セガ・インタラクティブは、8月31日開催の「CEDEC2017」にて、「これからのeSportsへの取り組み~大会実況システムの開発と運用を通して得られた知見~」と題したセッションを実施。今回は、同社の野口洋介氏(第一研究開発本部)、山本宗平氏(第一研究開発本部 チーフプログラマ)による同セッションの模様をレポートする。
▲(写真左から)山本宗平氏、野口洋介氏。
年間を通じて多数のゲーム大会を開催する同社。ゲーム大会は性質上、上級者が集まるため、ハイレベルなプレイ技術やコアなファンとの交流が生まれる反面、「初心者や未プレイの人たちにとってはそのゲームについての知識がないと理解しきれず楽しめないものになってしまうというリスクがある」と野口氏は説明。
そこで同社では、その解決策として大会実況システムを開発し、対応した。解決策を考える上で、まずヒントになったのが、放送業界。野口氏によれば、野球やラグビーなどのスポーツ中継における“OnAirGraphics”に着目したそうだ。
“OnAirGraphics”とは以下のような特徴がある。
・スポーツ・証券取引・選挙等のスタッツからグラフィック生成
・天気予報、ニュース番組等のモーションテロップ、CG等
・3Dグラフィック背景とのリアルタイムバーチャル合成等
・天気予報、ニュース番組等のモーションテロップ、CG等
・3Dグラフィック背景とのリアルタイムバーチャル合成等
同社は、統計情報をグラフィック化し、視聴者にわかりやすく追加表示する“OnAirGraphics”を参考に実況コントローラを開発し、ゲームデータを抽出・加工。その加工データをもとに“ゲームのOnAirGraphics”、つまり大会実況システムを制作した。この大会実況システムは、会場照明をゲームと連動することによるショーアップや、プレイヤーのハンドスキルを映すカメラのリモート制御、ゲームの世界観に合わせたバーチャルセット等、各種機器と連動。野口氏によれば、それら一連の機器を大会実況システムと呼んでいるという。
▲プレイヤーの生体計測情報を視聴者へのBiofeedbackとして表示する試みも。試合中のプレイヤーの心理状態など、視聴者の目を引き、かつ誰でも状況が解る追加表示として活用しているとのこと。
■大会実況システムの構成と運用例
続いて登壇した山本氏は、大会実況システムの構成について紹介。下図のように、ゲーム機とモニターを中心として、センサーや照明機器など各種機器は、実況コントロールPCとネットワークで繋がっている。大会中も解説者がタブレットで実況画面を操作したり、運営スタッフが舞台裏からシーン操作・監視が可能だ。
また、ゲーム大会では「リハーサルでは大丈夫だったけど、本番でどんな不具合が起こるかわからない」と山本氏。「ですから不具合が起きてもゲーム画面だけで進行できるようになっている」(山本氏)と、不測の事態にも対応できるようにしているという。
▲大会実況システムとゲーム間のデータ通信の図。
ここからは、再び野口氏が登壇し、『CODE OF JOKER』や『戦国大戦』、『WonderLandWars』、『StarHorse』、『WCCF』と、様々な筐体、タイトルで大会実況システムを運用していることを紹介。運用例に挙げられたのが、実況補助コンテンツ。『CODE OF JOKER』は、目まぐるしく戦況が変化するカードゲームということで、ゲーム画面のキャラクターやカード位置をクリックすると、カード解説を表示されたり、ゲーム中の行動をログ表示させ、過去ログを参照できるなどの機能で、実況を補助している。
▲左上が通常のゲーム画面。そして右下が実況補助コンテンツによって表示されているカード解説やログ情報。
他にも、『戦国大戦』で採用しているフラットリーダー映像画面の合成(ゲーム筐体のカードリーダーをビデオ撮影、フラットリーダーの位置情報をもとにリアルタイムでカード絵を合成)や、『WonderLandWars』で用いられている支配率オーバーレイ表示画面(チームごとの支配率面積をリアルタイムにチーム色でオーバーレイ表示、実況補助として割合も数値で表示)など、各タイトルの特色に合わせたサポート要素があるとのこと。
また、ゲーム終了後、解説者が視聴者にわかりやい情報を伝えるための、試合後の解説補助コンテンツやプレイヤー紹介コンテンツなども、運用例としてピックアップ。
▲ゲームが提供していない試合中の情報を表示する、詳細スタッツ画面やサッカースタッツ画面。
▲ゲームの時間軸に沿って、撃破や被撃破をタイムラインで表示したり、その時点のリプレイを自動再生できる機能を持つバトルタイムライン画面。
▲ゲームの時間軸に沿って、撃破や被撃破をタイムラインで表示したり、その時点のリプレイを自動再生できる機能を持つバトルタイムライン画面。
▲大会出場者のパラメーター等を表示するプレイヤー紹介コンテンツ。
▲勝敗予想やライブタイムアンケート投票など、一体感を出すための観客とのコミュニケーションコンテンツも。
コアなファンはもちろん、初心者や未プレイの人にも訴求できるゲーム大会を目指し、システムを複合して大会をショーアップして盛り上げる。そのために制作された実況大会システム。
最後に野口氏は、同社で行われている社内ゲーム大会“SEGA e-Game Championship”の模様を映像を交えて紹介。社内ゲーム大会は、ゲームイベント運営のトレーニングと演出レベルアップのための基礎研究や、e-Sportsタイトルのリサーチ目的のため他社タイトルも含め競技に採用するなど、「4時間に渡るイベントではありますが、全社で取り組んでいます」と、野口氏は誰もが盛り上がれるゲーム大会を目指すという情熱をのぞかせた。
大会実況システムを使用したアーケードゲームの大会や社内大会を運営することで同社が得た技術面、そして運営面での知見。それを業界全体が活かしていくことで、e-Sportsをはじめとしたゲーム大会はさらに盛り上がっていくのかもしれない。