【特集②】アカツキの期待作『八月のシンデレラナイン』の世界観・シナリオの魅力を探る 「リアルさを求めた」「結末はユーザーと一緒に決める」


『サウザンドメモリーズ』や各種IPタイトルのゲーム開発でヒットメーカーとして知られるアカツキ<3932>が“青春体験型野球ゲーム”『八月のシンデレラナイン』(略称:ハチナイ)の事前登録を行っている。久々のオリジナルタイトルということでユーザ ーから寄せられる期待も非常に大きく、事前登録者数は受付開始からわずか10日で10万人 を突破した。

Social Game Infoでは、今回、『ハチナイ』開発者に連載形式でインタビューを行い、それぞれの立場からゲームの魅力やこだわりポイントを紹介していく。第2回目となる今回は、『ハチナイ』プランナー兼ディレクターの山本氏にインタビューを行い、シナリオや世界観について語ってもらった。(顔写真には山本氏がハチナイの世界観を作って行く中で登場した、ゲーム内のアニメキャラクターを起用)


 
■『ハチナイ』とは

本作は、「青春×女子高生×高校野球」をテーマにした“青春体験型野球ゲーム”。プレイヤーは同級生監督として、魅力的な女子キャラクター達を指導・育成しながら、共に”甲子園”という夢を追いかけていく。ヒロインたちが抱える悩みや葛藤を解決していくことが選手としての大きな成長を促すコツとなっており、“青春”というテーマとゲームシステムを密接に連動させることで、これまで以上にヒロインの内面を深く、豊かに体験できることが特徴となる。
 


 
■コンセプトは「青春映画」のようなゲームを作る

——:よろしくお願いします。まず現在のお仕事をお聞かせください。

よろしくお願いいたします。基本的に企画全般を見ています。山口がプロデューサーという役割で、私がゲームの核となる部分を考えています。例えば、キャラクターやゲームの内容、カードグラフィック、サウンドなど横断的に関わらせていただいてます。


——:いわゆる制作ディレクターになるのでしょうか?

そうですね。制作ディレクターなのですが、仕様もバリバリ書いていますので、手作業もしながら他の部分のチェックもおこなってます。ゲーム全体の枠と核を作っているというのが正しい表現かもしれません。

 
——:「八月のシンデレラナイン」の世界観やシナリオについてお聞きしたいのですが、このイメージはいつくらいに固められたのでしょうか?

イメージは最初からありまして、もともと「美少女ゲームを作る」ではなく違う新しい感じで・・・ゲームってある意味コミュニケーションツールだと思うんですよね。だから男性だけではなく、女性にもやってもらって、そして共通の話題になるような世界観にしたかったんです。例えば青春映画。昔の角川映画のような、全般に受けるようなものにしたいと考えていました。

なのでキャラクターのデザインもそのイメージを基本線にして、あまり最近の流行りを意識せずに新しい表現を模索し、男性・女性どちらも受けるものを目指しました。



——:世界観を作っていく上で の、こだわりはどういった点でしょうか。

自分のものづくりの一つのこだわりとして、「なるべくゲームの世界を現実に近づけたい」というものがあります。この夏の甲子園でも話題にもなりましたが、女子は野球で甲子園の舞台に立てません。その大前提の中で、どうすれば出場できるのかという命題を、違和感なくストーリーに落とし込んで作りこんでいきたいと思っています。

また普通の女子高生であるキャラクターたちの日常の悩みから、重い悩みまでさまざまな悩みを表現したいと考えていました。それは大人になれば実にくだらない悩みだったりするんですが、当時の本人たちにとってはものすごく大きな悩みなんですよね。そこだけしか世界はないと思っているから本人たちには死活問題だったりするわけで(笑)なんか当時はそうだったよね、みたいな部分が見せられたら、なにか面白いことができるんじゃないかなって思ったのが始まりかもしれません。

そうした学園生活やひとりひとりの感情の積み重ねが甲子園につながっているんです。だから甲子園がゴールなのかどうかは僕もわかってません。なので結末は、彼女たちを甲子園の舞台に立たせるのか、現実のように立てないままなのかは、すごく悩んでいます(笑)。

 


——:どちらになるのでしょうか。

甲子園の舞台に立つとファンタジーになりますし、立たないとゲームの目的を達成できないので、それが僕の悩みですね(笑)


——:プレイする人はどちらになるか楽しみにということですね。


 
■詳細なキャラクター設定から自然なセリフを言えるように工夫

——:キャラクターのセリフによってプレイヤーの応援の仕方や親近感の持ち方など大きく変わると思いますが、工夫されたところはありますか?

今回は、例えば何が好きで、何に悩んでいるのかなど、キャラクターの設定を細かく作りました。生きた言葉や違和感のないセリフを作るため、キャラクター設定のディテールにこだわりました。僕にとってはセリフに違和感を覚えることは大きな問題なので、それをなくすための工夫って感じですね。


——:設定はどのくらいまで細かく作られているのでしょうか?

