20年前にソニーミュージックエンターテイメントからPlayStation用のタイトルとして発売された『クーロンズゲート』。その独特なアジアンゴシックな世界観。"ヒト"と呼ぶべきか妄人(ワンニン)などを含めた異質なキャラクター達。そして世にも奇妙な物語のBGMなども手がけている蓜島 邦明氏を音楽制作に迎えた伝説のアドベンチャーゲームだ。
そして、2016年5月、宝塚大学とジェットマンとの産学協同プロジェクト「次世代クーロンズ・ゲートのための研究開発」の体験会が行われた。当時クーロンズゲートを制作した中心メンバー達は、株式会社ジェットマンを設立し、セカンドライフやVRを用いてクーロンズゲートを使った活動を行ってきていたのである。
ジェットマンは、2016年11月、PlayStationVR用に向けた『クーロンズゲートVR』の開発のため、クラウドファンディング「CAMPFIRE」上にて資金調達の開始を発表。
開始わずか15時間ほど、日付をまたいだ9月14日夜中の1時半に、目標金額である300万円に到達。11月にはとうとう新たなストレッチゴールである900万円も達成し、めでたく開発が決定したというのが、これまでのおさらいだ。
本稿では、そんな『クーロンズゲート』を製作したオリジナルメンバーであり、現在は株式会社ジェットマンと宝塚大学でも教鞭を執っている 井上幸喜 氏と吉岡章夫 氏にクラウドファンディングでの支援募集や、『クーロンズゲートVR SUZAKU 朱雀』の開発状況などについて伺ってきた。
そして、2016年5月、宝塚大学とジェットマンとの産学協同プロジェクト「次世代クーロンズ・ゲートのための研究開発」の体験会が行われた。当時クーロンズゲートを制作した中心メンバー達は、株式会社ジェットマンを設立し、セカンドライフやVRを用いてクーロンズゲートを使った活動を行ってきていたのである。
ジェットマンは、2016年11月、PlayStationVR用に向けた『クーロンズゲートVR』の開発のため、クラウドファンディング「CAMPFIRE」上にて資金調達の開始を発表。
開始わずか15時間ほど、日付をまたいだ9月14日夜中の1時半に、目標金額である300万円に到達。11月にはとうとう新たなストレッチゴールである900万円も達成し、めでたく開発が決定したというのが、これまでのおさらいだ。
本稿では、そんな『クーロンズゲート』を製作したオリジナルメンバーであり、現在は株式会社ジェットマンと宝塚大学でも教鞭を執っている 井上幸喜 氏と吉岡章夫 氏にクラウドファンディングでの支援募集や、『クーロンズゲートVR SUZAKU 朱雀』の開発状況などについて伺ってきた。
■わずか15時間で目標到達、クラウドファンディング「CAMP FIRE」で支援募集を振り返る
・宝塚大学教授・ジェットマン代表 井上幸喜 氏 (写真右)
・宝塚大学准教授・ジェットマン COO 吉岡章夫 氏 (写真左)
ーー:本日はよろしくお願いいたします。クラウドファンディング「CAMPFIRE」で多くの支援が集まりました。支援を受ける側としてどのような心境だったのか聞かせください
井上氏:最初のゴールとして設定した300万円がわずか15時間で到達したというのは僕らも想定外でした。僕達よりも支援者の方達のほうが熱心に状況を見ていたかもしれません。Twitterのトレンドワードにも掲載され衝撃を受けたのを覚えています。その後に新たなストレッチゴールを設定しました。
吉岡氏:"物"の方が人気が出ると考えていたんですが、結果的に用意していたリターンで人気だったものはスタッフロールに名前を入れたいというもので、それが一番最初に終了してしまった。
井上氏:ファンの方からは「支援したいのですが、商品よりもスタッフロールに名前を載せたい」という要望も多くいただきました。追加の際には、同じ扱いでのリターンを設定したかった反面、最初の募集でスタッフロール掲載のためにより高い枠でご支援をいただいた方もいらっしゃいますし、そこは凄く悩みましたね。
