【インタビュー】5周年を迎えたスクエニ『FFBE幻影戦争』…広野プロデューサーと藤田ディレクターが周年施策や新コンテンツ、そして今後の展望を語る
スクウェア・エニックスとgumi<3903>が共同で開発・運営を行っている『WAR OF THE VISIONS ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス 幻影戦争』(以下、FFBE幻影戦争)。
本作は、高度な戦略が試されるバトルシステムと重厚な本格ストーリーが楽しめる『ファイナルファンタジー(FF)』シリーズの新作タクティカルRPGとして、2019年11月14日にリリースされ、今年で5周年を迎えた。
gamebizは『FFBE幻影戦争』の5周年を祝して、本作のプロデューサーであるスクウェア・エニックスの広野啓氏と、開発ディテクターを務める藤田泰正氏へのインタビューを実施。
お二人に、『FFBE幻影戦争』リリースから現在までを振り返ってもらいつつ、5周年キャンペーンや新たに実装される新要素、そして今後の展望について話を聞いた。
『FFBE幻影戦争』プロデューサー・広野啓氏
『FFBE幻影戦争』開発ディレクター・藤田泰正氏
5周年を節目とは捉えずその月、その年が勝負
――:まずは5周年という節目を迎えての率直なお気持ちをお聞かせください。
広野 『FFBE幻影戦争』を応援して、支えてくださった全世界のユーザーさんのおかげだと思っています。もちろん開発初期から一緒に歩んできたgumiさんにも感謝しています。ただ、我々としては5年を一つの節目とは捉えていません。1年1年、毎月毎月が勝負だと考えていますので、振り返ってみたら5周年だったという感覚です。この先も、気が付いたら10週年だったとなれるように頑張ります。
藤田 同じく5周年だからキリがいいとは考えていなくて、気が付いたら5年目だったという感覚です。個人的にはgumiで色々なアプリに携わってきましたが、開発時期含めて7~8年という長期間、同じアプリに携わり続けるのは初めてです。スクウェア・エニックスさんと一緒に『FFBE幻影戦争』を開発・運営し続けていることは良い経験ですし、ユーザーの皆様には感謝しています。これからも6周年、7周年を目指していきたいと思います。
――:5年間を振り返ってみて印象に残っている出来事があれば教えてください。
広野 やはりゲームリリースのタイミングです。企画を立ち上げてから、こういう方向性なら世界中のユーザーさんに受け入れられると信じて突き進み、数年かけて作り上げたものをプレイしてもらえる。そこでどんな反応が返ってくるのか不安になりますが、『FFBE幻影戦争』は大きな手応えを得られる反応だったので素直に嬉しかったですし、とても印象に残っています。
藤田 私もリリース1年目は印象的です。もちろん2年目以降も色々な事がありましたが、試行錯誤をしてその結果がダイレクトに返ってきたのが1年目でした。それからいちプレイヤーとしては、国営コロシアムという公式企画で周年の放送に合わせて、朝からユーザーさん同士のリアルタイム対戦を私と親善大使のあさるとさんと二人で解説させていただいた事も楽しかったです。
――:5年間の中でコロナが蔓延した時期と重なる時期もあり、かなり大変だったと思うのですが。
広野 プロデュースする立場からお話すると、ユーザーさんとのコミュニケーションが重要なファクターだと考える中で、予定していたオフラインイベント等の施策が全てできなくなってしまいました。ちょうど『FFBE幻影戦争』が1周年を迎えるまで時期だったので、非常に苦しかったですね。いつ終息するかも見えなかったですし、リリースしてからユーザーさんと一緒に作り上げていく期間を大事にしなければならない中で、コロナの影響で最大限のケアができなかったと感じています。開発に関しては、問題が発生したらすぐにチェックしたり、変更点を確認するという事を基本的には顔を突き合わせて行っていましたが、コロナ禍でそれもできない。ですから開発環境も変更せざるを得ない流れになったので、藤田さんも大変だったと思います。
藤田 そうですね。リリース翌年の3月頃からコロナが蔓延して、会社としても一時期は強制的に在宅ワークになり、そのタイミングで環境が変わるので大変な部分はありました。ただ、gumiの体制として開発のメインは福岡の拠点で行っていて、コロナになる前からリモートでやりとりをしていましたので、在宅ワークになったとしても、リモートやテレビ会議の文化が既にあったので、リモート環境に対しての適応はスムーズでした。そういう意味では『FFBE幻影戦争』は他のタイトルよりは順応できていたと思います。
――:サービス終了するタイトルもある中で5周年を迎えられましたが、長く運営していく上で大切にしていることは?
