【DeNA TechCon 2017】Cygames・DeNAの両社がこれまでのネイティブアプリ開発と今後の方針について語る
ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>は、2月10日、渋谷ヒカリエにて、技術者向けの大規模イベント「DeNA Technology Conference 2017」を開催した。
本イベントは、「多岐にわたるDeNAの技術的チャレンジに焦点を当て、広く世に公開することで、技術進歩・進化に役立つこと」を目的に、2016年より同社が技術者向けに主催している。第2回となる2017年は、ゲームなど既存の事業におけるチャレンジのみならず、人工知能(AI)など今後注力をしていく分野を含め、ゲストスピーカーやDeNAのエンジニアが5つのステージ・31のセッションで公演を行う。
本稿では、19時20分より、D-STAGEにて実施された、「Cygames × DeNA エンジニアが語るこれからのゲーム開発」についての内容をレポートしていく。
■ブラウザからネイティブアプリに移行したきっかけや理由を語る
本講演には、Cygamesの芦原栄登士氏、古閑学氏、DeNAの池田修氏、惠良和隆氏らが登壇。ネイティブアプリ開発に至った経緯や、今後のゲーム開発について両社の視点からパネルディスカッションを行った。
▲写真左から、本講演のモデレーターを務めたDeNA ヒューマンリソース本部 本部長 兼 DeNA Games Tokyo取締役の田川啓介氏、DeNA 執行役員・JPRゲーム事業本部 副事業本部長の池田修氏、同じくDeNA JPRゲーム事業本部 開発基盤部 部長の惠良和隆氏、Cygames エンジニアマネージャーの古閑学氏、Cygames 取締役CTOの芦原栄登士氏。
▲ここで両社の代表作品の一部ご紹介。Cygamesはこれまで『神撃のバハムート』、『グランブルーファンタジー』、『Shadowverse』などを、DeNAは『怪盗ロワイヤル』、『FINAL FANTASY Record Keeper』、『戦魂 -SENTAMA-』などをリリースしている。
これまで両社は、2011年にMobageを介してパブリッシャーとプラットフォーマ―という関係がスタート、その後も2014年に資本提携パートナーに。さらに、共同開発パートナーとして複数のタイトルを共に開発している。また、共通点として、元々ブラウザゲームのみを提供していたところからネイティブアプリ開発を始めたという点を挙げ、「アプリシフトを決めた背景」や「2D⇒3Dへの挑戦」といったテーマで当時の話を展開した。
●始めて開発したネイティブアプリ
Cygamesが最初にネイティブアプリの開発を行ったのは、2013年8月にリリースした『三国志パズル大戦』。芦原氏は「社内で行った企画コンテストに提出された案から始まりました」と当時を振り返った。加えて、スマホ端末の性能が向上してネイティブアプリの表現力が豊かになっていたことも一因として挙げた。当時、Cygamesに在籍していた人員はほとんどがブラウザ担当のエンジニアだったため、サイバーエージェント<4751>のグループ会社からネイティブアプリが得意なところと協力しながら開発を進めていたという。具体的には、プログラミング部分を委託し、企画内容やグラフィックをCygamesで制作していたとのこと。また、ネイティブアプリを配信するのが初めてだったため、ネットワークのダウンロード速度を改善するために苦労したことが印象に残っていると語った。
▲エラーが起きない範囲で、より速くダウンロードできる点を模索していたとの話も。
一方、DeNAが最初に国内向けにネイティブアプリの内製開発を行ったのは、2015年2月にリリースした『パズル戦隊デナレンジャー』。こちらについては惠良氏が「元々、ゲームロジックの組み方が分からないというレベルからスタートし、ゲームの面白さに直結しないようなものに関しては基盤として整備していきました。そこから、エンジニアができるだけクライアント開発に集中できるようにシフトした形になります」とコメント。先ほどのCygamesと異なり、会社によって制作に対するアプローチが両極端であることが伺えた。また、当時は内製エンジンを始め、オーディオエンジンなどを並行して制作し、同時に使用を始めたためデバック期間が大変だったと池田氏は話した。
●アプリシフトを決めた背景