ーー支援してくださったのはどういった方達だったしょうか
井上氏:ある程度の年齢に達している方が多くいた印象です。ゲーム自体も卒業されている方ですとか、子供の頃に親がやっていて懐かしかった、という方もいらっしゃいました。PS4も持ってない、PSVRも買えないけど支援しましたという方も多かったです。発売されたらゆっくりと売れていくのかなと思っています。いつかはクーロンズゲートの世界に帰りたいと思ってくれている、そういった意味でも安心しています。
ーーファンの方達の熱い想いを感じます。そうしてクラウドファンディングの締切日が近づいてくるのですが、正直ストレッチゴールは厳しいかなと思っていました
吉岡氏:最終日はずっと見ていたんです。「これ達成できないかな…」なんて言って、お風呂に入って出てきたら、一瞬で達成していた。
ーー私も見ていました。終了30分前であと30万円近く足りない。その状況でいきなり30万円分の支援がきて、まるでサッカーで決勝ゴールが入った瞬間のようだった事を覚えています。
井上氏:皆、共感してるんですよね。クラウドファンディングでの活動自体が、皆さんにとってのエンターテイメントになっていたんだと思います。ストレッチゴール達成で、蓜島さんに追加2曲分の発注を行う事ができました。
■20年前に発売されたオリジナルのクーロンズゲートへのアンサー
ーー現在の進捗状況について教えてください
井上氏:ジェットマンとジェットグラフィクスのメンバー5人が中心になってゲームの開発やクラウドファンディングの対応を含め、一部の作業を除いてほぼ全ての作業を行っています。そういえばオリジナルの『クーロンズゲート』を制作していた時も、初期のチームは5人程度でしたね。
現在は、支援者の皆様のための特別サイトを制作し、公開しています。これは学生達にも協力してもらいました。学生達は今20歳くらいの年齢で、当時発売したくらいに生まれた子達なんです。
クリエーターを目指す子達が、20年前のコンテンツを見てどんなふうに考えているのか。そこに向かってお客さんも20年間の想いというもの感じてもらえるし、逆にプレイヤーの方達も、20年ゲームをやり続けるという世代は僕たちが初めてだと思います。新しいものが生まれないかなという想いがあります。
次の更新では、支援者さんが送ってくれた写真を加工したものを掲載する予定です。送った写真の出来上がりがどうなったのか、特設サイト上で確認することができます。
ーーすごい時代になったと思います。ゲームの開発についてはどうでしょうか
井上氏:発売時期に関しては夏ぐらいになるかと想定しています。開発の進捗としてはデザインが終了し、3Dモデルも7,8割は終了しています。あとは街中の雑多感や湿気感、ライティング、ゲーム内のイベントといった細かい作り込みをなどをしていくという状況です。
他社さんとの違いは、シナリオが一番最後にくるという作り方をしています。『クーロンズゲートVR』は場所ありきです。その空間の上でどういうことをさせるか、という点で他のゲームと違います。製作スケジュールとしてはこっちの方が都合がいいかもしれないですね。
空間ができてしまえば、あとはシナリオの制作をすることで都度新しい内容で遊ぶことができます。
吉岡氏:マップの製作も完了しています。時間的な制約の問題もありますが、いわゆる最近流行のオープンワールドの空間で自由に歩きませるそういったものではないです。ただ、VRを使って酔わない速度で、全部回るというと案外お腹いっぱいになります。
ーーVRの開発では各社さんとも"酔い"についての話をよくされます。「クーロンズゲート」x「酔い」だと、VR酔いだけではなくオリジナルプレイヤーとしては色々思うがところが出てきます(笑)
吉岡氏:VR酔いの問題は大きいですね。VR上での動きのストレスは慣れが必要な部分もあると思いますが、意図しない目線や首の動きを極力させない事を意識しています。これでだいぶ大分酔わなくなります。
