」ということもそんなに重く受け止められる感じではない。

――:まるで外資のような…。

慣れっこですね、結果だせば復活もできるので。給与システムも「半俸制度」をとっているんですよ、年棒制じゃなくて。半期ごとに昇進・昇格と賞与が大胆に変化して、同期入社でも月給数十~数百万とか数倍規模の差がついたり、というのも当たり前ですね。

――:普通は品出しだけとか、スタッフって機能で分けるものじゃないんですか?慣れていないバイトなんかも数字をもってるんですか?

はい、全員です。コーナーの責任者だけでじゃなくて、一つの陳列棚ごとに予算があってそれを管理する責任者にひもづいています。この場所に何を置くか、どういった数字になったかは、その責任者が自分の頭で考えて責任をもっているんです。アルバイトも小さな一つの棚単位で数字持っていて、予算達成率が常にみられています。

現CEOがいつもいっているのは、「PLを持っている人間が一番多い会社」なんですよ。店舗のスタッフがバイトから社長・役員まで全員が数字を背負って仕事をしている。

――:なるほど、貴社の店舗人員がバイトまでPLを背負っており、それがドンキの強さの源なんですね。昔のリクルートにも通じるものがありますね。

権限委譲と成果主義、それが弊社の基本です。それはどんな小売にも通じるからこそ、ここで育つと市場価値が高いんだと思います。

創業者の安田隆夫が、最初の一店舗の「泥棒市場」(西荻窪の18坪の雑貨屋、インパクト重視でこの名前にした)でやってきた経験から始まっているんですよね。昼間は仕入れが忙しくて品だしができない。それで深夜に商品仕分けや値札貼りしていた夜中にサラリーマンが「まだやってるの?」と尋ねてきたことをきっかけに深夜営業を始めた。陳列する場所がないからタワーのように積み上げていった。説明する時間がないからポップを書いて商品を売り込んだ。そうした彼自身のノウハウの塊がいまのドン・キホーテを作ったんです。

――:こんな強めのカルチャー、よく新卒時代に渡辺さんは入社を決断しましたよね?

私もやっぱりその「権限委譲」に惹かれたんですよね。学生だった当時に、いろんな就職先を検討したんですが、ドンキだけは全く違っていたんです。1週間たってきてみると棚の商品ががらりと変わっていた。なにかここだけでは違う経験ができるんじゃないかと思って入社しました。

――:渡辺さんの場合、「店舗」づきではないと思うのですが、そういうセクションでの成功体験はどうやって積むものなのですか?

2008年にカラーコンタクトの担当をしていたことがあるんです。その時、年3000万円くらいしかなかった商品を、ちょうど経産省管轄の雑品という扱いだったものが、医療事項マターで厚労省管轄の商品に変わったことがありました。そこに対応すべくいちはやく端末をいれて管理体制を整えたらそれが年10億円くらい売れる商品になった。

――:みなさん、凄まじいですね。こういうスキルセットって「海外だと通用しない」というのはないのでしょうか?他社さんも海外事業となると急に投資銀行やコンサル出身者だったり、中途の海外専門人材を中心に展開していますが。

弊社の場合は海外も基本的にはプロパー人材で展開していますね。基本は1人トップが日本人でそれ以外全員ローカル、みたいなケースも多くて。あとはマレーシアとマカオはすでに現地出身者が社長になっていて日本人がいない店舗もあります。

――:海外展開10年のわりに、強烈にローカライズしてますね。

生鮮食品で肉・魚・野菜を切るとかですと日本語だけでも手に職でいけるんですが、それ以外は説明商品でもありますし英語は必要なんですよね。だから20代中盤などはやめにいって英語だけは慣れてもらって、その後海外で活躍してもらうというのが日本人の育成パターンですね。

 

■インバウンド免税処理が海外需要の先行指標に。世界各国ドンキ店舗で「IP棚」が人気の秘密に

――:商品部ではいつごろから日本IPのキャラクターグッズを取り扱っていたんですか?

2003年当時は本当に小さな事業部でした。よく扱っていた商品は「キティサンダル」などの健康グッズですね。キャラクターものというのは当時からあったんですが、基本は問屋経由で仕入れたもので直接版権をもっているメーカーさんとやりとりするようなことはなかったです。

――:いつごろから問屋ではなく、直接やりとりするようになるんですか?

変化が起こり始めたのは2014-15年ごろ、急に免税でこうした商品が動き始めるんです。キティサンダルや着ぐるみ、「激落ちくん」のLECさんがキャラクターのダイカット(蓋の全面がキャラクターになっているもの)のウェットティッシュケースがよく売れるようになってきました。日本カルチャーとマッチしたものが当たってきたという感覚があり、そこから直接やりとりをするようになりましたね。

――:LECさんは永守貴樹さん(日本電産創業者永守重信氏の長男)が社長をされていた会社ですよね。新日本プロレスも長く協賛いただいていて、プロレスやキャラクターが好きな会社さんでした。海外展開も積極的でした。

でもまだまだそのころはあくまで「国内免税で外国人が買うモノ」であって、ドンキの海外店舗で積極的に売り出す、というほどでもなかったですね。

――:インバウンドっていってもみんな一見さんじゃないですか?台湾のセミナーで驚いたんですが、なぜ国籍別に来客人数や売上割合まで把握できているんですか?