広野 いまの市場環境を含めてゲームアプリがなかなか苦しい状況ですので、色々なメディアさんとお話する中で「長く運営できて素晴らしいですね」と言っていただけるのは非常に光栄です。やはりサービス運営ですので、ユーザーさんとしっかり向き合って、喜んでもらえるものを提供する事が大切です。ただ我々の独りよがりになっている部分もあって、ユーザーさんに叱咤激励されますが、そこで逃げずに向き合い続ける事が長く続けられている理由の一つだと考えています。それとベースとなるゲームデザインをしっかり作り上げることができた事も支えになっていると思います。
藤田 長く続ける為に運営しているという意識はなく、計画的に運用する事が大事だという考えがベースにありつつ、臨機応変にプラスに向かう事であれば調整するという方針で運用しています。間に合わないからこのタイミングではやれないとは考えず、極力すぐに出来る事は実行するというスタンスで、可能な限りユーザーさんの声を反映させられる環境を整える事を意識しています。もちろん1ヵ月、2ヵ月と計画的に進めていく部分もありますが、そこだけに縛られるとスピード感が失われるので、すぐに実行できる環境を整え、かつ今の環境を合わせた運用を極力実現させられるようにしています。それが長期運営に繋がっているのかなと思っています。
――:開発・運営の立場から見てFFBE幻影戦争の魅力とは?
広野 『FFBE幻影戦争』は元々『ファイナルファンタジー』という大きな括りの中の『FFBE』というタイトルから派生したシミュレーションRPGです。『FF』のシミュレーションゲームを遊びたいというユーザーさんもいると思っていて、そこにしっかりと刺さってくれたかなと感じています。また、単純にゲームデザインだけではなくそれを支える世界観やキャラクターの深みも相互作用となり、いつまで遊んでも飽きないギルドバトルも含めた様々な要素が絡み合って、うまく成り立っているゲームなのかなと手前みそながら思っています。
藤田 戦略性という言葉はソーシャルゲーム、アプリゲームでよく使われていると思いますが、実際に戦略性のある作品というのは正直少ないと個人的には思っています。その中で『FFBE幻影戦争』は本物の戦略性の高さ、バトルの奥深さはトップクラスだという自負があります。そこに対して、『FF』という世界観にプラスして『FFBE幻影戦争』独自のシナリオが絡み合ったものというのは唯一無二のアプリゲームだと個人的には思っています。
5周年施策のポイントとこれからの『FFBE幻影戦争』
――:5周年のインセンティブやキャンペーンはどのようなものを用意されていますか?
