2017年におけるスマートフォンアプリ業界の総決算として、前年から2018年に至るまでの市場動向を総まとめする年始恒例企画「ゲームアプリ市場のキーマンに訊く2017-2018」。
昨年は長きにわたってソーシャルゲーム、スマートフォンゲームの開発・運営してきた企業が躍進した一年ともいえよう。今回は、『キャプテン翼 〜たたかえドリームチーム〜』(以下、『キャプテン翼』)、『うたの☆プリンスさまっ♪ ShiningLive』(以下、『うた☆プリ』)をリリースし、平成29年12月期の第3四半期累計では大幅な増収増益となったKLab(3656)にインタビューを実施。
同社代表の真田哲弥氏にインタビューを行い、ゲームアプリ市場とKLabの展開を振り返ってもらうとともに、2018年の展望を聞いた。
◼︎優勝劣敗がついた1年…生き残ったのは「当たり前のことを当たり前のようにやった会社」
――2017年のスマートフォンゲーム市場の振り返ってみていかがでしたでしょうか。
ひとつは優勝劣敗がはっきりしてきて、強い組と弱い組に別れたことです。ランキングを見ても、3つから4つのアプリがトップ100内に入るパブリッシャーが何社かありますが、それらは以前から活躍していたパブリッシャーです。日本市場で新たに躍進してきたパブリッシャーとなると海外勢ばかりですね。
もうひとつ、パブリッシャーとデベロッパーの役割がより鮮明になった1年でもありました。両方を担えるメーカーもまだまだありますけど、以前は自社で開発してパブリッシングも行っていたメーカーが、デベロッパーに徹するケースも多く見受けられます。これは開発費の高騰が主な要因でもありますが、市場が成熟してきた業界では常に起こりうることです。建設業界でもゼネコンがいて、その下に建設会社がいますよね。それと同じ流れが、ソーシャルゲーム業界でも顕著に見られるようになりました。
――確かに、新作をヒットさせるのが難しい市場になってきたことは強く感じます。
ベスト50までは新作がなんとか顔を出せても、そこから上は常連が独占していて、なかなか上位に定着できるタイトルが少ないですね。ユーザーさんもそんな常連タイトルを年単位で近くプレイしてきているので、以前ほど新しい作品に手を出してもらえなくなってきているのでしょうね。そんな中でも、いくつかのタイトルは上位に食い込んで定着してきているのはすばらしいことだと思います。
――その中で、御社が2017年にリリースした作品はいかがでしたか?
おかげさまで、今年は当社にとって素晴らしい1年でした。時間をかけて作ってきた新タイトルである『キャプテン翼』『うた☆プリ』をようやくリリースできて、ご好評いただくこともできました。
また、既存のタイトルの活性化にも力を入れていて、それは当社の強みにもなってきています。ひとつひとつの事柄を見ると当たり前のことだし、当社が特別画期的なことをやってきたとは思いません。しかし、当たり前のことを実行し続ける地道な運営が報われてきましたね。
――御社に限らず、ここ数年間でまいてきた種が花開いたメーカーが多い印象を受けます。事業として長いスパンを見たときの印象はありますか?
残るべき会社が残ったという印象ですね。波があってダメな時があっても、ゲームとしての作りがしっかりしているところは残っています。特にIPを使ったタイトルの場合、最初は好調でも運営が続く中でモバイルゲームとして穴が見つかるケースがあります。好調が続く会社のタイトルにはこれまでの経験が活かされて、緻密になっている印象があります。尖ったものは少ないかもしれないのですが、モバイルゲームのルールを踏み外さず、やるべきことをやっている会社が成果を挙げてきている印象ですね。
――仰る通り、IPタイトルですら苦戦するケースが見受けられるようになりました。
それもまた、当たり前のことを当たり前のようにやることが重要であることの証明ですね。5年前はそれほど高くなかったIPタイトルの比率が、最近ではどんどん高くなってきています。IPを使わないオリジナルタイトルは徐々に減っています。オリジナルタイトルのヒットには、相当な工夫をしないといけないのは間違いありません。
――御社は海外展開も積極的に行ってきましたが、今年1年で実感したことはありますか?
一昨年くらいまでは、ガチャを引きキャラクターを集める遊び方は日本特有のもので、それがなかなか受け入れられない海外という構図に思えていました。そこで我々は開き直って、海外の一般的なユーザーではなく、海外にいる日本コンテンツのファンをターゲットにすることにしたのです。同業他社の皆さんとは違う道を進んだのが功を奏したのか、海外でもヒットを記録するようになりましたね。
――欧米以外のアジア地域などではどのような状況ですか?
現在はとにかく中国市場が活気づいていて、乗り遅れたくない気持ちは当然強いです。私たちが上海にオフィスを設立して5年になりますが、その期間に多くの日本メーカーが中国に進出し、撤退してきました。そんな厳しい状況でも上海のオフィスは踏ん張ってきたのですから、来年はしっかり中国市場で結果を残したいですね。
――中国市場に対する期待感についても、一言いただけますか。
世界市場で言えば日米欧は飽和してきて、伸びも止まりつつあります。またアフリカやASEANは市場規模がまだまだ小さい。その一方で中国市場は成長を続けています。どこに天井があるのか分からない状態で、まだまだ伸びる可能性を秘めています。昨年ごろに日本市場を追い抜きまして、今後もさらに巨大市場となっていくでしょうから、格差はますます広がると予想しています。
■2018年は新しいIP創出に注力
――国内の市場という点では、2018年はどうなると予想していますか?
まず中国勢、韓国勢の躍進は強まるでしょう。ゲームモデルをガラッと変える動きが日本のメーカーでは少ない中、中国や韓国からチャレンジングなゲームモデルが来る可能性は高いです。
――なぜ中国、韓国のメーカーは積極的にアクションを起こせるのでしょうか?
PCオンラインゲームで利益を上げているおかげもあって、ソーシャルゲームへ積極的に資金を投入できるのがひとつ。またPCゲームなどの他PFでのゲーム開発で培った開発能力をモバイルに応用してきていることから、そもそもの技術力が高い、最初からグローバル市場に配信をすることありきでゲームを作っているので、予算や規模感が違うこと、など根本的な違いがあります。
――なるほど。では、日本のメーカーが持つ課題はなんでしょうか。
これから起こるのはIPの枯渇です。S級と言われるIPと呼ばれているものは出尽くしてしまい、今は各社とも、新しいIPを開発することに注力しているものと思います。自分たちでアニメやコミック、アイドルユニットなどで盛り上げていき、その一環としてゲームを作る流れがますます強くなると思います。
それでもIPの獲得競争は今後も終わることはないでしょう。S級IPは枯渇していくので、2018年以降は新しいIPをいかに見つけ出していくか、産み出していくか、が重要になりますね。
――分かりました。それでは最後に、来年に向けた抱負があれば教えてください。
2017年は『キャプテン翼』『うたの☆プリンスさまっ♪』といったIPで確実に成長することができました。2018年は東京ゲームショウなどで告知してきたとおり、IP創出にも力を入れています。これらの作品を、中国市場も含む海外市場へよりスピーディに配信していきたいと思います。
――ありがとうございました。
会社情報
- 会社名
- KLab株式会社
- 設立
- 2000年8月
- 代表者
- 代表取締役社長CEO 森田 英克/代表取締役副会長 五十嵐 洋介
- 決算期
- 12月
- 直近業績
- 売上高107億1700万円、営業損益11億2700万円の赤字、経常損益7億6100万円の赤字、最終損益17億2800万円の赤字(2023年12月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3656