【インタビュー】タカラトミーアーツの新星「ガスマスアニマルズ」が若年女性中心に大ヒット オリジナルIPとしてライセンス展開、ゲーム化も視野



タカラトミーアーツのカプセル玩具「ガスマスアニマルズ」をご存知だろうか。2015年7月に第1弾が発売し、現在まで第3弾まで出ているヒット商品だ。ミリタリーと2.5頭身の動物、ガスマスクという一見ミスマッチな組み合わせが斬新と評価され、若年女性を中心にファン層を広げている。そして、これにとどまらず、ライセンスアウトし、様々なグッズ展開も行っている。今回、「ガスマスアニマルズ」の生みの親である藤田真理氏と、ライセンスアウトを担当する宮下哲平氏にインタビューを行い、「ガスマスアニマルズ」の展開を振り返ってもらいつつ、今後の展望を語っていただいた。


 
■人類の滅亡した世界で進化した動物たちが日々戦闘

――:よろしくお願いします。まず、「ガスマスアニマルズ」については知らない人もいるかと思いますので、ご紹介をお願いします。

藤田氏:『ガスマスアニマルズ』は、人間が存在しない荒廃した未来の世界が舞台です。その世界では動物たちが劇的に進化しています。そして、動物たちは、それぞれチームを作って、チーム同士で死ぬか生きるかをめぐって日々戦っています


――:なぜ戦っているのでしょうか。

藤田氏:戦っている理由ですが、一種の縄張り争いです。この世界には平和に暮らしている動物たちもいますが、彼らの食べ物や水を狙って襲ってくる輩もいます。そして、それを守る動物たちもいます。登場するキャラクターは、いずれも価値観や考え方がおかしくなっていて、主人公格である「チームE」が正義の味方という感じで、かろうじてまともな存在といえます。
 


――:なぜガスマスクを付けているんでしょうか。やはり大気汚染からの防護のためでしょうか。

藤田氏:いえ、大気汚染のためにガスマスクを身に着けているわけではありません。ガスマスクで素顔をさらさないようにしているのと、チームごとに同じタイプのガスマスクを身に着けており、チームに所属している象徴というべきものです。


――:チームごとに身に着けているガスマスクは違いますよね。実在のものでしょうか。

藤田氏:実在しているガスマスクをベースに、キャラクターの顔に合わせて多少デザインを変えています。キャラクターの雰囲気にあったガスマスクを選ぶようにしています。ガスマスアニマルズの原型師さんもミリタリー好きで、ガスマスクや武器の選定にあたって相談に乗ってもらっています。


――:いまのところ第3弾まででていますよね。

藤田氏:はい。2015年7月から発売を開始しました。物語の主人公のような「チームE」から始まり、チームEのライバル的な存在である「チームN」、そして、自称悪徳警官で頭脳派の「チームD」が既に発売されています。今度発売する「チームO」は、「チームD」によって弾圧・逮捕された動物たちで、刑務所からの脱獄犯というイメージで構成されています。こちらはチームDに対して強い恨みを持っていて、敵対しています。


 
■女性中心に好評 裏設定を見抜く強者も

――:非常に好評ですが、購入される方はやはり女性が多いんですか?

藤田氏:はい。男性ユーザーを意識して作ったつもりだったのですが、実際に購入されるのは女性が多いですね。可愛らしい頭身と、ハードな世界観やキャラクターの設定のギャップを気に入っていただいたのかもしれません。本当にありがたいです。


――:イラストをポストされている方が多いですよね。

藤田氏: SNSなどをみていると、イラストやコスプレ写真をあげてくださっている方が多いですね。クオリティはどれも高く、描かれた方やコスプレをしてくださっている方とお話ししたいくらいです。また、公式サイトやカプセルに同封されている紹介文に全ては書けず、表に出ていない設定も多くあるのですが、キャラクター同士の敵対関係や恋愛関係、キャラクター名など裏設定を見抜く方もいらして、「なんでわかったの! 天才ですか?」と嬉しく思います(笑)


