ゲーム会社合同セミナー「HEAT 5th 渋谷」が開催 参加学生は過去最高の人数を記録 お馴染みの「社長トーク!」も実施


ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>は、12月3日、東京・渋谷ヒカリエにあるDeNA本社内において、「HEAT 5th 渋谷 ~ゲーム会社合同セミナー~」を開催した。

「HEAT」とは、ゲーム会社と学生の出会いの場を提供するイベント。ゲーム会社がブースを設けるだけでなく、大学・専門学校がブースを設け、学生の制作した作品を展示・自己アピールできる点に特徴がある。2015年5月の第1回を皮切りに、同年7月には関西で開催するなど、多角的な展開を見せている。
 
当日は、ゲーム会社による企業説明・講演や、社長によるパネルトークが行われたほか、学生自らがポートフォリオを持ち込み、現役クリエイターたちからアドバイスを受ける相談コーナーも用意されるなど、活発な交流が行われる内容となった。
 
本稿では、「HEAT 5th 渋谷」の模様を取材。
 
 

■参加学生は過去最高の人数を記録

 
今回で5回目を迎える「HEAT」とは、企業×学校×学生、この3者で構成される言わば合同セミナーのようである。ゲーム業界は、エンターテイメント産業の中でも万単位で雇用できている唯一の業界。3者が一同に会する本イベント「HEAT」では、新しい才能を持つ人々にゲーム業界に入ってもらう“きっかけ作り”を担っている
 
また、地方の学生がゲーム業界に触れられるチャンスにも寄与。ゲーム会社の少ない地域にある学校は、東京・大阪のようなゲーム会社が多い都市に出ないと、なかなか活動するのも難しいのが実情だ。そこで「HEAT」では、同時に複数のゲーム会社を集めることで、学生が1度の上京で多くのチャンスをつかめるように懸念点を解消してくれるのだ。
 
なお、当日は企業が31社、学校が12校、全国から集まった学生は過去最高の437名が参加し、まさにイベント名と同様に熱気が溢れていた。
 
 
 
 
▲個別企業ブースでは、学生に向けて各社企業説明を行っていた。
 
 
▲また、学校側のブースでは、学生の作品を展示して、訪れた企業に向けてアピールしていた。こうした双方が思い思いの立ち回りができるのも「HEAT」ならではの魅力。
 
  
▲ポートフォリオ講評会の模様。現役クリエイターの意見をもらえる貴重な機会だけに多くの学生が並んでいた。

 
▲また、前回から新たに導入された「ゲームコードレビュー会」。上記のポートフォリオ講評会がデザイナー向けとすれば、こちらはプログラマー向けとなる。プログラマー志望の学生の作品に対して、現役クリエイターが直接指導してくれた。

 
 

■ゲーム会社が学生に求めるスキルとは

 
そして、イベントの最後には、「HEAT」の人気企画であるゲーム会社社長によるトークセッション「社長トーク!」が行われた。当日は遠藤雅伸氏(東京工芸大学教授)、松下正和氏(ヘキサドライブ)、杉山智則氏(ヴァンガード)が登壇し、ゲーム業界で必要とされる人材や、各社の採用・育成、そしてゲーム開発の今後について語られた。また、モデレーターを務めたのは、HEATの発起人でもお馴染み馬場保仁氏(ファリアー)。
 

▲左から杉山智則氏、松下正和氏、遠藤雅伸氏、馬場保仁氏


最初のテーマは、「企業がほしい学生に求めるもの」。多くのゲーム業界を志す学生を見ている馬場氏は、昨今このようなことを発言する学生に出会うという…「(1)好きなことしかやりたくない」「(2)学校でやっていることを活かしたい」「(3)新しいことがしたい」と。これらの発言に対して、登壇者はそれぞれの意見を述べた。

杉山氏は、「ゲーム業界は新しいものが次々出てくる。興味関心も移り変わるため、ゲームクリエイターとして付いていかなければならない」と、新しいものをサーチして学んでいく姿勢の大切さに言及。
 

一方で松下氏は、“好きなことしかやりたくない”という学生に対して、「その会社のスタッフとして、やりたくないことも、やらなければならない瞬間も出てくる。そうして給料を貰う。仮に好きなことが出来たとしても、そのまま続けるのは難しい」と語った。

また、好きなことをしたいのであれば、一見してフリーランスや起業することにも繋がりそうだが、経験者の松下氏は「起業したからといって、好きなことが出来るわけではない。むしろ、好きなことをやるために、好きじゃないこともやっていた。それが世の常」と言葉を添えた。

では、具体的に企業が学生に求めるものは何なのか。

ヴァンガードの杉山氏は、人間性を挙げた。「ゲームはひとりでも作れるが、実際企業のなかで開発していくのであれば、必ずチームワークとなる。礼儀の正しさ、挨拶、尊敬、社会人として当たり前の要素を持っていてほしい」とのこと。

ヘキサドライブの松下氏は、スキルについて「学校で勉強した技術だけではなく、つねに新しいものを取り入れるようにしてほしい」と語る一方、ゲーム作りに対する熱意の重要性も説いた。「ゲーム作りが“しんどいな”と思う人は長続きしない。私も熱意があるからこそ、ここまでやっている」とコメント。
 

普段、大学教授としても教鞭をふるう遠藤氏は、自身が行っている実際のカリキュラムについて語ってくれた。遠藤氏の授業は、チーム制作はもとより、個人でもゲーム開発の経験をさせているとのこと。「よく“企画しか出来ません”というプランナーがいるが、個人開発では絵やプログラムも全て自分で行う。実際に一本作り終えると自信が付く。今の時代には、Unityなど開発ツールも豊富に揃っているので、まずは挑戦することが大事」と述べた。

個人開発については、馬場氏も「下手でもいいので完成させてほしい。ゲームに限らず、コンテンツは完成させてこそ。さらに、そこから人に見せて批評してもらうことも大事」と言葉を添えた。
 
 

続いてのテーマは、「なぜ簡単に(業界に)就職できないのか?」。しかし、実際問題ゲーム業界は常に人手不足…と同時に内定もあげられていないのが現状という。具体的に内定者の条件はどのようなものなのか。杉山氏は、「至ってシンプル。入社後に活躍して、色々な意味で成長し一緒にハッピーになれるかどうか。また、技術的な準備が出来ているか」とコメント。松下氏は「自分自身の長所を理解したうえで、きちんとアピールできること」に触れた。

遠藤氏は、“就職”という言葉について「“就職する”とはプロになることで、ゲーム制作を仕事にすることだ」とし、さらに「ただ会社ばかりは縁。自分が合っているところを探すためにも、いっぱい受ける必要がある」と言葉を続けた。


 

▲講演中、登壇者の金言に耳を傾けて、ペンを走らせる学生たちが多数。
 

▲閉会式では、次回開催についても触れた。まだ開催自体も確定ではないが、実施するのであれば再び関西を検討しているとのこと。
 
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
https://dena.com/jp/

会社情報

会社名
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
設立
1999年3月
代表者
代表取締役会長 南場 智子/代表取締役社長兼CEO 岡村 信悟
決算期
3月
直近業績
売上収益1367億3300万円、営業損益282億7000万円の赤字、税引前損益281億3000万円の赤字、最終損益286億8200万円の赤字(2024年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
2432
企業データを見る