あ、それは簡単で、免税処理するので全員パスポートがチェックできるんですよ。

――:あ、そうか!!免税だと国籍、性別、年齢がぜんぶクリアになるんですね!?

はい、それも各社どこまでシステム化しているかですが、弊社の場合は店舗別で国籍別にどの商品をセットで買った、というところまで、すべて見れます。

例えば「シンガポール人がA社のウィスキーが一番売れてるけど、あわせて買われているものが何が多い?」と調べた時に「B作品のキーホルダー」が出てきたりするんです。じゃあそれをシンガポール店舗でもセットでおいてみようと。そうやって地域をまたがってやっていると、この国では違う結果が出た、などが蓄積されていきます。だからインバウンドの免税商品需要が、2017年以降のアジア展開に直結しています。

――:それは全く考えていませんでした。目からうろこです。これは「免税処理」というちょっと特別なケースから発生してますが、普通の文脈に置きなおすと「各店舗での商品の流れがきっちりデータ化できたら、リテーラーは全然もっとリスクをとってチャレンジできるようになる」ということですよね。

はい、そういうことだと思います。特にアフターコロナでは訪日客も過去最高(2024年度3687万人)。そこに弊社では免税対応、POP多言語化、商品ラインナップの拡充など外国人比率に比例した店舗づくりを行っていますし、彼らが母国に持ち帰るための売れ筋IPにあわせてキャラA→キャラB→キャラCなどトレンドにあわせた商品展開も行っています。

――:明確に「キャラクターが売れる」となったのはいつごろからですか?

免税で日本のキャラクターグッズが売れ始めたのが2010年代半ば。海外店舗でも同じようにグッズがどんどん売れるようになったのは、2020年入ってからです。弊社としてもそれまで問屋経由で流行っているものを仕入れていましたが、それだとアニメの流行に一歩遅かったり、商品のバラエティが足りなかったりします。そこで版元さん・メーカーさんと直取引したり、ドンキ用に新しいアレンジしてもらったりという動きがここ数年ではじまっています。

――:そうですよね、こないだもドンキ台湾店でガンダムコーナーを作られてたり、「IPごとの商品棚」が生まれていて、驚きました。

そうです、ガンプラコーナーやサンリオコーナーなど、個別でIPごとの棚をつくって、それがよく売れています。そのIPのグッズ物販もコラボ食品もガチャガチャも一緒に展開できるとよいですし、最近は劇場版アニメなども同時映像展開されているので、同時に小売店舗でも展開できるといいですよね。当社の売りは「ガンプラコーナー」を台湾とマレーシアで一斉に展開、など複数国の複数店舗で展開できるんですよ。

――:国をまたいでの複数店舗展開ってすごいですね。

はい、規制に対応したスイッチなどでも容易なんです。

弊社の場合、免税売上から世界各国の商品別売上まで全部数値化されているので、こういう実験的な取り組みも可能なんですよね。

 

■日本IPは売りづらい?領域で分断されたIP海外版権の難しさ

――:キャラクターでは複数国でのIP棚ってどんな作品とされているんですか?

そんなに多くはないですね。昔からやらせていただいているのが上記のサンリオコーナーや、最近ではガンダムコーナーという感じです。

――:サンリオさんは全世界100%自社IPを保有してますもんね。たしかにアニメは国によって版権がバラバラ、現地のライセンシーも多いので、「IP一斉展開」にはいっぱい課題がありそうですね。

そうですね、「キティサンダル」も最初ドンキでは“ヒョウ柄"が一番流行ったんですよね。それで客層調べながらこういう商品にしたらよいのではとご提案して、「全身金色に変えたキティ」とか、インバウンドが多いところでは「和柄のキティ」とか。

――:ライセンスの柔軟性は日本で随一の会社です。しかしこれはPPIHさんもかなり苦労されてそうですね。日本のアニメIPの海外展開の課題は「海外権の分散」ですよ。アジア/北米/欧州と地域別に窓口を分けているケースがあったり、アジアのなかでもタイ/台湾は現地のライセンシーに、マレーシアは自社でみたいなタペストリー構造になっていて、「日本の専門店」であるドンキさんに卸すにも全部会話する先が違う状況です。

そうなんですよね。弊社もたいへん苦労して、まず作品別に取り扱う会社さんを特定するのが大変です。2010年代のうちは「ドン・キホーテ」という業態でまだ信頼が構築できなかったというのもありますが、そもそも門前払いというケースもありました。日本国内でもそういったことが少なくなったのは、ユニーをM&Aした2019年ごろでしょうか。インバウンド需要への対応成功もあって、徐々に変わってきた印象です。ただ海外ですと「ドンキでキャラクターを売る」という概念自体がまだあまり注目されていないなとも思います。

