【連載】★スマホe-sports★戦の時間だバカ野郎! 第1戦「『クラッシュ・ロワイヤル』はe-sportsタイトルとなりえるのか?」



はじめまして、某エンタメ系会社所属の板垣と申します。髪が半分ありません。あと、いつも下駄を履いてます。今回縁あって連載を担当させていただくこととなりました。すいません。

現在、弊社では「スマホ向けe-sports用のゲームタイトルを新規開発チャレンジ中」でして。せっかくなので「今後スマホでe-sportsってアリなの?」って感じの話を、すでにリリース中のタイトルを交えながら、ゆるくお話出来ればなと思ってます。(ちなみに、業界内を下駄で闊歩している髪半分の人間を見かけたら、それはたぶん私です。お気軽に声を掛けていただければと。)

 
●「e-sports」って何??

それは、「エレクトロニック・スポーツ」の略。ザックリいうと「ゲームをスポーツ競技として捉える構想」です。つまり、サッカーや野球などのスポーツと同じように、ゲームもスポーツとして扱ってみます?という話です。

PCゲームやコンシューマ機の一部ゲームでは、すでにプロリーグや大会が開かれてます。なのでスマホでもそういう流れが当然来るだろうし、そもそもコンシューマよりもプレイヤーが多い分、e-sportsが成り立ちやすい環境にあり、市場規模も大きくなる可能性が高いです。

「今までと同じようなビジネス展開だけじゃなく、新たな体験が出来るモノを付加価値としてつけていかないとね!」と各社が思っていて、その中でも、付加価値の付け方として注目を浴びているのが、スマホ用ゲームだとe-sportsなのです。

そんな中「クラッシュ・ロワイヤル」のゲーム性が、今までのスマホゲームの中だとダントツでe-sports向きだなぁと思いましたので、今回取り上げさせてもらいました。


 
●「クラッシュ・ロワイヤル」って?

2016年3月(Android版は5月)に、Supercellからリリースされた『クラッシュ・ロワイヤル』(『クラロワ』)というPvPタイトルです。出すゲームすべて大ヒットのSupercellが手がける期待の新作で、本格的な対戦が楽しめるストラテジーゲームになっています。
プレイヤーの目的は、「自分の砦を守りながら敵の砦を落とす」こと。事前にセッティングしたカードを駆使して、出来るだけ多くの敵砦陥落を目指します。

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対戦をして、どんどん上のランクを目指しつつ、ポイントを貯める。
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貯めたポイントを消費して、カードを増やしたり、デッキを強化したりする。
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という、大変シンプルなゲームサイクルになっています。
 


 
●「e-sports」化が可能なスマホゲームの条件って何だろう?

そもそも、e-sportsが成り立つにはいくつかの条件があります。ビジネス面、技術面、ゲームシステム面、など、いろいろなアプローチがあると思いますが、特にゲーム性側からのアプローチとしては、最低限①~④の「すべて」を満たしている必要がありますよね。

①他人と真剣勝負が出来るかどうか?
②公平感があるかどうか?
③相手との駆け引きが頻繁にあるか?
④やってない人も、見ていて楽しいか?

あくまで「競技スポーツ用のゲーム」として成り立っている必要があり、その為には上記が必須だと考えます。さて、『クラロワ』の場合はどうでしょうか?追って考えていきましょう。


①    他人と真剣勝負が出来るかどうか?

例えば、誰かとサッカーの試合をするとしましょう。
あなたは仲間を集め、事前に作戦を練りまくり、最強の布陣で臨みました。でも試合の相手がまったくやる気が無く、適当にダラダラとボールを蹴っていたらどうでしょう?つまらないですよね?勝っても嬉しくないし、負けても悔しくない。
あくまで競技なので、常に「勝つこと」に対してお互いが真剣になれなければ面白くないのです。自分が真剣にやったことに対して相手も真剣に向き合ってくれることで、勝った時は達成感を感じて嬉しくなり、負けた時は悔しくて、次は勝つぞという気持ちになれます。

『クラロワ』は、どうでしょうか?

メインの遊び部分が「対戦しかない」ので、誰もが競争を意識するように作られている所が非常に上手いです。自分がランク付けされ、上を目指したくなっている為、勝ったら嬉しくて負けたら悔しいです。

ただ、対戦ゲームはすでにたくさん世に出ていますよね。そんな中で、クラロワは何が違うのでしょう?

いわゆる今までのカード型対戦ゲームは、目的を「最強のカードデッキを作ること」に寄せているモノが多かったです。あくまで、カードデッキの価値を上げる為に「対戦出来る遊び」を入れている、というイメージ。なので、対戦はカードデッキを盛り上げる手段の一つ。

一方、クラロワの場合は、ゲームの目的を「試合に勝つこと」に寄せています。デッキを強化することは、あくまで手段の一つ。そもそも、最強のカードデッキというのは存在しないゲームデザインになってます。ゲームの目的が、真剣勝負する部分に直結しているので、常に真剣勝負が成り立つゲーム性になっているのです。
 



②    公平感があるかどうか?