Cygamesがアプリシフトを決めた背景としては、経営層・社員ともにスマホアプリに対する熱量が上がっていたことが大きかったという。ただし、最初からリリース時期を決めて取り掛かったわけではなく、クオリティーファースト中心に制作を進めたと社内の特徴を明かした。また、経営層にコンシューマー出身者が多かったため、アプリ開発を行う際の判断はスムーズに行われたという。
一方、DeNAでは代表取締役社長兼CEOである守安氏の鶴の一声がアプリシフトへのきっかけになったという。ただ、実際には現場でもネイティブアプリを開発しなければという使命感を抱いたチームがプロジェクトを立ち上げていたという実情もあったようだ。Cygames同様、経営層・社員ともにネイティブアプリへの熱量が高まっていたようだ。
●2D⇒3Dへの挑戦
3Dへの挑戦としては、C++を使ってキャラを3Dで作り、ゲーム内で2Dとして使用するというプロジェクトが始まった頃から、Cygames社内に3Dデザイナーが増えてきたとのこと。慣れていないC++の環境で様々な問題を乗り越えた時期があったことも明かした。
また、古閑氏はネイティブアプリを制作するエンジニアが少なかった当時を振り返って「最適化をするうえで、どんどん良くなる形が見えていたので、苦労はしたが楽しかった」とコメントした。そのときの経験から、C++に慣れているコンシューマー経験者を採用する流れが出来上がったという。その後、2011年にはUnityを使った実験を繰り返し、形となったのが2015年にリリースされた『LINE ペーパーダッシュワールド』だ。
▲そのほか、約1年ほどかけてCocos-2dxで制作した作品を、Unityで作り直すという経験もあったとのこと。
対して、DeNAでは『パズル戦隊デナレンジャー』と平行してUnityを使った制作を進めていたのが始まりだったと、惠良氏は話す。3Dやコンシューマー経験者がいない中、2~3カ月かけて内部で育成を行い、3D化に踏み切ったという。
●コンシューマー経験者との融合
モバイル開発へのファーストインプレッションについて古閑氏は「文化の違いなどは感じなかった」という。理由として、"ゲームを作りたい"という部分に関してはコンシューマーもモバイルも同じなのではないかと話した。
また芦原氏は、コンシューマーでは、サーバーやネットワークに携わる人材が少なかったのに対し、ソーシャルゲーム業界には豊富だったので「ここにいたんだ!」という感情を抱いたと素直な感想を漏らした。元々Web業界出身の方が多いとのことで、こういった形になったのではないかと考察を述べた。
DeNAでは、惠良氏が「ゲーム以外にも様々なサービスを運営している方々が集まっているのはインパクトが大きかった」とコメント。さらに、「自分でやれそうなことを探せる会社だと思いました」と付け加えた。
●今後の方針
「Cygames NEXT 2016」で新たにコンシューマータイトルを開発することを発表したCygamesでは、今後、エンジンから作成してハイエンドでクオリティの高いものを目指すとのこと。VR・ARの研究や、データベースエンジンの作成など、さまざまなプラットフォームで新たな取り組みを行い、ユーザーに驚いてもらいたいと、芦原氏は展望を語った。続けて古閑氏が「エンジニアとデザイナーを繋ぐ環境を強化し、グラフィックが活かせる環境を用意したい」と締めた。DeNAの展望としては、池田氏と惠良氏が「ユーザーが夢中になれる体験を提供していきたい」「ゲームを作りたいメンバーが作りやすい環境を用意したい」とコメントした。
最後に田川氏は、Cygames・DeNAそれぞれに山の登り方は違うが、それぞれのスタイルで乗り越えてきていると感じたとコメントし、講演の締めとした。
(取材・文:編集部 山岡広樹)
■関連サイト
会社情報
- 会社名
- 株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
- 設立
- 1999年3月
- 代表者
- 代表取締役会長 南場 智子/代表取締役社長兼CEO 岡村 信悟
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上収益1367億3300万円、営業損益282億7000万円の赤字、税引前損益281億3000万円の赤字、最終損益286億8200万円の赤字(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 2432