藤田 細かいキャンペーンに関しては、5周年特設サイト(https://www.jp.square-enix.com/WOTV/5thAniv/)に掲載されていますので、ぜひそちらをチェックしてください。大きな部分での施策については、生放送でも紹介した最大500連分無料召喚と、Lv.120のURが3体選べるユニット10連無料召喚ですね。既存・新規・復帰、全てのプレイヤーさんが利用できますので、この召喚をキッカケに『FFBE幻影戦争』を遊んでいただけたら嬉しいです。また、ゲーム外の施策では、オフ会支援キャンペーンも行っています。
――:5周年からの追加要素(新コンテンツ「グランドアリーナ」、新要素「指揮官」)はどのようなものになるのでしょう? またそれら追加要素を実装する事になった経緯についてもお聞かせください。
藤田 指揮官に関しては、一部のユニットに付属される新たな能力です。編成で指揮官枠が新たに追加され、そこに指揮官の能力を持ったユニットを配置することでデッキに編成された他のユニットに対して指揮官効果、指揮官アビリティが発揮されるという新しい軸でのユニットの強さの表現ができる要素となっています。基本的には条件を満たすと色々なデッキに編成されたユニットが強くなるというものです。バトル以外の性能で何かユニットの強さを見せたかったというのが指揮官を導入した意図になります。
これはどのソーシャルゲームもそうだと思いますが、新規キャラクターが次々と出てくると、デッキ環境がすぐ入れ替わってしまう。そうすると新規キャラクターが活躍できる期間が短くなり、そうすると「このキャラクターって手に入れるべきなのか」とユーザーさんに考えさせてしまう状況にもなる。そういうところでより長くキャラクターを使ってもらって活躍の場を広げるという意味で、バトルで表現してしまうと強さで見せるしかなくインフレを起こしてしまいます。だから別軸でそういう要素を追加できればキャラクターの息が長くなるのではないかと考えて実装することにしました。もちろん運営としても、キャラクターの需要を作りたいですし、それによってユーザーさんにキャラクターを長く使ってもらいたいと思っています。
一方のグランドアリーナですが、いままでと編成ルールの違う期間限定のアリーナというイメージです。実装の経緯については、指揮官でも触れましたが、色々なユニットが改めて活躍できるような場所を実装できたらいいなと思いました。それこそ色々な編成ルールを設けることで、昔使っていたユニットが再度使えるようになったり、今まで使ってこなかったユニットが使えるようにできればと思いグランドアリーナ実装に踏み切りました。
今月に関しては、これまで対人戦に関しては3人まででしたが、5人編成というルールにしてバトルで新しい感覚を味わってもらえたら思います。来月以降は、編成制限に近いですが、特定のレアリティ、特定のユニットだったり、例えば特定の国に属するユニットだけにする。そういう形で編成に変化をつけることでいままでにない組み合わせ、かつ今までやったことのない戦い方をすることができます。グランドアリーナ一本で色々なルールをつけることができるので、グランドアリーナだけで毎月色々な遊びを提供できるのかなと思って実装させてもらいました。
そこに合わせて過去のユニットに対して上方修正する話もさせていただいているので、マスターアビリティ3が解放されたユニットを改めて使ってみてその当時を思い出していただけるといいですね。このゲームは新規ユニットだけじゃないんだよというものを見せつつ、もちろん新規ユニットが活躍する場も作らなければいけないので、新旧合わせてユニットが脚光を浴びるようになるといいなと思います。
――:現状、iOS、Android、Amazonといったアプリや、Google Play Games PCでプレイできますが、今後、家庭用で遊べるようになる可能性はあるのでしょうか?
広野 ゲームのコンテンツ、特に運営ものを展開している以上、すべてのプラットフォームで遊べるようになればいいな、という思いは当然あります。ただ、現実問題としてプラットフォームが変わるって機種対応が一つ増えることでもあって、開発環境を考えても一筋縄ではいきません。プラットフォームによってスペックが違ったり、手続きが違ったりする。しかも同時にやらないとサービスの品質も変わってきてしまう。運用する以上は走り続けなければならないので、それら色々な事を踏まえると、やってみたい、やりたい気持ちはありますが現実的に難しい部分もある。ですから現状では今リリースさせていただいているプラットフォームのユーザーさんのゲーム体験をより良くすることを優先度高くやっているという所でご理解いただければと思います。その点においては、Google Play Games PCは非常に遊びやすいのでぜひ一度お試しいただけると嬉しいです!
――:先ほど『FFBE幻影戦争』は『FF』という大枠の中の『FFBE』シリーズのシミュレーションRPGとお話されていましたが、例えば『FFBE』『FFBE幻影戦争』とはまた別の『FFBE』を冠したタイトルを作ってみたいという考えはあるんですか?