スポーツではよく、八百長やドーピングなどが問題になってますよね。例えば、今日の試合の為にあなたが一所懸命練習してきたとします。そんなあなたに対して、「スマンが今日負けてくれ」と言って来る人がいたり、「相手は薬で筋肉量アップしているから勝てないことが決まってるんだよ」などと言ってくる人がいたら、どうでしょう?不公平な気分になりますよね。

ゲームに置き換えると、「ゲーム内での努力」が「ゲーム外からの影響で泡と化す」時に、強く不公平感を覚えます。課金の話が、この辺りに直結していますね。課金をするということは、「現実世界での資金力でゲームに影響を与えることが出来る」ということ。それがどういう影響をゲームに与えるか?で、不公平感の強弱も変わってきます。

『クラロワ』は、どうでしょうか?

クラロワでは宝箱を開けるとカードが入手出来ます。課金で出来ることは「ゲーム中に入手した宝箱を開けること」です。宝箱を開けるのは時間が経つのを待つか、課金ですぐに開けるという方式になっています。(ちなみに、課金で宝箱自体をゲットすることも出来ます)

ただ、どの宝箱も、自身のランク(強さ)に応じた中身になっています。ゲーム内での努力と課金が喧嘩しない仕組みなので、不公平を感じないのが特徴です。

比べて、「最強のカードデッキを作ること」が目的のゲームの場合、カード入手に直結する部分に課金が絡んでいる(ガチャなど)場合が多いです。すると、課金をすればするほどゲーム内で強くなれる為、不公平を感じやすくなります。

クラロワは、宝箱を開けたりゲーム内ポイントを購入する以外の課金が存在しておらず、プレイ回数に制限も無い為、自分の気の済むまで努力が出来ます。

「課金しているヤツが相手だったから負けた」というケースは起こらず、努力が報われる土壌がある為、e-sports向きだと言えますね。
 



③    相手との駆け引きが頻繁にあるか?

メジャーな競技スポーツと、あまり競技化がされないスポーツとの、本質的な差はどこにあるのでしょうか?個人的には「相手との駆け引きをベースとしているスポーツかどうか」だと思ってます。例えば、バスケットボールやサッカーなどは、相手の動きに応じてコチラが対応し、その対応した内容に対して相手も反応し、、、という形でゲームが展開します。つまり、「相手の動き」や「自分の動き」が「都度戦況に大きく関わってくる」タイプ。一方、50m走など、最終結果タイムで競い合うようなタイプのモノは、基本的には「自分との戦いがベース」の為、定常的な競技化がしづらい気がします。(試合を毎日開催する系が向いてなさそう、という意味)

『クラロワ』は、どうでしょうか?

クラロワは、自分が盤上にキャラクターを出すと、その動きに合わせて相手もキャラクターを出してくるようなゲーム展開になります。出すタイミングや、出すキャラクターにより、刻一刻と戦況が変わっていく仕組みで、駆け引きを繰り返し行う必要があるのが肝ですね。とても競技向きですね。
一方で、どちらが多くのポイントを稼げるか?というパズルがあったとして、最後の結果のランキングだけで競うようなモノは、定常的な競技化がしづらいのではないでしょうか。
 



④    やってない人も、見ていて楽しいか?

スポーツは自分がやるだけではなく、観戦にも需要がありますよね。むしろ観戦が醍醐味と言っても過言ではありません。「一度もやったことないけど見るのは大好き」って人、結構いると思います。ゲームに関しても、プレイするのが面白いのは当たり前として、e-sportsとして成立させる為には「見て楽しいかどうか」が重要ですよね。

でも、「見て楽しい」ってどういうことでしょう?

演出やカメラワークなどの見た目、魅せる為の細かいテクニックは勿論大事なのですが、本質的には「ドラマが起きるかどうか?」という部分かなと思います。映画やマンガのように決められた流れを見るわけではなく、野球のように、同じルールで同じ場所で戦っているのに、似たような結果になることは二度とない感じ。「同じチームが戦ったとしても毎回違う結果になるようなドラマ性」が、協議スポーツには必要ですよね。

『クラロワ』はどうでしょうか?

