【連載】わかる、中国エンタメ市場…第一回「中国エンタメ市場:ゲーム編」



Happy Elements Asia Pacificの林範和氏の連載記事「わかる、中国エンタメ市場」を開始します。日本生まれ、日本育ちで、日本企業で働いていた林氏ですが、中国企業に転職し毎月のように中国に行ったなかで見聞きした、「肌感覚」で感じる実際の中国を紹介していただきます。連載では、主に中国のエンタメ・モバイル市場の動向を中心に紹介して頂く予定です。記念すべき第1回は「ゲーム編」となります。


 
■ はじめに

このコラムでは、日本のクリエイターにとってチャンスが溢れている市場である中国に興味を持っていただければなと思い、中国語も話せない日本人である私が、約2年前に中国企業であるHappy Elementsに転職し中国市場向けの 事業を行う中で得た体験や知識に基づき、中国エンタメ市場についてご紹介していきます。 

特にこのコラムでは、ゲームというよりもエンタメ市場全般についてご紹介させていただきます。既に、中国市場を研究されているからすれば当たり前のことが多くなってしまうかもしれませんが、全く知らない方も読者には多数いらっしゃると思い、基本的なことからご説明させて頂きます。


 
■ 日本を上回る巨大市場中国

中国のエンタメ市場というと非常に範囲が広いので、まずはゲームからご紹介させて頂きます。


<モバイルゲーム>
中国のモバイルゲーム市場はnewzooの調べによると、2016年にアメリカを抜いて世界1位となっています。

 
   2016年
日本 12,447MUSD
中国 24,368MUSD
アメリカ 23,598MUSD
【出所:newzoo】


中国ではgoogleが使えない=Google playが使えないということもあり、単純に比べることは難しいのですが、世界最大規模の市場ということは間違いありません。

次に、中国のモバイルゲーム市場を幾つかの観点から見ていきます。


<ゲームジャンル ※App annie参考>
中国で流行っているゲームジャンルは、ダウンロード数では誰でも手軽に楽しめる パズル、麻雀、トランプなどが上位に位置しますが 、売上ではMMORPG、MOBAが中心となり、売上Top10のゲームはほぼこれで埋め尽くされています。

この要因としては、中国はもともとPlay StationやXboxといったコンソールゲームが普及しておらず、ゲームのコアユーザーの殆どがオンラインゲームで遊んでいたため、MMORPGやMOBAといった複雑なゲームプレイにユーザーが慣れ親しんでいたことやオンラインゲームを開発していたメーカーがそのままスマホにシフトしてきたためデベロッパーが多数いたこと、Tencent等の中国IT企業が海外の同ジャンルのゲームメーカーの株式を取得し中国展開を進めたことなどが考えられます。


<流行のゲーム>
中国の売上ランキングは日本より流動的となっていますが、日本でいうところのパズドラやモンストのように上位に数年間位置するゲームもあらわれはじめており、2015年から継続して上位にいるゲームは下記のようなものになります。

MMORPG
−    『梦幻西游』Fantasy Westward Journey(NetEase)

−    『大话西游』Westward Journey of Online(NetEase)


MOBA
−    『王者荣耀』Honour of Kings(Tencent)

パズル
−    『开心消消乐』Anipop(Happy Elements)
 

日本同様に国内ゲームが主流となっています。

日本のゲームでヒットするものは、基本的にマンガやアニメ原作のキャラクターが人気のゲームがほとんどで、 2017年以降はFate Grand orderやNarutoがランキング上位を賑わせています。


<中国の2大ゲーム会社>

中国のモバイルゲーム市場は、日本同様に多数のゲームの乱立から主要プレーヤーによる寡占化へ移行してきています。その中でも、不動のTop2はTencent、NetEaseになります。Tencentは自社ゲームのデベロッパーに留まらず、巨大なプラットフォームを活用した パブリッシャーとして多数のヒットタイトルを継続して出し続けています。NetEaseは今年日本でもリリースされた陰陽師(アクションRPG)のような日本カルチャーを取り入れたコンテンツに注力し始めた一方で、複数のヒットMMORPGを同時に運営する等、ARPUの高いゲームを複数運営しています。
 
 

<プラットフォーム>
先程、Google playが中国では使えないと書いたのですが、どういうプラットフォームが普及しているのかというと大きく2つに分類されます。

1. 携帯メーカー(apple、Huawei、Vivo、oppo、Xiaomi等)
2. プラットフォームを運営する大手IT企業(TencentやBaiduなど)

また、ゲームの決済方法は、日本ほどクレジットカードが普及していないため、 昔のimodeのような通信キャリア決済や、近年急激にWechat(日本のLineのようなコミュニケーションアプリ)等での携帯決済が伸びてきています。携帯決済の急激な増加の背景には、中国ではオンラインだけではなく、実店舗での携帯決済が急激に普及しており、そのため殆どのスマホで携帯決済が出来るようになってきていることが影響しています。

次回以降は、中国の動画配信、コミックや小説の電子配信についてご説明させて頂きます。




著者紹介
■著者 : 林範和
Happy Elements Asia Pacific株式会社 経営企画室 シニアマネージャー。日系の金融業界から、中国のエンタメ業界へ2015年に転職し、現在は日本と中国を橋渡しし、日中市場向けの新規事業開発を行う。


Happy Elements Asia Pacific:http://www.happyelements.jp/
お問い合わせ: http://www.happyelements.jp/inquiry
※連載記事へのコメント、ご意見はお問い合わせフォームの広報宛にお願いします。

 
Happy Elements Asia Pacific株式会社

会社情報

会社名
Happy Elements Asia Pacific株式会社
設立
2014年5月
企業データを見る