名前や身長、体重などはもちろんですが、生い立ちや家族構成、野球を始めるきっかけ、そして先に述べた好きなものや、何に悩みを持っているのかも設定しています。特に女の子が野球をやるのはすごく大きな決断だと思います。まして高校でいきなり野球をやりますというのはありえないので、その部分の設定は細かくしたいという思いはありましたね。


——:表に出ない設定も含めて作られたということですね。

はい。もちろん今後のシナリオの進め方次第では追加されますし、変化もしていきます。その下地を作りました。

また、それぞれのキャラクターには役割があります。キャラクターは、単に並べましたというより、必要だからいるキャラクターばかりで、みんながみんな主役であると思っています。例えば、食いしん坊キャラや恋愛が好きなキャラ、熱血、スポーツ好き、ストイックな子もいます。翼は楽しく強くなろうというキャラで、東雲は楽しさよりも厳しさの中で強くなろうというキャラです。相反するものがいろいろ集まった中で、個性と個性がぶつかって、新しいものを生み出していくパワーが表現できれば良いなと思っています。

 


——:プレイヤーにとって、キャラクターをどのような存在にしたいと思っていますか?

よくあるような、彼女にしたい、友達にしたいではなく、「どこかにいそうな存在」にしたいと思っています。彼女たちがこの世界のどこかにいるんじゃないかとふと思ってしまうようなところを表現として見せていきたいです。それはWebで公開している動画や、ラジオを使うことで表現できると思っています。

現実の世界では我々がラジオを聴いて、向こうの世界の翼たちも同じラジオを聴いている。それって違う世界なんですが、ラジオを通じて繋がっている気がしませんか? 現実と空想世界の曖昧な部分にちょっと不思議な世界を感じてもらい、そして同じ感情を受けている彼女たちがどこかにいそうだなって思ってもらえるように、僕らも努力していきたいと思います。



 
■好きなキャラクターを好きなように使って欲しい

——:リリース前のためお話しできる部分は限られていると思いますが、作品で描きたかったところや注目して欲しいところを教えてください。

普通の等身大の女の子たちが切磋琢磨しながら頑張っている。そんな誰もが体験した出来事や日常を見て欲しいですし、思い出して欲しい。それに対してユーザーさんには頑張れと後押しして欲しいと思っています。

その点は、カードでシチュエーションとしてうまく表現できていますので、注目してもらえると嬉しいです。カメラで撮影したワンシーンのような絵になっているので、必ずしもカメラ目線ではありません。ときにはちょっと格好の悪いシーンもあるかもしれませんが、とても生き生きと表現されていますので、それをユーザーさんにも感じて欲しいです。

またシナリオのこだわった部分でいうと、最後まで試行錯誤した箇所は、女の子たちが野球を始めるきっかけです。絶対に打算的にしちゃだめだと思ったんです。みんなが翼に賛同してくれて純粋な想いで集まり、純粋な気持ちで野球がやりたいと思える気持ちを大事にしたかったんです。あの子は足が速いから、あの子は肩が強いからチームに誘う、そういうのは、やっぱり強くするための打算的なものに見えてしまうんですよね。だから、もっと純粋にただ、一緒にやりたい。そういう気持ちだけにしたかったんです。まぁ、現実の世界でも、最後はそんな感じじゃないですかね?

そうしてチームの強さよりも、みんなと一緒に野球ができる喜びを感じ、ひかれあった仲間たちでチームを強くしていく世界を私たちは用意する。あとはユーザーさんが好きな選手を好きに使ってくれればいいです。強く育てるのはユーザーなのですから。

 


——:今後の構想といいますか、挑戦したいことはありますか?

先ほども話しましたが、結末をどうするかは、最終的にユーザーさんと決めていけたらと思っています。また、正直に言えば、青春青春と言っているのですが、ネジが外れたようなものもやりたいと思っています。もちろんメインの部分では青春どストライクなお話をやっていくんですが、イベントなどではお遊びというか、現実では起こり得ないお話も見せられたらいいなって思っています。

例えば、何人かの女の子をピックアップして魔法少女のようなことをしたり、恋愛要素を加えてもいいですね。今回は花山という恋愛が好きなキャラクターがいるのですが、フラれる役なんかは彼女にやってもらおうと思っています。あと、永井、近藤、新田という女の子3人組はグルメキャラクター。料理系コーナーを作るのもよいですね。他にもいろいろな役割のキャラクターがいるので楽しみしてください。

ちなみに花山は、恋をしてフラれるけど最後は良い話にまとめたいと思っているのでご安心ください(笑) 全ての選手はタレントです。僕の役目はすべてのタレントの個性が活きるようにしていくことだと思っています。例えば80年代の少年漫画のノリを取り入れることも一つのアイデアだと思っています。本当はそういうノリが好きなだけなんですけどね(笑)そういうサイドストーリーも是非注目していけたらと思っています。
 

——:最後に甲子園に行くかどうかをユーザーさんと決めたいというお話がありましたが、どういうことでしょうか。

今はユーザーの皆さんにお渡しできる形に仕上げるのが私たちの仕事です。ですがリリース後のゲームは、ユーザーである皆さんのものでもあると思っていますので、ユーザーさんの声や声援とともに一緒に世界観を含め作っていけたらと思います。そして、皆さんとともに翼たちをずっと盛り上げていきたいですね。


——:ありがとうございました。
 
(編集部 木村英彦・編集協力 森山晃義)


 
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©Akatsuki Inc.
株式会社アカツキ
http://aktsk.jp/

会社情報

会社名
株式会社アカツキ
設立
2010年6月
代表者
代表取締役CEO 香田 哲朗
決算期
3月
直近業績
売上高239億7200万円、営業利益26億7600万円、経常利益28億3400万円、最終利益12億8800万円(2024年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3932
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