またゲーム自体も1回のプレイ時間を短くし、次の日にまたやると言ったアイディアも盛り込んでいきます。
僕達としては、PlayStationVRフォーマットのための審査があり、どうしてもそこを通さなければいけない。だから酔いというものをどうしても意識しない訳にはいかないんです。オリジナルに近い形を別のモードとして搭載できるかはその審査の内容次第かなと思っています。
ー一今回"SUZAKU 朱雀"と銘打ってることに関して、他の四神の名前を冠したタイトルも出るのでしょうか。
井上氏:出したいとは思っていますが、売上次第ですね。今回は龍城路とダンジョン一部の再現です。売上に合わせて"行けるな"と感じたら新規での製作も検討します。また製作期間を1年以内にするという目的もあるので、1度リリースして、次の1年でまた製作をするという方法を考えています。この制作方法であれば次世代機などでも対応がしやすいのではないかと思います。
ーーオンラインマルチプレイに関してはどうでしょうか
井上氏:オンラインマルチプレイもやりたかったんですが、今回はソロプレイになります。
ーー今後の拡張に期待ですね。ゲーム内に配置されるキャラクターに関しては設定上のものをそのまま使用されていますか?
吉岡氏:基本設定はありますが、実際の設定上の値を入れてしまうと、世界に対して凄くキャラクターが小さくなってしまう。そのため、あくまでも『クーロンズゲート』としてのリアリティを重視しています。
Oculusのプロトタイプ時のマップは吹き抜けでしたが、龍城路には天井があります。画角のマジックがあり初期では天井が凄く近い状態でした。また環境を作り込まないとクーロンズとしてのリアリティが出ないため、通常のゲーム作りとは異なるアプローチを行っています。
また、リアリティという意味では音に関しても擬似バイノーラルサウンドで設定していくので、通路の奥行き感といった事も演出できるので、更にクローンズゲートへの没入感が増しますよ。
ーー最後に支援者の皆さま、待っているプレイヤーの方達に一言お願いいたします。
井上氏:20年前に発売されたオリジナルの『クーロンズゲート』がプレイしていた皆様への"アンサー"をいっぱい入れて、泣かせにかかっています。是非オリジナルをプレイした上でやってほしいなと思います。
吉岡氏:PlayStationVRの対応としてチャレンジしている事が色々あります。ソニー側のレギュレーションの確認の必要がありますが「VRデバイス」と「クーロンズ」という世界観を繋ぐ演出を行う予定です。またマップはオリジナルの『クーロンズゲート』そのままに作っているので楽しみにしていてください。
ーーありがとうございました
■一足先に『クーロンズゲートVR SUZAKU 朱雀』の世界を覗き見
インタビュー後、開発中の『クーロンズゲートVR SUZAKU 朱雀』を体験することができた。
VRヘッドマウントディスプレイを装着しヘッドフォンを付けると、一瞬で別世界に持っていかれるのである。
今回体験できたのは、とある一角だけではあるが、それでもあの異質な空間を感じることができた。思わず眺めてしまう壁の落書き。つい覗いてしまう瓶のような物体の中。
進んだらきちんと戻ってこれるか保証がないのでは?と思う、暗く細い路地。堪らない体験だ。
今後ここから更に、湿気感や湿度の表現、ライティングなどの細かな設定が行われさらにブラッシュアップされていくとのこと。
またサウンドに関しても、擬似バイノーラルをクーロンズの世界に用いることで、通路の奥行き感などを演出するという。今後様々な演出の追加によって、筆者が体験した状態からより濃い状態になっていくだろう。
『クーロンズゲートVR SUZAKU 朱雀』とジェットマンの活動に関しても今後も継続的にお伝えしていく。お楽しみに。
(取材・文・撮影 : 編集部 和田和也)