allfuzから配信され、アーティストをテーマにしたゲームとして、売上ランキングでも好調な『乃木恋〜坂道の下で、あの日僕は恋をした〜』(以下、『乃木恋』)が先日、220万ダウンロードを達成した。この『乃木恋』を生み出し、運営も手掛けている会社が10ANTZだ。
同社は「アーティストに特化したゲーム会社」として、本ゲーム内でも「アンダー彼氏」、「乃木トーク」といったファンの胸に刺さる仕掛けや、アーティストの活動と連動したイベントを試みているのが特徴的だ。
今回、10ANTZが事業拡大からのオフィス移転に伴って、同社キーマンにインタビューを行った。『乃木恋』のこれまでや、アーティストに特化したゲーム会社としての今後の展望など様々な話をうかがってきた。
■「胸キュン」できるゲームとしてアーティストと共に作りあげた『乃木恋』
株式会社10ANTZ取締役 CTO
田 鍾民 氏(写真中央)
執行役員
吉田 敏之 氏(写真左)
プランナー チームリーダー
金丸 昴紀 氏(写真右)
−−−本日はよろしくお願いします。まず、皆様のご担当についてお聞かせ頂けますでしょうか。
田氏(以下、田):よろしくお願いします。10ANTZではCTOとして所属しており、『乃木恋』では、エンジニアリーダーを担当しています。
金丸氏(以下、金丸):私は『乃木恋』チームの主にイベントプランニングを担当しています。
吉田氏(以下、吉田):10ANTZがアーティストコンテンツを扱う会社になりますので、アーティストさんへの交渉やリレーション、そしてプロモーションを担当させていただいています。
−−−御社についてもお伺いできればと思いますが、よろしいでしょうか。
吉田:10ANTZ設立の経緯について、代表である高澤が音楽業界出身だったのですが、そこからゲーム業界で様々なゲームを10年近く作っていたという経緯がありました。
ここ最近になって、アーティストさんでも新しい見せ方や発信方法が見出せないかという話が出てきており、そこに我々のゲーム作りのノウハウを活かして、ファンとアーティストを繋げられるデジタルコンテンツを作ろうと思い、立ち上げたのが経緯になります。
−−−では、皆さん音楽業界ご出身が多いのでしょうか。
吉田:私も元々音楽業界出身なのですが、数名程度になりますね、主にはゲーム業界出身です。後に田のような技術系のスペシャリストにも参加してもらって、内製でも作れるようになってきたのが、今の10ANTZになりますね。
−−−『乃木恋』が4月にリリースされてランキングでも一定の評価をされているかと思いますが、こちらの開発経緯などお聞かせ頂けますでしょうか。
吉田:元々、乃木坂46さんには3年前からオファーをさせていただいておりました。清楚で可愛らしく、それでいて飾らなくて親近感が持てるという、乃木坂46さんのイメージが、私たちが作りたいと思っていた青春時代の「胸キュン」を感じてもらえるゲームにぴったりだなと思っており、ずっとオファーをさせていただいてました。
そして、去年に許諾をいただいて、そこから企画を立てていきましたね。その時に「アンダー彼氏」という言葉や、「告白アドベンチャー」というキーワードが出てきて、今の形になってきました。開発当初の段階で田たちが参加して、企画が現実的に進められてきたと言った形になります。
−−−シミュレーションというジャンルですが、こちらも皆さんで決めていったのでしょうか。
金丸:そうですね。もう作っては壊して、作っては壊して、を繰り返していましたね(笑)。ただ、コンセプトだけはずっとブレなかったです。
田:特にプランナーだけが企画を決めるというわけではなくて、みんなで意見を出し合うという文化なので、エンジニアでもアイデアを出す事も多いですね。その中で、『乃木坂46』のファンでなかったスタッフもファンになって、そこから新しい意見も出て、といった事を繰り返して作りましたね。
−−−去年から作り始めたとなると、かなり早いペースで大変でしたでしょうね(笑)。開発の際に意識していた点はございますでしょうか。
金丸:ゲームとしては、『乃木坂46』は多くのファンがいるアーティストさんですので、難しい仕様にはしないように作っていきましたね。
新しい仕組みを入れるより、どこかで見た事のあるような機能にして、万人に受け入れられるようにしました。そして、その中に「胸キュン」するような見せ方や工夫をしていくように意識していましたね。
田:有名なアーティストさんなので、かなり細かい箇所にもファンの方々がすぐに気づきますので、小さい部分にも気をつけていましたね。ファンから「こんな話し方はしないよ」と思われないよう乃木坂46さんそれぞれの話し方とかにも気をつけていました。
−−−確かに、アーティストさんのファンの熱量は特に高いのかなと思います。
