データ活用を用いたユーザーコミュニケーションやエンゲージメント施策が語られる「ThinkingData 0→1 Meetup 2024 Summer」の模様をレポート

シンキングデータとBytePlusとgamebizの共催によるセミナー「ThinkingData 0→1 Meetup 2024 Summer〜ゲーム運営におけるデータ分析基盤の構築から分析事例を大公開!〜」が、7月に渋谷にて開催された。

本セミナーでは、「データ活用を用いたユーザーコミュニケーション」に焦点をあて、グラムス、ワンダープラネットのキーマンが登壇し、各社の戦略や実際の分析事例を語った。

本稿では、セミナーの内容を紹介していく。



3年目を迎えた『ラグナドール』
ThinkingData導入での長期運営におけるデータ分析とは



まず初めに、『ラグナドール』を運営するグラムスの石川氏と寺門氏、エスパーダの加瀬氏が登壇した。

株式会社エスパーダ
取締役
ラグナドールコンテンツ開発者/韓国版日本統括
加瀬 圭翼

エスパーダ株式会社所属。グラムスへの開発協力としてスマートフォン向けゲーム「ラグナドール」に参加。PC向け韓国産MMO「グラナド・エスパダ」12周年では日本プロデューサーとして運営、日本独自開発を統括。日韓共同開発のスマホ向け独自タイトル「はがねオーケストラ」では開発、運営プロデューサーを担当。ラグナドールではコンテンツ開発責任者兼、韓国版の日本統括を担当。

 

株式会社グラムス
開発部部長
石川裕太

2016年に異業種から転職。スマートフォン向けゲーム「ラグナドール」にはエンジニアとして開発初期に参加。クライアント及びサーバーで幅広い実装を行う。目玉である「スピードチェインバトル」の実装も手掛ける。運用後はインフラの障害対応等も対応。UI組み込みチームの組成やエンジニアチームリーダーを経て、現在はエンジニア責任者としてプロジェクトを牽引。

 

株式会社グラムス
部長代理
寺門勇太

2020年7月株式会社グラムスに入社。約18年間のさまざまな他業種経験を経てゲーム業界に転身。スマートフォン向けRPG「ラグナドール」開発、運営を担当。過去にプレイした他社タイトルの知識を武器に、コンテンツの報酬設計やパック商品の立案、初期のエネミー行動案を提案。現在も引き続き他社タイトルの知識・トレンドを積極的に取り入れ、現場に重きを置いた企画立案、サービスに取り組む。

 『ラグナドール』は、妖怪を擬人化したキャラクターが戦う独特の和風RPGである。今年で3年目を迎え、多くのユーザーに支持されてきたが、さらなるサービス向上を図るため、データ分析を強化する必要があったのだ。

そこで同社はデータ分析ツールThinkingDataを採用したという。セッションでは、データアナリストの白石氏も参加し、導入の背景やその成果について語られた。

グラムスでは、従来使用していたデータ分析ツールがあったようだが、そのコストは高額であり、コスト削減を目的に、新たなツールへの移行が検討されていた。その際に選ばれたのがThinkingDataであるそうだ。このツールはゲーム分析に特化しており、データに基づいた高度な分析が可能である点が魅力的であったという。

コスト削減も見込められる他、移行においてもかかる工数を最小限に抑えることも大きな課題であったが、シンキングデータ側がBigQueryからのデータインポート機能を開発してくれたことで、グラムス側の作業負担は大幅に軽減されたそうだ。

他にも、移行にあたっては、過去のデータも分析に活用したいというニーズもある。この点についても、BigQueryのデータを定期的にインポートする仕組みを整えることで、リアルタイムデータとの併用が可能となった。

そして、ThinkingDataの大きな特徴の一つとして「エンゲージメント機能」も挙げられた。この機能を活用すれば、ユーザーの行動データをもとにセグメントを作成し、そのデータを基にアプリ内でポップアップやプッシュ通知を柔軟に表示することが可能となるそうだ。