――:日本IPは上記のように「海外はライセンス売り切り」してしまっており、色々なチャンスロスしていそうな印象です。

そうですね、現状だとすごく機会損失しているとは思います。数字はお伝えできないんですが、前述のIP別コーナーは売上5倍6倍になったりするケースもあって、この「IP棚」の展開の仕方は弊社としてもかなり期待をしているんです。

ただ版元さん、メーカーさんとお話すると、その窓口にたどり着くのも一苦労するくらいで。特定しても「あ、このエリアはうちじゃないから●●社と話して」みたいになって急にコミュニケーションが切れてしまったり。

――:ライセンシーさんがいつも一番苦労しているところです…。これって他国のIPなどはどうなのでしょうか?

例えばコスメの文脈だと韓国のメーカーさんはかなり積極的にドンキを活用されてますね。最近だと国内で売れるコスメのけっこうな割合が韓国製品になってきている中で、彼らからすると「日本で我々の韓国コスメを一番売ってくれているのがドン・キホーテだから」と弊社向けにドンキ限定品を積極的に展開してくれたりしています。まだ基礎化粧品は日本製品も強いのですが、こういったリテーラーとがっつり組んだ展開というのは日系の会社さんは化粧品系もIP系もまだあまり積極的ではない、という印象もあります。

――:機会ロスでいうと、プラモ以外でもこういうグッズは売れる、というのはあります?

いまはプラモデルやぬいぐるみが多いんです。ただ前述のIPコーナーにある多様な商品に比べると、他のIPではかなり「商品化の幅が少ない」とも感じています。激落ちくんのメラミンスポンジとかトイレットペーパーとかタオルとか、実は雑貨ってかなりの種類があるんです。例えばバスマットはおすすめで、キャラクターをのせるのはすごくいいんじゃないかと思うんですよ、でもこういった多様な雑貨類でキャラクターをのせているところはほとんどない印象です。

――:いわゆる「日用品」ですね。たしかにアクリルキーホルダーとか缶バッチとかいわゆる「推し活」グッズに目をむけすぎていて、あまりライセンシーを広げていない傾向です。

はい、日用品だとやっぱりハローキティのような事例がとびぬけています。スプーンとかフォークとか。香港店で青森県産のリンゴのパッケージにキティを入れて売っているんですが、香港では飛ぶように売れています。さすがにリンゴにまでライセンスしている会社は他でみたことがないですね。

――:リンゴは単価的に相当難しそう…、PPIHさんのこうしたデータは国策としても重要な役割を果たしそうです。今回は内閣府のクールジャパン関連のイベントでの登壇でしたが、渡辺さんは政府や各省庁とのつながりって結構あったりするんですか?

先ほどのコンタクトレンズのケースの時なども、新しい法制度ができたときに「現場で消費者がどういう動きになったか」というのは行政としても強い関心事項ですよね。特殊なケースの時には弊社もマスキングしたうえでPOSデータなどを提供し、業界自体を導いてもらうための施策の参考にしていただいたりしています。

農水省ですと物流管理の新しいトライアルだったり、温度管理が必要な新種目の展開への支援などもありますね。経産省のキャラクター系ですと・・・あんまりそういった政府助成みたいなものは聞かないですね。

――:PPIHとしては今後どこまで成長を見込んでいるのでしょうか?

公表している数字ですと、現状売上2.2兆円営業利益1450億円を、売上は2035年6月期に4.2兆円、営業利益もミニマムで5000億円にするという目標を掲げています(国内戦略での目標で、海外はまだ仮置きの数字)。国内でも200~300店舗を拡大させていきます。

ドンキ視点で言うとやっぱり一番の成長市場は米国ですね。キャラクターグッズは「日本の免税」でよく売れているんですが、米国だとだいたいトータルの一店舗平均売上でいうと日本店舗の2倍売れているといった数字なんです。

あと米国でもまだまだ買っている人は若い人とかアジア系が多めなんですよね。米国だと階層・年齢・人種・性別によってそもそも行く店が違う。そういう点でドンキが本当の意味でマス向けになれるかどうかのチャレンジですよね。売り場が広いからたくさん置けるというのもあるんですが、日本IPグッズという観点でいうと米国を優先しながら、そこでできた成功例をアジアにももっていきたいですね。そうやって「日本のIPを世界に広げる」ところのお手伝いができればと思います。弊社はとりあえず求められているものを最速のスピードでもっていき、最大限スケールさせる、というところが役割だと思っていますので。

 

会社情報

会社名
Re entertainment
設立
2021年7月
代表者
中山淳雄
直近業績
エンタメ社会学者の中山淳雄氏が海外&事業家&研究者として追求してきた経験をもとに“エンターテイメントの再現性追求”を支援するコンサルティング事業を展開している。
上場区分
未上場
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