駆け引きの話とも繋がりますが、クラロワは、自分の選択&相手の選択により都度都度戦況が変わります。なので、「同じ人」&「同じデッキ」が戦ったとしても、毎回違う結果になります。つまり、毎回「ドラマが起きる可能性」があります。加えて、クラロワには、「クラロワTV」という上級者達のプレイ動画を見れる機能が同梱されています。これにより、自分の好きなタイミングで自由に観戦することが出来ます。ゲームの展開にドラマ性があるので、自分よりも上級者の動画を見ると感動しますし、もし大会が開かれたとすると、その大会にも興味が出てきて、見たくなるかもしれませんよね。

観戦という意味では、ガチャを引いているのを見る動画なども、ドラマ性があって見ていて面白いです。ただ、自分の行動によって都度戦況が変わることはないので、e-sportsとは観戦のベクトルが違う気はします。
 


 
●というわけで、『クラロワ』はe-sportsになりえるのか?

ゲーム性という意味では、個人的にはe-sports向きのゲームだなと。ゲームを遊ぶだけでお金が貰える時代がソコまで来ていると思います。現状は、トライアルで単発単発の賞金大会を開催していくような感じかと思いますので、頑張って欲しいなと思います。(この文章を書いてる時間軸だと、先週に大会が開催された模様) ただ、単発単発の大会を開催するだけだと、4年に1回のオリンピックと同じような感じで、局所的な盛り上がりしか出ない可能性が高いです。なので、サッカーや野球のように、定常的なリーグ戦が行えるような規模まで持っていけると良いなと思いますね。


 
●スマホでe-sportsを盛り上げていくにはどうしたらいいだろう?

e-sportsとして市場を盛り上げていくには、前述のゲーム性の話だけではなく、もっと大局的なビジネス面からのアプローチも必ず必要になってきますよね。スマホe-sportsの場合はどうでしょうか? 例えば、サッカーなどの大衆的なスポーツを参考にすると、見えてくるモノがある気がしています。

想像してください。

あなたは、子供の頃に学校の授業でサッカーをやって、スポーツ少年団に入って、プロに憧れていました。でも、高校くらいで限界を感じて、サッカーはしなくなりました。でも、同世代なのにプロになったアイツは凄い!頑張って欲しい!応援しよう!それに、好きなチームはある。だからテレビで試合とかやってたら見る。あと、ゲームのサッカーくらいはやる。大人になって結婚すると、サッカーを知らない妻も、一緒にたまに試合を見に行ってくれたりする。この間、学生の頃の同級生と久々に出会ったら、たまには運動するか!って話になって、有料のフットサル場借りて、ボールを蹴って遊んだりした。そんな遊びレベルなんだけど、久々だし、なんか色々と一式揃えたくなるんだよねぇ。。。

例えば、そういうサッカー人生があったとして、そこにはいろんなビジネスが絡んでいますよね。授業をやる為にボールを買うし、練習する為にユニフォームを揃える。観戦チケット買うし、サッカーゲームも買う。フットサル場借りるし、自分用スパイクとかも買いたくなる。(だいぶ無理やりですが)

ゲームでもたぶん同じで、プレイヤーの中から皆の憧れとなるような人物が出てきて、プロ化されて、定期的な試合が開催される。そして、優秀なプレイヤーはお金が貰える。その周辺では、関連する何かしらで様々な会社がビジネスをしている。。。

こう考えると、スマホのe-sportsも、そのコンテンツを作った1社だけで盛り上げていくには限界がある気がしています。「サッカーというルールを考えた人とは別に、それを利用してビジネスをする人はたくさんいた方が良い」って感じでしょうか。(すべてのビジネスを1社でやろうとすると、なかなかスケールしないんじゃないかなぁ?というイメージです)

なので、積極的に他社に情報を出していって、協力しつつ全体として市場を盛り上げて行く必要があるんだろうなと。クラロワだと、例えば、動画の情報を外部業者が自由に見れるようになってて、優秀なプレイ動画を使って攻略記事を作れるようにするなど。。。

というわけで、スマホのe-sportsを盛り上げていく為には「業界全体で協力し合おうぜ!」という話でした。


 
●現在、鋭意採用中!

ポノス株式会社は本社が京都ですが、東京にもオフィスが出来ました。「見てる人が楽しい」をコンセプトにしたスマホ向けe-sports用タイトルの開発を進めています。現在、仲間を募集中です! 興味ある方は、ぜひ一度お越しください!

 

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著者: 板垣 護

ポノス株式会社、大江戸支社(東京オフィスのこと)の責任者。プランニング、ディレクション、プロデュース全般が専門で、エンターテイメント業界歴は15年くらい。好きなゲームは最近だとスプラトゥーン。だが、風雨来記というマニアックな旅ゲームまでカバーしてたりなど、ジャンルに隔たりがない公平なゲーム知識がウリ。ちなみに、『スプラトゥーン』ではS帯を行ったり来たり。





 
ポノス株式会社
http://www.ponos.co.jp/pc/

会社情報

会社名
ポノス株式会社
設立
1990年12月
代表者
辻子禮子、辻子依旦
決算期
11月
上場区分
非上場
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