――:そんなことがあるんですか。

藤田氏:はい。SNSをみていると、そういう裏設定も楽しんでいただけているようで、本当に嬉しいです。

宮下氏:フィギュアの作りこみも好評の要因だと思います。普段は隠れて見えないガスマスクの中の表情もきちんと作りこまれているんです。ガスマスクは接着されているのですが、実は無理やり剥がすことができます。剥がしたガスマスクをご自身のフィギュアにつけたりしているユーザーさんも多く、ガスマスク欲しさに購入する方もいらっしゃいますね。

藤田氏:何かの理由でガスマスクが剥がれてしまった時、キャラクターの顔の作りこみが少なくても問題はないんでしょうけど、「マスクの下もちゃんと作られているんだ!」と驚いてもらいたかった、というのがあります。当社は玩具メーカーですから、サプライズや遊び心を大事にしたいと思っています。キャラクターによってはガスマスクを外した表情がコミカルでかわいいので、そこも楽しんでもらえると嬉しいですね。

 
▲ガスマクスを話した状態。実際はガスマスクを接着剤で付けているため、ガスマスクをはがすと接着剤の跡がついてしまうとのこと。


――:この頭身にされた理由は。

藤田氏:リアルな頭身も考えましたが、このくらいの頭身にすると男女関係なく買っていただけるのではないかと思いました。あと、設定が多少ハードであっても、見た目が可愛ければ、怒られないのではないかという本音もあります(笑) クオリティにもこだわっており、200円でお得感もあるのではないかと思います。


 
■ミリタリー×動物×ガスマスクの新しい組み合わせ

――:そもそもですが、企画された経緯を教えて下さい。

藤田氏:企画を始めたのは昨年の初頭になるかと思います。私自身、ガスマスクとミリタリーものが好きでしたので、それを使ってなにか面白いことはできないかと考えていました。それといまガチャ業界では、犬や猫などの可愛い動物ものがブームです。そこで新しくガスマスクと動物を組み合わせて企画したのがこの「ガスマスアニマルズ」となります。自分でスケッチを描き起こすところから始め、キャラクターとストーリー、世界観設定などを同時並行で考えていきました。


――:ご自分で考えたんですか。ところでずっとガチャ関係の仕事をされていたのですか?

藤田氏:はい。入社から数年間は、ガチャ企画部でサポート業務をしていました。先輩たちの仕事を間近で勉強させていただき、その後企画の仕事をやるようになりました。様々な版権キャラクターの商品化をしてきましたが、完全オリジナルの企画としては、こちらが第1弾です。


――:初めてのオリジナル作品がガスマスアニマルズだったんですか。それだけに思い入れもあるわけですね。ガスマスクはお好きだったんですか? 商談会の時、ガスマスク好きの企画者が…という話は聞いておりまして。

藤田氏:そうだったんですか(笑) 小学生の時、フリーマーケットでたまたま見かけて、それ以来、虜になりました。ものすごいマニアというわけではないのですが、それ以来、漫画やゲームでガスマスクを付けているキャラクターに注目するようになりました。


――:キャラクター設定やストーリー以外に、動物の選定やキャラクターデザインもご自身でされているのですか?

藤田氏:はい。画力は十分ではないですがスケッチを描いて、立体化する際に原型師さんと話し合って細かく決めて進行していきます。チームごとにガスマスクだけでなく、服装もできるだけ統一させるようにしています。チーム「E」は特殊部隊風、チーム「N」はゴロツキ感を出し、チーム「D」は警官をイメージした服装となっています。
 


――:社内からの評価はいかがでしたか?

藤田氏:月1回開催される社内の企画会議での提案を迷っていた時に、尊敬する先輩が「やった方がいい!」と必要以上に背中を押してくれました。会議で提案したところ、当時の企画部長が「面白い! やってみよう!」と言ってくれて商品化が実現しました。見た目も異色で不思議な雰囲気のものでしたが、最近サバゲーが流行っていますし、ミリタリーの需要も盛り上がっているので、いけるのではないかという結論になりました。


――:ライセンス担当としてはどういう印象を持ちましたか?