例えば、特定の期間に1万円以上の課金を行ったユーザーに対して特別なオファーを提示するなど、ターゲットを絞ったアプローチが実施できるのだ。

セグメントの設定は非常に柔軟であり、ユーザーの行動に応じたパーソナライズされた通知が可能である。これにより、ユーザー体験が向上し、継続的なプレイや課金行動を促すことが期待できる。グラムスにおいても、「エンゲージメント機能」の導入は進行中であり、実際の効果測定も行われているそうだ。


『ラグナドール』のエンゲージメント施策は、主にコアユーザーに対するアプローチに重点が置かれている。長期的に運営されているゲームでは、ライトユーザーが減少し、コアユーザーの割合が増える傾向にある。こうしたコアユーザーに対し、彼らの満足度を維持しつつ、離脱を防ぐことが重要な課題となっている。

エンゲージメント機能を活用することで、課金後の行動や特定コンテンツのプレイ状況を分析し、離脱防止策を打つことが可能となると考えており。今後も、セグメントを細かく分け、即時性のある施策を展開することで、さらなるユーザー体験向上が期待できると石川氏は話し、講演は終えた。





新たにリリースされた『パンドランド』
新作ゲームにおけるデータ分析の考え



ワンダープラネット株式会社
執行役員 VPoE 兼 EDMO室長
開 哲一

奈良先端科学技術大学院大学を卒業後、ソニー株式会社で新規サービスやアプリケーションの研究開発に従事。その後、現ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社で数々のウェブサービスを開発。モバイルブラウザ向けソーシャルゲームの企画開発を経て、タノシム株式会社では取締役CTOに。現職ではVPoEとEDMO室長という立場で、エンジニア組織の成長や生産性の最大化と、全社の技術を牽引する。

 

ワンダープラネット株式会社
データアナリスト
疇地 良太

東京のゲーム会社でプランナーを経て、2017年にワンダープラネット入社。ディレクターやプロデューサーを経験後、現在はデータアナリストとして複数のプロダクトのデータ分析に携わっている。

続いてゲーム企業からは、ワンダープラネットが登壇された。同社では、新たにリリースされたタイトル『パンドランド』で、データ分析とエンゲージメント機能を駆使し、ユーザー体験を向上させる試みを行っている。こちらでは、その具体的なシステム構成と、リリース初期のデータ分析について紹介する。

『パンドランド』においても、ThinkingDataをデータ分析基盤として導入しているそうだ。

ThinkingDataを採用した理由は、同社においてプロジェクトごとに異なっていたシステムを標準化し、分析業務を統一するためであった。また、プランナーやマーケターといった非アナリストの職種でも、自らデータ分析に参加できる環境を整えるためでもあったという。

『パンドランド』では、クライアントとサーバーの両方にSDKを導入し、イベントログの送信やユーザー行動の追跡を行っている。また、アジャストを導入し、広告流入データとの連携を図ることで、詳細なマーケティング分析を可能としているそうだ。

ThinkingDataの導入により、ワンダープラネットではプランナーやマーケターがデータに直接アクセスできるようになっている。従来は、アナリストにデータを依頼し、結果が返ってくるまでに時間がかかっていたが、この新しい体制では、必要なデータにリアルタイムでアクセスできるようになったのだ。


実際に『パンドランド』のリリース後、速やかにデータ分析が行われた。主にDAU、インストール数、課金額などがチェックされ、特にチュートリアルの突破率に問題があることが判明した。このデータをもとに、リリースから3日目のKPI定例ミーティングで、チュートリアル突破率の改善が最優先課題として設定されているそうだ。

ThinkingDataの導入により、必要なデータが迅速に取得でき、ミーティング中に具体的な対応策が話し合われ、すぐに施策が決定される。このようなスピード感のあるデータ活用が、運営の効率化につながっているようだ。