吉田:今挙がった「話し方」で言いますと、方言も実際にメンバーさんにちゃんと監修いただきましたね。例えば、関西出身と言っても、エリアによって関西弁のニュアンスが変わってきて、ファンの方々にはそれがわかるんですよね。
そこは10ANTZとしても、しっかり突き詰めて作りたいよねと思い、ストーリー一つとっても、表現やリアクションも実際にチェックしてもらうご協力をメンバーさんにはいただきましたね。「この場合はこう言う」ですとか、「この時はこんなリアクションはしない」といったように。なので、ファンの方々からみまして、「分かってるじゃん」と思っていただけたら嬉しいですね。
−−−まさにアーティストさんと一緒に作られていらっしゃるのですね。実際に、リリース時のファンの反響はいかがでしたか。
田:『乃木恋』が乃木坂46さんをモチーフにしたゲームで初めてだったと思うので、ファンからは「ありがとう」という声が結構多かったですね。
金丸:当時、テレビ CMを展開したのがかなり反響ありましたね。
吉田:結構珍しいですが、リリースと同時にCM展開に出たのもあって、大きな反響をいただきましたね。いきなりテレビCMを展開するのは、かなり怖かったのですが、やって良かったと思います。
−−−リリースと同時にテレビCMはかなり大胆なプロモーションですね。反響があったとなると、開発チームは結構大変な一面もあったのでしょうか。
田:ここまで反響があるとは思っていなかったので、リリースしてしばらくは大変でしたね(笑)先ほどお話ししたような細かい箇所にも皆さん気づかれるので、早め早めの改善着手が続きました。今は少し落ち着いて、ゲーム内でもっと「胸キュン」してもらえるような施策を出していければと考えています。
■ファンとアーティストの想いを繋げるゲームコンテンツを
−−−今現在は、『乃木恋』以外のコンテンツも進めていらっしゃると。
吉田:そうですね。乃木恋以外だと、韓国の有名なアーティストである『東方神起』さんのコンテンツも出していますし、今後も色々と控えていますね。来年以降には色々と発表できるかと思います。
−−−アニメのようなIP物と同様に、アーティストがテーマになりますと、チェックや決まり事が多く、扱いが難しい印象ですが、御社としてはどういったこだわりをお持ちでしょうか。
金丸:アーティストなので、写真を綺麗に見せようとは意識していますね。他のゲームと比べるとかなり容量があるものになっていると思います。ゲームとしてみると、エンジニアの人からは「もっと容量下げてよ」という声が挙がるかもしれないですけど、そうすると荒くなってしまうので、通常の2Dイラストよりはかなり気をつけていますね。髪の毛とかも、一見違いがないように見えても、結構分かってしまうものですからね。
田:ファンとの連動が大事なので、どうすれば「胸キュン」と感じることができるのかを考えて開発しています。『乃木恋』としてはリアルイベントもやろうとしているので、ファンが喜ぶことを第一にしていますね。そして、ゲームからアーティストさんを知ったユーザーがそのアーティストを好きになってくれるようなゲームにまで作り上げたいと思います。
−−−ゲームがきっかけにファンが増えればということですね。
「胸キュン」を考えて開発するとなると、社内でもファンの方が多いのでしょうか。
田:初めはファンではなかった、というメンバーもいましたね。ただ、だいたいファンになりますね(笑)。ライブを観に行って感動するのはもちろん、撮影の際にも、長い撮影にも関わらず一つ一つ丁寧に真剣に取り組んでくださるメンバーの方々のプロ意識を見たりすると、自ずとファンになります。
やはり、ファンとしての考え持ったほうが、ユーザーさんにも喜んで貰えると思いますし、何より作るモチベーションにもつながります。
吉田:私は担当業務上、アーティストサイドの方々とお会いして話をすることが多いのですが、アーティストさんってゲーム以外に、当然アーティスト活動というものがありますね。CDをリリースしたり、ライブを行ったり、メディアにも出たり。ここに、田が言ったことに少し重なる点がありますが、その活動に通じているゲームやアプリを、我々がいかにファンに提供できるかという事は考えますね。
ファンの皆様の熱量は、コンサートライブが近づいたり、新曲が出されたりすると高まります。その一体感をいかに、『乃木恋』でも汲み上げて、ファンに提供できるかですね。
ファンの方々が何を求めていて、アーティストさんが何を発信しようとしているのか。この両面を、バランス良く汲んで、『乃木恋』というアプリで形にできればと思います。
−−−たしかに、アーティストさんがテーマになりますと、リアルのイベントとの連動は大事ですね。リアルと連動した企画等は、10ANTZさんから提案して進めている事が多いのでしょうか。