宮下氏:とても面白い商品だと思いました。当社は、版権元様からキャラクターをお借りして商品化することが多いので、オリジナルコンテンツはそれほど多くありません。当社発の商品を見つけたいと思っていました。いま「空想水族館」とともに、当社オリジナルコンテンツとして活躍してくれています。今後もどんどんタカラトミーアーツ発のコンテンツを増やして成長させていきたいですね。


 
■オリジナルIPとしてゲームも含めて幅広く展開したい

――:商品展開ですが、カプセル玩具として商品展開をされていますね。

宮下氏:カプセル玩具以外では、商談会で展示したような商品展開となっています。キーホルダーやキーキャップ、iPhoneケース、ワッペン、ICカードケース、Tシャツ、パーカー、缶バッジ、折りたたみコンテナ、ツールボックス、トートバックなどを各メーカーさんにライセンスアウトして商品開発していただいています。
 


――:ガチャ発のキャラクターで商品展開というのは珍しいケースだと思いますが。

宮下氏:はい。カプセル玩具のオリジナルキャラクターとして、発売から1年弱ですが、この段階で第4弾まで展開が決まっているというのは本当に稀なんです。第1弾と第2弾の段階から受注が良くて店頭消化も非常に早く、SNS上でも非常に話題になっていました。


―――:そこでライセンスアウトの可能性を具体的に考え始めたと。

宮下氏:はい。ライセンス課としても興味を持っていたところで、いろいろなメーカーの方から商品化の問い合わせをいただくことが増えました。お話をしているとミリタリー系が好きという方がメーカーにいらっしゃって、「ぜひいっしょに」ということが多いです。そこで本格的にライセンスビジネスもやってみようということになったわけです。


――:カプセル玩具からの展開は珍しいですよね。

宮下氏:カプセル玩具発というのは、ないわけではないのでしょうが、珍しい部類に入るかと思います。“ガチャ”(タカラトミーアーツでのカプセル玩具の名称)では初めての展開になりますので、これからもどんどん広げていきたいと考えています。


――:デジタルコンテンツへのライセンスアウトも行われることがおもちゃショーで発表されていましたが…。

宮下氏:はい。デジタルコンテンツの展開にも力を入れ始めておりまして、GMOメディア様からきせかえホームアプリが近日リリースされます。これ以外ではスタンプ系のコンテンツなどのお話もあります。


 
■第4弾以降も登場 ゲームとのコラボも

――:これからの展開を語っていただけると。

藤田氏:先ほど触れたような、リアルな頭身のフィギュアや、キャラクターの乗り物を作りたいですね。私のイメージでは、チームDは、空中に浮かぶセグウェイのような乗り物に乗っているイメージがあるんです(笑) トゲトゲのついたジープなども。そして、将来的には映像化が夢なんです! もちろん、バイオレンスな作品で(笑) リアルな頭身もいいですが、この頭身で暴力的なことをやったほうがミスマッチで新しい面白さが生まれるかもしれません。


――:第4弾以降も展開は考えておられるのですか?

藤田氏:はい。ストーリーは続きますので、フィギュアの新作も出していく予定です。ストックはあと10人くらいあります。ちょうど2チーム分ですね。これ以外には、少し仕様を変えて、デスクトップに飾るようなものなども考えています。いまはボールチェーンのスタンドフィギュアですが、もう少し動きのあるものも出したいですね。


――:どういう動物が出てくるのか楽しみです。

藤田氏:あとは、「ガスマスアニマルズ」ではありませんが、今年の冬には私のオリジナルコンテンツ第2弾も出ます! ガスマスアニマルズとは全く違うもので、今度は“地球爆破計画”です(笑) エイリアンが登場します。ぜひご注目ください。


――:はい。ライセンス担当としては引き続きライセンスアウト先の開拓ですか。

宮下氏:はい。ガチャ以外の商品展開を広げていきたいですね。同時並行で、ガスマスアニマルズを知っている方を増やしていくプロモーションも必要です。イベントやゲームとのコラボなどもできたらいいなと思っています。アプリやゲーム関係の方々からのお声がけをお待ちしています!


――:ありがとうございました。キャラクターがもう少し増えれば、ガスマスアニマルズだけでもゲームができるのかなと思います。

 
(編集部 木村英彦)
 
■関連サイト
 

公式サイト

株式会社タカラトミーアーツ
http://www.takaratomy-arts.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社タカラトミーアーツ
設立
1988年2月
代表者
代表取締役社長 近藤 歳久
決算期
3月
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