また『パンドランド』でも、ThinkingDataのエンゲージメント機能は活用されているそうだ。活用してみて感じたこととして、特定のユーザーに対してプッシュ通知を送ることでターゲット層に適切なアプローチも行えるのではと、その可能性についても示された。

たとえば、特定のガチャを利用した後にクエストに挑戦したユーザーに対して、さらなるガチャ利用を促すプッシュ通知が送信することも考えられるだろう。また、ThinkingDataのプッシュ通知機能は、ABテストを通じて、どのメッセージが最も効果的であるかを測定することが可能である。これにより、継続的にユーザーエンゲージメントを向上させる施策を展開することができるのだ。

ワンダープラネットでは、今後もThinkingDataのエンゲージメント機能をさらに活用し、より精密なユーザーセグメントに基づいた施策を展開していく予定である。特に、ロイヤルユーザーに対する感謝の気持ちを伝えるプッシュ通知や、ABテストを通じた最適化など、様々な構想も語られ、講演は終えた。

 

データ分析の力を使いこなすことで、日本のゲーム市場はまだまだ成長できる

最後に、シンキングデータの白石氏が登壇し、同社のデータ分析基盤の強みや、グローバル市場での成功を背景に、日本市場への取り組みについて語られた。

シンキングデータ株式会社
データアナリスト
白石 陸

大学在学中、国際NGO「日本リザルツ」にて国際保健に関する政策提言活動、ケニア滞在時には「スナノミ症対策プロジェクト」を企画立案・運営。帰国後2019年まで、国際協力機構(JICA)にて日本企業の海外展開を支援。大学卒業後の2020年、株式会社メタップスに入社、2021年から株式会社デジタルトランスフォーメーション研究所の主任研究員に就任。2022年には自身の事業会社であるnull株式会社を設立、いくつかの中小企業の経営アドバイザリーを行う。ThinkingDataでは、データアナリストとしてゲームアプリのデータ分析、さらにデータ・ドリブンな運営を支援。


シンキングデータは、2022年に日本市場へ参入した。グローバルではすでに10年以上の実績を持ち、1000社以上のクライアントにサービスを提供している。日本市場参入の背景には、年々厳しさを増す国内ゲーム市場の現状がある。売上やダウンロード数の低下が続いており、日本のゲーム企業はグローバル市場での競争力を強化する必要に迫られているのだ。

白石氏は、日本のエンターテインメントが依然として世界中で高く評価されていると強調した。「ポケットモンスター」シリーズなど、日本のIPが世界中で知られているように、日本のゲームにはまだ多くのポテンシャルがあるのだ。このポテンシャルを引き出すためには、データを活用して成長を支援することが重要であると述べている。

シンキングデータが目指すのは、誰もがアナリストのようにデータを見て意思決定を行える世界である。データは、プロデューサー、マーケター、デザイナーなど、全ての職種の人々が活用できるべきだという考えのもと、同社のプラットフォームは設計されている。これにより、データを基にした迅速な意思決定と、効率的な運営が可能となる。

同社のプラットフォームは、デバイスやゲームサーバーからデータを収集し、それを整理、可視化する一連のプロセスを提供している。これにより、複雑なデータでも直感的に理解できる形に変換し、誰でも簡単に分析できる環境が整っているそうだ。

シンキングデータでは、日本のゲーム市場において、データを活用した運営支援をさらに強化していく考えだ。特に、データ分析を通じて得られるユーザーの多様性に対する理解を深め、それに基づいたエンゲージメント施策の提供を目指している。

白石氏は、データ分析の力を使いこなすことで、日本のゲーム市場はさらなる成長を遂げることができるはず。シンキングデータのプラットフォームは、その一翼を担うツールとして、サポートしていきたいとして講演は終了した。

なお、シンキングデータでは9月17日発売のThinkingData Japan初の著書『ゲームデータアナリティクス ~より良い開発・運営に向けたデータ分析の教科書~』も刊行された。

本稿にて、データを駆使したゲームの未来に興味を持った方は、手にとってみてはいかがだろうか。

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