吉田:当然、アーティストイメージを最重要と考えて、大切な事項はマネジメントさんにご確認いただいてから進めていますが、大枠はお任せ頂いていますので、信頼いただけている関係だと思います。なので、弊社としてもファンに響くものを作る事に専念しやすい環境でやらせていただいてます。
−−−今後、目標や展望をお聞かせ頂けますか。
吉田:アーティストさんにとって、ライブというのはファンとコミュニケーションがとれる大切な場なんですね。そういった空間と、我々の作っているデジタルコンテンツを連動した企画を考えているのですが、来年以降に実施していければと思ってますので、ファンの皆さんには期待いただきたいですね。
−−−先ほどおっしゃっていたリアルイベントもできればと。
田:ゲーム会社としてアーティストさんと一緒にやっていくので、ファンのライフツールとしてゲームを楽しんでもらいたいですね。アーティストさんに関わるエンターテインメントを繋いでいければと思います。
金丸:例えばライブですと、サイリウムが必須グッズと言えると思いますが、このゲームもファンにとっては必須アイテムと思ってもらえるくらい、楽しめるコンテンツに昇華させていきたいですね。
■一緒に地方公演も見に行く10ANTZチーム 既成概念にとらわれない人募集中
−−−オフィスも移転されて、積極採用中ともお聞きしましたが、会社についてもお伺いできればと思います。他のチームの方はどういう人が多いでしょうか。
吉田:モバイルゲーム業界出身が多いですね。
田:人柄としてはどうでしょう。・・・まあ物静かではないですね(笑)。
金丸:そうですね(笑)。全体的に、エンターテインメントな人、「人を楽しませる」のが好きな人が多いですね。あと、会社全体としての団結感もあるかと思います。人数もまだ36名くらいなので、かなり距離が近いですね。
田:みんな仲が良いので、遊びに行くことも多いですね。それこそライブも一緒に見に行きます。
吉田:会社がこれから大きくなるので、制度とかも皆一緒に作っていくところですが、やっぱりライブを見に行くのは珍しいかなと思います。
−−−ライブはたしかに他の会社ではあまりないかもしれないですね。いわゆる遠征、地方公演も行かれるのですか?
吉田:行きますね。ファンなので(笑)。今年の夏のツアーでは、『乃木恋』とコラボ企画を実施させていただいたんですね。『乃木恋』のストーリーを、メンバーさんに舞台上で演じてもらう、といったようなコラボでしたが、その大阪公演を見に行ったりしました。
金丸:あれはすごくテンションが上がりましたね。
−−−もう完全にファンですね(笑)。これから一緒に働く中で、どういった人と働きたい、10ANTZに合っていると思いますか。
金丸:プランナーとしては、もちろんゲームの企画になりますので、ゲームが好きな人が良いですね。ゲーム以外にもエンターテインメントのアンテナを持っていただける方は、10ANTZには良いなと思います。ライブと連動した企画など、いろんな方面から考えられたらいいなと思います。
田:アーティスト向けのゲームでは一番を目指していきたいので、その気持ちに共感いただける方は是非きていただきたいですね。
あとは、新しいものに関心がある人。アーティストさん自身が新しいものが好きな人なので、色々と吸収できる人が向いていると思います。
吉田:アーティストとゲームという新しい分野を拓いていきたいので、ゲームが好きなのはもちろん、その中でさらにアイデアを出せていける方ですね。既成概念にとらわれない、「これまでこの型でゲームを作ってきて、これからもそれを作ります」というより「実は、違う型のゲームが作りたい!」という方がきっといらっしゃると思うので、そういった方は是非来ていただきたいですね。
そしてもう1つ。弊社はアーティストさんのイメージ、見せ方をとても大切にしてますので、デザインセクションを見ていただけるアートディレクターの方がいらっしゃったら是非来ていただきたいと思います。
▼10ANTZオフィス風景
−−−それでは、最後に一言頂けますでしょうか。
吉田:アーティストさんは常に進化していってる人たちですので、我々もすべてのコンテンツを進化させていければと思います。『乃木恋』で言う「胸キュン」もそのひとつですが、アーティストさんの活動で出てくる「感動」といったものを、ゲームでもファンに提供できればと思います。なので、これから出していくコンテンツや企画を楽しみにしていってください。
金丸:まだ小さい会社なので、例えば大きな会社で中々挑戦ができないという方は、10ANTZだとすぐ挑戦できると思いますし、その成果の反響も大きいと思うので、是非来て欲しいですね。
田:今から成長していく会社だと思いますので、新しいことにもどんどん取り組んでいきます。なので、楽しく仕事はできると思いますので、ご一緒できればと思います。
−−−ありがとうございました。
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