広野 『FFBE』がどんどんユニバースみたいなところで広がっていけるといいなとはもちろん思っています。ただ、現状で『FFBE』はRPGタイプ、『FFBE幻影戦争』はシミュレーションタイプ。それぞれ世界観も違いますし、遊びも提供できている中で、じゃあ次の『FFBE』を作るとなった時に、どういうアプローチならユーザーさんに喜んでもらえるか? というところとセットで考える必要がありますので、ユーザーの皆様から応援や希望などのご意見をいただけたらなと思います。
――:『FFBE幻影戦争』は以前舞台化もされましたが、ゲーム外での展開については今後どうお考えでしょうか?
広野 ゲーム外に関しては、舞台化もさせていただきましたが、今後の展開についても引き続き考えています。例えばですが、商品化したい、アニメ化、実写ドラマ化したいという企業様がいましたら、どしどしご連絡いただいて、ご相談ください。ただ、『FFBE』シリーズ全体として言えるんですけど、音楽に対する評判が良いのでコンサートのようなものもできるかなと思います。そういったコロナ禍で出来なかった事もあるので、そのリベンジはいつかしたいですね。
――:5周年以降のFFBE幻影戦争の展望についてお聞かせください。
広野 まずは長く続けていくこと、そして日々プレイしていただいているユーザーさんに楽しんでもらうところを目指していきます。それが積み重なっていけばどんどん続いて次の展開も見えてくると思います。これは展望ではないですが、現状走っているメインストーリーについて、一定の終結を迎えるので、ユーザーさんにしっかりとお届けできればと思います。ゲーム内コンテンツについては、今回のグランドアリーナの状況も見つつ、次にどのようにアップデートしていくか長い目で見ていく必要があるので、そこは藤田さんと一緒に考えていきます。
――:最後にプレイヤーに向けてメッセージをお願いします。
広野 冒頭にお話ししましたが、リリース初期から長きに渡ってプレイしてくださってありがとうございます。もちろんリリース初期ではないユーザーさんや、一度辞めてしまったけど復帰していただいたユーザーさんなど、様々な属性のプレイヤーに支えられていまに至っていると思います。とにかくたくさん遊んでいただければそれが我々の力になり、また皆さんに対してサービスの品質、ゲームの深み、新しいコンテンツなどでお返しできると思いますので、ユーザーさんと我々が手をつなぎつつ、両者でいいサイクルを生み出し、そして喜んでいただけるゲーム体験を提供し続けられればと思いますので、引き続き応援のほどよろしくお願いいたします。
藤田 5年間、支えてくださったユーザーの皆様、ありがとうございます。ゲーム内の部分に関して、一旦大きいコンテンツに関しては今回の「グランドアリーナ」と「指揮官」を入れたあと、状況を見ながら考えていくことになりますが、それ以外の細かい遊びにくい部分だったり、直していきたい部分は明確にあるので、そういうところを改修をしていきたいです。
やはり長寿アプリになってきているので、細かい部分のストレスを消していって既存のユーザーさんもより遊びやすく、そして復帰しようと思っているユーザーさんが帰ってきやすいように、改めて整理して改修を進めていきながら、より長く皆様に遊んでいただける環境作りに注力しつつ、6周年に向けて色々仕込んでいきたいと考えています。今後ユーザーさんと一緒に6周年、7周年を迎えられるように運営一同頑張っていきますので、引き続き『FFBE幻影戦争』を楽しんでください。
――:ありがとうございました。
『FFBE幻影戦争』
© SQUARE ENIX Co-Developed by gumi Inc. LOGO ILLUSTRATION:©YOSHITAKA AMANO
会社情報
- 会社名
- 株式会社gumi
- 設立
- 2007年6月
- 代表者
- 川本 寛之
- 決算期
- 4月
- 直近業績
- 売上高120億6600万、営業損益50億4000万円の赤字、経常損益45億1400万円の赤字、最終損益59億3400万円の赤字(2024年4月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3903
会社情報
- 会社名
- 株式会社スクウェア・エニックス
- 設立
- 2008年10月
- 代表者
- 代表取締役社長 桐生 隆司
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高2428億2400万円、営業利益275億4800万円、経常利益389億4300万円、最終利益280億9600万円(2023年3月期)